理学療法学科
2021.07.05
パーキンソン病患者、高齢者の方向転換時の移動軌跡、足接地位置の特性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
方向転換を円滑に行うには、移動軌跡や足の接地位置を適切に制御することが重要であると考えられます。畿央大学の岡田洋平 准教授、福本貴彦 准教授、慶應義塾大学の高橋正樹 教授、同大学院 萬礼応(現筑波大学 助教)、京都大学の青山朋樹 教授らの研究グループは、レーザーレンジセンサー(慶応義塾大学 高橋正樹 教授、萬礼応ら 開発)を用いた高精度歩行計測システムにより、パーキンソン病患者と高齢者がTimed up and go test(TUG)で方向転換を行う際の移動軌跡と足接地位置の特性について調査しました。その結果、パーキンソン病患者は、TUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強い人ほど方向転換時の歩幅が低下することを明らかにしました。一方、高齢者はTUGにおいて歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示されました。 この研究結果はGait & Posture誌(Footsteps and walking trajectories during the Timed Up and Go test in young, older, and Parkinson’s disease subjects)に掲載されています。 研究概要 方向転換は、加齢やパーキンソン病により障害されます。高齢者は方向転換時の歩数が増加し、速度が低下し、転倒リスクの増加につながります。パーキンソン病患者は、方向転換の速度がより低下し、歩幅も低下することなどが示されています。円滑な方向転換には、移動軌跡や足の接地位置を適切に制御することが重要であると考えられますが、これまで高齢者やパーキンソン病患者が、方向転換時にどのように移動軌跡や足接地位置をとる傾向にあるのか、またその傾向は方向転換時の歩幅などにどのように関連するかについては明らかにされていませんでした。畿央大学の岡田洋平准教授、福本貴彦准教授、慶應義塾大学の高橋正樹教授、同大学院 萬礼応(現筑波大学助教)、京都大学の青山朋樹教授らの研究グループは、レーザーレンジセンサー(慶応義塾大学 高橋正樹 教授、萬礼応ら 開発)を用いた高精度歩行計測システムにより、高齢者やパーキンソン病患者がTimed up and go test(TUG)で方向転換を行う際の移動軌跡と足接地位置の特性について検討しました。 その結果、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強い人ほど方向転換時の歩幅が低下することを明らかにしました。また、高齢者はTUGにおいて歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示されました。 本研究のポイント ■ パーキンソン病患者と高齢者の方向転換時の移動軌跡と足接地位置を、レーザーレンジセンサーを用いた高精度歩行計測システムにより評価した。 ■ パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強いほど方向転換時の歩幅が低下することが明らかになった。 ■ 高齢者は、方向転換において歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示された。 研究内容 パーキンソン病患者、健常高齢者、健常若年者を対象に、レーザーレンジセンサー(LRS)を用いた高精度歩行計測システム(図1)により、TUGを行う際の脚移動軌跡と足接地位置について比較検証しました。従来のTUGは、椅子から立ち上がり、3m歩いて、180度方向転換し、戻ってきて、椅子に座るまでの所要時間を計測するのみでした。しかし、今回我々はLRSを用いた計測システムを利用することにより、肢移動軌跡や足接地位置に関する指標(マーカーと足接地位置の最短距離、スタート地点と足接地位置の最大前方距離、足接地位置の最大横幅など)や歩行の時空間指標(歩幅、歩隔、歩行率)もマーカーレスで計測可能でした。 図1 レーザーレンジセンサー(LRS)を用いた計測システム その結果、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強いほど、方向転換時の歩幅が低下することが明らかになりました。この結果は、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地してより鋭い角度で方向転換しようとすることにより、方向転換時の歩幅の低下の程度が大きくなる可能性を示唆しています。一方、高齢者はTUGにおいて歩隔が広く、方向転換時のスタート地点と足接地位置の最大前方距離が大きいことが示されました。この結果は、高齢者が方向転換時に歩隔を広くして、側方への動的不安定性を減少させるための代償戦略をとっていることを表している可能性があります。 図2 結果 a. 3群のTUGにおける移動軌跡および足接地位置の代表例 b. マーカーと足接地位置の最短距離の群間比較 *<0.05 c. マーカーと足接地位置の最短距離と方向転換時の歩幅の関連(パーキンソン病患者) 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究の結果、パーキンソン病患者と高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡の特性が初めて示されました。今回得られた知見は、パーキンソン病患者の方向転換時の歩幅の低下の助長を防ぐため、あるいは高齢者の動的不安定性を軽減するための運動療法や動作指導を行う上で有用であると考えられます。今後は、パーキンソン病患者や高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡に関連する要因や他疾患における傾向についても検証していきたいと考えています。 論文情報 Okada Y, Yorozu A, Fukumoto T, Morioka S, Shomoto K, Aoyama T, Takahashi M. Footsteps and walking trajectories during the Timed Up and Go test in young, older, and Parkinson’s disease subjects. Gait & Posture, 2021. 問い合わせ先 畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター 岡田 洋平(オカダ ヨウヘイ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp
2021.06.30
10/13(水)第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」を開催します。
2020東京オリンピック・パラリンピックの理学療法サービス部門で「TOKYO2020MEDスタッフ」として奈良県から参加する4名はすべて本学理学療法学科の教員・卒業生・修了生で、選手村や競技場の救護室に配置されてアスリート支援を行う予定です。理学療法学科の福本貴彦准教授はTOKYO2020MEDスタッフの一人として、準備の段階から、運営、現場対応まで関わっています。 そこで、畿央大学卒業生向けのリカレント教育(卒後教育)を兼ねて行われている「理学療法特別講演会」の14回目は、東京五輪のサポートに入る福本貴彦先生にオリンピック・パラリンピックでの経験をもとに、アスリート支援やスポーツ理学療法の発展性や面白さについてご講演いただきます。後半は福本先生とともに東京オリンピック・パラリンピックで活動した卒業生・修了生を交えて、座談会形式でざっくばらんに対話を楽しんでいただきます。ぜひたくさんの卒業生の皆さんに参加していただき、同窓生が少しでもつながり合って楽しめる時間にできれば幸いです。 なお、今年度は卒業生・在学生のみ(学科は不問)対象のオンライン開催とさせていただきます。あらかじめご了承ください。 日 時 2021年10月13日(水)19:30~21:00 【Zoomウェビナー】 講 演 2020東京五輪の活動報告 ~理学療法サービス部門としてのレガシー~ 講 師 ■福本 貴彦 理学療法士(運動器専門理学療法士) 畿央大学理学療法学科 准教授/畿央大学大学院 健康科学研究科 准教授 <学歴> 九州リハビリテーション大学校 理学療法学科 1995年卒業 九州工業大学 工学部 機械知能工学科 2003年卒業 和歌山県立医科大学大学院 医学研究科 修士課程 2007年卒業 <東京2020大会 活動内容> オリンピック・パラリンピック:選手村総合診療所(伊豆分村、河口湖分村) <社会活動> 奈良県理学療法士協会 スポーツメディカルサポート委員会 委員長 奈良県理学療法士協会 学校保健・特別支援担当委員会 委員長 奈良県教育委員会学校保健課題解決ワーキング会議構成員 講師 ・学校における運動器検診について実施要領などを選定 奈良県教育委員会運動部活動指導の工夫・改善支援事業 コンディショニング担当 ・依頼のあった学校の運動部でコンディショニング指導 ・自治体教育委員会からの依頼でスポーツテスト 斑鳩町教育委員会(中学生) 田原本町教育委員会(小学生・幼稚園児) 宇陀市教育委員会(幼稚園児) 三宅町教育委員会(幼稚園児) NPO奈良スポーツ育成選手を守る会 理事 ・奈良県下のスポーツ検診を実施 <メディカルサポート> 全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園大会) センバツ高等学校野球大会(春の甲子園大会) 奈良県高等学校野球連盟主催大会(春季・秋季近畿大会予選、夏大会予選) 奈良マラソン 鳥人間コンテスト(京都大学ShootingStars)パイロット指導 セレッソ大阪、ギラヴァンツ北九州、奈良クラブ、ポルベニル飛鳥、バンビシャス奈良も正式なスタッフにはなっていませんが、今も関わっています。 ■唄 大輔 理学療法士(運動器専門理学療法士) 社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション課 主任 畿央大学大学院 健康科学研究科 客員研究員 <学歴> 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 2008年卒業 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 2015年修了 奈良県立医科大学大学院 博士課程 2021年修了 <東京2020大会 活動内容> オリンピック・パラリンピック:選手村総合診療所(東京:晴海) パラリンピック:選手村総合診療所(静岡:河口湖) ■加納 希和子 理学療法士(スポーツ認定理学療法士、中級障がい者スポーツ指導員) 医療法人 勝井整形外科 畿央大学大学院 健康科学研究科 客員研究員 <学歴> 畿央大学理学療法学科 2012年卒業 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 2019年修了 <東京2020大会 活動内容> オリンピック・パラリンピック:自転車競技(トラック、ロード)の競技会場@静岡:伊豆ベロドローム、富士スピードウェイ 申込方法 下記URLより、お申込みください。卒業生・在学生のみ(学科は不問)対象 https://kiouniv.slc.page/forms/60e40b17a5539d002d318139/fields 受講料 無料 申込締切 2021年10月11日(月) 備考 Zoomを利用できる環境でご参加ください。 問合せ先 畿桜会事務局 (畿央大学 広報センター) TEL:0745-54-1603 FAX : 0745-54-1600 E-mail:dousoukai@kio.ac.jp
2021.06.23
慢性腰痛患者における歩行時の体幹運動制御は環境に依存する~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
慢性腰痛における物の持ち上げ動作時の体幹の運動学は既に明らかにされていますが、歩行時の体幹制御や、それが環境によって変化するのかは明らかにされていませんでした。畿央大学大学院神経リハビリテーション研究室 西 祐樹 氏(博士後期課程)、森岡 周 教授らは、慢性腰痛患者では歩行時の体幹の変動性や安定性が異常になり、それは日常生活環境でより顕著になることを明らかにしました。また、これらの制御異常は、痛みや恐怖、QOLと関連していることを示しました。この研究成果はJournal of Pain Research 誌(Changes in Trunk Variability and Stability of Gait in Patients with Chronic Low Back Pain: Impact of Laboratory versus Daily-Living Environments)に掲載されています。 研究概要 慢性腰痛患者では、立位や持ち上げ動作中に体幹の変動性や安定性が異常になることは既に明らかにされています。一方で、歩行中での体幹運動制御異常は明らかにされていませんでした。加えて、腰痛の運動制御の研究は、整えられた実験環境のみで調査されており、実際に腰痛が発生する日常生活環境では計測されてきませんでした。畿央大学大学院神経リハビリテーション学研究室 西 祐樹 氏(博士後期課程)、森岡 周 教授らの研究チームは、無線加速度計を用いて、慢性腰痛患者における『外来リハビリ環境』および『日常生活環境』に応じた歩行制御の変化を調査しました。その結果、慢性腰痛患者では歩行時における体幹の変動性や安定性が異常になっていることが明らかになり、それは日常生活環境でより顕著になることが分かりました。また、これらの日常生活環境での歩行制御の変化は、痛みや恐怖、QOLと関連していることも明らかになりました。 本研究のポイント ■ 慢性腰痛患者における外来リハビリ環境と日常生活環境での歩行時の体幹制御を評価した。 ■ 慢性腰痛患者では、歩行時の体幹の変動性や安定性が異常となっており、それは日常生活環境でより顕著になった。 ■ これらの制御異常は、痛みや恐怖、QOLと関連していることが明らかになった。 研究内容 健常者と慢性腰痛患者を対象に、腰部に加速度計を装着し、『外来リハビリ環境』と、3日間の『日常生活環境』にて計測しました。加速度データから前後軸、左右軸それぞれにおいて、変動性の変数としてストライド間のSDおよびマルチスケールエントロピー、安定性の変数として最大リヤプノフ指数を算出しました。その結果、慢性腰痛患者における左右軸のばらつき、前後軸の不安定性が増加しており、それは日常生活環境でより顕著になりました。これらの歩行制御の変容は、日常生活環境においてのみ、痛みや恐怖、QOLと正の相関関係が認められました。このことから、外来リハビリ環境だけでは慢性腰痛患者の運動制御に関する病態を把握しきれていない可能性が考えられます。また、左右軸は痛みや恐怖に基づいた代償的なばらつきの変化により、安定性を保持している一方で、前後軸は代償戦略が機能せずに不安定性が高くなっており、QOL の低下にまで波及していると考えられます。以上のことから、本研究は、腰痛の増悪予防や病態把握における日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆しました。 図1.歩行時の体幹制御の指標(© 2021 Yuki Nishi) 歩行時の加速度の前後軸、左右軸からストライド間のSD、安定性の指標として最大リヤプノフ指数、変動性の指標としてマルチスケールエントロピーを算出。 本研究の臨床的意義および今後の展開 腰痛の増悪予防や病態把握における日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆しました。今後はケースシリーズや縦断研究で運動制御と腰痛の因果関係を明らかにしていく予定です。 論文情報 Yuki Nishi, Hayato Shigetoh, Ren Fujii, Michihiro Osumi, Shu Morioka Changes in Trunk Variability and Stability of Gait in Patients with Chronic Low Back Pain: Impact of Laboratory versus Daily-Living Environments Journal of pain research, 2021 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 西 祐樹(ニシ ユウキ) 教授 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2021.06.23
【受付終了】8/12(木)教職員のための夏の公開講座(WEB)を開催します。
校内研修では経験できないような「教育課題」について、大学の教員による講義を開催し、教職員の方々に日々の教育実践に役立つ研修の機会を提供します。参加を希望される先生方におかれましては、実施要項をご確認の上、お申し込みください。 公開講座テーマ 運動器健診と子どもの体力について 近年、健康問題とされている幼児や児童、生徒の体力低下について、2016年度に導入された運動器健診の内容や意義を再度共有し、その健診結果の考察などを通して、具体的にどのような問題が「子どもの体力」に起こっているのか、今後どのように日々の教育実践の中でその問題解決に取り組むべきかを検討する一助となる内容を含んだ講座です。 日時 令和3年8月12日(木)14時~15時(質疑応答を含む) 講師:健康科学部理学療法学科 准教授 福本 貴彦 実施要項 受講対象 奈良県内の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教職員 開催方法 オンライン開催(ZOOMを利用できる環境が必要です。) 申込方法 7/30(金)にて、申込受付を終了しました。 定 員 100名 主 催 畿央大学 後 援 奈良県教育委員会 お問合せ 畿央大学教育推進部 教職員向け公開講座係 Tel:0745-54-1601 E-mail:info@kio.ac.jp
2021.06.23
【快挙】大学院生の半側空間無視に関する原著論文が権威ある雑誌「Cortex」に掲載!~健康科学研究科
大学院健康科学研究科博士後期課程に在籍している高村優作さんと藤井慎太郎さんの筆頭著者(equal contribution)の原著論文「Interaction between spatial neglect and attention deficit in patients with right hemisphere damage」がCortexに2021年6月12日に掲載されました。 Cortexは神経科学系では権威ある雑誌で、理学療法士が行った臨床研究が掲載されるのは極めて稀なことであり、快挙です。 本研究は本学博士後期課程修了し、現在国立障害者リハビリテーションセンター病院で勤務している大松聡子さん、本学 森岡周教授、本学客員教授で国立障害者リハビリテーションセンター研究所神経筋機能障害研究室長の河島則天さんらとの共同研究です。 本研究は、脳卒中後に生じる高次脳機能障害『半側空間無視』の新しい臨床評価手法の確立のために極めて重要な成果となりました。なお詳細は、高村さんが現在研究員として所属している国立障害者リハビリテーションセンター研究所のプレスリリースをご覧ください。 【国立障害者リハビリテーションセンター研究所プレスリリース】 http://www.rehab.go.jp/hodo/japanese/news_2021/news2021-01.pdf
2021.06.16
【研究成果】要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーとの関連を明らかに~健康科学研究科
定期的な身体活動が早期死亡や慢性疾患、心身機能低下の予防に効果があることはこれまでに多く報告されています。しかし、本邦では運動習慣者や日常生活上の歩数を増加させる取り組みが行われているにも関わらず、長年改善に至っていない現状があります。 これまでの身体活動量に関連する要因についての研究では、一般高齢者を対象にしたものが多く、要支援・要介護高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因について明らかとなっていません。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 氏と高取克彦 教授 らは介入研究のベースライン評価のデータを使用し、要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシー(意欲ややる気の著しい低下)、身体機能、心理機能の関連について明らかにすることを目的に本研究を行いました。 この研究成果は(公社)日本理学療法士協会の協会誌「理学療法学」に掲載されています。 研究概要 通所介護事業所を利用している要支援・要介護高齢者65名に対して身体活動量、身体機能、精神心理機能の評価を行い、身体活動量と関連している要因についての分析を行いました。 本研究のポイント ■要支援・要介護高齢者の身体活動量に関連している要因が明らかになった。 ■身体活動量に関連しているのは年齢や性別に関わらず、アパシー(意欲ややる気の著しい低下)と歩行速度が関連していることが分かった。 研究内容 データ解析の結果、身体活動量が高い高齢者と比較し、身体活動量が低い高齢者は、通常歩行速度、意欲低下や無関心を示す指標であるアパシー、健康統制感(Health locus of control: HLC)が有意に悪い値を示していました。 ※HLCとは社会的学習理論に基づくLocus of control(統制の所在)の考えを保健行動の領域に適用したものです.内的統制の者は健康を自分自身の努力によって得られると信じ,外的統制の者は医療従事者や運によって得られると信じる傾向があるとされています。 また、身体活動量に影響を及ぼす要因についての分析では、対象者の年齢と性別を調整した後で、アパシーと通常歩行速度が重要な因子であることが分かりました。 本研究の意義および今後の展開 今回の研究は要支援・要介護高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因について検討したものです。現在は本研究の対象者に12週間の在宅運動プログラムを実施してもらい、要支援・要介護高齢者同士で運動状況のモニタリング、フィードバック、情緒的サポートの介入を行うことの運動継続効果についての分析が済んでいます。また、介入を終了してさらに12週間経過した時点で、介入効果が維持できているかも追跡調査をしています。今後は高齢者の運動継続や身体活動量向上に効果がある取り組みについて、明らかにしたいと考えています。 論文情報 武田広道・高取克彦 要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーの関連 理学療法学(J-STAGEでの早期公開日:2021年6月9日) 問い合わせ先 畿央大学 理学療法学科 教授 高取 克彦(タカトリ カツヒコ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: k.takatori@kio.ac.jp
2021.06.16
痛みへの恐怖は運動のプログラム中枢を変容させる~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
ヒトは痛みを怖がるとうまく身体を動かせなくなりますが、その脳メカニズムは明らかになってはいませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授、森岡 周 教授らは、東京大学医学部付属病院緩和ケア診療部 住谷昌彦 准教授らと共同で、痛みを怖がりながら運動を継続していく時の脳活動を調べ、身体を動かそうと意識をすると運動プログラム中枢の活動に異常が生じることを明らかにしました。この研究成果は、Behavioural Brain Research誌(Fear of movement-related pain disturbs cortical preparatory activity after becoming aware of motor intention)に掲載されています。 研究概要 痛みを怖がると身体をうまく動かせなくなることは多くの研究で明らかにされてきており、これは運動をプログラムしている “脳” の活動異常によるものだと考えられてきました。しかしながら、具体的に脳にどのような活動異常が生じるのかは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授らは、健常成人18名を対象に、ボタンを押したら痛みが与えられる実験状況を設定して、ボタンを押すことを怖がっている時(ボタンを押す直前)の脳波活動を計測しました(図1)。 その結果、痛みを怖がりながらボタンを押す条件では、ボタンを押す直前に出現する「運動準備電位」の波形に異常が認められました。さらに詳細に分析すると、この時には、行動抑制の機能がある前頭領域の過活動と、運動プログラム中枢である補足運動野・帯状皮質の過活動が同時に認められました。これは、いわば、『ブレーキを踏みながらアクセルと強く踏んでいるような状態』で、自らで行動を抑制しながらも、無理をして行動を起こしている状態だと考えられます。おそらく、この脳の活動異常が続くことで、運動の異常パターンが出現するのだと考えられます。 加えて、興味深いことに、この実験では、被験者に「自分がボタンを押そうとおもった瞬間」をLibet paradigmで記録しており、上記のような脳の活動異常は「ボタンを押そうと思った」 という自らの意思が顕在化した後から生じていることが明らかになりました。つまり、運動を意識すればするほど、あるいは痛みを意識すればするほど、脳の活動が異常になりやすいことを示唆しています。 参考:Libet paradigm(YouTube) 本研究のポイント ■ 痛みを怖がりながら身体を動かすと運動のプログラム中枢に活動異常が生じる ■ そのような脳の活動異常は、運動の意思が顕在化された後から生じる 研究内容 以下の図1のような手順で実験を進めました。被験者は、目の前に用意された特殊な時計(2550ミリ秒で1周する時計)をみながら、好きなタイミングでボタンを押すように指示されました。ボタンを押すと痛みをともなう電気刺激が与えられ、これを続けると被験者はボタンを押すことを怖がるようになります。また、ボタンを押した後には、「時計の針がどこの時にボタンを押したいと思ったか?」に対して回答をします。多くの被験者は、実際にボタンを押した時間の0.2 – 0.5秒前の時間を回答しました。 図1:実験手順 このような実験タスクをすると、ボタンを押す直前に「運動準備電位」という図2のような波形が観察されました。この運動準備電位は、運動のプログラムを反映しており、この振幅や潜時に異常が生じるということは、運動プログラム中枢に何らかの異常が生じていることを意味します。実験の結果では、痛い条件での運動準備電位は、痛くない条件での運動準備電位よりも振幅が大きかったです。また、この振幅の異常は、自分でボタンを押そうという意思が顕在化した後(=自分の運動意図に気づいた後)に生じていました。 図2:各条件における運動準備電位 この時間帯でSource解析を進めると、図3のような行動抑制の機能がある前頭領域の過活動と、運動プログラム中枢である補足運動野・帯状皮質の過活動が同時に認められました。 図3:痛みへの恐怖によって運動プログラム中枢に認められた異常な脳活動 本研究の臨床的意義 痛みへの恐怖が運動を悪くする脳メカニズムの一端が明らかになりました。また、これは運動の意思が顕在化された後に生じる脳活動の異常であることから、運動/痛みを過度に顕在化させないようなリハビリテーションの重要性を示唆していると考えます。 論文情報 Osumi M, Sumitani M, Nishi Y, Nobusako S, Dilek B, Morioka S. Fear of movement-related pain disturbs cortical preparatory activity after becoming aware of motor intention. Behav Brain Res. 2021 May 26;411:113379. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp
2021.06.04
条件付けられた痛みの恐怖は運動制御を変調させる~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
筋骨格系の障害を持つ患者さんの中には、目標に向かって手を伸ばす動作により繰り返し痛みを感じることで、運動に対する恐怖を感じる方が数多くいます。そのような痛みや運動恐怖は生活の質に大きな不利益をもたらします。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 西 祐樹と森岡 周 教授らは、東京大学 住谷 昌彦 准教授を中心とする研究グループと共同で、痛みの恐怖条件付けモデルを用いて、痛みに対する予期や恐怖に関連した恐怖によって、到達把握運動の制御が変調することが明らかにしました。この研究成果はScientific Reports誌(Kinematic Changes in Goal-directed Movements in a Fear-conditioning Paradigm)に掲載されています。 研究概要 筋骨格系の障害を持つ患者さんの中には、何かの動作をするたびに繰り返し痛みを経験することで、運動に対して恐怖心を抱くようになります。運動恐怖が生じると、痛みを最小限に抑えるために身体の運動戦略を適応させていきます。例えば、ゆっくり動かすと痛みがマシになるなら、患者さんは肢をゆっくり動かすように適応させていきます。一方で、保護的な運動戦略は、身体の器質的な障害や痛みを助長し、より大きな障害につながることがあります。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 西 祐樹らの研究チームは、痛みの恐怖条件付けモデルを用いて、目標指向性到達における運動軌跡や筋収縮の変化を調査しました。その結果、運動に伴う痛みに対する予期や恐怖によって、得られた感覚に基づいて運動を調整するフィードバック運動制御が先行して緩慢化し、その後、予測的に運動を遂行するフィードフォワード運動制御が緩慢化することを明らかにしました。また、運動に伴う痛みがなくなると、フィードバック制御が先行して元に戻り、その後、フィードフォワード制御が元に戻りました。加えて、そのフィードフォワードやフィードバック運動制御の変調の背景には主動作・拮抗筋の共収縮が関与していることを明らかにしました。 本研究のポイント ■ 痛みの恐怖条件付けを用いて、到達把握運動の運動軌跡と筋収縮を計測した。 ■ 運動に伴う痛みの予期や恐怖によって、運動が緩慢化し、主動作・拮抗筋の共収縮が増加した。 ■ 運動に伴う痛みがなくなると、運動の緩慢化や共収縮が徐々に元に戻った。 研究内容 到達把握運動における痛みの恐怖条件付けとして、練習段階では痛み刺激は与えられませんが、次の獲得段階では運動に伴って痛みが与えられたり、与えられなかったりしました。その後の消去段階では練習段階と同様に、運動に伴う痛みが与えられませんでした(図1)。 図1.到達把握運動における痛みの恐怖条件付け(© 2021 Yuki Nishi) 被験者は到達把握運動を行い、運動を完了した直後に痛みが与えられる。 運動制御の指標として、到達把握運動をフィードフォワード制御とフィードバック制御に分類し、それぞれに要した時間を算出しました。また、上腕二頭筋と上腕三角筋の筋電図を計測し、時間周波数解析という解析方法を用いて、筋収縮の様相を評価しました。その結果、運動に伴う痛みに対する予期や恐怖によって、得られた感覚に基づいて運動を調整するフィードバック運動制御が先行して緩慢化し、その後、予測的に運動を遂行するフィードフォワード運動制御が緩慢化することを示しました。また、運動に伴う痛みがなくなると、フィードバック制御が先行して元に戻り、その後、フィードフォワード制御が元に戻りました。加えて、そのフィードフォワードやフィードバック運動制御の変調の背景には主動作・拮抗筋の共収縮が関与していることを明らかにしました。これらの結果は、筋骨格系の障害における保護的なフィードフォワードおよびフィードバック運動の異常を説明できる可能性を示唆します。加えて、痛みの慢性化に影響を及ぼす要因を特定するためには、運動制御障害が生じるプロセスを詳しく評価することが重要であるということを示唆しています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 筋骨格系の障害における保護的な運動の異常を詳細に説明できる可能性を示唆し、痛みの慢性化に影響を及ぼす要因を特定するために、運動制御障害の獲得過程を評価することの重要性を示しました。今後は筋骨格系の障害による運動制御や筋出力の詳細な分析を行い、その結果に基づいた介入を研究する予定です。 論文情報 Yuki Nishi, Michihiro Osumi, Masahiko Sumitani, Arito Yozu, Shu Morioka Kinematic Changes in Goal-directed Movements in a Fear-conditioning Paradigm Scientific Reports, 2021 関連する論文・記事 Nishi Y, Osumi M, Nobusako S, Takeda K, Morioka S. Avoidance Behavioral Difference in Acquisition and Extinction of Pain-Related Fear. Front Behav Neurosci. 2019 Oct 11;13:236. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 西 祐樹(ニシ ユウキ) 教授 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2021.05.31
【症例報告】疼痛律動性と身体活動量に焦点を当てた患者教育の効果~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
近年、日内で疼痛強度が変動する疼痛律動性の存在が報告されています。こうした疼痛律動性を把握することは、慢性疼痛への治療戦略を考えるうえで有用であり、様々な疾患で律動性の調査が行われています。しかし、これまでの研究では疼痛律動性を考慮した治療介入に関する報告はされておらず、律動性を考慮することで具体的にどのような効果があるのかは検討されていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程 田中 陽一 氏 と森岡 周 教授 らは、慢性疼痛症例を対象に疼痛律動性、身体活動量の詳細な評価に基づいた患者教育介入を行い、介入後の疼痛律動性、身体活動量に良好な変化が得られたことを報告しました。この研究成果は、World Journal of Clinical Cases誌 (Effectiveness of patient education focusing on circadian pain rhythms: A case report and review of literature)に掲載されています。 研究概要 慢性疼痛への介入では、患者のQOLとADLの向上を目指すべきであり、疼痛管理に重点を置くことが重要である。本研究では、疼痛律動性と日中の身体活動量との関係に基づいて患者教育介入を行った。症例は約8年前から神経障害性疼痛を呈している60歳代の男性であった。日常生活活動の重要性、疼痛律動性、身体活動量について初期評価を行った結果、軽強度活動(light-intensity physical activity:LIPA)を多く行った日の方が、LIPAをあまり行わなかった日よりも日中の痛みが低いことが明らかとなった。そのため、患者教育では、午後に悪化しがちな痛みを軽減する方法を中心に説明し、午後のLIPAを維持するために、重要度評価で重要度が高かった「散歩」を具体的な手段として提示し、症例の行動変容を促した。再評価では、注目していた午後のLIPAが増加し、疼痛律動性にも変化が見られた。複合的評価に基づく患者教育は、疼痛律動性と身体活動に対し肯定的な結果を引き出すことができた。 本研究のポイント ■ 慢性疼痛を有する1症例の疼痛律動性、身体活動量を中心とした複合的評価に基づく患者教育を実施し、介入後の痛みの律動性と身体活動の変化を検討した。 ■ 本症例では、LIPAが痛みの律動性に関与していることを示した。 ■ LIPAに加え、本人が重要と感じている活動(ex. 散歩)を行動変容の具体的手段に活用することの重要性を示した。 研究内容 慢性疼痛を有する1症例を対象に、疼痛律動性と身体活動量の評価と、日常生活の重要度評価を行った。疼痛律動性は1日6時点を7日間評価した。身体活動量は7日間身体活動量計を装着し、装着時間内のMETSを算出した。初期評価の結果、LIPAが日中の疼痛強度に影響を与える可能性を示唆した(図1)。初期評価に基づいて、午後からの疼痛増悪に着目し、午後のLIPAを維持するために、重要度評価で重要度が高かった「散歩」を具体的な手段として提示し行動変容を促した。再評価では、注目していた午後のLIPAが増加し、疼痛律動性にも変化が見られた(図2、3)。 図1:軽強度活動(LIPA)の高い日と低い日における疼痛律動性の比較 LIPAが高い日の方が午後からの疼痛強度が低値を示した 図2:各時間帯における身体活動量の変化 再評価では着目していた午後からのLIPAが増加した(右図) 図3:疼痛律動性の変化 再評価では日内の痛みの最弱点が18時に変化した(右図) 本研究の意義および今後の展開 本研究成果は、慢性疼痛患者への具体的な治療介入のために、疼痛律動性を評価する意義を示したものです。そのため、今後はサンプルサイズを増やし、様々なタイプの律動性、疼痛性質を持った慢性疼痛患者においても治療介入による効果検証を進めていく予定です。 論文情報 Tanaka Y, Sato G, Imai R, Osumi M, Shigetoh H, Fujii R, Morioka S Effectiveness of patient education focusing on circadian pain rhythms: A case report and review of literature World Journal of Clinical Cases. 2021 関連する論文 田中 陽一、 大住 倫弘、 佐藤 剛介、 森岡 周. 日中の活動が慢性疼痛の日内変動に及ぼす影響 ─右腕神経叢損傷後疼痛を有する1症例での検討─. 作業療法 2019; 38: 117-122, 2019 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 田中 陽一(タナカ ヨウイチ) E-mail: kempt_24am@yahoo.co.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600
2021.05.31
サーマルグリル錯覚経験は、脳卒中後や脊髄損傷後に生じる痛みの性質と似ている~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
温かいモノと冷たいモノを同時に触ると、本当は熱くないはずなのに、それを「熱い」とか「痛い」と経験することがあり、この経験は “サーマルグリル錯覚” と呼ばれています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授、森岡 周 教授らは、東京大学医学部付属病院緩和ケア診療部 住谷昌彦 准教授らと共同で、サーマルグリル錯覚での「痛みの性質」を分析し、その痛みの性質が、脳卒中後や脊髄損傷後に生じる痛みの性質と似ていることを明らかにしました。この研究成果はScand J Pain誌(Pain quality of thermal grill illusion is similar to that of central neuropathic pain rather than peripheral neuropathic pain)に掲載されています。 研究概要 “サーマルグリル錯覚” とは、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルに手を置くと、痛みをともなう灼熱感、ズキズキする痛み、しびれたような痛みが惹起される現象です(図1)。この現象は、脊髄-大脳皮質における中枢神経メカニズムによって生じると説明されていますが、実際に、そのような中枢神経が損傷した患者さんの痛みと類似しているのかは明らかにされていませんでした。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授らは、まずは健常者137名を対象に、サーマルグリル錯覚によって生じる痛みの性質を分析し、その痛みの性質が、帯状疱疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷後疼痛(SCI)、脳卒中後疼痛(Stroke)における痛みの性質と似ているのか/異なっているのかを調査しました。その結果、サーマルグリル錯覚における痛みの性質は、末梢神経メカニズムに起因するような帯状疱疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)とは類似しておらず、中枢神経メカニズムに起因するような脊髄損傷後疼痛(SCI)、脳卒中後疼痛(Stroke)と類似していることが明らかになりました。この研究は、サーマルグリル錯覚が中枢神経メカニズムによって生じるという説を支持したことになります。 図1:サーマルグリル錯覚を誘発するための実験セット 本研究のポイント ■ 温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルの上に手を置くと痛みを感じる(サーマルグリル錯覚) ■ サーマルグリル錯覚における痛みの性質は、中枢神経システムに問題がある脊髄損傷後疼痛(SCI)、脳卒中後疼痛(Stroke)と類似している 研究内容 研究1:健常者137名を対象にして、サーマルグリル錯覚によって生じる痛みの性質を分析しました。 その結果、「焼けるような痛み」のほかにも、「ずきんずきん」、「うずくような」、「しびれるような」などの痛みがサーマルグリル錯覚によって経験されました。 図2:健常者がサーマルグリル錯覚で経験する痛みの種類 研究2:帯状疱疹後神経痛(PHN)131名、三叉神経痛(TN)83名、脊髄損傷後疼痛(SCI)42名、脳卒中後疼痛(Stroke)31名における痛みの性質が、研究1で抽出されたサーマルグリル錯覚によって生じる痛みの性質とどれだけ類似/相違しているのかをMultiple correspondence analysis (MCA) と cross tabulation analysisを組み合わせて分析しました。その結果、サーマルグリル錯覚に特異的な痛みの性質は、脊髄損傷後疼痛(SCI)、脳卒中後疼痛(Stroke)の性質と類似していることが明らかになりました(図3)。 図3:痛みの性質の類似性/相違性 Multiple correspondence analysis (MCA) 本研究の意義および今後の展開 サーマルグリル錯覚の痛みが、脊髄損傷後疼痛あるいは脳卒中後疼痛と類似していることが明らかになったことから、この実験的疼痛を利用して、脊髄損傷後疼痛あるいは脳卒中後疼痛の新規リハビリテーションを考案することが可能であると考えています。加えて、このような実験手続きによって、「脊髄損傷後疼痛・脳卒中後疼痛を有する方がどのような痛みを経験しているのか?」を健常者が疑似的に体験することができるため、リハビリテーション専門家と患者さんの痛みが共有されやすくなると考えています。 論文情報 Osumi M, Sumitani M, Nobusako S, Sato G, Morioka S. Pain quality of thermal grill illusion is similar to that of central neuropathic pain rather than peripheral neuropathic pain. Scand J Pain. 2021 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp
2021.05.06
7/3(土)第1回 痛みのニューロリハビリテーション研究会―THE FIRST TAKE―(WEB)を開催します。
2021.05.06
【研究成果発表】姿勢バランスに重要な前庭脊髄路機能の評価の再現性、左右差および立位バランスとの関連性を調査~健康科学研究科
ヒトは多くの場合、姿勢バランスを非自覚的にコントロールしています。前庭脊髄路は非自覚的な姿勢のコントロールを行う上で重要な役割を果たす神経機構の一つです。前庭脊髄路の機能は、経皮的に前庭系を電気刺激することによってH波と言われる脊髄前角細胞の興奮性の変化の程度を計測することで評価されてきていました。しかし、この方法の再現性や左右差、姿勢バランスとの関連については明らかにされていませんでした。畿央大学大学院の中村潤二客員准教授(西大和リハビリテーション病院)、岡田洋平准教授らの研究チームは、ヒトにおける前庭脊髄路の機能評価の再現性や左右差、立位バランスとの関連性を明らかにする研究を行いました。この研究成果はNeuroscience Letters誌(Reliability and laterality of the soleus H-reflex following galvanic vestibular stimulation in healthy individuals)に掲載されています。 研究概要 前庭脊髄路は抗重力姿勢を保持する上での抗重力筋の制御に重要な役割を果たすと考えられています。ヒトにおいて非侵襲的に前庭脊髄路興奮性を評価する方法として、ヒラメ筋H反射を誘発する脛骨神経刺激の前に直流前庭電気刺激(galvanic vestibular stimulation (GVS)を条件刺激として与えることによるヒラメ筋H反射の促通率を評価するという神経生理学的方法があります。この方法は、耳後部に電極を貼付し直流電流で経皮的に前庭系を刺激し(GVS)、前庭神経、前庭脊髄路を介して、脊髄の抗重力筋の運動ニューロン群の興奮性の変化を評価していると考えられています。畿央大学大学院の中村潤二客員准教授(西大和リハビリテーション病院)、岡田洋平准教授らの研究チームは、本手法による計測を左右で行った後に、再度左右で計測しました。 その結果、1セッション目と2回目の計測におけるセッション間再現性は十分であり、いずれの計測でも前庭脊髄路興奮性に左右差がないことを示しました。また立位での重心動揺計の計測を行い、前庭感覚への依存度が高くなる条件における立位荷重偏移位置と前庭脊髄路興奮性が関連することを示しました。 本研究のポイント ■GVSとヒラメ筋H反射を併用した前庭脊髄路興奮性の計測の再現性は十分だった。 ■健常者の前庭脊髄路興奮性の左右差はほとんどみられなかった。 ■前庭感覚の依存度が高い立位では、前庭脊髄路興奮性が高い下肢の方へ荷重偏移する。 研究内容 15名の健常者が研究に参加し、 GVSを行うことによるヒラメ筋H反射の促通率について検証しました(図1, 2)。計測は無作為の順番で左右それぞれ計測し、休息の後に再度左右それぞれ、合計2セッションの計測を行いました。その結果、1セッション目と2セッション目の左右のGVSにおけるH反射促通の程度のセッション間再現性は十分であり、各セッション共に左右差はないことが示されました(表1)。 また、重心動揺計を用いて4条件(開眼位、閉眼位、ラバーマット上での開眼位、ラバーマット上での閉眼位)での立位姿勢を計測した結果、前庭感覚への依存度が高いラバーマット上での閉眼立位における足圧中心の内外側の偏移位置とヒラメ筋H反射促通率の左右比との間に正の相関関係があることが示されました(図3)。 図1. GVSによるH反射の変化の測定 図2. GVSの有無でのH反射の波形の変化 表1.GVSによるH反射の変化の計測結果 セッション間の左右の促通率の計測の再現性は十分であり、系統的誤差が生じなかったことを示しました。 図3. 1セッション目のヒラメ筋H反射促通率の左右比とラバーマット上での閉眼立位でのCOPの内外側偏移位置 中等度の正の相関がみられ、前庭感覚への依存度の高い立位における荷重偏移と前庭脊髄路興奮性の間には関連がある可能性を示しました。2セッション目のH反射促通率の左右比とは有意な相関なし(r = ―0.19, p=0.51) 本研究の意義および今後の展開 本研究成果は、GVSによるヒラメ筋H反射の促通率を評価するという前庭脊髄路興奮性の神経生理学的方法の臨床応用可能性を示唆するものであり、姿勢制御に異常のある方で特に左右差の顕著な症候を呈する方に適用する上で重要な知見であると考えられます。 今後は脳卒中やパーキンソン病、前庭疾患などの対象に前庭脊髄路興奮性の評価を行い、姿勢制御異常の病態と前庭脊髄路機能の関連性について検証し、介入可能性についても模索していきたいと考えています。 関連する論文 Okada Y, Shiozaki T, Nakamura J, Azumi Y, Inazato M, Ono M, Kondo H, Sugitani M, Matsugi A. Influence of the intensity of galvanic vestibular stimulation and cutaneous stimulation on the soleus H-reflex in healthy individuals. Neuroreport. 2018 Sep 5;29(13):1135-1139. Tanaka H, Nakamura J, Siozaki T, Ueta K, Morioka S, Shomoto K, Okada Y. Posture influences on vestibulospinal tract excitability. Exp Brain Res. 2021 Jan 21. 論文情報 Nakamura J, Okada Y, Shiozaki T, Tanaka H, Ueta K, Ikuno K, Morioka S, Shomoto K. Reliability and laterality of the soleus H-reflex following galvanic vestibular stimulation in healthy individuals. Neuroscience Letters. 2021 June 11.
2021.04.28
日本初、後期高齢者のフレイル脱却因子を大規模かつ前向きに調査~理学療法学科
「加齢とともに心身が老い衰えた状態」をあらわすフレイルは、健常高齢者に比較して要介護状態に陥る危険性が高いことが多くの研究で明らかにされています。しかしフレイルは、早く介入して対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性「可逆性」を前提とした用語でもあります。 これまでフレイルに関する研究では要介護状態に移行する危険因子に焦点をあてたものが多く、フレイルからの脱却に影響する要因は明らかにされていません。本学理学療法学科の高取克彦教授、松本大輔准教授は、フレイルの危険性や発生率が特に高い後期高齢者を対象にフレイルからの脱却に影響する因子を明らかにすることを目的にした研究を行いました。 研究概要 地域在住の後期高齢者約5,000人を2年間追跡し、フレイルのステージ変化を調査しました。初回調査時にフレイルと判定された方で2年後に健常(ロバスト)またはプレフレイル(フレイルの手前の状態)に改善した方に焦点を当て、フレイルからの脱却に独立して影響した因子と、フレイル脱却者の特性を分析しました。 本研究のポイント ■ 後期高齢者に対する大規模調査によってフレイルからの脱却因子が明らかになった。 ■ フレイルから脱却した人は近隣者との交流が多く、地域に対する信頼が高いなどの特徴を有する事がわかった。 研究内容 データ解析の結果、対象者の基本属性を調整した後、フレイル脱却に影響する独立した因子として「高い主観的健康感」、高齢者サロンでの運動や体操教室への参加など「運動系社会参加活動」が重要であることが分かりました。 またフレイル脱却者の社会生活機能の因子特性を分析した結果において、フレイル脱却者は「近隣住民との交流が強い」「住んでいる地域への信頼が強い」「社会参加活動を行なっている」ことなどが主要な因子であることが分かり、その構成概念は「活動的な地域活動を行うための個人レベルのソーシャルキャピタルの強さ」と解釈されます。 本研究の意義および今後の展開 今回の研究は後期高齢者のフレイルの脱却因子を大規模かつ前向きに調査した初めての研究です。現在、初回調査から4年後までの追跡データがあり、今後はフレイルであっても要介護状態に至らない方の特性などを分析し、フレイルの負の側面だけでなくポジティブなステージ変化(transition)に資する基礎データを示すことで、今後のフレイル予防、介護予防に役立てる研究を継続していきたいと考えています。 論文情報 PLoS One. 2021 Mar 3;16(3):e0247296.doi: 10.1371/journal.pone.0247296. eCollection 2021.
2021.04.06
大学院生の論文がnature系「Scientific Reports」の神経科学分野のダウンロードTOP100に選出!
大学院博士後期課程に在籍している水田直道さんが筆頭著者の論文「脳卒中患者における運動まひの重症度と歩行速度の関係性」が、nature系の雑誌「Scientific Reports」の神経科学分野のトップ100(ダウンロード)に選ばれました。2020年に3,000回以上もダウンロードされており、1750以上ある論文のうち80位にランクインしています。水田さんの研究成果が世界中でダウンロードされ、多くのセラピストや研究者に注目されていることになります。 研究の詳細については、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターのプレスリリースをご覧ください。 脳卒中患者における運動まひの重症度と歩行速度の関係性
2021.04.05
令和3年度入学式を行いました。
2021(令和3)年4月2日(金)、畿央大学健康科学部331名、教育学部193名、健康科学研究科35名(修士課程27名、博士後期課程8名)、教育学研究科修士課程4名、助産学専攻科10名、臨床細胞学別科7名、あわせて580名の新しい畿央生が誕生しました。学部は午前10時、大学院・専攻科・別科は午後3時からと2部にわけて入学式を行いました。 昨年度は新型コロナウイルス感染拡大予防のため一同に会しての式典形式を見合わせ、学科にわかれての開催となりました。今年度については冬木記念ホールで式典を開催し、その様子を中継して各会場から視聴・参加しました。 学部の入学式では、冬木正彦学長が学科ごとに新入生への入学許可を行いました。 つづく学長式辞では、”建学の精神である「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を大切にしながら充実した4年間を過ごしてほしい”と力強いメッセージがありました。 新入生代表として健康栄養学科1回生見杉遼さんから入学生宣誓、在学生代表として現代教育学科3回生荒井斗子さんから歓迎のことばがあり、閉式となりました。 閉式後は、学科別に入学生ガイダンスが行われました。各会場でも手指消毒、換気などの感染予防策を徹底したうえで、1回生担任紹介や学生生活に関してのオリエンテーションが行われました。 当日はこれ以上ない晴天に恵まれ、あたたかい一日となりました。卒業式でも好評だったフォトスポットや入学式の看板の前で撮影する初々しい新入生の姿が見られました。 ※写真については撮影直前のみマスクを外し、声を出さないようにして撮影しています。 午後3時からは大学院健康科学研究科、教育学研究科、助産学専攻科および臨床細胞学別科の入学式が冬木記念ホールにて行なわれました。入学を許可された後、学長、それぞれの研究科長・専攻科長・別科長から祝辞をいただきました。 新入生の皆様、入学おめでとうございます!皆様のこれからの学生生活が実りのあるものになるよう教職員一同全力でサポートしていきます。
2021.04.02
小児の運動の不器用さに対する確率共鳴現象の効果~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
学校生活・日常生活やスポーツ活動における様々な運動スキルに不器用さが現れることを特徴とする発達障害として発達性協調運動障害があります。発達性協調運動障害を有する児では、単に運動の不器用さに止まらず、自己肯定感・自尊心の低下や不安障害・抑うつの増加といった心理面への影響も懸念されています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らは、中井昭夫 教授(武庫川女子大学)、嶋田総太郎 教授(明治大学)、前田貴記 講師(慶應義塾大学)らと共同で、コンパクトな確率共鳴装置を手首に装着することで、発達性協調運動障害を有する児の手先の器用さが改善することを明らかにしました。この研究成果はFrontiers in Neurology誌(Influence of stochastic resonance on manual dexterity in children with developmental coordination disorder: A double-blind interventional study)に掲載されています。 研究概要 発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)とは、麻痺はないにも関わらず、協調運動技能の獲得や遂行に著しい低下がみられる神経発達障害の一類型です。その症状は、字が綺麗に書けない、ボタンが留められないといった手の微細運動困難から、歩行中に物や人にぶつかる、上手く走れない、縄跳びができないといった粗大運動困難、片脚立ちができない、平均台の上を歩けないといったバランス障害まで多岐に渡ります。DCDの頻度は学童期小児の5-6%と非常に多く、またDCDと診断された児の過半数が青年期・成人期にも協調運動困難が残存するとされており、DCDに対する有効なハビリテーション技術の開発は、ニューロリハビリテーション研究における喫緊の課題の一つとされています。 一方で、古くから身体への微弱な機械的ランダムノイズ刺激は、感覚および運動機能を改善することが知られています。この改善は、確率共鳴(Stochastic Resonance:SR)現象と呼ばれ、例えば、感知できない程度の機械的ランダムノイズ刺激であっても、触覚感度が改善することやバランス、歩行、手指の運動といった運動機能が改善することなどが報告されています。また、このような改善は健常者だけでなく、脳卒中後片麻痺患者、パーキンソン病患者、脳性麻痺児でも観察されています。しかしながら、DCDを有する児に対するSR現象を用いた介入の報告は極めて少なく、その有効性は明確ではありませんでした。そこで畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの信迫悟志 准教授らの研究グループは、二重盲検介入研究を行い、SR現象がDCDを有する児の手先の器用さに及ぼす影響を調査しました。その結果、SR装置によってSR現象を付与している際に、DCDを有する児の手先の器用さが有意に向上することが示されました。 本研究のポイント ■ DCDを有する児の手先の器用さに対するSRの影響を調査した。 ■ DCDを有する児の手先の器用さは、SRを付与している際に向上した。 ■ SRによる手先の器用さの改善効果は、SRの提供を止めると消失した。 研究内容 6~11歳までのDCDを有する児30名(平均年齢9.3歳、男児27名、右利き25名)が本研究に参加しました。参加児たちは、はじめにベースラインデータとして、DCDの国際標準評価法であるM-ABC2のテストを受けました。SRは子どもたちの両手首に装着された振動触覚デバイス(SRデバイス)による感覚閾値の60%の強度の振動触覚ランダムノイズ刺激によって提供されました。条件には、SRを提供するSRオン条件と、SRを提供しないSRオフ条件が設けられ、15名はSRオン⇒オフ⇒オン⇒オフの順で、残り15名はSRオフ⇒オン⇒オフ⇒オンの順で、手先の器用さテスト(微細運動機能テスト)を実施しました(図1)。 図1. 実施風景 その結果、手先の器用さテストの成績は、SRオン条件において、ベースラインデータおよびSRオフ条件と比較して、有意に向上しました(図2)。 図2. 結果 **:p<0.001,n.s.:有意差なし 本研究の意義および今後の展開 本研究結果は、SRの提供によってDCDを有する児の手先の器用さが即時的に改善することを示しました。 しかしながら一方で、SRによる改善効果は、その直後のSRオフ条件に持ち越されませんでした。したがって、今後はどのくらい長い時間装置を装着すれば、持ち越し効果が観察されるのか?さらにSR装置を装着している間、どのような運動を行えば、持ち越し効果が観察されるのか?といった持ち越し効果に関する研究が必要です。 関連する論文 ■ Nobusako S, Osumi M, Matsuo A, Fukuchi T, Nakai A, Zama T, Shimada S, Morioka S. Stochastic resonance improves visuomotor temporal integration in healthy young adults. PLoS One. 2018 Dec 14;13(12):e0209382. doi: 10.1371/journal.pone.0209382. ■ Nobusako S, Osumi M, Matsuo A, Furukawa E, Maeda T, Shimada S, Nakai A, Morioka S. Subthreshold Vibrotactile Noise Stimulation Immediately Improves Manual Dexterity in a Child With Developmental Coordination Disorder: A Single-Case Study. Front Neurol. 2019 Jul 2;10:717. doi: 10.3389/fneur.2019.00717. 論文情報 Satoshi Nobusako, Michihiro Osumi, Atsushi Matsuo, Emi Furukawa, Takaki Maeda, Sotaro Shimada, Akio Nakai, Shu Morioka Influence of Stochastic Resonance on Manual Dexterity in Children With Developmental Coordination Disorder: A Double-Blind Interventional Study Frontiers in Neurology. 2021. doi: 10.3389/fneur.2021.626608 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 信迫悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2021.03.31
大学院生の半側空間無視に関する原著論文が「iScience」に掲載されました~健康科学研究科
半側空間無視の病態解明に貢献 大学院健康科学研究科博士後期課程に在籍している高村優作さんの筆頭著者の原著論文「Pathological structure of visuospatial neglect: A comprehensive multivariate analysis of spatial and non-spatial aspects」がiScienceに2021年3月17日(水)にオンライン掲載されました。 iScienceはCell Pressが発行する大変インパクトの高い雑誌で、理学療法士が行った臨床研究がCNS※系の雑誌に掲載されるのは極めて稀なことであり、快挙です。 https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(21)00284-4 ※Cell、Nature、Science - 生物医学分野で有名な科学雑誌3誌の総称 本研究は同じく本学博士後期課程に在籍している藤井慎太郎さん、本学博士後期課程修了し、現在国立障害者リハビリテーションセンター病院で勤務している大松聡子さん、本学 森岡周教授、本学客員教授で国立障害者リハビリテーションセンター研究所神経筋機能障害研究室長の河島則天さんとの共同研究です。 本研究は、脳卒中後に出現する半側空間無視の病態解明に貢献すると共に、リハビリテーション医療における有効な検査法の確立につながる内容です。 なお詳細は、高村さんが現在研究員として所属している国立障害者リハビリテーションセンター研究所のプレスリリースをご覧ください。 脳卒中後に生じる高次脳機能障害『半側空間無視』の病態解明につながる新しい発見 理学療法学科で関西で唯一となる6年連続100%を達成するなど「資格・就職に強い」と評価されている畿央大学ですが、研究活動においても卓越した実績を残しています。 【関連記事】 大学院生の研究成果が神経学領域で最も権威ある雑誌「Brain」に掲載されました~健康科学研究科
2021.03.31
理学療法士・看護師100%、管理栄養士93.9%、小学校教諭71.2%、公立幼・保94.6%、養護教諭36.4%~2021年3月卒業生
コロナ禍でも高い現役合格率を達成! いろんなことが予定通りに進まなかった波乱の一年を過ごしてきた2021年3月卒業生ですが、今年も関西トップクラスの現役合格率を残してくれました。会えないときはオンラインで、会えるようになってからは十分な感染対策を講じながら、学生・教職員が一丸となって頑張ってきた成果です。卒業生の皆さんのご活躍を、心からお祈りしています! 畿央大学はどんな状況においても、リアルでもWebでも、学生一人ひとりに「密」接に寄り添い、夢を実現できる大学をめざしていきます。 理学療法学科 理学療法士100% 関西唯一の6年連続全員合格! 関西の私立4年制大学では最も多い15回目の卒業生となる健康科学部理学療法学科では、今春卒業した61名が受験し、全員が合格しました。全国平均は86.4%(新卒のみ)でした。6年連続の全員合格はもちろん関西の大学で唯一ですが、受験者50名以上の学校で6年連続全員合格となると、全養成校279校の中で本学のみとなります。 看護医療学科・助産学専攻科 看護師・保健師・助産師すべて100% 過去4年で3回目の3資格全員合格! 10回目の卒業生となる健康科学部看護医療学科では、看護師国家試験に95名が、保健師国家試験には15名が挑戦し、どちらも見事に全員合格をはたしました。また、今年が9回目の修了生となった助産学専攻科でも修了生10名が9年連続となる全員合格をはたし、4月から助産師としての一歩を踏み出すことになりました。 健康栄養学科 管理栄養士93.9% 健康科学部健康栄養学科では82名が挑戦し、77名が合格(93.9%)をはたしました。なお、全国平均の合格率(新卒のみ)は1.1ポイント下がって91.3%となっています。残念ながら3年連続の全員合格ははたせませんでしたが、それでも全国平均を上回る成果をあげています。 <管理栄養士国家試験合格率 3年間推移> 2019年卒2020年卒2021年卒 受験者 85名 90名 82名 合格者 85名 90名 77名 現役合格率 100% 100% 93.9% 全国平均(新卒) 95.5% 92.4% 91.3% 公立学校教員採用試験 都府県・市別の実績 教育学部現代教育学科4回生のうち、52名が公立小学校教諭、8名が養護教諭、5名が特別支援学校教諭の採用試験に現役で合格しました。小学校の現役合格率は71.2%となり、厳しい環境の中、7年連続で6割を超える合格率を残してくれました。一方、公立幼稚園教諭・保育士(公務員)の試験では35名が現役で合格を勝ち取り、合格率は94.6%(3年連続9割台)となっています。 なお、残念ながら現役合格にとどかなかった方も講師として採用されるなど教職志望者の就職率は100%で、この春から全員が教員として教壇に立っています。 小学校教諭【現代教育学科】 71.2%(合格者52名/受験者73名) →7年連続で60%以上が現役合格! 都道府県・市 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 17 17 (1次免除含) 1 16 11 大阪市 14 11 (1次免除含) 0 11 11 堺市 6 3 0 3 3 奈良県 37 25 1 24 14 和歌山県 2 1 0 1 1 三重県 20 20 5 15 7 岡山県 8 7 4 3 3 鳥取県 30 29 18 11 7 高知県 62 44 10 34 17 愛知県 6 4 2 2 1 横浜市 2 2 0 2 2 千葉県 7 7 1 6 3 特別支援学校教諭【現代教育学科】 83.3%(合格者5名/受験者6名) 都道府県 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 2 2 (1次免除含) 0 2 1 奈良県 2 1 0 1 1 鳥取県 3 3 1 2 2 高知県 3 3 0 3 2 長野県 2 2 0 2 2 養護教諭【現代教育学科】 36.4%(合格者8名/受験者22名) →過去最多の8名が現役合格! 都道府県 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪市 3 1 (1次免除含) 0 1 1 堺市 3 2 0 2 2 奈良県 7 6 0 6 2 高知県 19 6 0 6 5 栄養教諭【健康栄養学科】 25.0%(合格者1名/受験者4名) 都道府県 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 大阪府 1 1 0 1 1 中学校・高校(家庭科)教諭【人間環境デザイン学科】 100%(合格者1名/受験者1名) 都道府県 1次受験者 1次合格者 (辞退者) 2次受験者 最終合格者 愛知県 1 1 0 1 1 長野県 1 1 0 1 1 →教員採用試験【1次選考の結果と合格率】 公立幼稚園教諭、保育士採用試験 自治体別の合格者数(2021年1月7日現在 判明分) 公立幼稚園教諭・保育士【現代教育学科】 94.6%(合格者35名/受験者37名) →12年連続で8割以上が現役合格! 都府県・市(町)1次受験者1次合格者辞退者最終合格者 奈良県香芝市 4 4 1 3 奈良県橿原市 3 3 2 1 奈良県大和高田市 3 3 1 2 奈良県葛城市 2 2 1 1 奈良県奈良市 7 6 0 1 奈良県天理市 6 6 4 1 奈良県生駒市 5 5 1 2 奈良県大和郡山市 5 5 4 1 奈良県宇陀市 1 1 0 1 奈良県斑鳩町 4 3 2 1 奈良県三郷町 1 1 0 1 大阪府大阪市 9 7 1 6 大阪府松原市 6 5 0 5 大阪府吹田市 13 13 4 5 大阪府堺市 6 6 0 2 大阪府岸和田市 1 1 0 1 大阪府枚方市 4 4 0 2 大阪府寝屋川市 5 5 3 1 大阪府八尾市 4 4 2 2 大阪府東大阪市 4 2 0 2 大阪府泉大津市 1 1 0 1 大阪府藤井寺市 2 2 1 1 大阪府羽曳野市 2 2 1 1 京都府京都市 2 2 0 2 京都府京田辺市 3 3 2 1 兵庫県西宮市 2 2 0 1 滋賀県長浜市 1 1 0 1 三重県名張市 1 1 0 1 三重県伊賀市 2 2 1 1 三重県津市 2 2 0 1 東京都足立区 1 1 0 1 千葉県浦安市 1 1 0 1 注1. 過年度卒業生を含みません(すべて2021年3月卒業生)。 600人以上が語る!「KIOキャリアナビ」 現役合格して夢をかなえた4回生が、キャンパスライフや合格までの道のりをレポート! 畿央大学が就職に強い4つの理由 現役合格率が高く、就職率ランキングでも常に上位をキープする畿央大学。その理由に迫ります!