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2023.02.21
慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科
腰痛をもつ日本人は38%程度と推定されており、社会経済に与える影響は少なくありません。腰痛治療の一つに、弱い電流を流して痛みを軽減する経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)がありますが、TENSの慢性腰痛の運動時痛に対する効果を検証した報告は限られていました。そこで、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口 述弘助教、庄本 康治教授と高松 昇三(健康科学研究科博士課程2年/オムロンヘルスケア株式会社)らは、腰部運動時痛に対してTENSの効果を検証し、周波数を変調したTENSによって慢性腰痛の運動時痛が軽減することを明らかにしました。この研究成果は、物理療法科学誌「慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験」(https://doi.org/10.57337/jjeapt.21-21)に掲載されています。 研究概要 エビデンスレベルが高いといわれているランダム化比較試験という研究デザインを用いて検証しました。腰部に周波数を変調した(刺激の感覚が変わる)TENSを実施すると、プラセボTENS(電気を流していると説明しているが実際は流していない)と比較して、腰部運動時痛が低下しました。この結果から、周波数を変調したTENSを実施することで、慢性腰痛の運動時痛が軽減されることが明らかになりました。 研究のポイント ・慢性腰痛の運動時痛はTENSで軽減する。 ・周波数を変調させた方が、運動時痛が低下した。 研究内容 慢性腰痛患者80名を高周波数TENS群、変調周波数TENS群、プラセボTENS群に分類して、腰部運動時痛に対して効果を比較しました。腰部運動時痛は、腰部の運動テストでよく用いられる指床間距離を測定し、その時の痛みを運動時痛として測定しました。痛みの程度はVisual Analogue Scale (0 – 100で痛みの程度を示す。0: 全く痛くない 100: 想像できる最悪の痛み)を用いて測定しました。変調周波数TENSはプラセボ経皮的電気刺激と比較して、運動時痛が低下しました。 HF-TENS: 高周波数TENS MF-TENS: 変調周波数TENS 本研究の臨床的意義及び今後の展開 TENSは副作用がほとんどなく、近年では操作が簡単な家庭用の機械も販売されています。本研究の結果から、動作中の痛みを軽減できる可能性が示唆されました。今後は、日常生活場面で経皮的電気刺激を併用し、日常生活動作での腰痛が軽減するかを明らかにする必要があります。 論文情報 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeapt/advpub/0/advpub_21-21/_article 問合せ先 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教 瀧口述弘 TEL:0745-54-1601 FAX:0745-54-1600 E-mail: n.takiguchi@kio.ac.jp
2023.02.17
教職員対象「令和4年度 人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。
2023年2月16日(木)に本学教職員対象の「人権教育推進委員会主催学内研修会」を開催しました。 前年度と同様、対面と遠隔を同時に開催するハイフレックス型での開催となりましたが、80名を超える教職員が参加しました。今年度は、在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター(ZAC)でセンター長をされている丸一 俊介先生を講師にお迎えし、「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション」をテーマにご講演いただきました。 “マイクロアグレッション”とは「意図の有無に関わらずマイノリティに侮辱と侮蔑を伝える、日常的で認識しづらい敵意や見下し」を意味し、日常の親しい関係や支援の場でも無意識に生じることがあります。この“マイクロアグレッション”について、身近にみられる様々な事例をもとに、それらが無意識的に起こる背景とその影響について解説いただきました。 例えば、海外出身者と思われる人に対し「日本語が上手ですね」と言ったり、女性がリーダーシップを発揮することに対し、「女性なのに頼りになるね」と言ったりと、発言者は善意や褒めているつもりの言葉の中に無意識的な「見下し」や「けなし」が含まれているケースも多くあります。これらに対し、マイノリティの価値観や属性を理解していくことが大切ですが、個人の意識だけでは変えられない部分も多く、社会的な影響も大きいと指摘。社会と個人の相互採用で認識がつくられる中で、認識が作られる前の介入の必要性なども示唆されました。 ▼質疑応答の様子 またマイクロアグレッションは相談場面でも起こりうることであり、安易な共感や「たいしたことじゃないよ」というような過小評価は支援への障壁となり、相談者にさらに深刻なダメージを与えることにもつながる可能性があるということもお話しいただきました。 改めて自身の発する言葉一つひとつの意味や重みを考える機会となり、教育に関わる立場として大切な気付きにつながる研修会となりました。 【関連記事】 令和3年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍においてあらためて部落差別について考える」 令和2年度 人権教育推進委員会研修会「コロナ禍における人権問題について」 令和元年度 学園ハラスメント防止委員会・畿央大学人権教育推進委員会 共催研修会「LGBT(ハラスメントと人権)~多様性を認め合う社会をめざして~」 平成29年度 人権教育推進委員会研修会「LGBTって何?ーつながるための第一歩ー」 平成28年度 人権教育推進委員会研修会「子どもの声を聴き権利を守るー子どもアドボカシーとはー」 平成27年度 人権教育推進委員会研修会「ヘイト・スピーチとは何かーだれの、何を傷つけるの?ー」 平成26年度 人権教育推進委員会研修会「発達障害を持つ学生への対応について」
2023.02.16
英語教育コース「セメスター留学2022」現地リポートvol.10~カナダならではのアクティビティを紹介!
2020年度に開設された現代教育学科英語教育コースでは、6か月間英語圏で生活し語学や異なる文化・価値観を学ぶ「セメスター留学」を2回生後期に開講。コロナ禍の影響で延期になっていた3回生と2回生あわせて11名が、2022年9月17日(土)にカナダのビクトリアに出発しました。ブログ第10弾は、現地で気軽に体験できるアクティビティを紹介してくれました! こんにちは。教育学部2回生の吉田 茉生と申します。カナダに滞在できるのも残りわずかとなってまいりました。さて、今回は日本ではあまり体験したことのない、カナダにいるからこそ気軽に体験できるアクティビティと友達の送別会についてお伝えしたいと思います。 アイスホッケー観戦 私が通っているGlobal Village(以下GV)で行われているアクティビティで参加しました。アイスホッケーはカナダの国技で、盛り上がりもすごいです。私は生でスポーツ観戦をしたことがなかったので、最初はその盛り上がり方にとても驚きました。また、音楽とともに登場する選手が格好良くて印象に残っています。時々、選手同士で巻き起こるちょっとしたファイトに反応して観客が大興奮する姿を見るのも面白かったです。 アイススケート クラスメイトとアイススケートに行きました。過去に何度かしたことはありましたが、スムーズに滑るのは意外に難しく、時々こけそうになりながらも頑張っていました。みんなで助け合いながら笑い合いながら楽しみました。そして、驚くことに人生初!アイススケートでこけました。こけた時みんなが駆け寄ってきてくれて、優しいなと思うと同時に、こけてしまった自分に爆笑していました。 ビリヤード GVでも行われているアクティビティですが、個人で楽しむこともできます。GVから徒歩5分ぐらいのアクセス抜群の場所でも遊ぶことができます。初心者でも十分楽しむことができて、私自身も学校のアクティビティとして2回、個人で2回行くほど、ビリヤードの楽しさにはまっていたりします。なにより、プレイしながら友達と会話を楽しんだことが良い思い出です。メキシコ出身の友達がとても上手で、やり方を教えくれました。 送別会 とても仲良くなった友達の一人がGVを卒業し、母国へ帰るということで、最後にご飯を食べに行くことになりました。私たちが訪れたところはBule Fox Caféというビクトリアでかなり人気のあるお店です。そこで食べたBennyというメニューが美味しく、大満足でした。すごく仲良くなれたのに離れてしまうのはとても寂しかったですが、最後まで楽しくお話しすることができて良い思い出になりました。いつの日かまた会えることを願っています!! 最後に 新たな友達との出会いと親しい友達との別れをくり返しながら、沢山の人と話し、多くの経験をして、とても充実した生活を送っています。あと少しの留学期間を後悔のないように、沢山の人と遊び、沢山の思い出を作っていきたいと思っています。 最後まで読んでいただきありがとうございました。楽しんで頂けたら幸いです。 以上、カナダから吉田茉生でした! 現代教育学科英語教育コース2回生 吉田 茉生 【関連記事】 英語教育コース「セメスター留学2022」現地リポートvol.9~有名レストランとワイナリーが集まるイベントに参加! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.8~New Year in Canada! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.7~HAPPY HOLIDAY!! from Canada 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.6~カナダでFIFAワールドカップを観戦! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.5~ホストファミリーとライブへ! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.4~11月のビクトリアとナイアガラの滝! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.3~ビクトリアとトロントへ! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.2~ロッキー山脈ツアーとサンクスギビングデイを体験! 英語教育コース「セメスター留学2022」 現地リポートvol.1~ホームステイ先に到着! セメスター留学1期生、カナダへ出発!~現代教育学科 英語教育コース 「セメスター留学」が始まります!~現代教育学科
2023.02.15
健康栄養学科の山本 隆教授がNHK「ほっと関西」に出演!「冬アイス」の疑問に答えます!
“ホット”なニュースと“ほっと”する話題を平日午後6時からお届けするNHK大阪放送局「ほっと関西」。2月16日(木)の放送では、健康栄養学科の山本 隆教授が出演して、「なんで冬でもアイスを食べたくなるのか?」の疑問に答えます! 「チコちゃんに叱られる」など何度もNHKに出演している山本 隆先生ですが、今回は「ほっと関西」内のコーナー「nan で nan?」で、「なんで冬でもアイスをたべたくなるのか」についてコメントします。 取材は、山本先生の研究室で行われました。取材クルーにイスを勧めたり、質問に一つ一つ丁寧に回答するお人柄が印象的でした。 実験では、健康栄養学科4回生でゼミ生の上村 里帆さんがサポートに駆けつけてくれました。インタビューと実験で予定の2時間を超える取材となりましたが、終始とても和やかな雰囲気で行われました。 冬にアイスを食べたくなるみなさん、どうしてなのか疑問に思いませんか? ぜひご視聴ください! また、山本先生は2/18(土)13時から「畿央大学公開講座」を担当します。テーマは「おいしさを生み出すうま味とコクの新常識~味覚と脳のメカニズム~」。気になる方はこちらもご参加ください! 放送予定 2/16(木)18:00~19:00 *山本隆先生は18:00~18:30内で出演予定ですが、放送の都合上変更になることがあります。 ▶番組ホームページ
2023.02.14
健康栄養学科卒業生が、畝傍高校硬式野球部を栄養サポート!~健康科学研究科
健康科学研究科1年の新田 裕樹(にった ゆうき)です。2020年3月に健康栄養学科を卒業して現場で働くなかで、専門性をもっと深めたいと思い、2022年に母校である畿央大学大学院健康科学研究科に進学しました。 現在は栄養教諭として働きながら、「ジュニア期におけるスポーツ選手の栄養」について研究を進めています。ご縁があって、奈良県立畝傍高等学校硬式野球部を継続してサポートすることになり、紹介させていただきます。 選手たちは身体づくりやパフォーマンスの向上のために、食事の意識を高く持って取り組んでいるようです。しかし、なかなか結果が出なかったり、実際にどんな食事を摂ればよいのか、どのように行動に移せばよいのか、どのタイミングで食べるとよいのかなどがわからないなどの課題がある、と監督から依頼を受けました。私自身も野球をしていたので、選手たちの気持ちにもとても共感でき、研究や現場での勉強の一環という側面もありますが、ただ単純に「何か一つでも力になりたい!」「応援したい!」という思いでサポートが始まりました。 第1回目のサポートでは、指導スタッフ、選手、マネージャー、保護者を対象に栄養講義を行いました。講義は高校生のライフステージに焦点を合わせた成長期における栄養とスポーツ選手に必要な栄養を中心にお話させていただきました。選手からはたくさんの質問があり、参加してくださった方も配付資料やノートにメモを取りながら積極的に受けてくれました。 現在は生徒たちに「食事記録」を取ってもらっています。今後はその食事記録をもとに選手それぞれの食事を分析・フィードバックし、目標に向けて食事の内容・量・タイミングなどアドバイスしていく予定です。 すぐに結果が表れる選手もいれば、なかなか結果が出ない選手もいると思います。もちろん結果につなげることができればと思いますが、仮に結果が出なかったとしてもまだ高校生なので、食事や目標に向けて自発的に行動に移すことの大切さなどを考えるきっかけとなるサポートをしていきたいと思います。これからも選手と共に成長できるようにがんばっていきます! 健康科学研究科 修士課程1年 健康栄養学科 2020年3月卒業 新田 裕樹 【関連リンク】 畝傍高等学校野球部Twitter
2023.02.13
第27回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンス@畿央大学、開催レポート!
2023年2月11日(土)、本学で第27回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンスが開催されました。 畿央大学大学院健康科学研究科 佐藤 剛介客員准教授(奈良県総合医療センターリハビリテーション部勤務)が集会長を務め、「中枢性疼痛の病態理解と理学療法」というテーマで講演と症例報告および討論が実施され、とても濃厚な1日となりました。当日は対面+WEB配信のハイブリッド形式で実施され、400名以上の方にご参加いただきました。 ▼講演:佐藤 剛介客員准教授 ▼座長:森岡 周教授 ▼講演:松原 貴子教授(神戸学院大学) ▼症例報告 井川 祐樹さん(博士後期課程) ▼講演:古賀 優之さん(博士後期課程) ▼鋭い質問 :初瀬川 弘樹さん(畿央大学3期卒業生) #JSNPT27sc でTwitter検索すると当日の様子や参加者の生の声をご覧になれますので、あわせてご確認ください! 【関連リンク】 大学院生2名が4週にわたってラジオ出演!~FM大阪「マクセルmeetsカレッジナレッジ」 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大学院健康科学研究科
2023.02.10
【理学療法学科初の快挙!】4回生の研究成果が国際誌に掲載!~三嶋 瑞穂さんインタビュー
卒業研究として取り組んだ研究成果が国際誌「Behavioral Sciences」誌に掲載された理学療法学科17期生(2023年3月卒業予定)、森岡周ゼミの三嶋瑞穂さん。在学中に国際誌にパブリッシュされたのは理学療法学科史上初めての快挙です! もうすぐ理学療法士国家試験を控える三嶋さんに、卒業研究を進める上での苦労や大学生活、本学をめざしたきっかけなどについて伺いました! 卒業研究のテーマを決めたきっかけは? 中学生の時に脳卒中の患者さんとお話をする機会があり、自分のからだの感じかたの主観的な意識の変化について伺い、興味をもちました。その経験があって、入学後に「行為/運動主体感(日常生活で起こる行為の結果は自分自身であるという主観的な意識のこと)」という内容を知って興味を持ちました。また森岡ゼミの先輩でも運動主体感について研究している方がおられたこともあり、このテーマに決め、先行研究の検索からはじめました。 卒業研究では、東京大学の温先生が開発した実験心理的課題を用いて、感覚予測と結果を一致あるいは不一致させる群を設け、行為主体感がどのように変化するかを分析し、短期間では行為主体感は変化しないことを明らかにしました。 プレスリリースはこちら 卒業研究をする中で大変だったことは? 考察よりも大変だったのはデータ集めでした。心理を定量化するという中身についてもそうですし、サンプル数を集めることや、実験心理手法を用いたこと、試行数が多いことから、とても時間がかかって大変でした。研究内容が難しかったので卒業研究発表会では持ち時間の7分間では十分に話しきれず、本当はもっと長い時間を喋りたかったなと思っています。 卒業研究の考察や、論文の仕上げ、国際誌の掲載に関しては、ゼミの森岡先生や客員研究員の林田先生(本学理学療法学科7期生、健康科学研究科 博士後期課程修了)のご協力もいただき、良い形になりました。 畿央大学をめざしたきっかけは? 理学療法士の養成校を探しているとき、先輩の合格体験記を見ている中で、畿央大学はニューロリハビリテーション研究センターが有名であることを知りました。元々ニューロリハビリテーションには興味があったので、是非にと思い、オープンキャンパスに足を運んで雰囲気も良かったので、受験を決心しました。 4年間を振り返っていかがでしたか? 高校生の時は消極的でコミュニケーションも苦手でしたが、大学に入って実習や人前で発表する機会を通して、苦手だったことが少しずつ克服でき、自分が理学療法士として働く姿も想像できるようになったと思います。 ゼミは毎日朝から夜までずっとデータ集めや発表資料の作成をして、部活のような場所でした。同じゼミ生とはテーマも別々でしたが、研究の考察や、統計解析の仕方、発表資料やスライドの作成など、お互いに議論をたくさんできたのではないかと思います。卒業研究発表会は部活の引退試合のような感覚で、発表後には達成感を得られ、青春を過ごしたなと感じました。 今後の目標を教えてください! 就職先は脳血管疾患を主に超急性期から生活期までずっと診ることができるところに決まったので、授業やゼミで学んだことを活かしていきたいと思います。 臨床現場に出てからも、少しでもデータ集めを続けていくことの大切さは森岡先生に教えていただいたので、これからも取り組んでいきたいと思います。 ▼ゼミ担任の森岡先生と 理学療法学科 森岡教授コメント 昨年度に卒業生した、あるゼミ生同様に、三嶋さんも高校時代にニューロリハビリテーション研究センターに興味を示し、畿央大学に入学してきました。三嶋さんの学年はCOVID-19の影響をもろに受けた学年で、私の授業のほとんどはオンラインになってしまいました。幸いにもゼミの活動は対面で行うことができ、徐々に彼女のキャラクターを理解できるようになりました。本人もインタビューで語っていた通り、他者と多くコミュニケーションをとるタイプではなく、持ち前の知能を存分に表現できていないのではないかと思い、自信をつけてもらうために、彼女自身がやりたい、この難解なテーマを選択しました。研究をゼミの仲間と協力しながら進めていくことで、自分を表現するトレーニングとなったことや、難解なテーマの本研究を完遂できた経験は、確固たる自信につながったのではないかと思います。 三嶋さんには、今後も同テーマに関して臨床をしながらも考えていただき、社会に貢献していく成果をだしていただきたいです。 ニューロリハビリテーション研究センター 林田客員研究員コメント 三嶋さんと直接お会いしたのは卒業研究への取り組みが本格的にスタートする1度きりで、それ以降はオンライン上でやりとりをしました。言葉だけではなかなか伝わりづらい研究テーマのはずですが、それを簡単に理解され研究を進めることができました。また、進捗状況を逐一報告してくれたため、とてもスムーズに研究を遂行できました。かなり短期間でデータ測定を終えましたので、相当集中して頑張ったのだと思っています。その姿勢は、臨床へ出てからも患者さんに向けられるのだろうなと期待しています。また、この研究は私以外にも大学院生や学部生が多く関わって国際誌への掲載に至っており、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターがチーム一丸となってできた成果だと思っています。それに関われたことは、客員研究員として大変嬉しく思います。今後も研究活動を通して将来の患者さんに還元できるよう邁進したいと思います。 関連記事 感覚運動レベルにおける行為主体感の頑健性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
2023.02.10
健康栄養学科の学生が大和茶を使った洋菓子をパティシエと共同開発!奈良銘品館・奈良まほろば館他で販売~ヘルスチーム菜良
大和茶を使用した「緑茶マドレーヌ」「緑茶ヴィーガンクッキー」を共同開発 奈良県内管理栄養士養成課程(畿央大学・近畿大学・帝塚山大学・奈良女子大学)の学生で構成された食育ボランティアサークル「ヘルスチーム菜良(なら)」に所属する畿央nutrition egg team(畿央大学ヘルスチーム菜良)は、社会福祉法人せせらぎ会の田中貴也パティシエと、「Nyu farm」(奈良市丹生町)の大和茶を使用した「緑茶マドレーヌ」「緑茶ヴィーガンクッキー」を共同開発しました。 2月6日より、奈良銘品館奈良公園バスターミナル店、東京にある奈良まほろば館、大和高田市のOhisama・lunchでの販売を実施しております。また3月4日は香芝市のお祭りである「冬彩」でも販売を予定しております。 本商品は畿央大学の学園祭「畿央祭」で販売したところ、すぐに売り切れるほど大好評。ぜひお買い求めください! 販売場所 奈良銘品館奈良公園バスターミナル店(奈良市登大路町76) 奈良まほろば館(東京都港区新橋1丁目8-4 1F・2F SMBC新橋ビル 2階) Ohisama・lunch(奈良県大和高田市神楽3-8-8) 冬彩 ※3/4のみ(今池親水公園・香芝市役所南側:香芝市下田西3丁目9-3) 販売価格 1個 280円(税込) ▼緑茶マドレーヌ ▼緑茶ヴィーガンクッキー 問い合わせ先 畿央大学 健康科学部 健康栄養学科 野原 潤子 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: j.nohara@kio.ac.jp
2023.02.08
感覚運動レベルにおける行為主体感の頑健性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
行為/運動主体感(sense of agency:SoA)とは「このボールを蹴っているのは私だ」とか「このお皿を割ったのは私だ」など、日常生活で起こる行為の結果を自分に帰属させる主観的な意識のことです。感覚・運動に障害が生じると予測と実際の感覚が一致しないことがあり、それにより行為時の快適さが失われ不快感を訴えるケースがみられます。これは後遺症によって生涯にわたって頑健(つまり「適応できない」)に継続するのかは不明でした。畿央大学健康科学部理学療法学科4回生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授と共同で、実験的に感覚予測と結果を一致あるいは不一致させる群を設け、一定の期間それに暴露させることで行為主体感が変化するかを調べました。その結果、短期間では行為主体感は変化しない、すなわち頑健であることが明らかになりました。この研究成果はBehavioral Sciences誌(Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term)に掲載されています。 研究概要 行為/運動主体感(sense of agency)とは「ある運動・出来事を引き起こしている、生み出しているのは自分自身である」という主観的な制御の感覚・意識のことです。行為主体感は感覚予測と実際の感覚結果が一致すれば起こり、それらが一致しなければ低下あるいは喪失すると考えられています。例えば、神経疾患、統合失調症、自閉症スペクトラム障害では行為主体感の低下や喪失が報告されています。こうしたケースは、行為のたびに予測と結果に不一致が生じ、自らの行為への不快感につながることが示唆されます。脳卒中後の運動障害は残りやすく、行為に対する不快感が頑健(すなわち「非適応的」)に継続する可能性が考えられます。しかしながら、一定の期間、感覚予測と実際の感覚結果の不一致に暴露されることによって、行為主体感が適応的に変化するか否かは不明でした。また、行為主体感に影響する抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏などの心理状態の個人差がその適応性に影響するかは不明でした。そこで畿央大学健康科学部理学療法学科4年生 三嶋 瑞穂さん、森岡 周教授、ニューロリハビリテーション研究センター 林田 一輝客員研究員らは、東京大学大学院人工物研究センター 温 文特任准教授が開発した実験課題(PCカーソルの自己制御比を実験的に操作することで行為主体感の変化を検出するもの)を用いて、一定期間、感覚予測と実際の感覚結果の一致(一致群)あるいは不一致(不一致群)の暴露による行為主体感の変化を捉えました。その結果、一致群と不一致群の行為主体感の変化に有意な差はみられず、行為主体感が適応的でなく頑健である可能性を示しました。また一致群のみ、暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と関係することがわかりました。 本研究のポイント ■ 感覚予測-結果の不一致への暴露によって行為主体感は適応的に変化するかを調べた。 ■ その結果、感覚運動水準においては、行為主体感は適応的でない(頑健)であることがわかった。 研究内容 33名の健康な実験参加者を感覚予測と実際の感覚結果の一致群(一致群)と不一致群に分けました。MATLABとPsychtoolbox (MathWorks, USA) を使用して、行為主体感を検出する課題を作成しました。参加者はタッチパッドを使用してPC画面上のドットを4秒以内に自由に操作するように指示されました。なお、ドットの動きを自分の操作0~100%の中で10%ごとにランダムに反映させました。試行数は1試行4秒間の操作を計110試行(0~100%を10%ごとに各10回)とし、「“ドットの動きに違和感があっても”自分が動かしていると感じれば Yes と答える」よう参加者に要求し、個人の行為主体感の閾値を算出しました。図1は実験課題の例ですが、タッチパッドを使用して画面上のドットを操作した際、そのドットが自分によってコントロールできていると感じているかどうかが評価されました(図は100%または50%コントロールの例)。不一致群では算出した個人の閾値より10%低い値を100試行、一致群では完全に自分の動きで100試行実施させました。 図1.行為主体感を捉える実験課題 参加者はタッチパッドを使用して PC 画面上のドットを操作し、4 秒以内にドットを自由に操作するように指示されました。そのドットをコントロールできていると感じるかどうかで行為主体感が評価されました。図は100%または50%コントロールの例を示しています。 行為主体感の曖昧さの指標である傾きと50%の確率で「Yes」と回答する主観的等価点(Point of Subjective Equality:PSE)をロジスティック回帰曲線を使用して算出しました。また、参加者の抑うつ傾向、統合失調症傾向、感覚過敏を各種質問紙を用いて調べました。行為主体感を表すロジスティック回帰曲線の傾き、PSEに群間差はありませんでした(図2)。つまり感覚予測と感覚結果の不一致への非適応性が示され、感覚運動課題を用いた感覚運動レベルにおいては、不一致を受け入れることが難しいことが示唆されました。一方で、一致群のみで暴露前後の行為主体感の変化が抑うつ傾向と有意な相関関係を示しました。この結果は、抑うつ傾向の場合、感覚予測と結果の一致経験によって行為主体感を向上させる可能性が示唆されました。しかし、長期にわたる感覚予測と結果の不一致の暴露の影響は不明なままです。今後は、長期間の暴露による思考の変化といった認知レベルが感覚予測と結果の不一致といった感覚運動レベルにどのように影響するかを調べる必要があります。 図2.行為主体感の変化 行為主体感の指標であるロジスティック回帰曲線の勾配 ( A ) とPSE ( B ) の群別の結果(平均 ± 標準偏差)を表します。検定の結果、交互作用と主効果はどちらも有意ではありませんでした。Congruent group(一致群)、Incongruent group(不一致群) 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究における感覚予測と結果の不一致の暴露プロセスは、脳卒中後の片麻痺プロセスを想定しており、学習された不使用の原因に接近する可能性があると予想しています。一方、感覚予測と結果が一致する課題は抑うつ傾向を改善させる選択肢となる可能性が示唆されました。今後は、感覚運動水準の課題に文脈や思考など認知水準の手続きを加え、柔軟に適応できるかどうかを調べる必要があります。 論文情報 Mizuho Mishima, Kazuki Hayashida, Yoshiki Fukasaku, Rento Ogata, Kazuki Ohsawa, Ken Iwai, Wen Wen, Shu Morioka Adaptability of the Sense of Agency in Healthy Young Adults in Sensorimotor Tasks for a Short Term Behavioral Sciences, 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2023.02.03
サーマルグリル錯覚に特徴的な脳波律動~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
温かいモノと冷たいモノを同時に触ると、本当は熱くないはずなのに、それを「痛い」と経験することがあり、この経験は”サーマルグリル錯覚”と呼ばれています。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、サーマルグリル錯覚を経験している時の脳波活動を計測・分析し、特徴的な脳波活動を明らかにしました。この研究成果はNeuroReport誌(Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion)に掲載されています。 研究概要 ”サーマルグリル錯覚”とは、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられている棒に手を置くと、痛みをともなう灼熱感が惹起される現象です(図1)。この現象は、中枢神経メカニズムによって生じると説明されていますが、そのメカニズムは十分に明らかにされていません。畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程を修了した浦上 慎司さん(現:星ヶ丘医療センター 理学療法士)とニューロリハビリテーション研究センター大住 倫弘 准教授は、健常者を対象に、サーマルグリル錯覚中における脳波活動を計測・分析しました。その結果、サーマルグリル錯覚を経験している時には、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質周辺の脳波律動が特徴的に変化することが明らかになりました。この研究は、サーマルグリル錯覚における中枢神経メカニズムの一端を明らかにしたことになります。 本研究のポイント ■ 温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルの上に手を置くと痛みを感じる ■ サーマルグリル錯覚中では島皮質に特徴的な変化が生じる 研究内容 健常21名を対象にして、サーマルグリル錯覚によって生じる脳波活動を計測・分析しました。具体的には、①暖かい棒だけが並べられているグリルに手を置く条件(コントロール条件)と、②温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルに手を置く条件(サーマルグリル錯覚条件)で脳波活動を計測し、それらの脳波活動を比較することによってサーマルグリル錯覚に特徴的な脳波成分を抽出しました。 その結果、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質が、サーマルグリル錯覚を引き起こす脳領域であることが明らかになりました。島皮質は、暖かい/冷たいという感覚が入力されているだけでなく、”痛い”という情動経験にも関与します。加えて、この島皮質は中枢性疼痛をもたらす脳領域としても知られています。今回の結果は、中枢性疼痛のメカニズム解明に役立つ基礎研究になることが考えられます。 論文情報 Uragami S, Osumi M. Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion. NeuroReport 2023 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住 倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp


