健康科学専攻(博士後期課程)
2023.10.10
森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。
この度、明治大学 理工学部 嶋田 総太郎教授、東海大学 現代教養センター 田中 彰吾教授、畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周教授らのグループが研究する「ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用」が、JST(国立研究開発法人学術技術振興機構)の大型研究費であるJST戦略的創造研究推進事業(CREST)において採択されました。 CREST について CRESTとは、我が国が直面する重要な課題の克服に向けて、独創的で国際的に高い水準の目的基礎研究を推進し、社会・経済の変革をもたらす科学技術イノベーションに大きく寄与する、新たな科学知識に基づく創造的で卓越した革新的技術のシーズ(新技術シーズ)を創出することを目的としています。そのために、研究総括が定めた研究領域運営方針の下、研究総括が選んだ、我が国のトップ研究者が率いる複数のベストチームによる研究を推進するトップダウン型研究であり、国内の競争的科学研究費としてはトップに位置するもので、研究期間は5年6ヵ月以内の総額1.5~5億円程度の研究費が与えられます。 生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出(通称マルチセンシング) 今回応募した領域は、生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出(通称マルチセンシング)であり、研究領域統括は、自治医科大学 永井良三学長、研究総括は、理化学研究所 未来戦略室上級研究員の入來篤史博士です。また、国際領域運営アドバイザーにはAnil Seth博士(サセックス大学 工学情報学部 教授)、Karl Friston博士(ロンドン大学 神経科学研究所 教授)と著名な研究者が配属され、国際研究を牽引する意図があります。 ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR 介入技術への応用 私たちの研究グループは、明治大学理工学部(認知科学)の嶋田総太郎教授(代表者)のグループ、東海大学文学研究科(哲学・現象学)の田中彰吾教授のグループとチームを編成し、「ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR 介入技術への応用」というテーマ(図1:Graphic Abstract)で応募し、毎年採択数は4件程度(2023年度は64件応募中4件採択/採択率6.3%)の厳しい審査の中、書類審査に次いで面接審査を通過し、結果として、2.74億円(5年6ヵ月)の研究費(3研究室合同)を取得することができました。 図1:研究概要 日本 - フランス 共同提案型 今回は日仏共同提案型による応募をとり、日仏で研究グループを構成し、共同研究提案書(CREST-ANR共通書式)を作成し、フランス国立研究機構(Agence Nationale de la Recherche; ANR)の審査も通過しなければならないという難易度の高い課題に挑戦し、結果として、フランス側も採択されるに至りました(図2:日仏チーム編成)。フランス側の共同研究者には、natureにも多数論文を持つフランス国立衛生医学研究所(INSERM)、フランス国立科学研究センター(CNRS)のYves Rossetti教授(認知科学)、世界ニューロリハビリテーション連盟の組織委員会のメンバーであるリヨン大学病院医学部長のGilles Rode教授(リハビリテーション医学)、そして神経現象学の父と称されるFrancisco J Varelaの継承者の哲学者であるリヨン高等師範学校(ENS-Lyon)、パリ高等師範学校(ENS-Cachan)のJean-Michel Roy教授です。これから5年半にわたり、相互に往来しながら議論を重ねて、ブレークスルーにつながる研究成果を公表できるように進めていきます。 図2:フランスー日本の共同研究メンバー 共同研究メンバー 明治大学 理工学部 教授 嶋田 総太郎 東海大学 現代教養センター 教授 田中 彰吾 フランス国立衛生医学研究所 教授 Yves Rossetti リヨン大学病院医学部 教授 Gilles Rode リヨン高等師範学校 教授 Jean-Michel Roy 畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター 教授/センター長 森岡 周 関連リンク 2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評 国立研究開発法人学術技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST)
2023.09.15
理学療法の意思決定場面における患者関与の実態とSDMの有用性~ニューロリハビリテーション研究センター
近年、患者の価値観を治療の意思決定に考慮する協働的意思決定(Shared Decision-Making:SDM)が注目されている一方、理学療法領域では理論的な背景が不足している状況です。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程 尾川 達也 氏(西大和リハビリテーション病院) と 森岡 周 教授ら は、日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました。結果、意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態とともに、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることを明らかにしました。この研究成果はBMC Medical Informatics and Decision Making 誌(Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan)に掲載されています。 研究概要 根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine:EBM)を実践する際、医療者が患者の価値観を十分に考慮していない実態が指摘されています。近年、医療者と患者が共同で治療の意思決定を進めるSDMが推奨されるようになり、理学療法領域でも注目されています。しかし、既存の情報は医師を主とした研究や数名の患者による質的研究の結果であり、理学療法領域におけるSDMの有用性に関しては理論的根拠が乏しい状況です。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程 尾川 達也 氏(西大和リハビリテーション病院)、森岡 周 教授らの研究チームは、日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました。その結果、治療の決定を「理学療法士が行っている」と認識している患者の割合が多く、意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態が明らかとなりました。また、意思決定への関与に関連する要因として、理学療法士によるSDMの実施状況が選択され、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました。 本研究のポイント ■ 実際の意思決定方法とともに、患者が希望する意思決定方法も同時に評価することで、患者の希望を満たせていない実態を明らかにした。 ■ 患者の意思決定への関与に理学療法士によるSDMの実施程度が関連することを明らかにした。 研究内容 日本の入院環境や地域で理学療法を受けている277名の患者に対し調査を行いました。患者の意思決定への関与を評価するためにControl Preference Scaleを使用しました。これは実際の意思決定方法(Actual Role)と希望する意思決定方法(Preferred Role)の両方を5つのイラスト(A:most active、B:active、C:collaborative、D:passive、E:most passive)から1つ選択する評価で、今回はこの一致度を算出しました。また、SDMの評価には患者が医療者の言動を採点する9-item Shared Decision Making Questionnaireという質問紙評価を使用しました。 図1 実際の意思決定方法と希望する意思決定方法の一致度 実際と希望する意思決定方法は有意な一致度(一致率:49.8% 重みづけκ係数=0.38)を認めたもののκ係数は低かった(灰色)。また、希望よりも受動的な関与であった割合は36.5%(青色)、希望よりも能動的な関与であった割合は13.7%(赤色)であった。 図2 SDM-Q-9の投入有・無におけるロジスティック回帰分析の比較 意思決定への関与と有意に関連した要因として、1)治療環境が地域である 2)患者が意思決定への関与を希望する 3)理学療法士がSDMを実施することが選択された。一方、年齢や教育年数、歩行能力は、意思決定への関与と有意な関連を認めなかった。 結果、実際の意思決定方法と希望する意思決定方法が一致した割合は49.8%(図1の灰色)であり、希望よりも実際が受動的な関与となっていた者は36.5%(図1の青色)もいました。また、意思決定への患者関与に関連する要因として、1)治療環境が地域である、2)患者が意思決定への関与を希望する、3)理学療法士がSDMを実施することが選択され、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました(図2)。このことから、日本の理学療法領域においても意思決定に関わる患者の希望を満たせていないといった “患者関与の問題点” を明確に示すことができました。また、他の関連要因を調整したとしても、理学療法士によるSDMの実施程度が患者関与と関連した本研究の結果は、理学療法領域におけるSDMの有用性を支持する重要な発見となりました。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究の結果から、理学療法領域の中でSDMの臨床実践を推進していく理論的根拠を示すことができました。今後は理学療法領域で頻繁に生じる意思決定場面に焦点を当て、患者側の視点を明らかにするとともに、それらの情報を統合した理学療法士に対するSDMの教育的支援も必要になると考えています。 論文情報 Tatsuya Ogawa, Shuhei Fujimoto, Kyohei Omon, Tomoya Ishigaki and Shu Morioka Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan. BMC Medical Informatics and Decision Making, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 博士後期課程 尾川 達也 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.09.04
令和5年度「教職員のための夏の公開講座」を開催しました。
2023年(令和5年)8月18日(金)、令和5年度「教職員のための夏の公開講座」を開催しました。この講座は奈良県立教育研究所の依頼に基づき、夏休みの間に現場の先生方に知識を深めていただき、得意分野についてはさらに伸ばしていただくことを目的に受講していただく講座です。 今年度は、コロナ以前のように対面で23名の先生方に参加いただき、ちょっとしたワークなども交えながら実施いたしました。今回は畿央大学 教育学部 現代教育学科 小山内 秀和准教授による「子どもが世界を理解し、世界に発信する力の謎に心理学はどう応えるか」と題した講座を開催しました。 1.子どもが世界を理解するメカニズム、2.言語の発達と世界の表現、3.文章で世界を表す、4.読み書きと思考という目次に沿って、ヒトの営みとしてのコミュニケーションのあり方を理解するところから始まり、子どもが成長に伴い世界をどのように理解するのか、言葉の発達を通した周りの世界の理解、文章を理解するということ、読み書きと言語能力の発達の関係を学びました。 受講者アンケートでは、「難しい内容でしたが、論理的に考えるということや発達を通した客観的な思考獲得についてよくわかりました」や「状況モデルという考え方が非常に新鮮だったので、今後に生かしていきたいです」、「説明もレジュメも非常に簡潔で明解でした」などのご意見・ご感想をいただきました。 講座の後半セクションでは、ワークが5つほどあり、講座の理解が深まるとともに、参加者同士のコミュニケーションも積極的に交わされました。質疑応答も積極的に行われ、講座終了後も講師に質問をする参加者の方々を見ることができました。 残暑厳しい中、ご参加いただきました皆様には心より感謝申し上げます。今回のアンケートを参考に、今後とも皆様のお役に立てる講座設定に努めて参ります。 【教職員のための夏の公開講座 開催レポート】 2021年度 2019年度 2018年度 2016年度 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 2009年度 2008年度
2023.08.21
8/19(土)第17期 第2回畿桜会役員会を開催しました。
2023.08.10
【開学20周年記念】7/23(日)「野村忠宏氏特別講演会」を開催しました。
2023年7月23日(日)13:00より冬木記念ホールにて、オリンピック3連覇を達成した柔道家の野村 忠宏さんをお招きした「特別講演会」を開催しました。野村さんは畿央大学のある広陵町の名誉町民でもあることから、開学20周年を記念した今回の講演が実現する運びとなりました。快晴の夏空にも恵まれ、近隣住民の皆さまを中心に約400名の方にご来場いただきました。また、当日は学生ボランティア15名が受付や場内誘導などに参加協力し、イベントを盛り上げてくれました。 司会は東京オリンピック・パラリンピックで「TOKYO2020MEDスタッフ」としてアスリートを支援した理学療法学科 福本 貴彦准教授(写真右)が務めました。 まず冬木 正彦学長から参加いただいた皆さまに開学20周年を迎えられたことの感謝や、学歌に込められた想いなどが述べられました。 これまでの野村さんの軌跡をまとめたVTR上映のあとは、いよいよ講演がスタート。決して順調ではなかったオリンピック金メダルまでの道のりや目標達成に対するプロセス、努力についてのご自身のお考えを、恩師から受けた影響や経験なども踏まえながらお話しいただきました。 「金メダルを獲得したときの瞬間の喜びと感動は言葉にできない。どんな困難な状況が立ちはだかったとしても、4年後に金メダル獲得をめざしたい」と当時の心境も語っていただき、会場の方々は熱心に耳を傾けていました。時には会場には笑いがあふれ、終始和やかな雰囲気で講演会は進み、最後には「夢中になれるものを探すことで人生に張りが出る。健康に気を付けて、生きがいのある人生を歩んでください」と呼び掛けていただきました。 講演会終了後には、学生ボランティアの代表から野村 忠宏さんへ花束が贈呈されました。 野村 忠宏さん、ご来場いただいた皆さま、当日運営をサポートしてくれた学生ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました。 地域に開かれた大学として、今後も地域の皆さま向けに公開講座やイベントを開催していく予定です。畿央祭(学園祭)も入場制限などの制約を外して10月21日(土)・22日(日)に開催予定ですので、ぜひご参加ください。 【関連リンク】 畿央大学開学20周年特設サイト
2023.08.10
7/29(土)ニューロリハビリテーション研究センター主催「リハビリテーショントークセッション」を開催しました。
2023.07.31
理学療法の意思決定場面における患者関与の実態とSDMの有用性~ニューロリハビリテーション研究センター
近年、患者の価値観を治療の意思決定に考慮する協働的意思決定(Shared Decision-Making:SDM)が注目されている一方、理学療法領域では理論的な背景が不足している状況です。畿央大学大学院博士後期課程 尾川 達也 氏(西大和リハビリテーション病院) と 森岡 周 教授ら は、日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました。結果、意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態とともに、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることを明らかにしました。この研究成果はBMC Medical Informatics and Decision Making 誌(Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan)に掲載されています。 研究概要 根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine:EBM)を実践する際、医療者が患者の価値観を十分に考慮していない実態が指摘されています。近年、医療者と患者が共同で治療の意思決定を進めるSDMが推奨されるようになり、理学療法領域でも注目されています。しかし、既存の情報は医師を主とした研究や数名の患者による質的研究の結果であり、理学療法領域におけるSDMの有用性に関しては理論的根拠が乏しい状況です。畿央大学大学院博士後期課程 尾川 達也 氏(西大和リハビリテーション病院)、森岡 周 教授らの研究チームは、日本で理学療法を受けている患者を対象に意思決定への関与の状況とその要因について検証しました。その結果、治療の決定を「理学療法士が行っている」と認識している患者の割合が多く、意思決定に関わる患者の希望を満たせていない実態が明らかとなりました。また、意思決定への関与に関連する要因として、理学療法士によるSDMの実施状況が選択され、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました。 本研究のポイント ■ 実際の意思決定方法とともに、患者が希望する意思決定方法も同時に評価することで、患者の希望を満たせていない実態を明らかにした。 ■ 患者の意思決定への関与に理学療法士によるSDMの実施程度が関連することを明らかにした。 研究内容 日本の入院環境や地域で理学療法を受けている277名の患者に対し調査を行いました。患者の意思決定への関与を評価するためにControl Preference Scaleを使用しました。これは実際の意思決定方法(Actual Role)と希望する意思決定方法(Preferred Role)の両方を5つのイラスト(A:most active、B:active、C:collaborative、D:passive、E:most passive)から1つ選択する評価で、今回はこの一致度を算出しました。また、SDMの評価には患者が医療者の言動を採点する9-item Shared Decision Making Questionnaireという質問紙評価を使用しました。 図1 実際の意思決定方法と希望する意思決定方法の一致度 実際と希望する意思決定方法は有意な一致度(一致率:49.8% 重みづけκ係数=0.38)を認めたもののκ係数は低かった(灰色)。また、希望よりも受動的な関与であった割合は36.5%(青色)、希望よりも能動的な関与であった割合は13.7%(赤色)であった。 図2 SDM-Q-9の投入有・無におけるロジスティック回帰分析の比較 意思決定への関与と有意に関連した要因として、1)治療環境が地域である 2)患者が意思決定への関与を希望する 3)理学療法士がSDMを実施することが選択された。一方、年齢や教育年数、歩行能力は、意思決定への関与と有意な関連を認めなかった。 結果、実際の意思決定方法と希望する意思決定方法が一致した割合は49.8%(図1の灰色)であり、希望よりも実際が受動的な関与となっていた者は36.5%(図1の青色)もいました。また、意思決定への患者関与に関連する要因として、1)治療環境が地域である、2)患者が意思決定への関与を希望する、3)理学療法士がSDMを実施することが選択され、理学療法領域においてもSDMが患者関与の一要因であることが明らかとなりました(図2)。このことから、日本の理学療法領域においても意思決定に関わる患者の希望を満たせていないといった “患者関与の問題点” を明確に示すことができました。また、他の関連要因を調整したとしても、理学療法士によるSDMの実施程度が患者関与と関連した本研究の結果は、理学療法領域におけるSDMの有用性を支持する重要な発見となりました。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究の結果から、理学療法領域の中でSDMの臨床実践を推進していく理論的根拠を示すことができました。今後は理学療法領域で頻繁に生じる意思決定場面に焦点を当て、患者側の視点を明らかにするとともに、それらの情報を統合した理学療法士に対するSDMの教育的支援も必要になると考えています。 論文情報 Tatsuya Ogawa, Shuhei Fujimoto, Kyohei Omon, Tomoya Ishigaki and Shu Morioka Shared decision-making in physiotherapy: a cross-sectional study of patient involvement factors and issues in Japan. BMC Medical Informatics and Decision Making, 2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 博士後期課程 尾川 達也 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.06.30
【開学20周年】6/25(日)橿原市吹奏楽団ファミリーコンサート in 畿央大学を開催しました。
2023年6月25日(日)、畿央大学冬木記念ホールにおいて橿原市吹奏楽団を招いて畿央大学開学20周年記念イベント「橿原市吹奏楽団ファミリーコンサート in 畿央大学」を開催しました。 橿原市吹奏楽団は、1973年に橿原市内の吹奏楽愛好家たちによって立ち上げられた50年の歴史がある由緒ある楽団です。団員は10代の高校生、働き盛りの40~50代、リタイアされた方まで幅広い年代の方々で構成されています。6月初旬に募集を開始してから1週間足らずで満員御礼となり、当日は広陵町内や近隣地域から500名近い来場をいただきました。 また当日は在学生ボランティア16名が受付や場内誘導などに運営協力し、イベントに華を添えてくれました。 開催に先駆けて冬木正彦学長から、開学20周年を迎えられたことの感謝や、生の演奏を肌で感じることの大切さが述べられ、「大きくなったら畿央大学に来てくださいね」という言葉には会場からは笑いがあふれるなど、ファミリーコンサートにふさわしいスタートとなりました。 前半の部は橿原市吹奏楽団による単独公演で、「宇宙戦艦ヤマト」「白雪姫セレクション」など小さいお子様から高齢者の方まで様々な年齢層に合わせた楽曲を演奏いただきました。 休憩をはさみ、後半の部では本学の吹奏楽サークル(Piu a poco)と吹奏楽団とのコラボレーション演奏が実現しました。 コロナ禍の影響で実は吹奏楽サークルとしては初めての活動がこの大舞台となりましたが、練習を積み重ね、MCにも挑戦して会場を大いに盛り上げました。 「ダンスホール(Mrs. GREEN APPLE)」や「ジャンボリミッキー」、「鬼滅の刃メドレー」など最近話題になった楽曲やアニメソングが選曲され、馴染みのある音楽が流れると、会場のあちこちで子どもたちの元気いっぱいの掛け声や音楽にあわせて踊る姿がたくさん見られました。 鳴りやまない拍手にこたえる形でのアンコールは、吹奏楽の定番曲「宝島」と「翼をください」の2曲。最後の「翼をください」では、吹奏楽の演奏に合わせて来場者全員で合唱し、音楽を通して会場内が一つになる瞬間が感じられました。 演奏終了後には、吹奏楽サークルの代表から橿原市吹奏楽団へ花束が贈呈されました。 橿原市吹奏楽団のみなさま、吹奏楽サークルのみなさん、当日運営をサポートしてくれた学生ボランティアのみなさん、ありがとうございました。 ファミリーコンサートに引き続き、開学20周年記念イベントとして、7月23日(日)に柔道史上初、また全競技を通じてアジア人初となるオリンピック3連覇を達成した野村忠宏氏をお招きした特別講演(参加費無料、7/5事前予約受付開始)を開催しますので、ぜひご参加ください。 ▼橿原市吹奏楽団、吹奏楽サークル、ボランティア学生と冬木学長で最後に記念撮影! 【関連リンク】 畿央大学開学20周年特設サイト 【申込ページはこちら】広陵町名誉町民 野村忠弘氏特別講演会「折れない心」
2023.06.13
6/11(日)畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園開園記念式典・シンポジウムを開催しました。
2023(令和5)年6月11日(日)、冬木記念ホールにおいて、13時から「畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園開園記念式典」、14時から「畿央大学開学20周年・畿央大学付属広陵こども園開園記念シンポジウム」を行い、総勢300名弱の方にご参加いただきました。 「記念式典」には、本学教職員・学園関係者・学生・卒業生の他、来賓として行政関係、大学、高等学校、関連企業の方々のご出席を賜りました。 冒頭の畿央大学アカペラ部「ADVANCE#」による学歌斉唱に引き続き、冬木智子名誉学園長の動画で建学の精神「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を振り返りました。 冬木正彦学長の式辞では、原点に立ち返り、自身の経験と建学の精神に触れられ、畿央大学付属広陵こども園と共に将来の展開と皆さまへの感謝の気持ちが述べられました。 引き続き、健康科学部長の植田政嗣、教育学部長であり畿央大学付属広陵こども園園長の前平泰志が挨拶をしました。 ご来賓を代表して山村吉由広陵町長から、広陵町における就学前教育の整備とさらなる包括連携の強化を期待しています、とのご祝辞をいただきました。 その後は、本学職員(人間環境デザイン学科4期生)による「大学開学20年のあゆみ(スライドショー)」と、畿央大学付属広陵こども園副園長による「畿央大学付属広陵こども園紹介(動画)」で、式典は閉会となりました。 14時からは、幼児教育施設や子育てに関心のある一般の方も加わり、「子どもの世界から見えてくるもの」と題して「記念シンポジウム」が行われました。 本シンポジウムでは、幼児教育にさまざまな方面で活躍している4名を登壇者としてお招きしました。前半はご自身の活動についてお話いただきました。 齋藤美和氏(しぜんの国保育園 園長) しぜんの国保育園は東京都町田市にある社会福祉法人東香会が運営する認可保育園であり、にぎやかな街並みから少し離れた場所にある当園は、「small village」という愛称があります。 園の特色として「すべてが子ども中心」という理念から始まっており、子どものやりたいことを優先してその日のスケジュールを決め、子どもたちの「今」を尊重した保育を実践しているとお話しいただきました。 岡本麻友子氏(森のようちえんウィズ・ナチュラ 代表) 森のようちえんウィズ・ナチュラは天理市内のキャンプ場にて、年間を通して野外での保育を実践しています。 雨の日でもカッパを着て外で活動を行って雨の日しかできない遊びを行うことで自然の中での体験活動を大切にしています。また、季節の行事やイベントを大切にし、誕生日であれば、誕生月の子を想いながら採ったものを木でできたケーキに飾り、その時だけの特別なケーキを作っています。 「自然保育はやり方ではなく在り方」であり、それを考えることが大事であるとお話しいただきました。 阪田隼也氏(リーベ式運動遊び) 「こどもがこどもを満喫できる環境づくり」を大事にしており、跳び箱やマット運動などの技術練習を並んで順番を待ち、一人ずつ行う指導スタイルではなく、とにかく動き続けることがリーベ式運動あそびの特徴の一つであり、子どもたちが不安や緊張を感じることなく自然と動き出せることを重要視しています。 「楽しい先にこそ育ちがある」と考え、今できることを大人も一緒に楽しんでほしいとお話しいただきました。 小泉昭男氏(造園家) 「答えより問いを探して」との考え方から、草木や虫、鳥などの自然環境を子どもたちが楽しく学んでいけるように、子どもの視線や感覚にもとづいて、園庭づくりをされています。 園庭を通して季節を感じ、生き物に出会うこと。五感を研ぎ澄まし、そこから得た経験が、その後の育ちや学び重要であること。子どもたちにとって、管理された環境よりも、多様性のある自然が保証された遊びの場こそが子どもの心や体を豊かに育んでいくとお話しいただきました。 後半は、会場からの質疑応答・ディスカッションが行われ、子どもに対しての大人のあり方について、意見が交わされました。 外から見ると参加していないように見えても、他の子どもが遊ぶ様子を見て自分も参加している気持ちをもっており、「楽しい」という気持ちがそこには存在するとの意見がありました。 子どもは未熟であるために、大人主導の保育となりがちですが、子どものペースを知ると、子どもがよく見えるので、子ども主体の保育が必要であると結びました。 子どもの世界を考える貴重な機会になり、大変有意義なシンポジウムとなりました。 16時からは、会場を食堂棟に移して「情報交換会」を行い、シンポジストを含む全ての参加者の方に交流していただきました。 途中、本学の発展にご尽力いただきました冬木学園の理事や同窓会長、栄誉教授・名誉教授から、開学に至る経緯や学園への思いや激励の言葉等をいただき、教職員は建学の精神のもと一丸となって次の10年に向かって教育を進めていく決意を新たにしました。 2003年の開学当初、1学部2学科200名の入学生でスタートした畿央大学ですが、現在は2学部5学科2研究科1専攻科1別科にまで成長し、7,000名以上の卒業生が社会で活躍しています。 そして、今年4月には、畿央大学付属広陵こども園を開設し、212名の園児を迎えることができました。 これもひとえに、皆さまのご支援とご厚情の賜と深く感謝し、今後とも畿央大学および畿央大学付属広陵こども園に、さらなる温かいご支援とご協力をお願いいたします。 畿央大学開学20周年特設サイト 畿央大学付属広陵こども園ホームページ
2023.06.02
脳卒中患者の不整地歩行の特徴ー生体力学的パラメータと筋活動の変化~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中患者は、中枢神経系の損傷によりさまざまな歩行障害を有します。特に、不整地を含む屋外の地域社会での歩行は困難となる場合があり、結果として社会参加が妨げられ、生活の質に不利益をもたらします。畿央大学大学院博士後期課程 乾 康浩 氏 と 森岡 周 教授ら は、脳卒中患者の不整地歩行の特徴を検証しました。脳卒中患者は不整地歩行中に、歩行安定性の低下、立脚期の股関節最大伸展角度の低下、遊脚期のヒラメ筋活動時間の増加を示すことを明らかにしました。この研究成果はGait and Posture誌(Characteristics of uneven surface walking in stroke patients: Modification in biomechanical parameters and muscle activity)に掲載されています。 研究概要 脳卒中患者は、中枢神経系の損傷により歩行障害を有し、屋外の地域社会での歩行が困難になります。これは、社会参加を妨げ、生活の質の低下にもつながります。屋外環境のなかでも、不整地は摂動の予測が困難であり、適応性が低下した脳卒中患者では特に難しくなることが予想されます。そのため、リハビリテーション専門家にとって、脳卒中患者の不整地歩行の特徴を捉えることは必要です。一方で、現在までに、脳卒中患者が人工芝を歩行する際の変化は検証されているが、予測困難な摂動が生じる不整地での特徴を検証した報告は見当たりません。畿央大学大学院 博士後期課程 乾 康浩 氏、森岡 周 教授ら の研究チームは、予測困難な摂動が生じる不整地路を作製し、脳卒中患者の不整地歩行中の歩行速度、体幹の加速度、麻痺側の関節運動、および筋活動の特徴を分析しました。その結果、脳卒中患者は不整地歩行中に、歩行安定性の低下、立脚期の股関節伸展低下、遊脚期のヒラメ筋活動時間増加を示すことを明らかにしました。本研究は、健常者と比較した脳卒中患者の予測困難な摂動が生じる不整地歩行中の特徴を明らかにした初めての研究です。 本研究のポイント ■ 脳卒中患者の不整地歩行の特徴を自作の不整地路を用いて評価した。 ■ 脳卒中患者は、不整地歩行中に安定性の低下、立脚期股関節伸展の低下、遊脚期ヒラメ筋活動時間の増大を示すことが明らかとなった。 研究内容 脳卒中患者は、中枢神経系の損傷により歩行障害を有し、屋外の地域社会での歩行が困難になります。これは、社会参加を妨げ、生活の質の低下にもつながります。屋外環境のなかでも、不整地は摂動の予測が困難であり、適応性が低下した脳卒中患者では特に難しくなることが予想されます。そのため、リハビリテーション専門家にとって、脳卒中患者の不整地歩行の特徴を捉えることは必要です。本研究では、予測困難な摂動が生じる不整地での脳卒中患者の特徴を調べることを目的とし、自作の不整地路(図1)を用いて年齢を一致させた健常高齢者との違いを検証しました。 図1.作成した不整地路 © 2023 Yasuhiro Inui 実験中、歩行速度、歩行安定性を評価するための立脚期と遊脚期に分けた3軸の体幹の加速度のRoot Mean Square、麻痺側下肢の最大関節角度、麻痺側下肢の立脚期と遊脚期に分けた平均筋活動および筋活動時間を測定しました。その結果、歩行速度は健常者と違いは見られないものの、歩行安定性は立脚期と遊脚期のすべての軸において脳卒中患者で低下していました。さらに、脳卒中患者の特徴として、立脚期股関節伸展角度の低下、遊脚期ヒラメ筋活動時間の増大が見られました(図2)。 図2.平地および不整地歩行中の健常者と脳卒中患者の群×路面の交互作用の結果 (a) 左右軸方向の体幹加速度のroot mean square (RMS); (b) 立脚期の股関節最大伸展角度; (c) 遊脚期のヒラメ筋活動時間 研究グループは、この結果のうち、歩行安定性の低下と立脚期股関節伸展角度低下に関しては、不整地歩行中に運動制御が困難になった結果と考えています。一方で、遊脚期ヒラメ筋活動時間の増大に関しては、脳卒中患者の歩行時の衝撃吸収のための代償戦略であることが知られており、不整地で生じる大きな衝撃に対応するために代償戦略を強めたと考察しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究成果は、予測困難な摂動が生じる不整地での脳卒中患者の歩行の特徴を明らかにしており、リハビリテーション専門家が脳卒中患者の屋外歩行の問題を考える際に着目すべき点を示しています。今後は、脳卒中患者内での特徴の違いや縦断的な経過を調査する必要があります。 論文情報 Yasuhiro Inui, Naomichi Mizuta, Kazuki Hayashida, Yuki Nishi, Yuki Yamaguchi, Shu Morioka Characteristics of uneven surface walking in stroke patients: Modification in biomechanical parameters and muscle activity Gait and Posture ,2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 センター長/教授 森岡 周 博士後期課程 乾 康浩 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.05.23
【開学20周年記念】12/3(日)理学療法学科「PTの歩き方~PTが輝けるNew Spotを見つける旅~」を開催します。
本学科のほとんどの卒業生は、理学療法士として国内の医療・介護施設で働いていることと思います。一方、その資格を活かして多様な働き方で活躍している卒業生もいます。そこで今回、本学20周年企画として、起業家、政治家、機器開発、研究、そして海外の病院などで活躍している卒業生(5人)から、臨床以外の分野で道を切り開く際の具体的な方法、苦労、やりがいなどについて講演していただき、多様な働き方について学ぶ機会を設けました。是非、多くの卒業生、在学生の皆さんに参加していただき、これからの働き方の参考になればと思います。 ご家族(お子さま連れ)でも参加可能で、近くにキッズルームを準備して講演会を中継します。 なお、講演会の終了後に卒業生(大学院修了生を含む)を対象に懇親会を企画しています。ビンゴゲームではApple Watchやタブレット等の豪華賞品を用意しています。教員も多数参加予定ですので、奮ってご参加ください。 開催日 2023年12月3日(日) 内容 【第1部】 13:00~14:50 講演会「PTの歩き方 〜PTが輝けるNew Spotを見つける旅〜」 ※どなたでもご参加いただけます 中村 潤二氏(西大和リハビリテーション病院/1期生) 吉田 李沙氏(salon Fluffy代表/1期生) 上野 友也氏(サンライズジャパン病院:カンボジア/2期生) 中田 耕平氏(株式会社P5代表、津市議会議員/4期生) 吉村 和也氏(株式会社エクサウィザーズ/5期生) 【第2部】15:00~16:30 懇親会 ※懇親会については卒業生のみ(院修了生を含む)となりますので予めご了承ください 会場 講演会:畿央大学 P201教室 懇親会:R棟1F食堂 畿央カフェ「カトレア」 ※ご来場の際は、公共交通機関をご利用ください。 本学へのアクセス 対象 畿央大学卒業生・在学生、教員、一般の方 参加費 無料 申込方法 事前予約制です。申込フォームに必要事項を入力してお申し込みください。 申込フォーム 問合せ先 畿央大学20周年記念事業係 電話:0745-54-1601 E-mail:20th@kio.ac.jp 畿央大学開学20周年記念事業のご案内
2023.05.22
7/29(土)ニューロリハビリテーション研究センター主催「リハビリテーショントークセッション」を開催します。
2023.04.17
疼痛促通系に対する高強度経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科
ヒトには痛みの感じる程度を調節する機能が中枢神経系にあり、痛みを抑える「疼痛抑制系」と痛みを促通する「疼痛促通系」があります。痛みが強く感じる患者さんは、「疼痛促通系」の機能が亢進しているという報告があり、「疼痛促通系」の亢進に対して治療をすることが効果的と考えられます。経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)は鎮痛目的の電気刺激療法であり、近年では強い強度でTENSをする高強度TENSという方法が報告されており、強い鎮痛効果が報告されています。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口述弘助教と庄本康治教授、畿央大学大学院健康科学研究科客員研究員 徳田光紀は疼痛促通系に対して高強度TENSの効果を検証しました。この研究成果は、Neuroscience Letters誌(High Intensity-Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation Does Not Inhibit Temporal Summation of the Nociceptive Flexion Reflex)に掲載されています。 研究概要 我々は生理学的かつ客観的な方法で「痛みの程度」を計測できるNociceptive Flexion Reflex (NFR)と「疼痛促通系」を計測できるTemporal summation -Nociceptive Flexion Reflex (TS-NFR)を測定しました。すると、高強度TENSはNFRに対しては効果的でしたが、TS-NFRに対しては効果がありませんでした。この結果から、高強度TENSは鎮痛効果がありますが、「疼痛促通系」に対しては効果が少ないことが明らかになりました。 本研究のポイント ・高強度TENSは鎮痛効果を示すが、疼痛促通系には効果が少ない。 研究内容 健常人31名を高周波数TENS群、コントロール群に分類して、TS-NFR、NFRに対する効果を比較しました。高強度TENS群は1分間、対象者が耐えられる最大強度でTENSを実施し、コントロール群は1分間安静にしました。すると、高強度TENS群はNFRに対して効果を示しましたが、TS-NFRには効果がありませんでした。コントロール群はTS-NFR、NFRともに効果を示しませんでした。 ▲TS-NFR、NFRの測定場面 本研究の臨床的意義及び今後の展開 高強度TENSは鎮痛効果がありますが、疼痛促通系が亢進している慢性疼痛の患者さんへの効果は少ない可能性が示唆されました。しかし、本研究は健常人を対象としているため、実際の疼痛患者さんでの検証が必要と考えています。 論文情報 Nobuhiro Takiguchi, Mitsunori Tokuda, Koji Shomoto. High intensity-transcutaneous electrical nerve stimulation does not inhibit temporal summation of the nociceptive flexion reflex. Neuroscience Letters. 29 May 2023 問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp
2023.04.06
感覚運動不一致によって経験する重だるさは痛みの予後と関連する~健康科学研究科
感覚運動の不一致とは、自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しないことを指します。この時に重だるさや不快感などの経験を生じることが報告されており、これが痛みに影響を与える可能性が示唆されています。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 松田総一郎さん と 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授 は、筋骨格系疼痛患者を対象に感覚運動不一致を誘発させる実験タスクを実施し、それによって生じる重だるさが筋骨格系疼痛患者の痛みを遷延化させることを明らかにしました。この研究成果はPain Research and Management誌(Perception of heaviness induced by sensorimotor incongruence is associated with pain prognosis)に掲載されています。 研究概要 骨折や組織損傷直後のギプス固定が、関節拘縮や筋力低下といった身体機能の制限に加えて身体知覚の異常を引き起こすことが報告されています。このような異常な身体知覚は、臨床現場で患者から「自分の手とは思えない」「自分の手に違和感や不快感がある」など様々な形で表現されています。このような異常な身体知覚は運動の意図と感覚フィードバックの不一致に起因すると考えられています。感覚運動の不一致とは自分の運動の意図と感覚フィードバックが一致しないことを指し、異常な身体知覚が生じることが知られています。例えば、四肢の動きと視覚フィードバックの間の空間的な不一致によって、奇妙さや不快感、あるいは重さだるさなどが引き起こされることが報告されています。しかしながら、感覚運動の不一致による身体知覚の異常が痛みの予後に及ぼす影響についてはこれまで検討されていませんでした。畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 松田総一郎 さんと畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授 は、急性期の筋骨格系疼痛患者を対象に、感覚運動不一致を誘発する実験タスクを用いて、どのような種類の異常な身体知覚が痛みの予後に関与しているのか検証しました。その結果、急性疼痛の重症度そのものは痛みの遷延化を予測できませんでしたが、感覚運動の不一致によって生じる重だるさが痛みを遷延化させやすいことが明らかとなりました。 本研究のポイント ・感覚運動の不一致によって生じる異常知覚が、急性期の筋骨格系疼痛患者の痛みの予後に与える影響を検証した。 ・感覚運動の不一致によって生じる重だるさが、痛みの遷延化に影響を与えることが明らかとなった。 研究内容 感覚運動の不一致を惹起するために、鏡を用いて実験を行いました。実験では患者に椅子に座ってもらい、上肢または下肢の間に鏡を設置しました(図1)。 図1.鏡を用いた感覚運動の不一致を惹起するための環境設定 椅子に座った患者の上肢または下肢の間に鏡を置いて一致条件と不一致条件を実施しました。一致条件は健側と患側を同時に屈伸運動させる条件、不一致条件は健側と患側で異なるタイミングで屈伸運動をさせる条件として、各条件ともに20秒間実施しました。 このとき、患者は鏡に写る健側の上下肢を見ることができましたが、患側の上下肢を見ることができないように設定しました。その状態で、鏡に写る健側の上下肢を見ながら健側と患側を同時に動かす一致条件と異なるタイミングで動かす不一致条件をそれぞれ20秒間実施しました。各条件を実施した後に、異常知覚(痛み、不快感、奇妙さ、重だるさ、温度の変化、四肢が増えた感じ、四肢が無くなった感じ)に関するアンケートに回答してもらいました。 外傷もしくは手術後2ヶ月以内に1回目の実験を行い、その2週間後、4週間後の合計3回実施しました。その結果、不一致条件によって生じやすい異常知覚は痛み、重だるさ、奇妙さの3項目でした。そこで、構造方程式モデリングを用いて、痛みの強さと異常知覚の関係を検討しました(図2)。その結果、 初期の痛みの強さは予後に関係しませんでしたが、不一致条件で経験する重だるさという異常知覚が2週間後と4週間後の痛みを予測することが明らかとなりました。これは、異常な身体知覚の中でも重だるさという経験が痛みに影響を与えることを示唆しています。 図2.痛みの強さと異常知覚を用いた構造方程式モデリング 初期の痛みの強さではなく、不一致条件で経験する重だるさが2週間後と4週間後の痛みの強さを予測することが明らかとなりました。 本研究の臨床的意義及び今後の展開 本研究では、「急性期の筋骨格系疼痛患者の痛みの遷延化」に感覚運動の不一致によって経験する重だるさが関わることを明らかにしました。今後は、筋骨格系疼痛患者の運動機能も含めてより詳細な評価を行い、感覚運動の不一致によって生じる異常知覚の影響を検証する必要があります。 論文情報 Soichiro Matsuda, Michihiro Osumi Perception of heaviness induced by sensorimotor incongruence is associated with pain prognosis. Pain Research and Management ,2023 問合せ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 准教授 大住倫弘 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp
2023.04.03
令和5年度入学式を行いました。
2023(令和5)年4月3日(月)、健康科学部338名、教育学部210名、健康科学研究科36名(修士課程32名、博士後期課程4名)、教育学研究科修士課程3名、助産学専攻科9名、臨床細胞学別科11名、あわせて607名の新しい畿央生が誕生しました。 学部は午前10時、大学院・専攻科・別科は午後3時からと2部にわけて入学式を行いました。 午前の学部生入学式では、全学生が冬木記念ホールに入っての開催は4年ぶり(2019年3月以来)となり、保護者はその様子を各学科の中継会場から視聴・参加する形で行われました。 冬木正彦学長が学科ごとに入学許可を行い、つづく学長式辞では、”建学の精神である「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を大切にしながら充実した4年間を過ごしてほしい”という激励のメッセージがありました。 新入学生代表として現代教育学科1回生 石田 若葉さんから入学生宣誓が、在学生代表として現代教育学科3回生 岡 未知さんから歓迎のことばがあり、閉式となりました。 式典後は、冬木記念ホールで新入生へオリエンテーションを、また保護者に対しては、各教室にて各学科の教員から挨拶をさせていただきました。 当日は晴天に恵まれ、あたたかい一日となりました。オリエンテーション後は、フォトスポットや入学式の看板の前で撮影する姿もあれば、先輩からクラブ・サークルの紹介を受けている姿が見られました。 午後3時からは大学院健康科学研究科、教育学研究科、助産学専攻科および臨床細胞学別科の入学式が冬木記念ホールにて行なわれました。入学許可の後、学長、研究科長・専攻科長・別科長から祝辞をいただきました。 新入生の皆さん、入学おめでとうございます!皆様のこれからの学生生活が実りのあるものになるよう教職員一同全力でサポートしていきます。
2023.03.16
令和4年度卒業証書・学位記・修了証書授与式を行いました。
2023年3月16日(木)、雲一つない快晴のもと、「令和4年度卒業証書・学位記・修了証書授与式」が冬木記念ホールで挙行されました。 健康科学部324名(理学療法学科71名・看護医療学科90名・健康栄養学科95名、人間環境デザイン学科68名)、教育学部現代教育学科198名、大学院23名(健康科学研究科修士課程21名、教育学研究科修士課程2名)、助産学専攻科10名、臨床細胞学別科6名の合計561名が門出の日を迎えました。 冬木記念ホールに卒業生・修了生全員が集まるのは2019年3月以来、実に4年ぶりです。保護者の皆さまも構内に人数限定で入っていただき、式典前からキャンパスのあちこちで心を弾ませながら写真撮影や受付をする様子が見られました。 午前10時に開式し、国歌清聴の後、壇上で学科・大学院・専攻科・別科ごとの代表者に卒業証書・学位記・修了証書が授与されました。引き続いての学長表彰では、特に優秀な成績を修めた各学科学生1名が紹介されました。 冬木正彦学長による式辞、それに続く植田政嗣健康科学部長・健康科学研究科長・臨床細胞学別科長と前平教育学部長・教育学研究科長の祝辞では、学生生活の大半がコロナ禍となったことを労いながら、建学の精神「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を実践して社会で活躍すること、困った時にはいつでも母校に帰ってきてほしいと力強い激励のメッセージが贈られました。 その後、在校生を代表して現代教育学科3回生の岸維織さんが送辞を、卒業生を代表して現代教育学科4回生の荒井斗子さんが答辞を述べました。最後に学歌をそれぞれが清聴して、厳かな雰囲気でおこなわれた式典は、幕を閉じました。 式典終了後は各学科ごとにわかれ、卒業生・修了生一人ひとりに卒業証書・修了証書が手渡されました。各会場では準備した動画をみたり、ビンゴや抽選会で盛り上がったりと趣向を凝らした企画に楽しむ様子もあれば、先生と一緒に記念撮影をしたり…と、全員で過ごす最後のひとときを楽しみました。 各学科での式典後は、学科やゼミ、クラブ・サークル等で共に大学生活を過ごした仲間との写真撮影。弾けるような笑顔と笑い声が華やかにキャンパスを彩ります。 卒業生・修了生の皆さん、本当におめでとうございます。いつでも母校に戻ってきてください!今年は開学20周年ということで、卒業生を対象にしたイベントも開催予定です。 皆さんのご活躍を教職員一同、心から祈っています。 【関連記事】 令和3年度卒業証書・学位記・修了証書授与式を行いました。
2023.02.21
慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科
腰痛をもつ日本人は38%程度と推定されており、社会経済に与える影響は少なくありません。腰痛治療の一つに、弱い電流を流して痛みを軽減する経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)がありますが、TENSの慢性腰痛の運動時痛に対する効果を検証した報告は限られていました。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口 述弘助教、庄本 康治教授と高松 昇三(健康科学研究科博士課程2年/オムロンヘルスケア株式会社)らは、腰部運動時痛に対してTENSの効果を検証し、周波数を変調したTENSによって慢性腰痛の運動時痛が軽減することを明らかにしました。この研究成果は、物理療法科学誌「慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験」(https://doi.org/10.57337/jjeapt.21-21)に掲載されています。 研究概要 エビデンスレベルが高いといわれているランダム化比較試験という研究デザインを用いて検証しました。腰部に周波数を変調した(刺激の感覚が変わる)TENSを実施すると、プラセボTENS(電気を流していると説明しているが実際は流していない)と比較して、腰部運動時痛が低下しました。この結果から、周波数を変調したTENSを実施することで、慢性腰痛の運動時痛が軽減されることが明らかになりました。 研究のポイント ・慢性腰痛の運動時痛はTENSで軽減する。 ・周波数を変調させた方が、運動時痛が低下した。 研究内容 慢性腰痛患者80名を高周波数TENS群、変調周波数TENS群、プラセボTENS群に分類して、腰部運動時痛に対して効果を比較しました。腰部運動時痛は、腰部の運動テストでよく用いられる指床間距離を測定し、その時の痛みを運動時痛として測定しました。痛みの程度はVisual Analogue Scale (0 – 100で痛みの程度を示す。0: 全く痛くない 100: 想像できる最悪の痛み)を用いて測定しました。変調周波数TENSはプラセボ経皮的電気刺激と比較して、運動時痛が低下しました。 HF-TENS: 高周波数TENS MF-TENS: 変調周波数TENS 本研究の臨床的意義及び今後の展開 TENSは副作用がほとんどなく、近年では操作が簡単な家庭用の機械も販売されています。本研究の結果から、動作中の痛みを軽減できる可能性が示唆されました。今後は、日常生活場面で経皮的電気刺激を併用し、日常生活動作での腰痛が軽減するかを明らかにする必要があります。 論文情報 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/advpub/0/advpub_21-21/_article 問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp
2023.02.08
感覚運動レベルにおける行為主体感の頑健性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
行為/運動主体感(sense of agency:SoA)とは「このボールを蹴っているのは私だ」とか「このお皿を割ったのは私だ」など、日常生活で起こる行為の結果を自分に帰属させる主観的な意識のことです。感覚・運動に障害が生じると予測と実際の感覚が一致しないことがあり、それにより行為時の快適さが失われ不快感を訴えるケースがみられます。これは後遺症によって生涯にわたって頑健(つまり「適応できない」)に継続するのかは不明でした。畿央大学健康科学部理学療法学科4回生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授と共同で、実験的に感覚予測と結果を一致あるいは不一致させる群を設け、一定の期間それに暴露させることで行為主体感が変化するかを調べました。その結果、短期間では行為主体感は変化しない、すなわち頑健であることが明らかになりました。この研究成果はBehavioral Sciences誌(Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term)に掲載されています。 研究概要 行為/運動主体感(sense of agency)とは「ある運動・出来事を引き起こしている、生み出しているのは自分自身である」という主観的な制御の感覚・意識のことです。行為主体感は感覚予測と実際の感覚結果が一致すれば起こり、それらが一致しなければ低下あるいは喪失すると考えられています。例えば、神経疾患、統合失調症、自閉症スペクトラム障害では行為主体感の低下や喪失が報告されています。こうしたケースは、行為のたびに予測と結果に不一致が生じ、自らの行為への不快感につながることが示唆されます。脳卒中後の運動障害は残りやすく、行為に対する不快感が頑健(すなわち「非適応的」)に継続する可能性が考えられます。しかしながら、一定の期間、感覚予測と実際の感覚結果の不一致に暴露されることによって、行為主体感が適応的に変化するか否かは不明でした。また、行為主体感に影響する抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏などの心理状態の個人差がその適応性に影響するかは不明でした。そこで畿央大学健康科学部理学療法学科4年生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授が開発した実験課題(PCカーソルの自己制御比を実験的に操作することで行為主体感の変化を検出するもの)を用いて、一定期間、感覚予測と実際の感覚結果の一致(一致群)あるいは不一致(不一致群)の暴露による行為主体感の変化を捉えました。その結果、一致群と不一致群の行為主体感の変化に有意な差はみられず、行為主体感が適応的でなく頑健である可能性を示しました。また一致群のみ、暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と関係することがわかりました。 本研究のポイント ■ 感覚予測-結果の不一致への暴露によって行為主体感は適応的に変化するかを調べた。 ■ その結果、感覚運動水準においては、行為主体感は適応的でない(頑健)であることがわかった。 研究内容 33名の健康な実験参加者を感覚予測と実際の感覚結果の一致群(一致群)と不一致群に分けました。MATLABとPsychtoolbox (MathWorks, USA) を使用して、行為主体感を検出する課題を作成しました。参加者はタッチパッドを使用してPC画面上のドットを4秒以内に自由に操作するように指示されました。なお、ドットの動きを自分の操作0~100%の中で10%ごとにランダムに反映させました。試行数は1試行4秒間の操作を計110試行(0~100%を10%ごとに各10回)とし、「“ドットの動きに違和感があっても”自分が動かしていると感じれば Yes と答える」よう参加者に要求し、個人の行為主体感の閾値を算出しました。図1は実験課題の例ですが、タッチパッドを使用して画面上のドットを操作した際、そのドットが自分によってコントロールできていると感じているかどうかが評価されました(図は100%または50%コントロールの例)。不一致群では算出した個人の閾値より10%低い値を100試行、一致群では完全に自分の動きで100試行実施させました。 図1.行為主体感を捉える実験課題 参加者はタッチパッドを使用して PC 画面上のドットを操作し、4 秒以内にドットを自由に操作するように指示されました。そのドットをコントロールできていると感じるかどうかで行為主体感が評価されました。図は100%または50%コントロールの例を示しています。 行為主体感の曖昧さの指標である傾きと50%の確率で「Yes」と回答する主観的等価点(Point of Subjective Equality:PSE)をロジスティック回帰曲線を使用して算出しました。また、参加者の抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏を各種質問紙を用いて調べました。行為主体感を表すロジスティック回帰曲線の傾き、PSEに群間差はありませんでした(図2)。つまり感覚予測と感覚結果の不一致への非適応性が示され、感覚運動課題を用いた感覚運動レベルにおいては、不一致を受け入れることが難しいことが示唆されました。一方で、一致群のみで暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と有意な相関関係を示しました。この結果は、抑うつ傾向の場合、感覚予測と結果の一致経験によって行為主体感を向上させる可能性が示唆されました。しかし、長期にわたる感覚予測と結果の不一致の暴露の影響は不明なままです。今後は、長期間の暴露による思考の変化といった認知レベルが感覚予測と結果の不一致といった感覚運動レベルにどのように影響するかを調べる必要があります。 図2.行為主体感の変化 行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配 ( A ) とPSE ( B ) の群別の結果(平均 ± 標準偏差)を表します。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではありませんでした。Congruent group(一致群)、Incongruent group(不一致群) 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究における感覚予測と結果の不一致の暴露プロセスは、脳卒中後の片麻痺プロセスを想定しており、学習された不使用の原因に接近する可能性があると予想しています。一方、感覚予測と結果が一致する課題は抑うつ傾向を改善させる選択肢となる可能性が示唆されました。今後は、感覚運動水準の課題に文脈や思考など認知水準の手続きを加え、柔軟に適応できるかどうかを調べる必要があります。 論文情報 Mizuho Mishima, Kazuki Hayashida, Yoshiki Fukasaku, Rento Ogata, Kazuki Ohsawa, Ken Iwai, Wen Wen, Shu Morioka Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term Behavioral Sciences, 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp


