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2018.12.27
2019年2月21日(木)第17回畿央大学公開講座のご案内
健康と教育のスペシャリストを育成する畿央大学では、2019年2月21日(木)に「認知症」をテーマに下記の要領で『第17回畿央大学公開講座』を開催します。受講料は無料ですので、ぜひ皆様奮ってご参加ください。 講座内容 認知症の正しい理解 -認知症かなと思ったときの対応- 健康科学部 看護医療学科 教授 山崎尚美 昨今、認知症の人は462万人を迎え、MIC(認知症予備軍)の人を含めると800万人時代と言われています。そして、認知症は今ではわが国だけではなく世界的にも注目されています。 畿央大学では、「認知症に強い畿央大学」をスローガンに2013年から地域に根差した認知症カフェの運営・企画や認知症サポーター養成講座、若年性認知症サポート事業、奈良県認知症ケア専門士会などにおいて、認知症の啓発活動や専門職に対する研修、認知症アプリケーションの開発および介護者の相談事業を行ってきました。 当日は、認知症を正しく理解するために①認知症に関するミニ講義、②模擬患者による演習、③簡単なもの忘れのチェック を予定しています。特に「認知症にならないためのヒケツ」や「認知症になったときにしておく準備」については参考になると思います。 多数の参加をお待ちしています。 開催日時 ■開催日時 2019年2月21日(木)14:00~15:10 【 受付13:30~ 】 ※ 1月7日(月)から申込を開始します。 ■定 員 200名(先着順) ■開催場所 畿央大学 P棟2階 P201講義室 ■参加費用 無料 ※筆記用具をご持参ください。 申込方法(1/7から申込受付開始) ① 氏名(ふりがな)、② 年齢、③ 住所、④ 電話番号(FAX番号)をご明記の上、E-mail、FAX、はがき、いずれかの方法でお申し込みください。 ※医療系職種に従事されている方はその旨ご記入ください。 お問合せ・申込先 〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2 畿央大学教育推進部 公開講座係 E-mail:uketsuke@kio.ac.jp TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 ※受講証の発行は致しません。当日直接本学にお越しいただき、公開講座受付で会場をご確認ください。 ※公共交通機関を利用してご参加ください。 ▼ポスターPDF(画像をクリックするとPDFデータがご覧頂けます)
2018.12.26
平成30年度FD研修会を開催しました。
12月25日(火)13:00から、P202講義室にて、教育推進室主催「2018年度 教員FD研修会」が開催されました。 FDとはFaculty Development(ファカルティ デベロップメント)の略で、教員が授業の内容や方法を改善し、向上させるための組織的な取り組みの総称です。 今年の研修会のテーマは、よりよい授業を設計するために必要なインストラクショナルデザイン(Instructional Design: ID)について学ぶことです。そこで、熊本大学教授システム学研究センター長・大学院教授システム学専攻長の鈴木克明先生においでいただき、「学生の学びを助ける授業をデザインする」と題してご講演いただきました。 ▼ご講演いただいた鈴木克明先生 研修会は、向後千春先生(早稲田大学人間科学学術院教授)が提唱されたマイクロフォーマット形式に沿って、「レクチャー→グループ内の対話→全体シェア」の流れを繰り返すかたちで進められました。はじめに、IDとは何かについて鈴木先生からレクチャーがありました。鈴木先生がおっしゃるには、IDとは教育のお悩みを解決する道具であるとのことです。学生が一生懸命学びたくなるような授業を作りたい、そのためにこれまでの自分の教え方を変えたいと思った時に役立つのがIDであり、大学教員が共有すべき、いわば教育に関する共通言語に相当するのがIDであるとのことでした。 その後、鈴木先生から参加者に対し、「1)大学は講義と定期試験を続行すべきか否か」、「2)DP・CP・APの公表でカリキュラムが見直されたか」、「3)基礎からの積み上げ方式という非効率的・惰性は払拭できるか否か」という刺激的な命題が提示され、これらに対するグループディスカッションをはさみつつ講演は進んでいきました。 1)大学は講義と定期試験を続行すべきか否か 大学の授業を学生にとってより魅力的なものへと変えていくためには何が必要か。この問いに対し、鈴木先生は講義と定期試験の2つをやめることであると指摘されました。鈴木先生はご自身の授業において、指定したテキスト(初期はプリント)を学生に事前に予習して来るよう指示し、毎回授業の冒頭に予習範囲に関する確認テストを実施されているそうです。テキストがあるならば、わざわざその内容について授業中に説明するのはナンセンスであり、授業の時間は学生一人ではできない学びを経験させることに使うべきとのことでした。ただし、テキストを事前に読んで来るよう学生に指示するだけでは当然うまくいかないので、きちんと読んで来させるための工夫として毎回の確認テストをおこなっているとのことでした。授業をこのかたちにしてから学生はよく学ぶようになり、寝ている学生もいなくなったとのことです。 2)DP・CP・APの公表でカリキュラムが見直されたか 学生の実力(知識・スキル・態度)には、入口(入学時)の状態と出口(卒業時)の状態の間にギャップがあります。このギャップを埋めることこそが学生の成長プロセスであり、それを支援することが大学教育の役割であると鈴木先生はおっしゃいます。また、卒業生に身に着けさせる実力は、学問分野を参照基準として決めるのではなく、業界標準や就職先の卒業生への満足度、同窓生の追跡調査による有用度や新たなニーズを参照基準として決めるべきであるとのご指摘でした。入学時の実力と卒業時の実力のギャップを埋めていくために存在しているのがカリキュラムなので、カリキュラムを編成するにあたっては学生をスタート地点からゴールまでどう導くのかを考える必要があります。そのためには、各教員が担当する科目の責任範囲について話し合い、自分の担当科目の前後にどのような科目があるのか、自分の担当科目の役割はどこからどこまでなのかをしっかりと理解する作業が不可欠とのことでした。 3)基礎からの積み上げ方式という非効率的・惰性は払拭できるか否か これまで大学のカリキュラムは「基礎から応用へ」というかたちで編成されるのが一般的でした。しかし鈴木先生は、最初に学生に伝えるべきことは「大学で学ぶことで、自分がどんな人間になることができるのか」という具体的イメージであり、そのためにはまず応用から入るカリキュラムが必要であるとのご指摘でした。たとえば鈴木先生は、学生がある企業の新入社員になったという状況を可能な限りリアルに設定し、次々と降り注ぐ上司の指示に対処するためにどのような知識・スキルが必要かを考えさせ、それらの知識・スキルを各科目において獲得することで、課題をクリアしていくというストーリー仕立ての学びを実践されているとのことでした。大学で学ぶ知識・スキルがどういうところでどのように役に立つのかを学生自身にリアルに実感させてこそ、学生は具体的なビジョンを持って主体的に学ぶことができるのであり、失敗の過程で自らに基礎的な知識・スキルが不足していると認識すれば、学生は自ら進んで基礎的な知識・スキルを学ぼうとするとのことでした。 これからの大学教育にとって重要なのは、学生の実力の入口と出口のギャップを効果的・効率的かつ魅力的に埋めて、教員が教えるのではなく学生が学ぶ仕組みを作ることであると鈴木先生は述べられていました。そのためには今まで漫然と続けてきた教育について一度立ち止まって再検討したり、自分の大学について学生の学習環境としてどうなのかという視点から見直したりする必要があるとのことです。また、何より大事なのは学生を自分で学べる人に育てることであり、そのためには学び方を学ばせる必要があり、学生に実際にやらせてみて自分は何ができて何ができないかを認識させる(Learning by doing, Learning by mistaking)ような学びのあり方が重要になってくるとのご指摘でした。 会場からしばしばどよめきが起こるなど、鈴木先生のお話には私たちの固定観念を根底から揺さぶるような内容が数多く含まれていました。学生の学びを助け、より魅力ある大学を作っていくために私たちはどう変わっていくべきなのか、深く考えさせられる研修会となりました。ご講演いただきました鈴木先生に厚く御礼申し上げます。 【関連記事】 平成29年度「FD研修会」を開催しました。 教職員対象「平成28年度FD研修会」を開催しました。 平成27年度FD研修会を開催しました。
2018.12.20
3/9(土)人間環境デザイン学科 卒業生交流会のご案内
人間環境デザイン学科初の 「卒業生交流会」を開催! 2018年3月に12回目の卒業生を送り出した人間環境デザイン学科。今回は初の試みとして、1~12期生を対象にした初めての「卒業生交流会」を開催いたします。退職した先生方も含めて多数の教員も、キャリアセンターの学科担当も参加予定する予定です。同日開催する【卒業研究・作品展】にも足をのばしつつ、4年間を過ごした母校で旧交を温めながら新たな出会いを創出できる機会として、ご活用ください。 出席予定の教職員 三井田康記先生、斉藤功子先生、岡井豊治先生、東実千代先生、藤井豊史先生、井上龍彦先生、西山紀子先生、李沅貞先生、 加藤信喜先生、村田浩子先生、清水裕子先生、陳建中先生、長井典子先生、中井千織先生(人間環境デザイン学科7期生、教員)、伊藤誠さん(元キャリアセンター職員)、谷口浩一(キャリアセンター職員)さん、辻谷進光(キャリアセンター職員)さん、鈴木理人さん(人間環境デザイン学科4期生、広報センター職員)など ※出席確定次第更新します。 ※都合により変更になる可能性があります。 予めご了承ください。 卒業生交流会の申込方法 参加を希望される方は「人間環境デザイン学科 卒業生交流会参加希望」と明記の上、 下記①~⑥の内容を、メール・FAXのいずれかでお申し込みください。 参加証などの発行は致しません。当日、直接受付にお越しください。 【申込み締め切り日:2019年3月6日(水)】 【メール】dousoukai@kio.ac.jp ▶ ①氏名(旧姓) ▶ ②卒業年(西暦●年3月) ▶ ③所属先(会社名等) ▶ ④住所 ▶ ⑤電話番号 ▶ ⑥メールアドレス ※当日参加も可能ですが、食事手配の都合上できるだけ事前申込へのご協力をお願いいたします。 問合せ先 TEL:0745-54-1603(同窓会事務局 担当:鈴木、伊藤、増田) ※公共交通機関を利用してご参加ください。 関連リンク ●【2018年度 人間環境デザイン学科卒業研究・作品展】の案内
2018.12.20
2018年度人間環境デザイン学科 卒業研究・作品展(学外)を開催します。
2018年度の人間環境デザイン学科 『卒業研究・作品展』は、大和高田さざんかホールで行います。在学生の4年間の集大成となる卒業研究・作品59点が展示される予定です。ご来場を心よりお待ちしております。 また、3月9日(土)夜には、畿央大学の学生食堂にて、初めてとなる「人間環境デザイン学科卒業生交流会」を予定しています。詳細は、卒業生宛の作品展案内ハガキの宛名面に記載しています。 人間環境デザイン学科卒業生交流会のご案内 会 場 大和高田さざんかホール 展示ホール奈良県大和高田市本郷町6-36【TEL】0745-53-8200 ※さざんかホールには一般来場者用の駐車場はございません。 お車でお越しの際は、JR高田駅西側の市営の立体駐車場をご利用ください。(有料) 主 催 畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科 日 時 2019年3月9日(土)10:00~18:00 2019年3月10日(日)10:00~16:00 備 考 入場無料 【関連リンク】 ●人間環境デザイン学科「2017年度卒業研究・作品展」を開催しました。 …昨年のイベントレポート ●人間環境デザイン学科 作品ギャラリー …過去の卒業作品をまとめた特設サイト
2018.12.19
確率共鳴(Stochastic Resonance: SR)現象による視覚-運動統合の向上~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
感覚-運動統合は、運動学習や運動制御において欠かせない脳機能です。発達性協調運動障害や視覚性運動失調、そして失行は、その病態に感覚-運動統合の困難さを有しています。したがって、感覚-運動統合を促進する効果的な介入手段の開発が求められています。確率共鳴(Stochastic Resonance: SR)とは、感覚閾値下の機械的あるいは電気的ノイズを生体に印加すると、感覚入力シグナルが増幅し、運動反応が向上する現象です。SR現象は、健常成人のみならず、健常高齢者、脳卒中後片麻痺、糖尿病性神経障害、パーキンソン病などでも観察されています。しかしながら、SR現象の提供によって、感覚-運動統合が促進されるか否かについては明確になっていませんでした。そこで畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志助教らの研究グループは、SRが視覚-運動統合に与える影響を調査し、SRが若年健常成人の視覚-運動統合を向上することを明らかにしました。このSR現象の提供は、感覚-運動統合障害を有する疾患に対する介入手段として期待されます。この研究成果は、PLOS ONE誌(Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration in healthy young adults)に掲載されています。 研究概要 視覚-運動統合の時間的側面、すなわち視覚-運動時間的統合機能は、遅延視覚フィードバック検出課題によって客観的・定量的に測定することができます。一方で、遅延視覚フィードバック下での運動課題は、視覚-運動統合を阻害し、運動に拙劣さを与えることができます(仮想的な視覚-運動統合障害)。 そして感覚閾値下の振動触覚ランダムノイズ刺激は、SR現象を引き起こすことが可能です。 そこで信迫助教らの研究グループは、若年健常成人を対象に、SRが遅延視覚フィードバック検出課題と遅延視覚フィードバック下での運動課題に与える影響を調べました。その結果、SRが遅延視覚フィードバック検出課題で測定される視覚-運動時間的統合機能を向上することを明らかにしました。しかしながら、SRは遅延視覚フィードバック下での運動課題の成績に影響しませんでした。 本研究のポイント SRの提供によって若年健常成人の視覚-運動時間的統合機能が向上した。したがって、SRデバイスは、感覚-運動統合障害を有する疾患の症状改善に効果的で有り得る。しかしながら、SRの提供は、267ミリ秒の遅延視覚フィードバック下での運動に正の効果を与えなかった。したがって、感覚-運動統合障害が重度である場合には、SRは有効でない可能性がある。 研究内容 本研究には、若年健常成人30名が参加しました。SRは手首に取り付けた振動触覚デバイスによる感覚閾値の60%の強度の振動触覚ランダムノイズ刺激によって提供されました。参加者は、SRあり条件とSRなし条件において、遅延視覚フィードバック検出課題と遅延視覚フィードバック下運動課題を実施しました。遅延視覚フィードバック検出課題は、自己運動に対するその視覚フィードバックに33-500ミリ秒までの15遅延条件が設定され、参加者は視覚フィードバックが遅れているか否かについて回答しました。遅延視覚フィードバック検出課題で抽出される検出閾値と検出確率曲線の勾配が、視覚-運動時間的統合機能を反映する定量的指標でした。検出閾値の短縮と勾配の増加は、視覚-運動時間的統合機能が高いことを表します。遅延視覚フィードバック下運動課題における遅延時間は267ミリ秒に設定しました。参加者は267ミリ秒の遅延視覚フィードバック下で、Box and Block Test(BBT)とNine Hole Peg Test(NHPT)の2つの手運動課題を実施しました。BBTにおいては得点が高いほど、NHPTにおいては実施時間が短縮するほど、手運動課題の成績が高いことを表します。SRあり条件・なし条件は、振動触覚デバイスの電源をオンまたはオフにすることにより調整しました。感覚閾値未満の振動触覚ランダムノイズ刺激であったため、参加者はSRについて盲検化されました。 図1. 実験課題 左:遅延視覚フィードバック検出課題 右:遅延視覚フィードバック下での運動課題 図2. 結果 SR(+)、SRあり条件;SR(-)、SRなし条件;**、p<0.01;N.S.、有意差なし 上:視覚-運動時間的統合機能を反映する検出閾値(左)と勾配(右)の比較結果 下:遅延視覚フィードバック下運動課題(左、BBT;右、NHPT)の比較結果 結果、SRあり条件の検出閾値は、SRなし条件と比較して、有意に短縮しました(図2)。このことは、SRの付与が、視覚-運動時間的統合を促進することを意味しました。しかしながら、遅延視覚フィードバック下運動課題の成績には有意差はありませんでした(図2)。SRあり条件における視覚-運動時間的統合の向上効果は、平均検出閾値で約20ミリ秒の短縮でした。したがって、遅延視覚フィードバック下運動課題で設定した267ミリ秒の外乱効果が上回ったものと考えられました。このことは、視覚-運動時間的統合障害が重度な場合には、SRによる効果がない可能性を示唆しました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究結果は、SRの提供が感覚-運動統合障害を有する疾患に対して有効である可能性を示唆しました。介入研究を実施することで、SRの有効性を検証する必要があります。 論文情報 Nobusako S, Osumi M, Matsuo A, Fukuchi T, Nakai A, Zama T, Shimada S, Morioka S. Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration in healthy young adults. PLoS One 13(12): e0209382. 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 助教 信迫 悟志(ノブサコ サトシ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2018.12.19
最適難易度での知覚運動学習中には運動主体感が増幅が明らかに~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
身体性の科学において、この運動を実現しているのは、自分自身であるという主体の意識を運動主体感(sense of agency)と呼びます。この運動主体感は主観の意識であるため定量的評価が難しいと考えられていたものの、近年、intentional binding(IB)課題が開発され、運動主体感を測定する試みがされはじめています。IB課題とは、被験者がキーを押した後、音が鳴るように設定された実験手続きにおいて、キー押し後、音が鳴るまでの時間を主観的に被験者に回答させ、実際の時間とそれの差分をみるものです。先行研究では自らの意志によって随意的にキーを押した場合は、音が鳴るまでの時間を実際よりも短く感じることが明らかになっています。つまり、時間知覚の短縮は「自分がキーを押したから音が鳴った」という運動主体感の強さを反映していると考えられています。この時間短縮をみることで運動主体感の程度をみることができるわけです。畿央大学の森岡 周 教授らの研究グループは、林田一輝さん(博士後期課程)のアイディアをもとに知覚運動学習型のintentional binding課題を新たに開発し、知覚運動学習の程度と運動主体感の関係性を調べました。その結果、知覚運動学習が徐々に進むグループでは運動主体感が増幅することがわかりました。その一方で、知覚運動学習が停滞(天井効果)するグループでは運動主体感が増幅しないことがわかりました。つまり、学習効果と運動主体感の間には密接な関係性があることが示されました。この結果は、知覚運動学習課題における誤差修正過程において、徐々に学習効果が起こっていることを潜在的に捉えている時期においては、運動主体感が高まっていることをあらわしています。この結果は、学習プロセスおいて課題の難易度が重要であることを示唆しています。この研究成果はPeer J誌(Changes in intentional binding effect during a novel perceptual-motor task)に掲載されています。 本研究のポイント ■ 知覚運動学習の進行と運動主体感の程度には関係がある。 ■ 知覚運動学習課題の難易度が運動主体感に影響を与える。 研究内容 大学生を対象に、今回新たに独自に開発した知覚運動学習型intentional binding課題(図1)を用いて実験が行われました。課題は、左右に動く円形の赤い球をPC画面中心のターゲット内にあわすようにタイミング良くキーを押すといった時間的精度を学習させる知覚運動学習課題です。この際、ターゲットと赤い球の間に発生する空間的な誤差値(pixel)を知覚運動パフォーマンス効果の指標としました。一方、キー押し後、ランダムな時間遅延(200、500、700ms)後に音が鳴り、キー押しから音が鳴るまでの時間を被験者に主観的に回答させました(被験者は200、500、700msであることは知りません)。実際の時間と主観的に感じる心理的時間の差をintentional binding効果(ms)とし、運動主体感の指標としました。 図1:知覚運動学習型intentional binding課題 練習課題、コントロール課題(個人の時間感覚の違いを是正する目的)を経て、実験課題が行われました。実験課題は18試行を1セットとし、計10セット行われました。1セットと10セットの誤差値を用いてクラスター分析を行ったところ、2つの説明可能なクラスターに分けることができました。クラスター2はクラスター1と比べ知覚運動学習が有意に起こっていました。10セットを2セット毎の5ブロックに統合して、知覚運動学習の変化を観察したところ、クラスター1は5ブロックを通じてわずかな誤差値の減少にとどまり、ほぼ天井効果を示した(図2水色)のに対して、クラスター2は1ブロック目の誤差値が大きく、その後ブロックを重ねるごとに誤差値が大きく減少することが確認されました(図2オレンジ)。 図2:知覚運動学習型intentional binding課題 一方、intentional binding効果の結果に関しては図3に示しました。時間(縦軸)がマイナスにいけばいくほど、時間短縮をあらわしておりintentional binding効果が増幅した、すなわち運動主体感が高まったことを示しています。クラスター2(図3オレンジ)において2ブロックから徐々にintentional binding効果が高まっていることがわかります(2ブロックと5ブロックの間に有意差)。すなわち、知覚運動学習効果が明確にみられたクラスター2のみ運動主体感が増幅したことが確認されました。一方、クラスター1(図3水色)は著明な変化が見られませんでした。 図3:ブロック毎のintentional binding効果の比較(運動主体感の指標) 本研究の臨床的意義および今後の課題 本研究によって知覚運動学習の進行と運動主体感の程度の間には関係があることがわかりました。運動主体感の増幅には目標設定のみならず、目標が徐々に達成されていくプロセスが重要であることを本研究は示しており、学習者あるいはリハビリテーション対象者に対する知覚運動学習課題において、その難易度の設定・調整が重要であることを本研究は示す結果になりました。今後はこれに関係するメカニズム(例:報酬、注意)を明らかにすることや、実際のリハビリテーション対象者の課題中の時間短縮を記録する必要があります。 論文情報 Morioka S, Hayashida K, Nishi Y, Negi S, Nishi Y, Osumi M, Nobusako S. Changes in intentional binding effect during a novel perceptual-motor task. Peer J 2018 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授/センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2018.12.14
健康科学研究所プロジェクト研究成果報告会を開催しました。
2018年12月13日(木)、健康科学研究所プロジェクト研究成果報告会を実施しました。 健康科学研究所は2007年に開設し、心身の健康に関する特色ある研究プロジェクトを策定し、意欲ある研究者が結集してその解明にあたっております。 開学10周年記念事業の一環として「心豊かな生活をおくるための健康科学」「質の高い健康寿命をめざす健康科学」の2つの研究領域からなる第1期プロジェクト研究(2012年度~2014年度)に取り組み多くの成果をあげてきました。 2015年には第1期プロジェクト研究をさらに掘り下げるため、「質の高い長寿をめざす健康科学」をテーマとして5つの研究領域から構成される第2期プロジェクト研究(2015年度~2017年度)をに着手しました。 この度、第2期プロジェクト研究の研究期間が終了したため、研究成果報告会を開催し、これまでの各研究領域の成果について報告をしました。 成果報告会には大学院生、教員等約40名が参加しました。 成果報告会の冒頭には山本健康科学研究所長より挨拶があり、その後、各研究領域が約20分の成果報告を行ないました。最後には植田健康科学研究科長/健康科学部長より講評があり今後の更なる研究の発展について期待の言葉を述べられました。 【第2期プロジェクト研究】 テーマ 「質の高い長寿をめざす健康科学」 研究期間 2015年度~2017年度 研究領域1「おいしさと健康をめざす調理の理論と実践」 (研究代表者 健康栄養学科 教授 山本 隆) 研究領域2「生体機能を改善する新規食成分の探究」 (研究代表者 健康栄養学科 教授 栢野 新市) 研究領域3「疾患モデル動物を用いての効果的な運動介入法の探究」 (研究代表者 理学療法学科 教授 今北 英高) 研究領域4「アンチエイジング戦略の疫学的、実証的研究」 (研究代表者 健康栄養学科 教授 金内 雅夫) 研究領域5「ヒト早老症の老化モデル細胞の作製と加齢に伴って増加するがん発症機構の解析」 (研究代表者 健康栄養学科 教授 前原 佳代子) また、2018年度からは「健康長寿延伸に向けての基盤研究」をテーマとして4つの研究領域から構成される第3期プロジェクト研究(2018年度~2020年度)を立ち上げ、更に研究を深化させています。 畿央大学ならではの特色ある研究ばかりですので、今後の成果が期待されます。 【関連記事】 「畿央大学開学10周年記念プロジェクト研究成果報告会」記事
2018.11.30
Epson Global Printing Summit in Kio Universityを開催しました。
2018年11月27日(火)に畿央大学冬木記念ホールにて「Epson Global Printing Summit 2018 in KIO University」が開催されました。 EPSON社では世界に先駆けてラインインクジェットプリンターを開発されています。ラインインクジェットプリンターの特徴は、高速であり、機構がシンプルで故障が少なく、大容量インク搭載で消耗品も少なく、低ランニングコストであることです。 畿央大学ではEPSON社と共同で「大学包括契約プラン」を開発し、2018年4月に学内共同プリンターを一括して刷新しました。これは、年間約500万枚の大学全体の印刷に対して、プリンター本体の機器購入費やインクなど消耗品、保守、全て含む5年間定額のスマートチャージ契約です。また、プリンターの監視やインクなど消耗品管理についても、インターネット経由でEPSON社が一括管理する「管理のスマート化」を実現するビジネスモデルです。 EPSON社では、本学での先進事例をグローバルに事業展開すべく「Epson Global Printing Summit 2018 in KIO University」として畿央大学に見学に来られました。セイコーエプソングループ全世界販社のセールスキーマンが、西欧/東欧/中近東アフリカ/ロシアより4名、北米より4名、南米より2名、北南米より3名、豪州より1名、中国より4名、台湾より4名、東南アジア(シンガポール/タイ/インドネシア/フィリピン/マレーシア)より4名、インドより3名、韓国より5名、香港より2名。また、国内セイコーエプソンより営業本部長はじめ15名、エプソン販売より代表取締役 佐伯社長、鈴村取締役をはじめ9名の総勢59名が畿央大学へ来られました。 ▼代表取締役佐伯社長のご挨拶 ▼冬木理事長より畿央大学の紹介と取組み ▼教育学習基盤センター大山より畿央大学の情報環境の取組み その後、教育学習基盤センター武井より学内共同プリンターの刷新について説明・意見交換を行ったあと、学内のプリンター設置個所の見学ツアーが行われました。 本学の取り組み詳細についてはEPSON社「導入事例」をご覧ください。
2018.11.28
平成30年度 理学療法特別講演会を開催しました。
平成30年11月25日(日)に畿央大学にて畿桜会(同窓会)主催の「理学療法特別講演会」が開催されました。卒業生、在学生、一般参加の方も含めて約30名の方が参加されました。理学療法特別講演会は、畿桜会が主催し、年に1度、理学療法学科卒業生に向けてリカレント教育(卒業後も幅広い知識を養う)のために行い、受講料1000円にて卒業生以外の医療関係者にも公開しているものです。 今回は畿央大学理学療法学科3期生の鈴木裕二先生をお招きし、「心疾患併存患者の理学療法におけるリスク管理」というテーマでご講演いただきました。 鈴木先生は、循環器疾患のリハビリテーションにおいて、大変ご活躍されている先生です。国立循環器医療センターに入職され、現在は姫路医療センターにご在籍されております。講義の中では、働いておられる病院での心臓リハビリテーションの概要であったり、実際に臨床で経験された症例についてご紹介いただきました。 まず多くの人が、「心臓リハビリテーションとは何か」と疑問を持つことが多いと思います。心臓リハビリテーションとは、体力の回復、再発予防、社会復帰のための取り組みであり、医師、看護師、栄養士、臨床心理士、リハビリテーションセラピストなど多くの職種が関わります。理学療法士は、その中で心疾患の患者さんに適切な運動方法を処方し、指導していく役割があります。講義の中では実際の場面を写真や動画を用いて、非常にわかり易くご説明していただきました。 また心疾患を併存しておられる患者さんに運動療法を実施していくうえで、リスク管理が重要となってきます。講義の中では、運動誘発性の危険な不整脈を持っておられる患者さんや、手術後に循環動態が不安定になった患者さんについてご紹介いただきました。いずれもとても危険な状態の中で、どういう風にリスク管理をしながら理学療法を進めていったらよいのかということを示していただきました。理学療法では全身を診る必要があり、心電図やバイタルを確認しながら、安全に進めていくことが重要であると思いました。 今回の講演で心臓リハビリテーションに対する理解が深まり、心疾患を持っておられる方のリスク管理がとても重要であることを理解しました。いずれも今後の臨床に役に立つもので、非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。 講演後は食堂にて懇親会を行いました。鈴木先生や、大学の先生、諸先輩方や後輩と、近況や、職場のことなどを話し合う貴重な時間も過ごしました。 来年度も理学療法特別講演会は行われる予定です。ぜひ、来年度も多くの方のご参加をお待ちしております。 理学療法学科8期生代表幹事 崎田 佳希
2018.11.22
感覚運動の時間的不一致による身体性変容の神経メカニズムが明らかに~ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者において、患肢を自己身体の一部と認識できないといった身体性の変容が生じることが報告されています。こうした身体性変容の要因の1つには、運動指令と実際の感覚フィードバックとの間に生じる不一致(感覚運動の不一致)が考えられています。しかしながら、感覚運動の不一致による身体性の変容が、①どれくらいの時間的不一致により生じるのか? あるいは、②その神経メカニズムは? については明らかになっていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 片山脩と森岡周教授らは、感覚運動の時間的不一致が、150ミリ秒では身体に対する奇妙な感覚のみが惹起され、250ミリ秒以上の不一致では身体の喪失感や重さの知覚変容が生じることを明らかにしました。また、350ミリ秒以上の不一致で運動の正確性が低下することを明らかにしました。さらに、これらの身体性変容と運動制御への影響には、補足運動野と頭頂連合野の神経活動が関わっていることを脳波のネットワーク解析にて明らかにしました。この知見は、脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者の病態解明に貢献し、新たなニューロリハビリテーション技術開発に向けた基礎的知見になるものと期待されます。この研究成果は、Frontiers in Behavioral Neuroscience誌(Neural mechanism of altered limb perceptions caused by temporal sensorimotor incongruence)に掲載されています。 本研究のポイント ■ 感覚運動の時間的不一致は、身体性の変容(「奇妙な感覚」「身体の喪失感」「重さの知覚変容」)を生じさせるだけでなく、運動制御にも悪影響を与える。 ■ 身体性の変容と運動制御への影響には、補足運動野と頭頂連合野の神経活動が関わっている。 研究内容 健常大学生を対象に、映像遅延システム(図1)の中で手首の曲げ伸ばしを反復させます。映像遅延システムでは、被験者の手の鏡像をビデオカメラで捉えて、そのカメラ映像を「映像遅延装置」経由でモニターへ出力させます。出力されたモニター映像を鏡越しに見ることによって自分の手を見ることができるものの、映像遅延装置によって作為的に映像出力が時間的に遅らされるため、被験者は“あれ?自分の手が遅れて見える” “自分の手が思い通りに動いてくれない” “自分の手のように感じない”という状況に陥ることになります。 図1:映像遅延システムを用いた実験 自分で動かした手が時間的に遅れて映し出される細工がされることによって、ヒトの感覚運動ループを錯乱させることができ、“身体性の変容”という状況を仮想的に設定することができます(技術提供:明治大学 理工学部 嶋田総太郎 教授)。 実際の実験では、① 0ミリ秒遅延、② 150ミリ秒遅延、③ 250ミリ秒遅延、④ 350ミリ秒遅延、⑤ 600ミリ秒遅延の5条件で手首の反復運動を被験者に実施してもらいました。運動中の手関節の運動を電気角度計で計測し、身体に対する「奇妙さ」「喪失感」「重さ」についてアンケートで定性的に評価しました。 実験の結果、動かした手の映像を150ミリ秒遅延させて視覚的にフィードバックすると、“自分の手に奇妙な感覚がする”といった変化が生まれました。さらに250ミリ秒以上遅延させると“自分の手のように感じない” “手が重くなった”という身体性の変容が生じました。遅延時間をさらに長くするとそれらの変化が増大することも確認されました(図2)。一方で、手関節の反復運動は、動いている手の映像を350 ミリ秒遅延させると、正確性が低下することが確認されました。これらの結果から、身体性の変容だけでなく運動制御までをも変容させてしまうということが明らかにされました。 図2:感覚運動の時間的不一致による身体性の変容と運動の正確性の乱れ さらに、身体に対する「奇妙さ」においては、150ミリ秒遅延では両側の腹内側前頭前野の神経活動性(図3)、600ミリ秒遅延では左の補足運動野と右の背外側前頭前野および右の右上頭頂小葉の神経活動性が関わっていることが明らかとなりました。「喪失感」および「重さ」においては、左の補足運動野の神経活動性が関わり、運動制御には右の下頭頂小葉の神経活動性が関わることが明らかとなりました。 図3:150ミリ秒遅延条件での「奇妙さ」に関わる神経活動領域 図4:600ミリ秒遅延条件での「運動の正確性」に関わる神経活動領域 本研究の臨床的意義および今後の課題 本研究成果は、脳卒中や脊髄損傷、慢性疼痛患者の身体性変容や運動制御への影響に補足運動野と頭頂連合野の神経活動性が関わっていることを示唆するものです。そのため、感覚運動の不一致を最小限にしながらリハビリテーションを進めることの重要性を提唱する基礎研究となります。今後は、実際に身体性の変容が生じている患者を対象に神経メカニズムの検証を行い、ニューロモデュレーション技術などを用いて、特定された脳領域の神経活動性に修飾を与えるニューロリハビリテーションの効果を検証していく予定です。 論文情報 Katayama O, Tsukamoto T, Osumi M, Kodama T,Morioka S. Neural mechanism of altered limb perceptions caused by temporal sensorimotor incongruence. Front. Behav. Neurosci. Vol 12. 282 問合せ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 片山 脩(カタヤマ オサム) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: b6725634@kio.ac.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 教授/センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp