理学療法学科
2022.02.22
腰痛を有する就労者の体幹運動制御障害には恐怖心が影響する~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
腰痛による労働能力の低下には、作業関連動作中に生じる体幹の運動制御の変調が影響すると言われています。しかしながら、このような体幹の運動制御障害が、どのような要因によって引き起こされているのかは明らかにされていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏 と 森岡 周 教授らは、腰痛を有する就労者を対象に作業動作中の体幹の運動パターンと痛み関連因子の評価を行い、体幹の運動制御障害には“恐怖心”が影響することを明らかにしました。 この研究成果は、BMC Musculoskeletal Disorders誌(Task-specific fear influences abnormal trunk motor coordination in workers with chronic low back pain: A relative phase angle analysis of object-lifting)に掲載されています。 研究概要 作業関連動作時において、腰痛は体幹の運動制御障害を引き起こします。その特徴としては、上部体幹と下部体幹の同位相による運動パターン(上部体幹と下部体幹の運動が時空間的に一致した状態)が挙げられます。この運動パターンは腰部負荷に悪影響を及ぼし、やがては労働能力の低下をもたらしますが、それがどのような要因で引き起こされるのかは明らかにされていませんでした。 畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏、森岡 周 教授らの研究チームは、三次元動作解析装置を用いて重量物を持ち上げる際の体幹の運動パターンの分析と痛み関連因子の評価を行い、両者の関係性を詳細に分析しました。その結果、動作課題を遂行する際に生じる特異的な恐怖心によって、作業関連動作中の上部体幹と下部体幹の同位相による運動パターンが引き起こされることが明らかとなりました。 本研究のポイント ■ 腰痛を有する就労者を対象に、重量物を持ち上げる際の体幹の運動制御障害に影響する要因を分析した。 ■ 動作課題中に生じる恐怖心によって、作業関連動作中の上部-下部体幹の同位相による運動パターンが引き起こされることが明らかとなりました。 研究内容 本研究の対象は、腰痛のない就労者と腰痛のある就労者としました。三次元動作解析装置を用いて、床に置かれた重量物を持ち上げる動作における体幹の運動パターンを定量的に計測しました。身体各部位に貼付したマーカーの位置情報から、上部体幹と下部体幹の一致度を算出しました。あわせて、痛み関連因子に関するアンケート評価を実施し、動作課題中に生じた痛み・不快感・痛みの予測・恐怖心の程度も評価しました。 分析の結果、最も重い重量物を持ち上げる条件における「重量物を把持して持ち上げる場面」の上部体幹と下部体幹の一致度が腰痛群では高いことが明らかになりました(図1)。 図1.腰痛群と対照群における上部-下部体幹運動の一致度 また、この同位相による運動パターンに影響する要因を明らかにするために、階層的重回帰分析を用いて関係性を分析しました。その結果、同位相による運動パターンに影響する要因として、「動作課題中に生じた恐怖心」が抽出されました。 つまり、動作課題中に生じる恐怖心によって、作業関連動作中の上部-下部体幹の同位相による運動パターンが引き起こされることが明らかとなりました。つまり、同位相による運動パターンは痛み関連恐怖によって引き起こされる回避行動そのものと言え、それによって上部-下部体幹の運動の自由度を制限してしまうことが示唆されました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 作業関連動作時の上部体幹と下部体幹の同位相による運動パターンは腰部負荷に直接的に悪影響を及ぼし、やがて労働能力や労働生産性を低下させるため、適切なリハビリテーション介入が求められます。本研究の結果、体幹の同位相による運動パターンを是正するためには、作業遂行時に特異的に生じる恐怖心を軽減する介入が必要であると考えられました。今後は、運動恐怖を減ずる介入によって運動制御障害が改善するかどうかを縦断的研究によって検証していく予定です。 論文情報 Ren Fujii, Ryota Imai, Hayato Shigetoh Shinichiro Tanaka, Shu Morioka Task-specific fear influences abnormal trunk motor coordination in workers with chronic low back pain: a relative phase angle analysis of object-lifting. BMC Musculoskeletal Disorders 2021 関連する論文 藤井 廉, 今井 亮太, 西 祐樹, 田中 慎一郎, 佐藤 剛介, 森岡 周. 運動恐怖を有する腰痛有訴者における重量物持ち上げ動作時の運動学的分析. 理学療法学. 2020; 47 (5): 441-449. Ren Fujii, Ryota Imai, Shinichiro Tanaka, Shu Morioka. Kinematic analysis of movement impaired by generalization of fear of movement-related pain in workers with low back pain. PLoS ONE. 2021; 16 (9): e0257231. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 藤井 廉 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2022.02.18
中枢性感作症状と痛みの関係性が対照的なクラスターの特徴~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
痛みは組織や神経の損傷に伴い生じることがほとんどですが、ときに、その損傷の程度から予想されるよりも広い範囲で強い痛みが生じることや、疲れやすさや不眠、記憶力の低下、気分の不調といった様々な症状(中枢性感作関連症状)が出現することがあります。畿央大学大学院 修士課程 修了生の古賀 優之 氏(協和会病院)と森岡 周 教授らは、中枢性感作関連症状を呈しながらも、痛みが対照的な集団(クラスター)が存在することを特定し、それぞれのクラスターの特徴を検証しました。この研究成果は、Scientific Reports誌(Characteristics of clusters with contrasting relationships between central sensitization-related symptoms and pain)に掲載されています。 研究概要 中枢性感作関連症状の評価指標であるCentral Sensitization Inventory(CSI)は、慢性疼痛と関連することは多くの研究で示されているものの、痛みの強度や痛覚閾値との関連が未だ不明瞭であるという指摘がされています。 本研究ではCSIと痛みの強度が共に軽度、中等度、重度といったCSIと痛みが関連する3つのクラスターと、CSIが高値でありながらも痛みの強度は軽度であるといったCSIと痛みが関連しない特徴的な1つのクラスターが存在することを突き止めました。また、興味深いことに、CSIが共に高値でありながら痛みの強度が対照的、すなわち重度あるいは軽度のクラスターがあり、これらは心理的因子や中枢性感作関連症状の発現状況にほとんど違いがありませんでした。つまり、今回評価した尺度において、痛みの強度が異なること以外では類似していることがわかりました。 本研究のポイント ■ CSIと痛みの強度は概ね関連しているものの、一部、CSIが高値でありながらも痛みが軽度で、それらが関連しない集団(クラスター)が存在することがわかりました。 ■ CSIが共に高値でありながら痛みが対照的(重度/軽度)な2つのクラスター(C3、C4)の比較では、それぞれの関連症状にほとんど差がみられず、心理的因子(破局的思考、不安・抑うつ)においても差がないことがわかりました。 研究内容 146名の有痛患者を対象に、短縮版CSI(CSI9)と様々な性質の痛み強度を点数化するShort Form McGill Pain Questionnaire – 2(SFMPQ2)を評価しました。これら二つの質問紙の評価結果に基づいて、それぞれが似た性質を持つ集団を抽出するクラスター解析を実施したところ、CSI9が共に高値でありながら痛み強度が対照的(重度/軽度)な二つのクラスター(C3、C4)の存在を特定できました(図1)。 図1.中枢性感作関連症状(CSI9)と痛み(SFMPQ2)の評価に基づくクラスター分析の結果 C1–3はCSI9とSFMPQ2に相関関係がみられましたが、C4ではそれらに相関関係がみられませんでした。また、C3とC4はCSI9が共に高値でありながら、SFMPQ2が対照的(重度/軽度)な関係でした。 CSI9(中枢性感作関連症状)の各項目をクラスター間で多重比較したところ、C3とC4では、「起床時の疲労感」の項目で差があるものの、その他の項目においては差がみられませんでした(図2)。また、C3とC4では、痛みの破局的思考や不安・抑うつの指標(PCS4、HADS)にも差がみられませんでした。 図2.クラスター間におけるCSI9各項目(それぞれの中枢性感作関連症状)の多重比較結果 本研究の臨床的意義および今後の展開 痛みの強い患者が疲れやすさや不眠を訴える場合(C3にあたる症例)、医療従事者はそれらの症状も含めて注意深く対応を検討します。その一方で、痛みがさほど強くないにもかかわらず、そのような関連症状を訴える場合(C4にあたる症例)、それらはしばしば不定愁訴として捉えられ、軽視されがちです。しかしながら、このような関連症状は運動の阻害因子となり、痛みも改善しにくくなる可能性があるため、適切な対処を行っておく必要があります。 今後は、これらの中枢性感作関連症状を有するクラスターにおいて、実際に痛みが遷延化しやすいのか否かについても縦断的研究によって検証していく予定です。 論文情報 Masayuki Koga, Hayato Shigetoh, Yoichi Tanaka, Shu Morioka. Characteristics of clusters with contrasting relationships between central sensitization-related symptoms and pain Sci Rep 12, 2626 (2022). なお、本研究は厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 「種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明と患者ケアの向上を目指した複数疾患領域統合多施設共同疫学研究」の支援(研究課題番号 20FC1056)を受けて実施されました。 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修了生 医療法人協和会 協和会病院 古賀 優之(コガ マサユキ) E-mail: kogahlio@gmail.com 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2022.02.14
近隣のウォーカビリティが低い地域の女性は社会参加が少ないことを明らかに~広陵町×畿央大学KAGUYAプロジェクトでの2750名の調査結果から
徒歩で出かけられる先が少ない地域の女性は社会参加が少ない 地域在住高齢者における近隣のウォーカビリティと社会参加との関連性:KAGUYAプロジェクトの横断研究から~理学療法学科・看護医療学科・ヘルスプロモーションセンター わが国において、健康日本21(第2次)では、健康寿命の延伸に加え、健康格差*の縮小も目標として掲げられています。健康寿命の延伸とは、つまり要介護状態にならないように予防することで、今までに要介護状態になるリスクに関連する要因についての研究は多く行われてきました。一方、健康格差について、都市部・農村部での比較や都道府県・市町村間での結果は示されてきましたが、格差の縮小のためには、それぞれの市町村内のより小地域での検討が必要であると考えられます。また、介護予防には社会参加が重要になり、近年、社会参加と近隣のウォーカビリティ**との関連が指摘されているものの、市町村内での地域差を検討したものは少ないのが現状です。 本学理学療法学科の松本大輔 准教授、高取克彦 教授、看護医療学科の山崎尚美 教授、文鐘聲 准教授らは、地域在住高齢者を対象にした調査を行い、女性においてWalkScore®を用いた近隣ウォーカビリティが社会参加と関連することを明らかにし、Geriatrics & Gerontology International誌(IF:2.730)に発表しました。 *健康格差:地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差 **ウォーカビリティ:簡単に言うと、歩きやすさ。単に歩道が整備されていることを指すだけでなく,その地域で歩いて買い物ができるなどの日常生活の過ごしやすさやウォーキングなど健康行動を促進されることも含まれる。 研究概要 A町在住の高齢者2,750名を調査し、WalkScore®***を用いた近隣のウォーカビリティと社会参加の関連について検討しました。また、性別でその関連に違いがあるかを分析しました。 ***WalkScore®(WS):住所を入力すると,Google マップ上で近隣の施設(商業施設・公園・学校など)までの距離をもとに,徒歩でアクセスできる度合いを100点満点で評価する。50点未満では、徒歩30分圏内に出かける先が少なく、車が必要になる地域とされる。 本研究のポイント 高齢者に対する調査によって、年齢、社会経済状況や疾患、日常生活機能を調整しても、近隣のウォーカビリティが低いとスポーツ、趣味などの社会参加は、男性では有意差は認められないものの、女性で約20%有意に低いことが明らかとなりました。 図1 ウォーカビリティ高い地域と低い地域での社会参加割合の比較 男女とも、ウォーカビリティが低い地域に住んでいる方は高い地域に比べ、社会参加者の割合が有意に少ない(図1)。 図2 性別ごとの社会参加とウォーカビリティが低い地域との関連(有病割合比) 関連する要因として年齢、社会経済状況や疾患、日常生活機能を調整しても、スポーツ、趣味などの社会参加は、男性では有意差は認められないものの、女性で約20%有意に低いことが明らかとなりました。(図2)。 本研究の意義および今後の展開 本研究は高齢者の社会参加と近隣のウォーカビリティの関連を小地域で示した数少ない研究です。ウォーカビリティが低い地域に住んでいる女性は社会参加が少ないということが明らかになりました。このような地域に特化した社会参加への支援を含むまちづくりが必要であると考えられます。今後はより地域施策に還元できるような研究に発展させていきたいと思います。 謝辞 研究にご協力いただきました住民の皆様,役場の方々に感謝申し上げます。 この事業は、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成27 年度~平成31 年度)「ソーシャル・キャピタル創出とヘルスケアデータ一元化による地域包括ケアシステム研究拠点の形成」の助成を受けて実施されました。 論文情報 Matsumoto, D, Takatori, K, Miyata, A, et al. Association between neighborhood walkability and social participation in community-dwelling older adults in Japan: A cross-sectional analysis of the keeping active across generations uniting the youth and the aged study. Geriatr. Gerontol. Int. 2022; 1– 10. 第63回日本老年医学会学術集会で大学院生と教員が発表!~理学療法学科・健康科学研究科 雑誌「老年内科」で本学と生駒市・広陵町とのコホート研究が紹介されました~理学療法学科 問い合わせ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 准教授 松本大輔 d.matsumoto@kio.ac.jp
2022.02.07
脳卒中患者における歩行の関節運動学的特徴と筋シナジーパターン~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
脳卒中患者の歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響すると言われています。しかし、個々の症例毎に観察すると、異常な筋活動パターンは歩行時の立脚相または遊脚相において確認されます。畿央大学大学院 博士後期課程の水田 直道 氏と森岡 周 教授らは、歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性について検証しました。この研究成果は、PLOS ONE誌(Merged swing-muscle synergies and their relation to walking characteristics in subacute post-stroke patients: An observational study)に掲載されています。 研究概要 多くの脳卒中患者は歩行能力が低下し、日常生活や屋外での移動時にさまざまな困難さを経験します。歩行能力の低下には下肢筋活動パターンの異常が影響すると言われています。歩行時における異常な筋活動パターンは立脚相(歩行中に足が床面についている状態)または遊脚相(歩行中に足が床面から離れて前に振りだす時期)において確認され、運動学的特徴においても症例ごとに異なるパターンを示すことは臨床上明らかですが、それらの関係性は分かっていませんでした。 博士後期課程の水田 直道さんらは、歩行時における筋活動の異常パターンを筋シナジーの側面からサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性を明らかにしました。立脚期における筋シナジーの異常パターン(単調な筋シナジー制御)がみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少した一方で、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少していることが分かりました。加えて、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、麻痺側下肢を大きく振り出す(屈曲角度の増大)ように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することが分かりました。 本研究のポイント ■ 立脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少。 ■ 遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少。 ■ 遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善する。 研究内容 介助なく歩行可能な脳卒中患者を対象としました。対象者は3つの歩行条件(快適歩行:cws、麻痺側下肢大股歩行:p-long、非麻痺側下肢大股歩行:np-long)で10m歩行テストを行いました。p-longおよびnp-long条件では、対象者にそれぞれの下肢を前に大きく振り出しながら歩くよう指示しました。cws条件における麻痺側下肢の筋シナジーの併合パターンに基づき、3つのサブタイプを特定しました。 図1:歩行時における筋シナジーの併合パターン 快適歩行条件における麻痺側下肢の筋シナジーの併合パターンに基づき、3つのサブタイプを特定しました。(A)歩行時における個々の筋活動波形を示します。(B)併合している筋シナジー波形と、それに含まれる筋肉の重み付けを示します。サブタイプ1では立脚前半と立脚後半、サブタイプ2では遊脚後半と立脚前半、サブタイプ3では遊脚前半と遊脚後半における筋シナジーが併合していることが確認できます。 図2:歩行条件間における運動学的パラメータおよび筋シナジーの複雑さ cws条件における下肢屈曲角度はサブタイプ3が減少している一方で、下肢伸展角度はサブタイプ1において減少していました。歩行条件間における筋シナジーの異常パターンは、サブタイプ3においてのみp-long条件で複雑に表現されました。 図3:歩行速度と筋シナジーの複雑さの関係性 全症例における歩行速度と筋シナジーの複雑さは有意な負の相関を示しました。一方で、サブタイプごとにこれらの相関関係を確認すると、サブタイプ2、3においてのみ有意な相関を示しました。 本研究の臨床的意義および今後の展開 この研究では、歩行時における筋シナジーの異常パターンからサブタイプを特定し、サブタイプの歩行特性について検証しました。結果として、筋シナジーの異常パターンは3つのサブタイプに分類され、それぞれのサブタイプに応じて快適歩行時の運動学的パラメータは異なっていました。遊脚期における筋シナジーの異常パターンを示すサブタイプにおいては、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することが分かりました。今後は、サブタイプの神経基盤を明らかにするとともに、筋シナジーの異常パターンがどのような回復過程を辿るか調査する予定です。 論文情報 Naomichi Mizuta, Naruhito Hasui, Yuki Nishi, Yasutaka Higa, Ayaka Matsunaga, Junji Deguchi, Yasutada Yamamoto, Tomoki Nakatani, Junji Taguchi, Shu Morioka. Merged swing-muscle synergies and their relation to walking characteristics in subacute post-stroke patients: An observational study. PLOS ONE 17 (2), e0263613, 2022 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp 博士後期課程 水田 直道(ミズタ ナオミチ) 医療法人尚和会 宝塚リハビリテーション病院 E-mail: peace.pt1028_@_gmail.com(※@の前後の_を削除してお送りください)
2021.12.20
固定物とヒトへの軽い接触による立位姿勢制御の特徴~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
手すりや壁などの固定物だけではなく、ヒトに軽く触れるだけでも立位姿勢が安定します。しかし、このような接触する対象物の違いによって生じる姿勢制御の特徴は明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 石垣 智也 客員研究員(現:名古屋学院大学 講師)と畿央大学大学院 修了生 山道 菜未 氏(現 福岡リハビリテーション病院)、森岡 周 教授らは、固定物に触れると立位姿勢が安定化し姿勢動揺が高周波化するのに対し、ヒトに触れる場合には立位姿勢の安定化が固定物の場合に比べ少ないものの、姿勢動揺の高周波化が生じにくいことを明らかにしました。また、低周波成分の姿勢動揺で生じる二者間の姿勢協調が、高周波化を生じさせにくくする要因である可能性を示しました。 この研究成果はHuman Movement Science誌(Characteristics of postural control during fixed light-touch and interpersonal light-touch contact and the involvement of interpersonal postural coordination )に掲載されています。 研究概要 ヒトの立位姿勢は様々な感覚情報を用いて制御されています。この中でも、触覚が姿勢制御に与える影響を調べるために、指先等を用いて対象物に軽く接触(1 N未満)する「ライトタッチ」という方法が用いられています。一般的にライトタッチを固定物(例:手すりや壁)やヒトに対して行うと立位姿勢の安定化が得られますが、これら姿勢制御特徴の違いは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 石垣 智也 客員研究員らは、固定物とヒトに対するライトタッチの姿勢制御特徴を比較するために4つの立位条件(図1)で姿勢動揺を計測し、姿勢動揺の大きさや周波数、二者間での姿勢協調(自身と相手の姿勢動揺が類似すること)を分析しました。結果、固定物へのライトタッチ(固定物ライトタッチ)で立位姿勢動揺の減少と高周波化が認められ、ヒトへのライトタッチ(対人ライトタッチ)では立位姿勢動揺の減少が固定物の場合に比べて少ないものの、高周波化が生じにくいことが示されました。また、対人ライトタッチでは0。4 Hz以下の低周波成分で二者間の姿勢協調が認められるのに対し、0.4 Hzより大きな高周波成分では姿勢協調が認められませんでした。これら結果より、固定物ライトタッチでは自身の姿勢動揺を動きの無い対象物を基準に制御するため、姿勢動揺が大きく減少するとともに高周波化が生じると解釈されます。一方、対人ライトタッチでは動いている対象物(ヒト)を基準に自身の姿勢動揺を制御するため、姿勢動揺の減少が得られつつも高周波化が生じにくいと考えられます。低周波成分の姿勢動揺はヒトの重心の動きを反映するため、対人ライトタッチによる二者間での姿勢協調が高周波化を生じさせにくくする要因と考えられます。 本研究のポイント ■ 固定物へのライトタッチでは、立位姿勢の安定化が得られ姿勢動揺は高周波化する ■ ヒトへのライトタッチでは立位姿勢の安定化は固定物の場合に比べると少ないが、姿勢動揺の高周波化は生じにくい ■ ヒトへのライトタッチでは姿勢動揺の低周波成分において二者間の姿勢協調が生じる 研究内容 健常若年者を対象に閉眼での継ぎ足立位姿勢を基準とし、非接触条件、固定物(安定した台)へのライトタッチ条件、自身より安定したヒトに接触する対人ライトタッチ条件、自身と同様に不安定なヒトに接触する対人ライトタッチ条件の4条件を設定し(図1)、各条件の姿勢動揺(足圧中心)を計測しました。そして、姿勢動揺の大きさと主たる周波数(平均周波数)、低周波成分(≤0.4 Hz以下)と高周波成分(>0.4 Hz)における二者間での姿勢協調(相互相関係数)を解析し、条件間の比較を行いました。 図1:設定した立位条件 NT: no touch, FLT: fixed light touch, SILT: stable interpersonal light touch, UILT: unstable interpersonal light touch その結果、固定物ライトタッチでは立位姿勢動揺の減少と高周波化が認められ、対人ライトタッチ条件では立位姿勢動揺の減少が固定物ライトタッチに比べて少ないものの、不安定な対人ライトタッチ条件の左右動揺を除いて高周波化が生じにくいことが示されました(図2)。そして、高周波化の示されなかった安定した対人ライトタッチ条件と不安定な対人ライトタッチ条件の前後動揺では、低周波成分で高い姿勢協調が認められたのに対し、高周波成分では姿勢協調に条件の差を認めませんでした(図3)。 図2:立位姿勢動揺の平均周波数 図3:周波数成分別における二者間の姿勢協調 本研究の臨床的意義および今後の展開 リハビリテーションの臨床場面では、対象者の動作介助や運動療法のために支持物(手すりや杖など)や療法士の徒手的な身体接触が用いられます。本研究成果は、これら方法の違いが対象者の姿勢制御に与える影響について、基礎的知見からの考察を提供するものとなります。具体的には、姿勢動揺の減少は姿勢の安定化を意味するものの、他の研究知見を踏まえると、姿勢動揺の高周波化は固定化された自由度の低い制御様式とも解釈できます。そのため、姿勢の安定化を目的にライトタッチを用いる場合であったとしても、対象者や状況によっては用いる方法を使い分ける必要があるかも知れないという仮説を提唱するものとなります。 論文情報 Ishigaki T, Yamamichi N, Ueta K, Morioka S. Characteristics of postural control during fixed light-touch and interpersonal light-touch contact and the involvement of interpersonal postural coordination. Hum Mov Sci. 2021;81:102909. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 現:名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師 石垣 智也(イシガキ トモヤ) Tel: 0745-54-1601(畿央大学) Fax: 0745-54-1600(畿央大学) E-mail: ishigaki@ngu.ac.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.12.10
脳卒中患者における“急激な”体重減少は“慢性”疾患における悪液質基準と関連している~健康科学研究科
悪液質とは、がんや心不全などの慢性疾患に関連して生じる予後不良な複合的代謝異常症候群であり、筋肉量の減少を特徴とし、顕著な臨床的特徴は体重減少といわれています。一般に、脳卒中患者は急性期に体重減少が生じやすく、この体重減少は予後不良因子であることが報告されていますが、その原因については十分に解明されていません。畿央大学大学院健康科学研究科修士課程の山本実穂氏と庄本康治教授、野添匡史准教授(甲南女子大学)、吉田陽亮氏(奈良県西和医療センター)らは、脳卒中患者に生じる急激な体重減少は悪液質の診断基準と関連があることを明らかにしました。本研究結果は,脳卒中患者に生じる体重減少に悪液質が関連している可能性を示唆するものであり、脳卒中患者の体重減少予防のための治療方法の確立に寄与する内容といえます。この研究成果は、Nutrition誌に掲載されます。 研究概要 悪液質の主な症状である体重減少は脳卒中において生じやすく、特に脳卒中発症後間もない急性期において生じやすいことが知られています。そこで本研究では、脳卒中患者における急性期での体重の変化と、悪液質の診断基準とに関連があるか否か、前向きの観察研究を実施することで検討しました。 研究内容 脳卒中発症後、研究期間内に急性期病院に入院した155名の患者を対象に、急性期病院入院時及び退院時に体重を測定し、体重の変化率を求めました。また、急性期病院退院時に悪液質診断基準の評価(図1)を行い、この5項目の基準のうち3項目以上の基準を満たした場合、悪液質基準を有すると判断しました。そして、体重変化率と悪液質基準の有無に関連性があるか否かを分析しました。 【図1:本研究で用いた悪液質の診断基準(Evansらの分類)】 データ分析の結果、155名中30名(19%)の方が入院期間に5%以上体重が減少しており(体重減少群)、体重減少を認めなかった125名(体重安定群)よりも悪液質基準を満たす割合が多いことが分かりました(体重減少群=18名(60%) vs体重安定群=28名(22%))。また、悪液質基準は体重変化率に影響を与える他の要因(重症度やエネルギー摂取量、嚥下能力や悪液質の原因になる他疾患の保有など)で調整した上でも、体重変化率に影響を与えることが明らかになりました(表1)。 【表1:悪液質基準と体重変化率の関係】 BMI: body mass index, NIHSS: National Institute of Health Stroke Scale, FOIS: Functional Oral Intake Scale 研究の臨床的意義および今後の展開 慢性疾患で生じるとされている悪液質の診断基準が、急性期の脳卒中患者における体重減少に関連しているということは、脳卒中患者で生じる体重減少に悪液質が関与している可能性を示唆するものです。本研究結果から、脳卒中患者で生じる体重減少に対して、悪液質の影響を考慮し早期診断・早期介入することで、生命予後や生活の質改善に寄与すると考えられます。これらの因果関係を明らかにするためには、今後さらなる研究が必要と考えられます。 論文情報 Miho Yamamoto, Masafumi Nozoe, Rio Masuya, Yosuke Yoshida, Hiroki Kubo, Shinichi Shimada, Koji Shomoto Cachexia criteria in "chronic" illness associated with “acute” weight loss in patients with stroke Nutrition December 2021, 111562 問い合わせ先 甲南女子大学 准教授 畿央大学健康科学研究科 客員研究員 野添 匡史(ノゾエ マサフミ) nozoe@konan-wu.ac.jp 畿央大学健康科学研究科 教授 庄本 康治(ショウモト コウジ) k.shomoto@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.12.06
地域在住障害高齢者におけるバディスタイル介入が運動継続に与える効果~健康科学研究科
身体活動は障害者や高齢者であっても健康状態の維持・改善に有効であることが知られていますが、障害高齢者の多くは十分な運動をしていないとされています。そのため、運動継続を促進できるような取り組みが必要となります。 最近の研究では、バディスタイル(二人1組で行う介入方法)の身体トレーニングと栄養教育介入で、フレイル、栄養状態、身体活動量が改善したことが報告されています。しかし、これらの研究では、トレーニングを受けた健常者のボランティアが介入をしており,実施が容易ではありませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 氏と高取克彦 教授 らは、地域在住障害高齢者同士のバディスタイル介入が12週間の在宅運動プログラムにおける運動継続性に効果があるかどうかを検証することを目的に本研究を行いました。この研究成果はClinical Rehabilitation に掲載されています。 研究概要 通所介護事業所を利用している障害高齢者65名に12週間の在宅運動プログラムを実施してもらいました。その際、無作為にバディスタイル介入群と対照群に分けて実施し、バディスタイル介入を追加することで運動継続と身体・心理機能に効果があるかどうかを分析しました。 本研究のポイント ■障害高齢者同士のバディスタイル介入は12週間の在宅運動プログラムにおける運動継続性向上に効果があることが分かりました。 研究内容 データ解析の結果、バディスタイル介入群は対照群と比較して9~12週の期間において運動プログラムを実施した日数が有意に多くなっていました。両群で運動プログラム終了後に膝関節伸展筋力、4m歩行時間、5回立ち上がり時間が改善していました。 本研究の意義および今後の展開 今回の研究はバディスタイル介入が運動継続に与える効果を検討したものです。障害高齢者同士でバディを組むため、実施が容易で効率的に運動継続を促せるという点に意義があると考えています。本研究は運動の実施頻度を評価指標にしましたが、現在は運動の実施時間やバディスタイル介入終了後の持続効果についての報告をまとめています。また運動継続の予測因子として、アパシーに着目した解析も行っており、これらの結果も報告する予定としています。 論文情報 Hiromichi Takeda, Katsuhiko Takatori Effect of buddy-style intervention on exercise adherence in community-dwelling disabled older adults: A pilot randomized controlled trial Clinical Rehabilitation, 2021.
2021.11.30
第7回畿央大学シニア講座「腰痛を正しく知ろう」をオンライン開催しました。
令和3(2021)年11月24日(水)、畿央大学では地域のシニア世代の方々を対象に、「健康」と「教育」について学びを深めるための「畿央大学シニア講座」を開催いたしました。 今回で7回目となった本講座ですが、前年度に引き続き今年度もZoomアプリを用いた「オンライン」での開催となりました。 「腰痛を正しく知ろう-コロナ禍で乱れがちな生活習慣が腰痛を増悪させている!?-」をテーマに、家にこもりがちで生活習慣が乱れやすいコロナ禍だからこそ正しく腰痛を理解していただくべく、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの大住倫弘准教授が講師となり参加者の皆さまに最新の知見を学んでいただきました。 まず、画面上で資料を見ていただきながら、「腰痛のメカニズム」や「痛み」についての講義を行いました。痛みが出たときや痛みが長引くときにどう対処することが良いのか、自身の腰痛の状態についてどのように把握すれば良いのかなど、参加者の方にも分かりやすいように専門の知識を丁寧にお伝えしました。また、生活習慣がどのように痛みに影響を及ぼすのかという解説も行い、コロナ禍だからこその注意点などもお伝えしました。 また講義だけではなく、解説をまじえながら腰痛に効果的なストレッチもレクチャーしました。事前に収録をした動画を使用し、ストレッチのポイントなどを解説しながら、参加者の方に実践していただく時間も取り、講座の後も継続的に実践ができるよう工夫を行いました。 ▼腰痛に効果的な体操をレクチャー すべての講義が終了した後はZoomアプリのQ&A機能を使い、質疑応答の時間を設けました。「振動するタイプのマッサージ器を使用するのは大丈夫でしょうか。」「高齢者向けの膝に痛みがあるときに有効なストレッチはありますか」等の多くの質問があり、その一つ一つに大住准教授が口頭で回答していきました。 講座終了後、参加者の方からは、「とてもよい講座に参加できてありがたいことだと思いました。この講座はこれまでにもあったようで、参加できなかったことを残念に思うくらいでした。」「講師の先生の説明も分かりやすく、また実際のストレッチのコーナーなどが良かったと思います。」といった内容についての感想や、「初めてのオンライン講座受けましたが、講座の内容を何回でも振り返りたいです。」といった、オンライン講座に対しての好評なご感想・ご要望も数多くいただきました。 今回もオンラインでの開催となりましたが、このような形での情報発信、地域貢献も大変有効だということを実感することができました。引き続き、畿央大学では今後も社会情勢に寄り添いながら、様々な形で地域貢献ならびに社会貢献に取り組んでまいります。 【関連記事】 第6回畿央大学シニア講座 第5回畿央大学シニア講座 第4回畿央大学シニア講座 第3回畿央大学シニア講座 第2回畿央大学シニア講座 第1回畿央大学シニア講座
2021.11.22
【プレイバック畿央祭2021】フォトレポートを掲載しました。
2年ぶりに開催された畿央祭が終了して、今日でちょうど1か月。 実行委員211名と畿央生がつくりあげた学園祭の雰囲気を、70枚以上の写真でフォトレポートします! 2021年10月23日・24日の2日間、対面・オンライン併用で開催。2日間でのべ1400人を動員しました。 来年はさらにグレードアップした畿央祭をつくりあげてくれることを期待しています! 【関連リンク】 畿央祭実行委員ブログ 畿央祭YouTubeチャンネル(実行委員運営) 第19回畿央祭・ウェルカムキャンパスを開催しました。
2021.11.10
雑誌「老年内科」で本学と生駒市・広陵町とのコホート研究が紹介されました~理学療法学科
雑誌「老年内科」10月号にて「日本における高齢者コホート研究の成果と現状」が特集されました。コホート研究は共通の特性を持つ集団を追跡し、その集団からどのような疾病が発生し、また健康状態が変化したかなどを観察して、各種要因との関連を明らかにしようとする研究です。 その中で、奈良県コホートスタディとして生駒市で実施中の後期高齢者コホート研究の成果と広陵町と本学の共同プロジェクトであるKAGUYAプロジェクト(文部科学省 私立大学研究基盤形成事業:研究代表 文鐘聲)が紹介されました。 本特集では日本を代表する高齢者コホート研究であるNILS-LSAやJAGES、柏スタディなどが紹介されており、多くが関東圏の研究で占められています。国立の研究センターや大学、また医科大学を中心とした研究成果が並ぶ中で、関西圏かつ理学療法学科の教員による研究が紹介されていることは、ある意味異色と言えます。 本学で行われた研究はコホートの規模やデータ追跡期間、データ解析手法などにおいては他のビッグデータ研究には及びませんが、フレイル高齢者のステージ変化と関連要因1)、主観的年齢と健康度2)、より小地域別に着目した地域診断研究3)、高齢者の孤食問題4)など、独自の視点がオリジナリティを発揮しているものとなっています。 今後も、理学療法士の目線を活かしつつ地域高齢者の健康寿命の延伸,フレイル予防,地域包括ケアシステムの深化に有用な成果を出していきたいと考えています。是非ご一読頂ければと思います。 理学療法学科 教授 高取克彦 【関連リンク】 地域在住後期高齢者における新規要介護発生の地域内格差:4年間の前向きコホート研究 ~理学療法学科 平成30年度「広陵町・香芝市×畿央大学 介護予防リーダー養成講座」修了式を行いました。 「広陵町・香芝市×畿央大学 介護予防リーダー養成講座」を開講しました。 「広陵町・香芝市×畿央大学 介護予防リーダー養成講座」説明会が開催されました。 KAGUYAプロジェクト紹介リーフレット 広陵町×畿央大学KAGUYAプロジェクトfacebookページ 畿央大学ヘルスプロモーションセンター
2021.11.05
【スポーツリハ×スポーツ栄養】中日ドラゴンズのドラフト6位指名、福元悠真選手を科学的にサポート!
畿央大学は中日ドラゴンズドラフト6位指名の福元悠真選手(大阪商業大学4回生)とアドバイザリー業務委託契約を結び、スポーツリハならびにスポーツ栄養の面からアスリート支援を行うこととなりました。福元選手は奈良県出身で、高校時代に甲子園に3度出場。4番打者としてセンバツ優勝も経験しているパワーヒッターです。大学でも主将を務め、3回生の秋にはリーグ最優秀選手賞とベストナインを獲得している逸材ですが、怪我に苦しんだシーズンもありました。 理学療法学科の福本貴彦准教授は17年前から奈良県の高校野球に関わっており、福元選手とも面識がありました。今回のプロ野球入りを受け、年明けの入寮とキャンプインに向けて本学教員によるサポートによりプロアスリートになるための体づくりを行うことになりました。2021年10月27日(水)には本学で運動能力の測定やフィジカルチェック、栄養指導を受けました。 【理学療法学科 田平一行教授(専門:呼吸器リハ)からのアドバイス】 心臓や肺機能、体力を測定するために呼気ガス分析器というマシンを使った運動負荷試験を行いました。試験は自転車の負荷(抵抗)を少しずつ上げていき、漕げなくなるまで頑張ってもらい、体に取り入れる酸素の量(酸素摂取量)を測定します。私たちの運動のエネルギーは、ほぼ酸素を燃やして得ていますので、漕げなくなった時の酸素量(最大酸素摂取量)は体力の最も良い指標とされています。福元選手はこの値が一般の人よりも25%も高く、野球選手としてだけでなく体力も非常に優れていることが分かりました。運動負荷試験は体力の判定だけでなく、効果的な運動強度やトレーニングのターゲット(心臓、肺、筋肉等)を決定することにも利用できます。 本学の学生は200ワットくらいの負荷で漕げなくなるのですが、福元選手は300ワットを優に超えて、先生方を驚かせていました。ちなみに、マスクをつけて漕ぎ続けるこの試験は「今年で体力的に一番キツい」体験になったそうです。 【健康栄養学科 中谷友美講師(専門:栄養生理学)からのアドバイス】 現在の食生活について細かくヒアリングを行いながら、栄養面からアスリートの体づくりのアドバイスをします。怪我をしたことがきっかけで食事には気をつかい、大好きだというお菓子も我慢してきたストイックな福元選手も「管理栄養士から指導を受けるのは初めて」とのこと。中谷先生から「食べないと体重は落とせない」など目からウロコのアドバイスに、「めっちゃわかりやすいですね!」と感動されていました。「すぐ忘れてしまうので…」と即座にメモを取る向上心あふれる姿勢も印象的でした。今後は実際にとった食事を報告するなどして、継続的にアドバイスを受けコンディションやパフォーマンスの向上につなげていきます。 【理学療法学科 福本貴彦准教授(専門:運動器リハ・スポーツリハ)からのアドバイス】 普通に立った状態と、バッティングフォームでそれぞれ左右の足型をとりました。 足指握力も非常に強く、足型はしっかりとした土踏まずが観察できる、非常にきれいな足部形状をしていました。バッティングフォームになったとたんに重心位置が変化し、足指で地面をしっかり握っているのが観察されました。この足指の使い方でホームランが打てるのですね!来シーズンはナゴヤドームのバックスクリーンにたくさん打ち込んで欲しいものです。 福元選手からは「プロ入りしても怪我なく、一年間を通してプレイできるように引き続きトレーニングを行い、良い結果を出せるように頑張っていきたいです。」という力強いコメントをいただきました。 これらの測定値を科学的に分析し、弱点を強化しつつ、体への負担が少なく効率の良いトレーニング方法を継続的に指導していきます。強打者として期待されている福元選手が怪我や故障のないように体を整えプロ野球界で活躍してもらえるよう、チームKIOで一丸となって支援していきます! 【左から】中谷先生、福本先生、福元選手、田平先生 ※撮影時のみマスクを外しています。 【畿央大学のアスリート支援関連記事】 第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。 「広陵町チャレンジデー2016」に理学療法学科教員とTASKが協力! 認知症啓発の列島リレー「RUN伴」に参加・協力! 宇陀市連携「こどもウェルネス講演会」を開催しました。 広陵町連携 介護予防リーダー養成講座の取り組みが「奈良介護大賞2015」に選ばれました。 鳥人間コンテスト本番で京都大学”Shooting Stars”チームをメディカルサポート! 畿央の学びと研究産学連携 女性専用フィットネスクラブ業界NO.1"カーブス広陵"との共同研究2年目をスタート! 元全日本女子バレーボール監督「柳本晶一先生特別講演会」を開催しました。 鳥人間コンテスト本番出場で間寛平さんをメディカルサポート 関西中央高校応援プロジェクトがすすんでいます。
2021.11.05
理学療法学科6期生の同窓会を開催しました。
2021.11.04
大学院生の研究論文が国際誌「Physiotherapy Theory and Practic」に掲載されました~健康科学研究科
地域在住高齢者の円背姿勢と咳嗽力および呼吸機能の関係 誤嚥の直接的な防御機構は咳嗽(がいそう/せき)であるとされています。また、咳嗽力(せきの力)は加齢や呼吸機能、呼吸筋力と関連があることが報告されています。一方で高齢者の姿勢変化として代表的な円背姿勢は呼吸機能に影響を与えることが報告されていますが、咳嗽力との関係は明らかとなっていません。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程の武田広道氏と田平一行教授らは、①非円背高齢者と比較して円背高齢者では咳嗽力が低下する。②円背の重症度と咳嗽力、呼吸機能は関連している。という二つの仮説を検証することを目的に本研究を行いました。 ※この研究成果は「Physiotherapy Theory and Practice」に掲載されています。 この研究では地域在住高齢者に対して円背指数(図1)、咳嗽力、呼吸機能、呼吸筋力の評価を行い、円背姿勢と咳嗽力および呼吸機能の関係について分析を行いました。その結果、非円背高齢者と比較して、円背高齢者では咳嗽力、肺活量、呼気筋力、吸気筋力、胸郭拡張差で有意に低い値となっていました。また、円背の重症度と咳嗽力、呼気筋力、吸気筋力、胸郭拡張差には有意な相関関係がありました。さらに年齢と性別の要因を調整した後では、咳嗽力には肺活量や胸郭拡張差が関連していることがわかりました。 図1 円背指数 円背指数は第7頸椎から第4腰椎までの弯曲に沿って自在曲線定規をあて、その弯曲を紙にトレースし、第7頸椎から第4腰椎までの距離(L)と弯曲の頂点からLまでの距離(H)を計測する。そして、H/L×100(%)の式に代入することで算出される。 本研究の知見は、円背高齢者では咳嗽力が低下しており、誤嚥性肺炎のリスクが高いことを示しています。また円背が重症化していくにつれて咳嗽力が低下することから、円背姿勢を予防することが誤嚥性肺炎のリスク要因を減らす可能性を示唆しています。今後は咳嗽力に関連している要因への介入効果について検証していきたいと考えています。 健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 【論文情報】 Hiromichi Takeda, Yoshihiro Yamashina, Kazuyuki Tabira Relationship between kyphosis and cough strength and respiratory function of community-dwelling elderly Physiotherapy Theory and Practice, 2021.
2021.10.26
第28回日本物理療法学会で大学院生と卒業生が優秀賞・奨励賞を受賞!~健康科学研究科
2021年10月23日(土)・24(日)にオンラインにて開催された第28回日本物理療法学会学術大会で、本学理学療法学科卒業生の渡邉 梨佳さん(学研都市病院 理学療法士)が優秀賞、本学健康科学研究科修士課程の佐藤 雅浩さん(中洲八木病院 理学療法士)が奨励賞を受賞されました。共同研究者として本学健康科学研究科客員研究員の瀧口 述弘さん(学研都市病院 理学療法士)、徳田 光紀さん(平成記念病院 理学療法士)も名を連ねています。おめでとうございます! 優秀賞 渡邉 梨佳(学研都市病院 理学療法士)※畿央大学理学療法学科 卒業生 「変調正弦波運動経皮的電気刺激が健常人の実験的疼痛に与える影響について」 奨励賞 佐藤 雅浩(中洲八木病院 理学療法士)※畿央大学大学院 修士課程 「非術側高強度高周波TENS が大腿骨近位部骨折術後運動時痛に与える影響」 研究の詳細については抄録集(PDF)をご覧ください。 理学療法学科長 庄本教授コメント 渡邊さんは学生時代から優秀でしたが、職場の上司であり大学先輩でもある瀧口先生という良き指導者に恵まれ、臨床能力はもちろん、研究能力も成長させ、今後が益々楽しみです。 佐藤さんは、徳島県在住ですが、徳田先生、瀧口先生のICT利用も含めた指導も頂き、この1年で大変成長されました。お二人とも更なる目標をめざして努力して欲しいと思っています。
2021.10.22
理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」をアーカイブ配信します(在学生・卒業生限定)
11月末までの見逃し配信が決定! 理学療法学科卒業生のリカレント教育として、畿桜会(同窓会)主催で実施されている「理学療法特別講演会」。第14回となる今回のテーマは『2020東京五輪の活動報告~理学療法サービス部門としてのレガシー~』とし、TOKYO2020MEDスタッフとして参加した教員・卒業生3名を講師に招いて、2021年10月13日(水)19時30分よりオンライン開催されました。 都合が合わずに参加できなかったという声を受けて、講演会(約60分)のアーカイブ配信を行うことになりました。お申込みいただいた方(在学生・卒業生・修了生・教職員)にのみメールにて視聴用URLをお送りしますので、希望される方は下記からお申込みください。 ※視聴期間は11月末までです。 ※今後のイベント企画の参考とするため、視聴後にはアンケート回答をお願いいたします。 ※後半の座談会についてはアーカイブ配信の対象外となります。 ▶アーカイブ配信を申込む 【関連記事】 第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。 10/13(水)第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催します。 東京五輪に理学療法士として本学教員・卒業生4名が参加します。
2021.10.22
第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催しました。
東京五輪に参加した教員・修了生による講演+座談会を開催 講演会の【見逃し配信】も決定! 理学療法学科卒業生のリカレント教育として、畿桜会(同窓会)主催で実施されている「理学療法特別講演会」。第14回となる今回のテーマは『2020東京五輪の活動報告~理学療法サービス部門としてのレガシー~』とし、TOKYO2020MEDスタッフとして参加した教員・卒業生3名を講師に招いて、2021年10月13日(水)19時30分よりオンライン開催されました。 全国的な緊急事態宣言も解除され、徐々に新型コロナウイルス感染者数が減少傾向にありましたが、まだまだ油断のできないコロナ禍であることから、今年はzoomを利用したオンライン開催となりました。例年は卒業生以外の医療関係者にもご参加いただいておりますが、今回は学部学科を問わず、畿央大学の在学生・卒業生・修了生・教職員に限定して募集し、約80名の方々に参加いただきました。 同じく東京五輪にスタッフとして参加し、今回は視聴者として参加した理学療法学科5期生の楠元 史さんに、ご自身の体験も交えながらレポートしていただきます! (左から)唄さん、楠元さん、加納さん、福本先生 ■講演会について 今回はまず、TOKYO2020オリンピック・パラリンピック大会に参加した理学療法学科准教授の福本貴彦先生に、スタッフ選定から実際の現場での活動の様子についてお話いただきました。 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)の総会にて、56年ぶりに日本にオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まりました。その総会にて当時のジャック・ロゲ会長が「TOKYO」と書かれたカードを裏返す姿は、ニュースなどで多くの方々が目にした光景だと思います。 それからの日本は全世界を対象とした「お・も・て・な・し」の体制を整えてきました。しかし、2019年の1月から新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、その影響は歴史上初のオリンピックパラリンピックの1年延期というところまで及んできました。 世界最大級の大会が日本にやってくるということで、NOC(日本オリンピック委員会)/NPC(日本パラリンピック委員会)から、日本理学療法士協会へ理学療法士派遣の依頼がきて、実際の募集が始まったのは、コロナによるパンデミックが始まる前の2018年でした。 日本理学療法士協会経由で畿央大学関係者から今大会に参加させていただいたのは、福本先生・唄先生・加納先生・楠元(私)の4人でした。その他にも、この大会には畿央大学の卒業生が多く参加したとうかがっています。 スタッフ選定には研修会の参加の有無や英語能力などを問われた書類選考があり、そこから面談形式の選考を経てスタッフとして確定するという長い道のりとなりました。その中で、一番動揺したのが、面談の中で2分間自己紹介を英語でするというものでした。実際の面談が始まった時に告げられた項目ですので、英語で、、、しかも、2分間も自分一人で話し続けなければならないと思うと、逃げ出したくなる気持ちでしたが、なんとかやりきるしかないと腹をくくり、やりきった結果がスタッフとして選ばれるという喜びでした。 2019年の12月にスタッフに選ばれたという嬉しいニュースの一方で、本当にオリンピックパラリンピックが開催されるのかという不安もあったのを覚えています。その不安は的中し、1年延期となった2021年になっても活動日程や活動場所の連絡は一向に来ず、大会組織委員会も大変な時期を過ごしていたことが垣間見えました。 そのような状態でしたが、なんとかオリンピックが2021年7月23日に、パラリンピックが8月22日に開会式を迎えることができました。福本先生はオリンピックパラリンピック両方で修善寺分村(トラックサイクリング選手村)・パラリンピックの河口湖分宿(ロードサイクリング選手村)、パラリンピックの富士スピードウェイ(ロードサイクリング会場)という3つの場所で活動され、唄先生はオリンピックパラリンピック期間のほとんどを東京晴海にある選手村本村(よくテレビに映っていた選手村)で、加納先生はオリンピックパラリンピック両方で伊豆ベロドローム(トラックサイクリング会場)・パラリンピックの富士スピードウェイ(ロードサイクリング会場)の2つの会場で活動されていました。私はパラリンピックの河口湖分宿と東京の本村で活動させていただきました。 ■座談会 その後、座談会として同じくオリパラに参加された客員研究員(理学療法学科卒業生・大学院修了生)の唄大輔先生と加納希和子先生に加わっていただき、事前に皆さんからいただいた質問に答える形式で、オリパラでの貴重な経験や素敵な出会い、それぞれの現場での活動の内容をお話しいただきました。司会は同じく卒業生・修了生で現在は大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科で教員を務める山野宏章先生が担当。座談会にいる4名全員が福本ゼミということで、畿央大学らしい一体感の伝わる場になりました。 「選手村や会場ではどのようなことをしていましたか?」という質問が多く出ました。唄先生や加納先生も言及されていた通り、どこに問題があり、どうして欲しいのかということをしっかり聞き、物理療法や運動療法などを行い問題を解決していったり、スポーツの現場で遭遇するようなその場でのアクシデントに対応し、担架で運び出したり、手当てをしたりといった普段の臨床や普段のスポーツ現場での対応をそのまま行っていたという言葉がしっくりくると思います。 しかし、少し違っていたのが、そこには日本中から選出された理学療法士や世界の理学療法士またはドクターがいて、普段の臨床では使わない機器があって、アクシデントの大きさも生命に関わるようなものであった、ということでした。それはこのような大きな大会だからこそ体験できる・感じることができるものでした。 今大会に参加させていただいた中で、普段の臨床でみたことのないような疾患の方でも(特にパラリンピックにおいて)、その場にいる理学療法士が一丸となって意見を交わし、その選手に対して行える最善のリハビリを提供することや、世界の理学療法士と交流すること、世界的な大会に出場している選手でありながらも物理療法の機器やテーピング・リハビリといったものを一度も受けたことがないといった選手がいるということを経験し、現在の自分の理学療法士としての技量や未熟さに気がつくことができただけでなく、日本の理学療法士の立ち位置も確認することができたのではないかと思います。また、日本中から集められた理学療法士の精鋭と繋がれたこと、理学療法士だけでなく全世界の方に対して心からこの大会を楽しんでほしいという思いをもって参加していたスタッフに出会えたことなど、これらはすべて今後に繋がる大切なレガシー(財産・遺産)となっていくのではないかと感じています。 最後になりましたが、このような報告会の場を設けていただき、また、オリンピックパラリンピック参加あたり、参加の前から言語や実技研修会開催や広報の記事を掲載していただくなどサポートいただきました畿央大学や畿桜会、そして、学外におきましても所属病院はじめサポートいただきました皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。 理学療法学科5期生(2011年3月卒) 楠元 史 【アーカイブ(見逃し)配信開始のお知らせ】 都合が合わずに参加できなかったという声を受けて、講演会(約60分)のみアーカイブ配信を行うことになりました。お申込みいただいた方(在学生・卒業生・修了生・教職員)にのみ視聴用URLをお送りしますので、希望される方は下記からお申込みください。視聴期間は11月末までです。 ▶アーカイブ配信申込ページへ
2021.10.20
11/24(水)第7回畿央大学シニア講座「腰痛を正しく知ろう」を開催します。
今年のテーマは「腰痛とコロナ禍の生活習慣」! 本学では、地域の方々に生涯教育の場を提供することで、シニア世代の方を対象に「健康」と「教育」について学びを深めていただくシニア講座を毎年実施しています。昨年度に引き続き、コロナウイルス感染症の影響に鑑み、オンライン(Zoomウェビナー)で講座を開催することといたしました。インターネットに接続できる環境があれば、PC・タブレット・スマートフォン等からご視聴いただくことが可能です。多くの皆さまのご参加をお待ちしております。 開催日時 2021年11月24日(水) 13:00~14:00 開催方法 オンライン(Zoomウェビナー) ※視聴用のURLは後日お知らせします。 定員 100名(先着順) 参加費 無料 第6回 畿央大学 シニア講座 腰痛を正しく知ろう ~コロナ禍で乱れがちな生活習慣が腰痛を増悪させている!?~ 畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住 倫弘 腰痛を増悪させる要因にはどのようなものがあるでしょうか? 実は、睡眠、運動、食事などの基本的な生活習慣の乱れが 腰痛を増悪させることが明らかになっています。 当日は、腰痛が増悪しないために日常生活で どのようなことに気をつけるべきなのか、一緒に学びましょう。 そして、自宅でもできるストレッチを紹介しますので、 ご自身でも試して頂ければ幸いです。 【過去の開催レポート】 第6回畿央大学シニア講座 第5回畿央大学シニア講座 第4回畿央大学シニア講座 第3回畿央大学シニア講座 第2回畿央大学シニア講座 第1回畿央大学シニア講座 申込方法 【以下のいずれかの方法でお申し込みください。】 専用フォームによるお申し込みの場合 申込フォーム(下記QRコード) からお申込みください(メールアドレス必須)。 開催前に参加用URLを申込メールアドレス宛に送信します。 【QRコード】 E-mailでお申込みの場合 ① 氏名(フリガナ)、② 年齢、③ 住所、④ 電話番号(FAX番号)をご明記の上、info@kio.ac.jpまでお申し込みください。 お申し込み・受講にあたっての注意事項 ・本講座は、Zoom(アプリケーション)を利用したZoomウェビナーです。インターネット環境があればパソコン・スマートフォン・タブレットから受講することが可能です。 ・Zoomアプリは必ず最新版にアップデートの上ご覧ください。 ・受講者は顔や名前が他の受講者に表示されることはありません。 ・講座当日までに、お申し込みいただいたE-mailへ受講のためのURLをお送りします。 ・講座の映像・音声等を許可なくスクリーンショットや写真・動画・音声で記録すること、またそれらを第三者に共有・公開することを固くお断りいたします。 ・講座を受講するために必要なURL・パスワードを第三者に共有・公開することを固くお断りいたします。 ・お預かりした個人情報は、本講座に関わる業務にのみ使用します。また、予め本人の同意を得ることなく第三者に提供することはいたしません。 問い合わせ先 畿央大学教育推進部 シニア講座係 E-mail:info@kio.ac.jp TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600
2021.09.24
腰痛を持つ就労者における体幹運動障害は過去の痛み経験に由来する恐怖心が原因~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
腰痛を有する就労者は、作業動作中に体幹の可動域が狭くなることや、体幹の運動スピードが緩慢となることが明らかとされています。しかしながら、このような体幹の運動異常が、痛みやそれに関連する心理的要因などによって引き起こされているのかは明らかとされていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏 と 森岡 周 教授らは、腰痛を有する就労者を対象に作業動作中の運動異常と痛み関連因子の評価を行い、重量物を持ち上げる際の体幹の運動速度の低下は、動作中に生じる腰部痛が原因ではなく、過去に生じた痛みの経験によって引き起こされる運動への恐怖心が影響していることを明らかにしました。この研究成果は、PLOS ONE誌(Kinematic analysis of movement impaired by generalization of fear of movement-related pain in workers with low back pain)に掲載されています。 研究概要 腰痛を有する就労者は、重量物を持ち上げる動作などの作業において、体幹の可動域が狭くなることや、体幹の運動速度が低下するなどの特徴を有することが報告されています。この運動範囲の狭小化や運動の緩慢さは、「痛みを回避するための過剰な保護行動」と捉えられており、痛みが慢性化するに至る要因と考えられています。このような腰痛による体幹の運動障害には痛みに対する恐怖心や破局的思考など、様々な痛み関連因子が関与していると考えられていますが、これらの要因がどのように影響しているのかは明らかとされていませんでした。畿央大学大学院 博士後期課程 藤井 廉 氏、森岡 周 教授らの研究チームは、三次元動作解析装置を用いて重量物を持ち上げる際の体幹運動の分析と痛み関連因子の評価を行い、媒介分析を用いて運動と痛み関連因子の詳細な関係性を分析しました。その結果、腰痛によって重量物を持ち上げる際に体幹運動速度が緩慢となり、その緩慢さには動作中に腰部に生じる痛みでなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動への恐怖心が影響していることを明らかにしました。 本研究のポイント ■ 腰痛を有する就労者を対象に、重量物を持ち上げる際の体幹の運動障害と痛み関連因子の関係を詳細に分析した。 ■ 腰痛によって、重量物を把持して持ち上げる際の体幹伸展方向への運動速度が緩慢となっていた。 ■ 体幹の運動速度の低下には、動作中に生じる痛みではなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動恐怖が関与していることを示した。 研究内容 本研究は、腰痛のない就労者と腰痛のある就労者を対象にしました。三次元動作解析装置を用いて、床に置かれた重量物を持ち上げる動作を遂行している際の体幹運動を定量的に計測しました。身体各部位に貼付したマーカーの位置情報から、体幹の最大屈曲角速度と伸展角速度を算出しました(図1)。あわせて、「運動恐怖」、「破局的思考」、「不安」などの痛み関連因子の評価について質問紙を用いて行いました。 図1.体幹の運動学的分析方法 「重量物を取りにいく場面」に最大となる体幹屈曲角速度と「重量物を把持して持ち上げる場面」に最大となる体幹伸展角速度を算出した。 分析の結果、「重量物を取りにいく場面」の体幹屈曲角速度は両群で有意な差はありませんでしたが、「重量物を把持して持ち上げる場面」の体幹伸展角速度が腰痛群で低値を示しました。つまり、動作課題中に痛みを訴えた者は1名も存在しなかったにも関わらず、体幹の伸展運動が緩慢となっていたということです。 また、この体幹の伸展方向への緩慢さに影響する痛み関連因子を明らかにするために、媒介分析を用いた変数同士の関係性を分析しました。その結果、過去の痛み経験と体幹伸展角速度を媒介する因子として、「運動恐怖」が抽出されました(図2)。つまり、体幹の運動障害は、動作中に生じる痛みの強さによって影響されるのではなく、過去の痛み経験によって引き起こされる運動恐怖が原因であることが示唆されました。 図2.媒介分析の結果 過去4週間のうちに経験した痛みの強度と体幹伸展角速度は、運動恐怖によって媒介されることを示す(完全媒介モデル) 本研究の臨床的意義および今後の展開 就労者に生じる腰痛は、労働障害や労働生産性に悪影響を及ぼすため、その予防は喫緊の課題と位置付けられています。作業動作中に痛みがないにも関わらず、運動恐怖によって体幹の運動障害が出現している場合、いずれ腰痛の再発や遷延化を予兆するサインかもしれません。今後は、運動恐怖を減ずる介入によって運動障害が改善するかどうかを検証する予定です。 論文情報 Ren Fujii, Ryota Imai, Shinichiro Tanaka, Shu Morioka Kinematic analysis of movement impaired by generalization of fear of movement-related pain in workers with low back pain. PLOS ONE 2021 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 藤井 廉(フジイ レン) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600