2026.08.03
自分への思いやりが、ジャンクフード喫食の低さを介して 自殺念慮の低さと関連~看護医療学科
― 超加工食品の摂取頻度と自殺念慮の関連を、生活習慣精神医学の視点から検証 ―
本研究のポイント
- セルフコンパッションが高い人ほど、基本的心理欲求(自律性・有能感・関係性)が満たされている傾向が示されました。
- 基本的心理欲求が満たされている人ほど、超加工食品の摂取頻度が低い傾向が示されました。
- 超加工食品の摂取頻度が高い人ほど、自殺念慮が強い傾向が示されました。
- これらを統合し、セルフコンパッション・日常の食行動・自殺念慮をつなぐ新しいモデルを提案しました。
本研究は、本学看護医療学科の紅林 佑介准教授による成果で、国際誌「Archives of Psychiatric Nursing」に掲載されました。
研究の背景
自殺念慮につながる要因は、心理的苦痛だけでなく、睡眠、食事、身体活動、社会的つながりなどの日常生活とも関係する可能性があります。近年、生活習慣精神医学では、こころの健康と食行動の関連が注目されています。なかでも、加工度が高く、糖・脂質・塩分を多く含みやすい超加工食品は、精神的健康との関連が報告されるようになりました。
一方で、超加工食品の摂取を単に「控えるべき行動」として扱うだけでは、なぜその行動が生じるのか、どのように支援できるのかは十分に説明できません。本研究では、困難に直面した際に、過度な自己批判を弱め、自分に思いやりを向ける心理的資源であるセルフコンパッションと呼ばれる心理特性に着目しました。さらに、自己決定理論に基づく基本的心理欲求、すなわち「自律性」「有能感」「関係性」が、セルフコンパッションと食行動をつなぐ心理的機序になり得るとも考えられました。
研究の概要
そこで、本研究では、20~59歳の成人400名を対象に、セルフコンパッション、基本的心理欲求、超加工食品の摂取頻度、自殺念慮の関連を横断的に検討しました。分析では、セルフコンパッションから基本的心理欲求、超加工食品の摂取頻度を経て自殺念慮へ至る連続的な媒介経路を検証しました。
その結果、セルフコンパッションは基本的心理欲求の充足と正に関連し、基本的心理欲求の充足は超加工食品の摂取頻度の低さと関連しました。また、超加工食品の摂取頻度は自殺念慮の高さと関連しました。さらに、セルフコンパッションと自殺念慮の関連は、基本的心理欲求を介した間接的な関連として示されました。

新知見と意義
本研究の新知見は、第一に、超加工食品の摂取頻度が自殺念慮と関連する生活習慣上の要因として示された点です。自殺念慮は多くの要因によって形成されるため、食行動だけで説明できるものではありません。しかし、日常的で修正可能な行動である食品選択が、自殺念慮という重篤な精神健康指標と関連したことは、生活習慣精神医学および精神看護学にとって重要な知見と言えます。
第二に、セルフコンパッションが基本的心理欲求を介して、超加工食品の摂取頻度の低さと関連した点です。これは、健康的な食品選択には心理状態も影響する可能性を示唆しています。つまり、健康的な食行動になるよう支援するためには、「健康的な食行動を教える」だけでなく、本人の自律性を尊重し、有能感を高め、周囲とのつながりを支える心理的サポートも必要である可能性も示唆します。
第三に、セルフコンパッション、基本的心理欲求、食行動、自殺念慮を一つのモデルで統合した点です。セルフコンパッションを高める支援は、単に気分を和らげるだけでなく、基本的心理欲求を満たし、より健康的な生活行動を選びやすくなり、結果として自殺念慮を軽減する可能性があります。

看護実践への示唆
本研究は、精神保健上の健康教育に対して、次のような示唆を与えたと言えます。自殺念慮の軽減を目指した新しい複合的看護介入、つまりセルフコンパッションや基本的心理欲求を満たす心理教育と、健康的な食事選択および食習慣改善へのサポートを組み合わせる介入の開発につなげられる可能性があります。
今後の展望
本研究は横断研究であるため、因果関係を断定することはできません。今後は、縦断研究や介入研究によって、セルフコンパッション、基本的心理欲求、超加工食品の摂取頻度、自殺念慮の時間的関係を検証する必要があります。
論文情報
Yusuke Kurebayashi
Archives of Psychiatric Nursing. 2026 July 22;64:152186
問い合わせ先
畿央大学 健康科学部看護医療学科
大学院 健康科学研究科
准教授 紅林佑介
〒635-0832 奈良県北葛城郡広陵町馬見中4-2-2
y.kurebayashi@kio.ac.jp
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