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2023.05.10
後期高齢者のフレイルはそのステージにより改善・悪化因子が異なる可能性~運動系社会参加活動の増加は前フレイルから健常への移行に寄与
後期高齢者における社会参加と地域への信頼がフレイル分類の移行に及ぼす影響:4年間の前向きコホート研究 75歳以上の高齢者(後期高齢者)において、フレイルは要介護の主要な危険因子とされています。フレイルの発生に対して防御的に働く要因には身体的要因(歩く速さ、筋力など)と社会的要因(社会活動、社会的支援など)の両方が挙げられています。我が国における定義ではフレイルは適切な介入により再び健常な状態へ戻るという「可逆性」が強調されていますが、後期高齢者におけるフレイルの可逆的な変化やステージの改善について調べた縦断研究はほとんどありません。 本学理学療法学科の高取克彦 教授、松本大輔 准教授は、後期高齢者のフレイル分類(フレイル・前フレイル・健常)の改善もしくは悪化に影響する「社会参加活動」と「地域への信頼度」について4年間の縦断調査を行いました。その結果、前フレイル状態からの健常への改善には運動系社会参加の増加(体操教室などへの参加)が影響すること、健常からフレイル状態への悪化には地域への信頼度の減少がリスク要因になること、また一度フレイル状態に陥ると、その後の改善率は非常に低く(図1)、社会参加活動の増加もフレイルからの改善に関連しない可能性を示しました。 この研究内容はBMJ open誌(IF:3.0)に掲載されました。 研究概要 A市在住の要介護認定を受けていない後期高齢者4,249名を4年間前向きに追跡調査し、社会参加活動(運動系社会参加、地縁系社会参加、運動を含まない趣味系社会参加、ボランティア系活動)の増減および地域への信頼度の増減とフレイルステージの変化との関連について検討しました。 本研究のポイント 後期高齢者の大規模コホートを対象に4年間のフレイルステージの移行を前向きに調査し、社会参加活動の変化とフレイルステージの移行との関係性を明らかにしたことです。 図1:4年間におけるフレイルステージの移行 調査開始時にフレイルであった参加者についてはステージ改善に有意に影響する社会参加活動はありませんでした。 調査開始時に前フレイル状態であった群は運動系社会参加の増加が健常状態への改善に関連し、地縁活動の減少が悪化への危険因子として認められました(図2)。 調査開始時に健常(ロバスト)であった群においては地縁活動の増加が改善に関連し地域への信頼の減少がフレイルへの危険因子として認められました(図3)。 図2:前フレイルから健常への回復因子とフレイルへの防御因子(多項ロジスティック回帰分析) 図3:健常からフレイルへの危険因子と防御因子(二項ロジスティック回帰分析) 本研究の意義 本研究は本邦で初めて後期高齢者の社会参加状況の変化とフレイルステージの移行との関連を調査したものになります。フレイルは可逆性を前提としていますが、一度フレイルに陥ると、そこからの脱却は容易ではありませんが、前フレイル状態においては体操教室などの運動系社会参加が再び健常な状態に戻る重要な役割を果たすものと考えられます。このことはフレイルに評価おいても早期発見、早期対処の重要性を示唆しています。またフレイル予防においては地域との繋がりが重要である事も確認することができました。 謝辞 研究にご協力いただきました市民の皆様、市担当課の方々に感謝申し上げます。 論文情報 Takatori K, Matsumoto D. Effects of social activity participation and trust in the community on the transition of frailty classification in late-stage older adults: a 4-year prospective cohort study. BMJ Open 2023;13:e072243. doi:10.1136/bmjopen-2023-072243 https://bmjopen.bmj.com/content/13/5/e072243 お問い合わせ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授 高取克彦 k.takatori@kio.ac.jp 地域リハビリテーション研究室ホームページ
2023.05.10
「子どもの世界から見えてくるもの」~6/11(日)畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園開園記念シンポジウム
ひとは、動物の仲間であり、自然の一部を構成しています。それを一番実感できるのは、子どもという存在です。けれども、現在子どもを取り巻く環境は危機にさらされています。子どもという自然どころか、子ども自身が思い切り遊べる自然すら身近に感じることが難しくなっています。 このままでは、自然同様、子どもの自然は日に日にやせ細っていってしまいます。子どもの世界を取り戻すためにも、子どもを含めた大人の自然へのかかわり方を今一度見直す必要があると思われます。 本シンポジウムは、自然のなかで触れ合うことの大切さと、子どものなかの自然を発見することの面白さとむつかしさを感じ、子どもと自然に積極的にかかわってきた方々から、あらためて現状の報告と未来の提言を示唆していただくためのシンポジウム(饗宴)です。 こども園、保育園、幼稚園の関係者はもちろんのこと、保護者や地域の方々すべての人に開かれたシンポジウムです。どうぞたくさんの方々のご参加をお待ちしています。 畿央大学付属広陵こども園園長・畿央大学教育学部長 前平 泰志 開催日 2023年6月11日(日) 会場 畿央大学冬木記念ホール 内容 14時~16時 記念シンポジウム『子どもの世界からみえてくるもの』【パネリスト】 齋藤美和氏(しぜんの国保育園園長) 小泉昭男氏(造園家、元保育士、京都女子大学非常勤講師) 岡本麻友子氏(森のようちえんウィズ・ナチュラ代表) 阪田隼也氏(リーベ式運動遊び) 16時~ 情報交換会(会場:畿央大学食堂棟) 申込方法 下記申込フォームよりお申込みください。 申込フォーム 問合せ先 畿央大学開学20周年事業係 電話:0745-54-1601 メール:20th@kio.ac.jp
2023.05.10
【満員御礼】6/25(日)橿原市吹奏楽団ファミリーコンサート in 畿央大学を開催します。
定員に達したため、申込を締め切りました。多数のご予約をいただきありがとうございました。 地域の方々にこれまでの感謝の意を込めて、橿原市吹奏楽団にお越しいただきファミリーコンサートを開催します! コンサートの中では、畿央大学吹奏楽サークル(piu a poco)とのコラボレーション演奏も予定。ご家族のみなさまで楽しいひと時を過ごしていただければ幸いです。みなさまのご来場心よりお待ちしております。 開催日 2023年6月25日(日)14:00~15:30(開場13:00) 会場 畿央大学冬木記念ホール ※ご来場の際は、公共交通機関をご利用ください。 本学へのアクセス 演奏予定曲 白雪姫セレクション、ユーミンポートレート、宇宙戦艦ヤマト、ジャンボリミッキー、BTS メドレー、鬼滅の刃メドレーなど 申込方法 事前予約制(申込先着順)です。 【満席御礼:定員に達したため、申込を締め切りました】 キャンセルに伴う追加募集は実施いたしません。申し訳ございませんが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。 6月19日12:00更新 申込フォーム 問合せ先 畿央大学開学20周年事業係 電話:0745-54-1601 メール:20th@kio.ac.jp 【チラシデータ】橿原市吹奏楽団ファミリーコンサートin畿央大学
2023.05.10
6/11(日)畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園開園記念式典・シンポジウムを開催します。
畿央大学は、令和5(2023)年4月に開学20周年を迎えました。建学の精神「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」に則り、豊かな教養を備え、健康と教育の分野における高度な専門知識と技術を身につけ、社会に貢献できる人材の育成を目的とした教育を推進してまいりました。卒業生はすでに6,000名を超え、それぞれの専門分野で活躍しています。 また 今春には、畿央大学付属広陵こども園を開園いたしました。 これもひとえに、皆さまのご支援とご厚情の賜と深く感謝しております。 つきましては下記のとおり、記念式典およびシンポジウムを挙行いたしますので、ご多用のところ恐縮ですが、ご臨席を賜りたくご案内を申し上げます。 学校法人冬木学園理事長・畿央大学学長 冬木正彦 開催日 2023年6月11日(日) 会場 畿央大学冬木記念ホール 内容 13時~ 開学20周年記念式典14時~16時 記念シンポジウム『子どもの世界からみえてくるもの』 【パネリスト】 齋藤美和氏(しぜんの国保育園園長) 小泉昭男氏(造園家、元保育士、京都女子大学非常勤講師) 岡本麻友子氏(森のようちえんウィズ・ナチュラ代表) 阪田隼也氏(リーベ式運動遊び) 記念シンポジウムチラシ(PDF) 16時~ 情報交換会(会場:畿央大学食堂棟) 申込方法 下記申込フォームよりお申込みください。 ※記念式典・記念シンポジウム・情報交換会から選択できます。 申込フォーム 問合せ先 畿央大学開学20周年事業係 電話:0745-54-1601 メール:20th@kio.ac.jp 畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園 開園記念シンポジウムのご案内 畿央大学開学20周年記念事業のご案内
2023.05.01
人間環境デザイン学科「2022年度卒業研究・作品展」を開催しました。
2023年3月4日(土)、3月5日(日)の2日間にわたり、人間環境デザイン学科2022年度卒業生の「卒業研究・作品展」が大和八木駅前の橿原ミグランスにて開催されました。 建築・インテリア系、アパレル系の作品と論文のパネル展示、合計61点が展示されました。 また、下級生の優秀作品展示コーナーも設け、大学での学びを披露しました。 学外展示に先立ち、1月末と2月初旬には学内で卒業研究講評会を行います。 まずは1月28日、29日の2日間にわたって全体講評会を行いました。ここでは教員が学生の発表を聞いて巡回していきます。 全体講評会の様子 全体講評会で教員の選考により上位に選ばれた学生は、2月10日の選抜講評会にて再度プレゼンテーションを行います。学長賞(最優秀賞)1名と優秀賞2名が選出されました。 選抜講評会の様子 それでは、2022年度の学長賞と優秀作品をご紹介します。 学長賞 縮小時代における商店街の将来ビジョン ~本町通商店街を事例として~ 堀口 真生 優秀賞 R.A.Vu.奈良学生寮 ~faulty of Real Architecture the Virtual university 奈良学生寮~ 西岡 祐大 優秀賞 仏像にふれる ~仏像に触れる、学ぶ、知る~ 門田 真奈 その他の作品も力作揃いで、とても見応えのある展示会となりました。 たくさんのご来場ありがとうございました。 卒業研究を含め大学生活での学びを糧に…新たな活躍を教員一同期待しています。 【関連記事】 人間環境デザイン学科「2021年度卒業研究・作品展」を開催しました。 令和2年度 卒業研究講評会および学内展示会を開催しました。~人間環境デザイン学科 卒業制作が養父市の公民館に展示!〜人間環境デザイン学科〜 令和元年度 卒業研究講評会を行いました~人間環境デザイン学科 2019年度人間環境デザイン学科 卒業研究・作品展(学外) 人間環境デザイン学科「2018年度卒業研究・作品展」を開催しました。
2023.04.24
【事前予約受付中】6/18(日)オープンキャンパス開催します!
2023.04.24
【事前予約受付中】6/4(日)オープンキャンパス開催します!
2023.04.17
疼痛促通系に対する高強度経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科
ヒトには痛みの感じる程度を調節する機能が中枢神経系にあり、痛みを抑える「疼痛抑制系」と痛みを促通する「疼痛促通系」があります。痛みが強く感じる患者さんは、「疼痛促通系」の機能が亢進しているという報告があり、「疼痛促通系」の亢進に対して治療をすることが効果的と考えられます。経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は鎮痛目的の電気刺激療法であり、近年では強い強度でTENSをする高強度TENSという方法が報告されており、強い鎮痛効果が報告されています。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口述弘助教と庄本康治教授、畿央大学大学院健康科学研究科客員研究員 徳田光紀は疼痛促通系に対して高強度TENSの効果を検証しました。この研究成果は、Neuroscience Letters誌(High Intensity-Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation Does Not Inhibit Temporal Summation of the Nociceptive Flexion Reflex)に掲載されています。 研究概要 我々は生理学的かつ客観的な方法で「痛みの程度」を計測できるNociceptive Flexion Reflex (NFR)と「疼痛促通系」を計測できるTemporal summation -Nociceptive Flexion Reflex (TS-NFR)を測定しました。すると、高強度TENSはNFRに対しては効果的でしたが、TS-NFRに対しては効果がありませんでした。この結果から、高強度TENSは鎮痛効果がありますが、「疼痛促通系」に対しては効果が少ないことが明らかになりました。 本研究のポイント ・高強度TENSは鎮痛効果を示すが、疼痛促通系には効果が少ない。 研究内容 健常人31名を高周波数TENS群、コントロール群に分類して、TS-NFR、NFRに対する効果を比較しました。高強度TENS群は1分間、対象者が耐えられる最大強度でTENSを実施し、コントロール群は1分間安静にしました。すると、高強度TENS群はNFRに対して効果を示しましたが、TS-NFRには効果がありませんでした。コントロール群はTS-NFR、NFRともに効果を示しませんでした。 ▲TS-NFR、NFRの測定場面 本研究の臨床的意義及び今後の展開 高強度TENSは鎮痛効果がありますが、疼痛促通系が亢進している慢性疼痛の患者さんへの効果は少ない可能性が示唆されました。しかし、本研究は健常人を対象としているため、実際の疼痛患者さんでの検証が必要と考えています。 論文情報 Nobuhiro Takiguchi, Mitsunori Tokuda, Koji Shomoto. High intensity-transcutaneous electrical nerve stimulation does not inhibit temporal summation of the nociceptive flexion reflex. Neuroscience Letters. 29 May 2023 問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp
2023.04.13
畿央大学付属広陵こども園が開園しました。
2023年4月、広陵町平尾に『畿央大学付属広陵こども園』が開園しました。 記念すべき第一回の入園式が、4月8日(土)畿央大学の冬木記念ホールにて行われ、0歳児から5歳児までの合計212名が入園しました。 朝10時からの式典には、元気な子どもたちが大学に集まってきてくれて、にぎやかなキャンパスになりました。 地元からは、広陵金明太鼓の皆さんが応援に駆けつけてくれました。 子どもたちとご家族の皆さんの晴れやかな笑顔が、とてもまぶしい一日でした。冬木学園の仲間に「小さなおともだち」が入ってきてくれて、とても嬉しいです。 畿央大学付属広陵こども園では、「子ども一人ひとりのありのままの姿を大切にして、いまという『とき』を楽しく充実して過ごせるように、遊びを通じてこころとからだがのびのび育つ園」をめざしています。園長は畿央大学教育学部の前平泰志学部長、副園長を吉田正純教授が務め、教育・保育職員、調理職員、事務員など総勢約60名の教職員が配置されています。 広陵町と連携しつつ、大学の持つ教育力と専門的な知見を存分に発揮して、教育・保育はもちろん、健康・栄養・建築など様々な分野と連携して地域に貢献して参ります。ご支援をよろしくお願い致します。
2023.04.06
感覚運動不一致によって経験する重だるさは痛みの予後と関連する~健康科学研究科
感覚運動の不一致とは、自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しないことを指します。この時に重だるさや不快感などの経験を生じることが報告されており、これが痛みに影響を与える可能性が示唆されています。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 松田総一郎さん と 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授 は、筋骨格系疼痛患者を対象に感覚運動不一致を誘発させる実験タスクを実施し、それによって生じる重だるさが筋骨格系疼痛患者の痛みを遷延化させることを明らかにしました。この研究成果はPain Research and Management誌(Perception of heaviness induced by sensorimotor incongruence is associated with pain prognosis)に掲載されています。 研究概要 骨折や組織損傷直後のギプス固定が、関節拘縮や筋力低下といった身体機能の制限に加えて身体知覚の異常を引き起こすことが報告されています。このような異常な身体知覚は、臨床現場で患者から「自分の手とは思えない」「自分の手に違和感や不快感がある」など様々な形で表現されています。このような異常な身体知覚は運動の意図と感覚フィードバックの不一致に起因すると考えられています。感覚運動の不一致とは自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しないことを指し、異常な身体知覚が生じることが知られています。例えば、四肢の動きと視覚フィードバックの間の空間的な不一致によって、奇妙さや不快感、あるいは重さだるさなどが引き起こされることが報告されています。しかしながら、感覚運動の不一致による身体知覚の異常が痛みの予後に及ぼす影響についてはこれまで検討されていませんでした。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 松田総一郎 さんと畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授 は、急性期の筋骨格系疼痛患者を対象に、感覚運動不一致を誘発する実験タスクを用いて、どのような種類の異常な身体知覚が痛みの予後に関与しているのか検証しました。その結果、急性疼痛の重症度そのものは痛みの遷延化を予測できませんでしたが、感覚運動の不一致によって生じる重だるさが痛みを遷延化させやすいことが明らかとなりました。 本研究のポイント ・感覚運動の不一致によって生じる異常知覚が、急性期の筋骨格系疼痛患者の痛みの予後に与える影響を検証した。 ・感覚運動の不一致によって生じる重だるさが、痛みの遷延化に影響を与えることが明らかとなった。 研究内容 感覚運動の不一致を惹起するために、鏡を用いて実験を行いました。実験では患者に椅子に座ってもらい、上肢または下肢の間に鏡を設置しました(図1)。 図1.鏡を用いた感覚運動の不一致を惹起するための環境設定 椅子に座った患者の上肢または下肢の間に鏡を置いて一致条件と不一致条件を実施しました。一致条件は健側と患側を同時に屈伸運動させる条件、不一致条件は健側と患側で異なるタイミングで屈伸運動をさせる条件として、各条件ともに20秒間実施しました。 このとき、患者は鏡に写る健側の上下肢を見ることができましたが、患側の上下肢を見ることができないように設定しました。その状態で、鏡に写る健側の上下肢を見ながら健側と患側を同時に動かす一致条件と異なるタイミングで動かす不一致条件をそれぞれ20秒間実施しました。各条件を実施した後に、異常知覚(痛み、不快感、奇妙さ、重だるさ、温度の変化、四肢が増えた感じ、四肢が無くなった感じ)に関するアンケートに回答してもらいました。 外傷もしくは手術後2ヶ月以内に1回目の実験を行い、その2週間後、4週間後の合計3回実施しました。その結果、不一致条件によって生じやすい異常知覚は痛み、重だるさ、奇妙さの3項目でした。そこで、構造方程式モデリングを用いて、痛みの強さと異常知覚の関係を検討しました(図2)。その結果、 初期の痛みの強さは予後に関係しませんでしたが、不一致条件で経験する重だるさという異常知覚が2週間後と4週間後の痛みを予測することが明らかとなりました。これは、異常な身体知覚の中でも重だるさという経験が痛みに影響を与えることを示唆しています。 図2.痛みの強さと異常知覚を用いた構造方程式モデリング 初期の痛みの強さではなく、不一致条件で経験する重だるさが2週間後と4週間後の痛みの強さを予測することが明らかとなりました。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究では、「急性期の筋骨格系疼痛患者の痛みの遷延化」に感覚運動の不一致によって経験する重だるさが関わることを明らかにしました。今後は、筋骨格系疼痛患者の運動機能も含めてより詳細な評価を行い、感覚運動の不一致によって生じる異常知覚の影響を検証する必要があります。 論文情報 Soichiro Matsuda, Michihiro Osumi Perception of heaviness induced by sensorimotor incongruence is associated with pain prognosis. Pain Research and Management ,2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 准教授 大住倫弘 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp