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2021.08.05

文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」に認定されました。

関西私大では5校が選出!     このたび本学の教養科目「情報処理演習」が、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されました。 このプログラムは通称「MDASH」(Approved for Mathematics, Data science and AI Smart Higher Educationの略)といい、「学生の数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、かつ、数理・データサイエンス・AIを適切に理解し、それを活用する基礎的な能力を育成することを目的として、数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行うものを文部科学大臣が認定及び選定して奨励することにより、数理・データサイエンス・AIに関する基礎的な能力の向上を図る機会の拡大に資すること」(文部科学省ホームページより)を目的として今年度から開始されました。   ▼認定校が掲げることのできる「認定ロゴ」       初年度は全国から国公立合わせて66大学、うち関西の私立大学では本学を含め5大学が認定されました(奈良県下の認定は本学のみ)。   ▼関西の採択校一覧(都道府県・アイウエオ順)  種別 大学名都道府県 国立 滋賀医科大学 滋賀県 国立 滋賀大学 滋賀県 国立 京都大学 京都府 私立 京都ノートルダム女子大学 京都府 公立 福知山公立大学 京都府 私立 大阪歯科大学 大阪府 国立 大阪大学 大阪府 私立 阪南大学 大阪府 私立 関西学院大学 兵庫県 国立 神戸大学 兵庫県 私立 畿央大学 奈良県 国立 和歌山大学 和歌山 採択校一覧(文部科学省ホームページ/本学は25ページに記載あり)   本学では2014年度から全学生への貸与PC導入を開始しました。「情報処理演習」の授業では、それを活用しながら「問題解決パターンの会得」「能動的学修」「情報セキュリティ」「ICT活用の背景にあるモデルの理解」「対象や処理の仕組みの理解」「統計学」「データサイエンス及びAI利用・活用の理解と演習」などの演習を行い、大学での専門的な学びの基盤となる情報処理能力の涵養に努めてきました。今回の認定は、まさにそうした取り組みが認められた成果であるといえます。   社会の高度情報化がますます進む中で、文部科学省は「AI戦略2019」において「文理を問わず全ての大学・高専生(約50万人卒/年)が正規課程にてリテラシーレベルの数理・データサイエンス・AIを修得すること」を目標に掲げています。本学も引き続き時代の流れに即応した意義深い学びを学生の皆さまに提供していけるよう、努めていきたいと考えています。

2021.08.03

日本初、乳がん術後女性のQOL向上を支援する「使い捨て入浴着」を開発

日本初、乳がん術後女性のQOL向上を支援する「使い捨て入浴着」を開発 ―奈良県でのアンケート調査に基づき健康改善への活用に期待―     畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科村田浩子教授、小松智菜美助手、看護医療学科中西恵理講師、理学療法学科福森貢教授、村田ゼミの学生らの研究グループは、乳がん術後女性が着用することにより、手術痕を気にすることなく入浴できる使い捨てタイプの入浴着を開発しました。   近年、日本女性の11人に1人が乳がんに罹患し、女性が家庭や社会で活躍する30歳代後半から急激に増加するがんといわれています。しかし、早期発見であれば約90%の人が治癒しています。このことから、乳がん治癒後の健康改善、QOL向上を支援することを目的に、日常の楽しみの一つである入浴に着目し、温浴施設等で着用できる入浴着を制作しました。   本研究は、奈良県福祉医療部疾病対策課、文化・教育・くらし創造部消費・生活安全課の協力を得て、奈良県内の乳がん術後女性および入浴施設へのアンケート調査等(注)により試作・着用テストを繰り返して行い、着脱がしやすく、お湯切れの良いデザインを実現しました。   (注)本研究に協力いただいた機関等については以下の通りです。 ・奈良県 福祉医療部 医療政策局 疾病対策課 ・奈良県 文化・教育・くらし創造部 消費・生活安全課 ・奈良県がん拠点3病院に通院する乳がん患者の方 45名(奈良県総合医療センター・市立奈良病院・近畿大学奈良病院) ・奈良県内入浴施設 110施設     1.研究の内容 2016年に行った乳がん術後女性への予備調査では、回答者の約半数の人が「温泉に行きたくてもいけない経験をした」と答え、市販されている入浴着についても半数の人が「知らない」と答えていました。入浴施設でも入浴着が認知されてなく、奈良県内の施設ではほとんど知られていませんでした。 再度、2020年に実施したアンケート調査でも、入浴着の認知度は術後女性・施設とも低く、「知らない」「あまり知らない」と回答した女性が57%、施設で88%にも及んでいました。調査から、奈良県における入浴着の認知度は低く、入浴施設での運用状況も徹底されていないことが明らかになり、行政等からの入浴着の着用についての周知が求められていました。   また術後女性そして施設等へのアンケート調査より、必要とされる入浴着のタイプや入浴着に必要な機能・素材等の課題が認められました。   2.研究成果 研究は、調査結果をもとに株式会社GSIクレオスの支援を受けて、日本初となる「使い捨て入浴着」を制作しました。 入浴着のデザインの特長は、肌に近い色の生地を使用することで着用していることが目立たず、胸の上部の切り替え部分にギャザーを入れることにより左右の胸のバランスをカバーしました。   生地の外側にはっ水性、内側に吸水性の性能を持つ素材を使用し、湯につかっても浮き上がらず、湯船から出た時にも湯切れを良くしました。生地の内層部に伸縮性のあるポリウレタンを使用し、背中をV字型に大きく開けるデザインにすることで身体を洗い易くしました。結果、首、裾部分のどちらからでも、着用時の動作や脱着がしやすくなりました。 入浴着が、公衆浴場、旅館・ホテルの浴場、サウナなどで活用できるよう奈良県は、本年3月、県内すべての施設に「入浴着を着用した入浴に理解を求める」ポスターを制作・配布し、県民への周知と理解を求めました。   3. 研究の発表 研究の成果を2021年6月19日に開催される日本繊維製品消費科学会2021年次大会(オンライン開催)で発表しました。   4.今後の展開(予定) 今後は入浴施設での運用を試みるとともに、持ち込みタイプの「マイ入浴着」についても、素材開発を進めていきます。   ※本研究は文部科学省令和元年度科学研究補助金の助成を受けて実施しています。   問い合わせ先 健康科学部 人間環境デザイン学科  教授 村田 浩子 E-mail:h.murata@kio.ac.jp  

2021.07.30

令和5年4月「畿央大学付属広陵こども園」を開設予定です。

※外観イメージは変更となる可能性があります   畿央大学は「広陵町と学校法人冬木学園における公私連携幼保連携型認定こども園設置及び運営に関する協定」を締結し、行政と協力しながら、本学の持つ教育および研究の知見やノウハウを生かし、2023年4月に「畿央大学付属広陵こども園」の開設をめざしています。 大学が運営する公私連携幼保連携型認定こども園は奈良県では初となります。   こども園ホームページへ     広陵町は子育て世代の流入により子どもの数が増加傾向にあるものの幼稚園は定員割れになっていることから、保護者の勤務状況にかかわらず利用できる認定こども園の設立を進めており、本学にとってはキャンパスに近い地の利も生かした幼児教育の重要な学びの場となります。地元広陵町で、建学の精神である「徳をのばす」「知をみがく」「美をつくる」を具現化した特色ある園づくりを進めてまいります。   【関連資料】 三者協議会設置規定   令和4年度 第2回三者協議会議事録 令和4年度 第2回三者協議会関連資料 令和4年度 第1回三者協議会議事録   令和3年度 第2回三者協議会議事録 令和3年度 第1回三者協議会議事録 令和3年度 第1回三者協議会資料

2021.07.27

地域在住後期高齢者における新規要介護発生の地域内格差:4年間の前向きコホート研究 ~理学療法学科

要介護状態のリスクに1.7倍も地域内格差がある可能性 ~5000名を4年間追跡した調査結果から~   わが国において、健康日本21(第2次)では、健康寿命の延伸に加え、健康格差*の縮小も目標として掲げられています。健康寿命の延伸とは、つまり要介護状態にならないように予防することで、今までに要介護状態になるリスクに関連する要因についての研究は多く行われてきました。一方、健康格差について、都市部・農村部での比較や都道府県・市町村間での結果は示されてきましたが、格差の縮小のためにはそれぞれの市町村でより小地域での検討が必要であると考えられます。理学療法学科の松本大輔 准教授、高取克彦 教授は、要介護状態になるリスクが特に高い後期高齢者を対象に4年間の前向き調査を行い、新規要介護認定について小地域間(小学校区)で格差の存在を我が国で初めて明らかにし、IJERPH 誌(IF:3.39)に発表しました。   *健康格差:地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差   研究概要 A市在住の後期高齢者約5000名を4年間追跡調査し、新規要介護認定に関連する要因について調査しました。 小地域間(小学校区)での4年間での新規要介護発生割合と、新規要介護認定に関連する要因について調整してもなお、小地域格差があるかを分析しました。   本研究のポイント 後期高齢者に対する大規模調査によって、関連要因を調整しても、新規要介護認定に地域内格差があること明らかになりました。   小学校区ごとの新規要介護発生割合は8.1-14.6%と約1.8倍の地域内格差が認められました(図1)。       関連する要因として年齢、性別、病気、フレイルを調整しても、特定の小学校区では要介護状態になるリスクが約1.7倍も高いことがわかりました。さらに、複数の種類の社会参加はリスクを約30%下げることも明らかになりました(図2)。     調査1年後以降から、地域AとKの間に新規要介護発生率の差が見られています。   本研究の意義および今後の展開 本研究は後期高齢者の新規要介護発生における地域内格差を示した大規模かつ前向きに調査した数少ない研究です。今回の結果から、より生活に密着した小地域の実態を把握・分析することで、介護予防の解決の糸口につながる可能性があると考えます。今後は、社会経済的要因や環境要因(Walkability:歩きやすさ)などの視点を加え、地域内格差の原因の解明に向けて研究を続けていきます。   謝辞 研究にご協力いただきました住民の皆様、市役所の方々に感謝申し上げます。   論文情報 D. Matsumoto, K. Takatori. Regional Differences Incidence Among Japanese Adults Aged 75 Years and Older: A 4-Year Prospective Cohort Study. Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18(13), 6791;    問い合わせ先 畿央大学 理学療法学科 准教授 松本 大輔(マツモト ダイスケ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: d.matsumoto@kio.ac.jp

2021.07.20

東京五輪に理学療法士として本学教員・卒業生4名が参加します。

「TOKYO2020MEDスタッフ」として東京五輪へ!   2020東京オリンピック・パラリンピックの理学療法サービス部門で「TOKYO2020MEDスタッフ」として奈良県から参加する4名はすべて本学理学療法学科の教員・卒業生・修了生で、選手村や競技場の救護室に配置されてアスリート支援を行う予定です。各国のオリンピアンがベストパフォーマンスを発揮できるよう、チームKIOで頑張っていただきたいと思います!   【左から】唄大輔さん、楠元史さん、加納希和子さん、福本貴彦准教授     オリンピック・パラリンピックを目前に控えた今の率直な気持ちを寄稿していただきました。 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#1~加納さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#2~唄さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#3~楠元さん編 東京五輪に参加する理学療法士4人に聞きました!#4~福本先生編 参加後のレポートはこちらから。 福本先生による東京五輪参加レポート 番外編 畿央生が見た東京五輪#1~安浦さん編 プロフィール 福本 貴彦 准教授 畿央大学理学療法学科/健康科学研究科 准教授 理学療法士(運動器専門理学療法士) ■東京2020大会 活動内容 オリンピック・パラリンピック:選手村総合診療所(伊豆分村、河口湖分村) ■社会活動 奈良県理学療法士協会 スポーツメディカルサポート委員会 委員長 奈良県理学療法士協会 学校保健・特別支援担当委員会 委員長 奈良県教育委員会学校保健課題解決ワーキング会議構成員 講師 ・学校における運動器検診について実施要領などを選定 奈良県教育委員会運動部活動指導の工夫・改善支援事業 コンディショニング担当 ・依頼のあった学校の運動部でコンディショニング指導 ・自治体教育委員会からの依頼でスポーツテスト 斑鳩町教育委員会(中学生) 田原本町教育委員会(小学生・幼稚園児) 宇陀市教育委員会(幼稚園児) 三宅町教育委員会(幼稚園児) NPO奈良スポーツ育成選手を守る会 理事 ・奈良県下のスポーツ検診を実施 ■メディカルサポート 全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園大会) センバツ高等学校野球大会(春の甲子園大会) 奈良県高等学校野球連盟主催大会(春季・秋季近畿大会予選、夏大会予選) 奈良マラソン 鳥人間コンテスト(京都大学ShootingStars)パイロット指導 セレッソ大阪、ギラヴァンツ北九州、奈良クラブ、ポルベニル飛鳥、バンビシャス奈良などのサポート     唄 大輔さん 理学療法学科2008年卒業/健康科学研究科2015年修了 理学療法士(運動器専門理学療法士) 社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション課 主任 畿央大学大学院 健康科学研究科 客員研究員   ■東京2020大会 活動内容 オリンピック・パラリンピック:選手村総合診療所(東京:晴海) パラリンピック:選手村総合診療所(静岡:河口湖)     楠元 史さん 理学療法学科2011年卒業/健康科学研究科修士課程2017年修了 理学療法士(運動器認定理学療法士)社会福祉法人 恩賜財団 済生会奈良病院 リハビリテーション部NPO法人ポルベニルカシハラスポーツクラブ/ポルベニル飛鳥 ■東京2020大会 活動内容 パラリンピック:選手村総合診療所(東京:晴海本村)パラリンピック:選手村総合診療所(静岡:河口湖分村) ■メディカルサポートポルベニル飛鳥チームトレーナー奈良マラソン     加納 希和子さん 理学療法学科2012年卒業/健康科学研究科修士課程2019年修了 理学療法士(スポーツ認定理学療法士、中級障がい者スポーツ指導員) 医療法人 勝井整形外科 畿央大学大学院 健康科学研究科 客員研究員 ■東京2020大会 活動内容 オリンピック・パラリンピック:自転車競技(トラック、ロード)の競技会場@静岡:伊豆ベロドローム、富士スピードウェイ   在学生・卒業生の皆さんにお知らせ 在学生・卒業生限定で福本先生をはじめとするTOKYO2020MEDスタッフによるオンラインセミナーを開催します。 10/13(水)第14回理学療法特別講演会「2020東京五輪の活動報告」 学科は不問ですので、アスリート支援に興味がある方は気軽にご参加ください。

2021.07.20

すくみ足があるパーキンソン病患者における歩行中の前方不安定性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

歩行時に足が地面にくっついたようになって前に進めなくなる症状を「すくみ足」といいます。すくみ足があるパーキンソン病患者は前方に転倒しやすいことが知られていますが、歩行中に前方へ不安定となっているかについては客観的に明らかにされていませんでした。畿央大学大学院修士課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは、三次元動作解析装置を用いて、すくみ足があるパーキンソン病患者は、すくみ足がないパーキンソン病患者よりも歩行中に前方へ不安定となっていることし、また、その前方不安定性はすくみ足に関連する歩幅の低下や歩行リズムの上昇と関連することを実験的検証により初めて明らかにしました。この研究成果は、Neuroscience Research誌(Forward gait instability in patients with Parkinson's disease with freezing of gait)に掲載されています。   研究概要 パーキンソン病患者の歩行中の前方不安定性は、すくみ足によるものと、前屈姿勢によるものの2つの表現型があるとされてきました。すくみ足は、パーキンソン病患者でみられる特徴的な歩行障害であり、すくみ足が出現する直前には歩幅の低下や歩行率の上昇がみられることが知られています。近年、すくみ足があるパーキンソン病患者は前方への転倒頻度が高いことが報告されていましたが、歩行中の前方不安定性については、客観的な検証が行われていませんでした。 歩行中の前方不安定性の客観的指標には、踵接地時における身体質量中心(COM)と支持基底面(BOS)までの距離(COM-BOS距離)や、Margin of Stability(MOS)が用いられています。COM-BOS距離は前方へ転倒するリスクの程度を示し、MOSはCOMの位置と速度の両方を考慮した動的安定性を示します。 畿央大学大学院修士課程の浦上英之氏と岡田洋平准教授らは、すくみ足があるパーキンソン病患者11名、すくみ足がないパーキンソン病患者9名および高齢者13名を対象に三次元動作解析装置を用いて歩行解析を行い、前方不安定性について検討しました。その結果、①すくみ足があるパーキンソン病患者は、すくみ足がないパーキンソン病患者と比較して、歩行中に前方へ平衡を失うリスクが高く、動的に不安定となっていることと、②その前方不安定性はすくみ足に関連する歩行指標(歩幅減少と歩行率上昇)と関連することが示されました。   本研究のポイント ■ すくみ足があるパーキンソン病患者の歩行時の前方不安定性について三次元動作解析装置を用いてを客観的に検証した。 ■ すくみ足があるパーキンソン病患者はすくみ足がないパーキンソン病患者と比較して、歩行時に前方に平衡を失うリスクが高く、前方への動的不安定性が高いことが明らかになった。 ■ すくみ足があるパーキンソン病患者の歩行中の前方不安定性は、歩幅の低下や歩行リズムの上昇と関連があることが明らかにされた。   研究内容 本研究では、すくみ足があるパーキンソン病患者11名、すくみ足がないパーキンソン病患者9名および高齢者13名を対象に三次元動作解析を用いて歩行解析を行い、前方不安定性について検証しました。対象者は、40点の赤外線反射マーカーを貼付した状態で、快適歩行速度で5mの歩行路を歩行し、赤外線カメラにて取得したマーカーの三次元座標情報から時空間歩行指標(歩幅、歩行率)と運動学的指標(体幹前傾角度、後続肢の股関節伸展角度)、さらに前方不安定性指標(COM-BOS距離、MOS)を算出しました(図1)。   図1:歩行の前方不安定性指標 右踵接地時におけるCOM-BOS距離、MOSの算出方法を示す。いずれの指標も、低値であれば前方へ不安定であると解釈される。   その結果、すくみ足があるパーキンソン病患者のCOM-BOS距離は低い値を示しました。また、疾患重症度を調整した群間比較において、すくみ足があるパーキンソン病患者はすくみ足がないパーキンソン病患者よりもMOSが低い値を示しました(図2)。   図2:歩行の前方不安定性指標の群間比較 (*p<0.05) PD+FOG:すくみ足があるパーキンソン病患者群、PD-FOG:すくみ足がないパーキンソン病患者群、Control:健常高齢者  *有意な群間差あり(ANOVA, p<0.05) †有意な群間差あり(ANCOVA 疾患重症度で調整, p<0.05)   また、すくみ足があるパーキンソン病患者群において、COM-BOS距離は歩幅と正の相関を示し、MOSは歩行率と負の相関を示しました(図3)。   図3:各群における歩行中の前方不安定性指標とすくみ足関連指標の散布図 ●すくみ足のあるパーキンソン病患者 〇すくみ足のないパーキンソン病患者 △健常高齢者   この結果は、すくみ足があるパーキンソン病患者において、歩幅の減少はCOM-BOS距離の減少と関連し、前方への転倒リスクが高まること、また歩行率の上昇は、MOSの減少と関連し、動的安定性が低下することを示しています。これは、すくみ足のあるパーキンソン病患者における歩行時の前方不安定性があること、すくみ足に関連する歩幅の低下や歩行率の上昇は前方不安定性と関連することを実験的検証により初めて示したことになります。これらの結果から、すくみ足と関連する歩幅の減少や歩行率の上昇を、投薬治療やリハビリテーションにより改善することが、すくみ足があるパーキンソン病患者の歩行中の前方不安定性の軽減につながることが期待されます。   本研究の臨床的意義および今後の展開 パーキンソン病患者の歩行中の前方不安定性は、すくみ足によるものと、前屈姿勢によるものの2つの表現型があるとされてきましたが、本研究では、すくみ足があるパーキンソン病患者の前方不安定性を実験的検証により初めて明らかにしました。今後は、もう1つの表現型である前屈姿勢のあるパーキンソン病患者の前方不安定性について検証する予定です。   論文情報 Hideyuki Urakami, Yasutaka Nikaido, Kenji Kuroda, Hiroshi Ohno, Ryuichi Saura, Yohei Okada Forward gait instability in patients with Parkinson’s disease with freezing of gait. Neuroscience Research, 2021   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 岡田洋平(オカダヨウヘイ) E-mail: y.okada@kio.ac.jp   Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600  

2021.07.09

新型コロナウイルス感染症 陽性者の発生状況について

このたび、本学の学生複数名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました。感染者や濃厚接触となった学生は特定されており、療養中または経過観察中です。   保健所及び本学の調査により、学外での行動を共にしたことにより感染が拡がったものと考えております。7月7日(水)より、該当学生が属する学年・学科については登学を停止し、全ての授業を遠隔授業に切り替えております。   また保健所とは適宜連携をとっており、その他の学年・学科では、対面授業と遠隔授業を併用しつつ、感染拡大防止に全力で取り組んでおります。   「感染リスクが高まる5つの場面」で提唱されている、『飲酒を伴う懇親会』、『大人数や長時間に及ぶ飲食』、『マスクなしでの会話』、『狭い空間での共同生活』、『居場所の切り替わり』については十分気を付けるように指導をしてまいりましたが、今後も保健所、関係諸機関と連携し、感染予防対策の徹底にさらに尽くしてまいります。   感染者及び関係者の人権尊重と個人情報の保護にご理解とご配慮を賜りますよう、お願いいたします。   感染された学生の一日も早い回復をお祈りいたします。   7月9日 畿央大学 新型コロナウイルス対策本部   【7月16日追記】 今回濃厚接触となった全ての学生のPCR検査が陰性と判明しております。現時点で、学内での接触による感染は確認されておりません。

2021.07.09

慢性疼痛患者における疼痛律動性のタイプ分類~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

近年、日内で疼痛強度が変動する「疼痛律動性」の存在が注目されています。こうした疼痛律動性を把握することは慢性疼痛への治療戦略を考えるうえで有用であり、様々な疾患で律動性の調査が行われています。しかし、これまでの研究では疾患横断的に調査されたものはなく、律動性が疾患由来で生じるのか?神経障害性や心理状態といった個人の要因で生じるのか?といった点が明らかになっていませんでした。畿央大学大学院博士後期課程 田中 陽一 氏と森岡 周 教授 らは、慢性疼痛患者56名を対象にクラスター分析を用い、疼痛律動性の類似性から群分けを行い、リズムタイプの異なる3タイプの存在を明らかにしました。また、神経障害性疼痛の重症度がこれらの群間で異なっていることを報告しました。 この研究成果は、Medicine誌 (Classification of circadian pain rhythms and pain characteristics in chronic pain patients:An observational study)に掲載されています。   研究概要 これまで疾患別に疼痛律動性の存在が多数報告されてきました。しかし、疼痛律動性が生じる原因について論じられたものはなく、律動性が疾患由来で生じているのか、個人因子の影響が強いのかといった点が明らかになっておりませんでした。そこで、畿央大学大学院博士後期課程 田中 陽一 氏 と 森岡 周 教授 らは、慢性疼痛患者56名の疼痛律動性を疾患横断的に調査しました。 その結果、リズムタイプの異なる3タイプの律動性の存在を明らかにし、更に神経障害性疼痛の重症度に群間差があることがわかりました。こうした疼痛律動性の把握は、時間帯を考慮した生活活動の導入や身体活動の管理などの介入に有用であると考えられます。また、3群間で疾患に有意差を認めなかったことから、疾患では疼痛律動性を把握することは困難であり、本研究で群間差が見られた神経障害性の要素などの個別的な評価が必要であることが示唆されました。   本研究のポイント ■ 慢性疼痛患者を対象に疼痛律動性を調査した。 ■ 律動性の異なる3タイプの存在が明らかになった。 ■ 群間で神経障害性疼痛の重症度に有意差があったことから、こうした疼痛のリズムには疼痛の性質が影響していることが示唆された。   研究内容 慢性疼痛患者56名を対象に、疼痛律動性は1日6時点(起床時・9時・12時・15時・18時・21時)を7日間評価しました。6時点の7日間平均に標準化処理(Zスコア)を行った6変数でクラスター分析を行い、律動性の類似性から分類を行いました。   クラスター分析の結果、起床時に最も疼痛強度が高く、時間経過とともに疼痛が減少していくタイプ、起床時に疼痛強度が高いが日中に低下し、夕方から夜間にかけて疼痛が再度増悪していくタイプ、これらのタイプとは逆に起床時に最も疼痛強度が低く、時間経過とともに疼痛が増強していくタイプの3タイプの律動性を明らかにしました(図1)。   図1.疼痛律動性のリズム分類   クラスター分析により、異なる特徴を持つ3つのクラスターが抽出された。CL1では、起床時の痛みスコアが最も高かったが、時間の経過とともに痛みスコアは低下する傾向にあった。CL2では、起床時に痛みスコアが高く、日中は減少したが、15時以降は徐々に増加した。CL3では、時間の経過とともに痛みスコアが徐々に上昇する傾向が見られた。     また、3群間の比較において疾患や疼痛罹患期間、服薬の有無には有意差は見られませんでしたが、神経障害性疼痛の重症度に群間差を認めました(図2)。CL1・2とCL3の間で有意差が見られたことから神経障害疼痛の重症度が起床時の高い疼痛強度に関与していることが考えられます。本研究の結果から、疼痛律動性は疾患由来ではなく、神経障害性などの疼痛性質に強く影響を受けていることが示唆されました。   図2.3群間の比較 CL1とCL2は、CL3よりも神経障害性の重症度の総得点が高かった。また、誘発痛については、CL1がCL3よりも高いスコアを示した。   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、疼痛律動性が疾患由来ではなく疼痛性質によって生じていることを示唆し、個別的な評価によって律動性を評価する必要性が示されました。今後は、疼痛律動性を踏まえた、治療介入の効果と限界について研究される予定です。   論文情報 Yoichi Tanaka, Hayato Shigetoh, Gosuke Sato, Ren Fujii, Ryota Imai, Michihiro Osumi, Shu Morioka Classification of circadian pain rhythms and pain characteristics in chronic pain patients: An observational study. Medicine, 2021   関連する論文 ■ Tanaka Y, Sato G, Imai R, Osumi M, Shigetoh H, Fujii R, Morioka S. Effectiveness of patient education focusing on circadian pain rhythms: A case report and review of literature. World J Clin Cases 2021; 9(17): 4441-4452   ■ 田中 陽一, 大住 倫弘, 佐藤 剛介, 森岡 周. 日中の活動が慢性疼痛の日内変動に及ぼす影響─右腕神経叢損傷後疼痛を有する1症例での検討─. 作業療法 2019; 38: 117-122, 2019   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 田中 陽一(タナカ ヨウイチ)   畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター  森岡 周(モリオカ シュウ) E-mail: s.morioka@kio.ac.jp   Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600  

2021.07.06

令和3年度「保護者懇談会」を開催しました。

2021年(令和3年)7月3日(土)に保護者懇談会を開催しました。昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により実施することができませんでしたが、今年度はオンライン会議システムによるリアルタイム配信とオンデマンドによる動画配信を併用した形で開催しました。   学長による挨拶と進路支援部によるキャリアガイダンスは、本学ホームページ上にてオンデマンドにより一定期間配信し、保護者懇談会終了後もご覧いただくことができるようにしました。      ▼保護者懇親会用のページ     すでに視聴されている保護者の方からは、「コロナ禍における就職活動の状況やサポート体制がよくわかった」「就職活動に対する保護者の心構えなどがよく分かった」という感想をいただきました。   保護者懇談会当日は、オンライン会議システムを使用して5学科の学科別説明会を実施し、250名を超える保護者様にご参加いただきました。「学科長のお話もとてもわかりやすく、学生すべてに配慮してくださっている様子がよく分かりました」「学校の方針や卒業までのスケジュールが把握でき、非常に有意義な懇談会でした」「大学や先生方がコロナ禍の中、学生達のことを考えて色々、試行錯誤しながら授業等を進めてくださっていることがよく分かりました」などのお声をいただきました。   ▼学科別説明会の様子    保護者の方と担任教員による個人面談についても、同じくオンライン会議システムを使用して実施しました。「どんな先生と関わっているのか、親としての不安なことなど色々聞けて良かったです」「個人懇談がリモートで出来てとてもよかったです。親身になってくださる先生にとても感謝しています」などの感想を多くいただき、顔を見ながら面談ができたことで保護者の皆さまにもご安心いただけたようです。   ご参加、ご視聴いただいた保護者の皆さま、ありがとうございました。コロナ禍の影響により直接お会いすることはできず、また保護者の皆さま同士の交流もかないませんでしたが、本学の取組や学生の現状を少しでも知っていただく機会になったのではないかと考えています。   これからも保護者の皆さまのご意見を参考に、教育の改善につなげてまいります。来年度も多くの保護者の皆様のご参加をお待ちしております。

2021.07.05

パーキンソン病患者、高齢者の方向転換時の移動軌跡、足接地位置の特性~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

方向転換を円滑に行うには、移動軌跡や足の接地位置を適切に制御することが重要であると考えられます。畿央大学の岡田洋平 准教授、福本貴彦 准教授、慶應義塾大学の高橋正樹 教授、同大学院 萬礼応(現筑波大学 助教)、京都大学の青山朋樹 教授らの研究グループは、レーザーレンジセンサー(慶応義塾大学 高橋正樹 教授、萬礼応ら 開発)を用いた高精度歩行計測システムにより、パーキンソン病患者と高齢者がTimed up and go test(TUG)で方向転換を行う際の移動軌跡と足接地位置の特性について調査しました。その結果、パーキンソン病患者は、TUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強い人ほど方向転換時の歩幅が低下することを明らかにしました。一方、高齢者はTUGにおいて歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示されました。 この研究結果はGait & Posture誌(Footsteps and walking trajectories during the Timed Up and Go test in young, older, and Parkinson’s disease subjects)に掲載されています。   研究概要 方向転換は、加齢やパーキンソン病により障害されます。高齢者は方向転換時の歩数が増加し、速度が低下し、転倒リスクの増加につながります。パーキンソン病患者は、方向転換の速度がより低下し、歩幅も低下することなどが示されています。円滑な方向転換には、移動軌跡や足の接地位置を適切に制御することが重要であると考えられますが、これまで高齢者やパーキンソン病患者が、方向転換時にどのように移動軌跡や足接地位置をとる傾向にあるのか、またその傾向は方向転換時の歩幅などにどのように関連するかについては明らかにされていませんでした。畿央大学の岡田洋平准教授、福本貴彦准教授、慶應義塾大学の高橋正樹教授、同大学院 萬礼応(現筑波大学助教)、京都大学の青山朋樹教授らの研究グループは、レーザーレンジセンサー(慶応義塾大学 高橋正樹 教授、萬礼応ら 開発)を用いた高精度歩行計測システムにより、高齢者やパーキンソン病患者がTimed up and go test(TUG)で方向転換を行う際の移動軌跡と足接地位置の特性について検討しました。 その結果、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強い人ほど方向転換時の歩幅が低下することを明らかにしました。また、高齢者はTUGにおいて歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示されました。   本研究のポイント ■ パーキンソン病患者と高齢者の方向転換時の移動軌跡と足接地位置を、レーザーレンジセンサーを用いた高精度歩行計測システムにより評価した。 ■ パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強いほど方向転換時の歩幅が低下することが明らかになった。 ■ 高齢者は、方向転換において歩隔(足の横幅)を広くして、マーカーのより奥の空間に足を接地して方向転換することが示された。   研究内容 パーキンソン病患者、健常高齢者、健常若年者を対象に、レーザーレンジセンサー(LRS)を用いた高精度歩行計測システム(図1)により、TUGを行う際の脚移動軌跡と足接地位置について比較検証しました。従来のTUGは、椅子から立ち上がり、3m歩いて、180度方向転換し、戻ってきて、椅子に座るまでの所要時間を計測するのみでした。しかし、今回我々はLRSを用いた計測システムを利用することにより、肢移動軌跡や足接地位置に関する指標(マーカーと足接地位置の最短距離、スタート地点と足接地位置の最大前方距離、足接地位置の最大横幅など)や歩行の時空間指標(歩幅、歩隔、歩行率)もマーカーレスで計測可能でした。   図1 レーザーレンジセンサー(LRS)を用いた計測システム   その結果、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地して方向転換し、その傾向が強いほど、方向転換時の歩幅が低下することが明らかになりました。この結果は、パーキンソン病患者はTUGにおいてマーカーの近くに足を接地してより鋭い角度で方向転換しようとすることにより、方向転換時の歩幅の低下の程度が大きくなる可能性を示唆しています。一方、高齢者はTUGにおいて歩隔が広く、方向転換時のスタート地点と足接地位置の最大前方距離が大きいことが示されました。この結果は、高齢者が方向転換時に歩隔を広くして、側方への動的不安定性を減少させるための代償戦略をとっていることを表している可能性があります。   図2 結果 a. 3群のTUGにおける移動軌跡および足接地位置の代表例 b. マーカーと足接地位置の最短距離の群間比較 *<0.05 c. マーカーと足接地位置の最短距離と方向転換時の歩幅の関連(パーキンソン病患者)   本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究の結果、パーキンソン病患者と高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡の特性が初めて示されました。今回得られた知見は、パーキンソン病患者の方向転換時の歩幅の低下の助長を防ぐため、あるいは高齢者の動的不安定性を軽減するための運動療法や動作指導を行う上で有用であると考えられます。今後は、パーキンソン病患者や高齢者の方向転換時の足接地位置や移動軌跡に関連する要因や他疾患における傾向についても検証していきたいと考えています。   論文情報 Okada Y, Yorozu A, Fukumoto T, Morioka S, Shomoto K, Aoyama T, Takahashi M. Footsteps and walking trajectories during the Timed Up and Go test in young, older, and Parkinson’s disease subjects.  Gait & Posture, 2021.   問い合わせ先 畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター 岡田 洋平(オカダ ヨウヘイ)   Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: y.okada@kio.ac.jp  

2021.06.25

令和3年度 冬木智子特別奨励賞・畿央大学特別奨励賞授与式を執り行いました。

令和3(2021)年6月24日(木)のお昼休み、令和3年度冬木智子特別奨励賞ならびに畿央大学特別奨励賞の授与式がC棟1階エントランスホールにて執り行われました。     「冬木智子特別奨励賞」は、冬木智子名誉理事長が私財を寄付し設立した特別奨励基金により、学業成績・人物ともに優秀な学生に対して表彰状および奨励金の授与を行うもので、各学科から1名、合計5名が選ばれました。 また、「畿央大学特別奨励賞」は、学業成績・人物ともに優秀な学生のこれまでの努力を賞し、今後さらなる活躍を期待し表彰状および奨励金の授与を行うものです。2回生~4回生の各学科1名(教育学部は2名)、合計18名が選ばれました。   教職員、在学生が見守る中、冬木正彦理事長より表彰状と奨励金が一人ひとりに手渡されました。     冬木理事長からは、受賞学生の日々の努力を称えられるとともに、「他の学生の模範となり、コロナ収束後に訪れるこれからの新しい社会に貢献できる人材となることを大いに期待しています。」と、今後の活躍を願う言葉が送られました。     受賞された学生の皆さん、おめでとうございました。    

2021.06.24

8/12(木)学びを結ぶオンラインセミナー「チームで進めるポジティブ行動支援」を開催します。

2021.06.23

慢性腰痛患者における歩行時の体幹運動制御は環境に依存する~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

慢性腰痛における物の持ち上げ動作時の体幹の運動学は既に明らかにされていますが、歩行時の体幹制御や、それが環境によって変化するのかは明らかにされていませんでした。畿央大学大学院神経リハビリテーション研究室 西 祐樹 氏(博士後期課程)、森岡 周 教授らは、慢性腰痛患者では歩行時の体幹の変動性や安定性が異常になり、それは日常生活環境でより顕著になることを明らかにしました。また、これらの制御異常は、痛みや恐怖、QOLと関連していることを示しました。この研究成果はJournal of Pain Research 誌(Changes in Trunk Variability and Stability of Gait in Patients with Chronic Low Back Pain: Impact of Laboratory versus Daily-Living Environments)に掲載されています。   研究概要 慢性腰痛患者では、立位や持ち上げ動作中に体幹の変動性や安定性が異常になることは既に明らかにされています。一方で、歩行中での体幹運動制御異常は明らかにされていませんでした。加えて、腰痛の運動制御の研究は、整えられた実験環境のみで調査されており、実際に腰痛が発生する日常生活環境では計測されてきませんでした。畿央大学大学院神経リハビリテーション学研究室 西 祐樹 氏(博士後期課程)、森岡 周 教授らの研究チームは、無線加速度計を用いて、慢性腰痛患者における『外来リハビリ環境』および『日常生活環境』に応じた歩行制御の変化を調査しました。その結果、慢性腰痛患者では歩行時における体幹の変動性や安定性が異常になっていることが明らかになり、それは日常生活環境でより顕著になることが分かりました。また、これらの日常生活環境での歩行制御の変化は、痛みや恐怖、QOLと関連していることも明らかになりました。   本研究のポイント ■ 慢性腰痛患者における外来リハビリ環境と日常生活環境での歩行時の体幹制御を評価した。 ■ 慢性腰痛患者では、歩行時の体幹の変動性や安定性が異常となっており、それは日常生活環境でより顕著になった。 ■ これらの制御異常は、痛みや恐怖、QOLと関連していることが明らかになった。   研究内容 健常者と慢性腰痛患者を対象に、腰部に加速度計を装着し、『外来リハビリ環境』と、3日間の『日常生活環境』にて計測しました。加速度データから前後軸、左右軸それぞれにおいて、変動性の変数としてストライド間のSDおよびマルチスケールエントロピー、安定性の変数として最大リヤプノフ指数を算出しました。その結果、慢性腰痛患者における左右軸のばらつき、前後軸の不安定性が増加しており、それは日常生活環境でより顕著になりました。これらの歩行制御の変容は、日常生活環境においてのみ、痛みや恐怖、QOLと正の相関関係が認められました。このことから、外来リハビリ環境だけでは慢性腰痛患者の運動制御に関する病態を把握しきれていない可能性が考えられます。また、左右軸は痛みや恐怖に基づいた代償的なばらつきの変化により、安定性を保持している一方で、前後軸は代償戦略が機能せずに不安定性が高くなっており、QOL の低下にまで波及していると考えられます。以上のことから、本研究は、腰痛の増悪予防や病態把握における日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆しました。   図1.歩行時の体幹制御の指標(© 2021 Yuki Nishi)   歩行時の加速度の前後軸、左右軸からストライド間のSD、安定性の指標として最大リヤプノフ指数、変動性の指標としてマルチスケールエントロピーを算出。   本研究の臨床的意義および今後の展開 腰痛の増悪予防や病態把握における日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆しました。今後はケースシリーズや縦断研究で運動制御と腰痛の因果関係を明らかにしていく予定です。   論文情報 Yuki Nishi, Hayato Shigetoh, Ren Fujii, Michihiro Osumi, Shu Morioka Changes in Trunk Variability and Stability of Gait in Patients with Chronic Low Back Pain: Impact of Laboratory versus Daily-Living Environments Journal of pain research, 2021   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 西 祐樹(ニシ ユウキ) 教授 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2021.06.23

【受付終了】8/12(木)教職員のための夏の公開講座(WEB)を開催します。

校内研修では経験できないような「教育課題」について、大学の教員による講義を開催し、教職員の方々に日々の教育実践に役立つ研修の機会を提供します。参加を希望される先生方におかれましては、実施要項をご確認の上、お申し込みください。   公開講座テーマ 運動器健診と子どもの体力について 近年、健康問題とされている幼児や児童、生徒の体力低下について、2016年度に導入された運動器健診の内容や意義を再度共有し、その健診結果の考察などを通して、具体的にどのような問題が「子どもの体力」に起こっているのか、今後どのように日々の教育実践の中でその問題解決に取り組むべきかを検討する一助となる内容を含んだ講座です。 日時  令和3年8月12日(木)14時~15時(質疑応答を含む) 講師:健康科学部理学療法学科 准教授 福本 貴彦     実施要項 受講対象 奈良県内の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教職員 開催方法 オンライン開催(ZOOMを利用できる環境が必要です。) 申込方法 7/30(金)にて、申込受付を終了しました。 定  員 100名 主  催 畿央大学 後  援 奈良県教育委員会   お問合せ 畿央大学教育推進部 教職員向け公開講座係 Tel:0745-54-1601 E-mail:info@kio.ac.jp

2021.06.23

【快挙】大学院生の半側空間無視に関する原著論文が権威ある雑誌「Cortex」に掲載!~健康科学研究科

大学院健康科学研究科博士後期課程に在籍している高村優作さんと藤井慎太郎さんの筆頭著者(equal contribution)の原著論文「Interaction between spatial neglect and attention deficit in patients with right hemisphere damage」がCortexに2021年6月12日に掲載されました。   Cortexは神経科学系では権威ある雑誌で、理学療法士が行った臨床研究が掲載されるのは極めて稀なことであり、快挙です。       本研究は本学博士後期課程修了し、現在国立障害者リハビリテーションセンター病院で勤務している大松聡子さん、本学 森岡周教授、本学客員教授で国立障害者リハビリテーションセンター研究所神経筋機能障害研究室長の河島則天さんらとの共同研究です。   本研究は、脳卒中後に生じる高次脳機能障害『半側空間無視』の新しい臨床評価手法の確立のために極めて重要な成果となりました。なお詳細は、高村さんが現在研究員として所属している国立障害者リハビリテーションセンター研究所のプレスリリースをご覧ください。   【国立障害者リハビリテーションセンター研究所プレスリリース】 http://www.rehab.go.jp/hodo/japanese/news_2021/news2021-01.pdf

2021.06.18

緊急事態宣言の解除に伴う課外活動の対応について

在学生の皆さん   6月20日(日)をもって大阪府等近隣府県への緊急事態宣言が解除されることを受け、本学では活動制限レベル指針をレベル2に引き下げることとしました。   今回のレベル引き下げにより、課外活動については、「課外活動の段階的な再開のための基準表」STEP2で活動を再開することとします。   感染防止対策については、日々の検温等の体調管理、マスクの着用(学内では不織布マスクの着用を推奨)、アルコール消毒の徹底、三密回避は当然ながら、不特定多数の人が集まるイベントへの参加や飲み会・会食を慎むこと、不要不急の外出は控えるなど、引き続きリスク回避の意識を高めて行動するようお願いします。   畿央大学 学生支援センター

2021.06.16

【研究成果】要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーとの関連を明らかに~健康科学研究科

定期的な身体活動が早期死亡や慢性疾患、心身機能低下の予防に効果があることはこれまでに多く報告されています。しかし、本邦では運動習慣者や日常生活上の歩数を増加させる取り組みが行われているにも関わらず、長年改善に至っていない現状があります。 これまでの身体活動量に関連する要因についての研究では、一般高齢者を対象にしたものが多く、要支援・要介護高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因について明らかとなっていません。畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 武田広道 氏と高取克彦 教授 らは介入研究のベースライン評価のデータを使用し、要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシー(意欲ややる気の著しい低下)、身体機能、心理機能の関連について明らかにすることを目的に本研究を行いました。 この研究成果は(公社)日本理学療法士協会の協会誌「理学療法学」に掲載されています。   研究概要 通所介護事業所を利用している要支援・要介護高齢者65名に対して身体活動量、身体機能、精神心理機能の評価を行い、身体活動量と関連している要因についての分析を行いました。   本研究のポイント ■要支援・要介護高齢者の身体活動量に関連している要因が明らかになった。 ■身体活動量に関連しているのは年齢や性別に関わらず、アパシー(意欲ややる気の著しい低下)と歩行速度が関連していることが分かった。   研究内容 データ解析の結果、身体活動量が高い高齢者と比較し、身体活動量が低い高齢者は、通常歩行速度、意欲低下や無関心を示す指標であるアパシー、健康統制感(Health locus of control: HLC)が有意に悪い値を示していました。     ※HLCとは社会的学習理論に基づくLocus of control(統制の所在)の考えを保健行動の領域に適用したものです.内的統制の者は健康を自分自身の努力によって得られると信じ,外的統制の者は医療従事者や運によって得られると信じる傾向があるとされています。   また、身体活動量に影響を及ぼす要因についての分析では、対象者の年齢と性別を調整した後で、アパシーと通常歩行速度が重要な因子であることが分かりました。   本研究の意義および今後の展開 今回の研究は要支援・要介護高齢者の身体活動量に影響を及ぼす要因について検討したものです。現在は本研究の対象者に12週間の在宅運動プログラムを実施してもらい、要支援・要介護高齢者同士で運動状況のモニタリング、フィードバック、情緒的サポートの介入を行うことの運動継続効果についての分析が済んでいます。また、介入を終了してさらに12週間経過した時点で、介入効果が維持できているかも追跡調査をしています。今後は高齢者の運動継続や身体活動量向上に効果がある取り組みについて、明らかにしたいと考えています。   論文情報 武田広道・高取克彦 要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーの関連 理学療法学(J-STAGEでの早期公開日:2021年6月9日)   問い合わせ先 畿央大学 理学療法学科 教授  高取 克彦(タカトリ カツヒコ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: k.takatori@kio.ac.jp

2021.06.16

痛みへの恐怖は運動のプログラム中枢を変容させる~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

ヒトは痛みを怖がるとうまく身体を動かせなくなりますが、その脳メカニズムは明らかになってはいませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授、森岡 周 教授らは、東京大学医学部付属病院緩和ケア診療部 住谷昌彦 准教授らと共同で、痛みを怖がりながら運動を継続していく時の脳活動を調べ、身体を動かそうと意識をすると運動プログラム中枢の活動に異常が生じることを明らかにしました。この研究成果は、Behavioural Brain Research誌(Fear of movement-related pain disturbs cortical preparatory activity after becoming aware of motor intention)に掲載されています。   研究概要 痛みを怖がると身体をうまく動かせなくなることは多くの研究で明らかにされてきており、これは運動をプログラムしている “脳” の活動異常によるものだと考えられてきました。しかしながら、具体的に脳にどのような活動異常が生じるのかは明らかにされていませんでした。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 大住倫弘 准教授らは、健常成人18名を対象に、ボタンを押したら痛みが与えられる実験状況を設定して、ボタンを押すことを怖がっている時(ボタンを押す直前)の脳波活動を計測しました(図1)。 その結果、痛みを怖がりながらボタンを押す条件では、ボタンを押す直前に出現する「運動準備電位」の波形に異常が認められました。さらに詳細に分析すると、この時には、行動抑制の機能がある前頭領域の過活動と、運動プログラム中枢である補足運動野・帯状皮質の過活動が同時に認められました。これは、いわば、『ブレーキを踏みながらアクセルと強く踏んでいるような状態』で、自らで行動を抑制しながらも、無理をして行動を起こしている状態だと考えられます。おそらく、この脳の活動異常が続くことで、運動の異常パターンが出現するのだと考えられます。 加えて、興味深いことに、この実験では、被験者に「自分がボタンを押そうとおもった瞬間」をLibet paradigmで記録しており、上記のような脳の活動異常は「ボタンを押そうと思った」 という自らの意思が顕在化した後から生じていることが明らかになりました。つまり、運動を意識すればするほど、あるいは痛みを意識すればするほど、脳の活動が異常になりやすいことを示唆しています。 参考:Libet paradigm(YouTube)   本研究のポイント ■ 痛みを怖がりながら身体を動かすと運動のプログラム中枢に活動異常が生じる ■ そのような脳の活動異常は、運動の意思が顕在化された後から生じる   研究内容 以下の図1のような手順で実験を進めました。被験者は、目の前に用意された特殊な時計(2550ミリ秒で1周する時計)をみながら、好きなタイミングでボタンを押すように指示されました。ボタンを押すと痛みをともなう電気刺激が与えられ、これを続けると被験者はボタンを押すことを怖がるようになります。また、ボタンを押した後には、「時計の針がどこの時にボタンを押したいと思ったか?」に対して回答をします。多くの被験者は、実際にボタンを押した時間の0.2 – 0.5秒前の時間を回答しました。   図1:実験手順   このような実験タスクをすると、ボタンを押す直前に「運動準備電位」という図2のような波形が観察されました。この運動準備電位は、運動のプログラムを反映しており、この振幅や潜時に異常が生じるということは、運動プログラム中枢に何らかの異常が生じていることを意味します。実験の結果では、痛い条件での運動準備電位は、痛くない条件での運動準備電位よりも振幅が大きかったです。また、この振幅の異常は、自分でボタンを押そうという意思が顕在化した後(=自分の運動意図に気づいた後)に生じていました。     図2:各条件における運動準備電位   この時間帯でSource解析を進めると、図3のような行動抑制の機能がある前頭領域の過活動と、運動プログラム中枢である補足運動野・帯状皮質の過活動が同時に認められました。   図3:痛みへの恐怖によって運動プログラム中枢に認められた異常な脳活動   本研究の臨床的意義 痛みへの恐怖が運動を悪くする脳メカニズムの一端が明らかになりました。また、これは運動の意思が顕在化された後に生じる脳活動の異常であることから、運動/痛みを過度に顕在化させないようなリハビリテーションの重要性を示唆していると考えます。   論文情報 Osumi M, Sumitani M, Nishi Y, Nobusako S, Dilek B, Morioka S. Fear of movement-related pain disturbs cortical preparatory activity after becoming aware of motor intention. Behav Brain Res. 2021 May 26;411:113379.   問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 准教授 大住倫弘(オオスミ ミチヒロ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: m.ohsumi@kio.ac.jp