2026.03.09
第25回畿央大学公開講座を開催しました。
畿央大学では、地域の皆様に生涯学習の場を提供することを目的とした「畿央大学公開講座」を毎年開催しています。今年度は2026年2月21日(土)に畿央大学L103講義室において、人間環境デザイン学科 𠮷村 理教授と現代教育学科 大城 愛子准教授が講演いたしました。
大学の役割は教育基本法にも明記されている通り、高等教育を修得する場であり、新たな知見を追求する場でもあります。そしてその成果を社会の発展のために広く提供するという大きな役割を担っています。つまり社会に貢献するということです。畿央大学は、広陵町や河合町をはじめ奈良県やその他多くの自治体や企業とも協定を結び、様々な連携事業を行っています。
この畿央大学公開講座においては、本学の教員の専門的な教育内容や最先端の研究の中から、地域の皆さまのお役に立つようさまざまな内容を提供しています。毎年この公開講座を楽しみにしてくださる方がたくさんいらっしゃいます。
講座①「地産地消の町と建築」講師:人間環境デザイン学科 𠮷村 理 教授
𠮷村教授の専門は建築設計で、研究テーマは「木造」「再生」「地域」です。葛城山麓に位置する江戸・明治からの歴史的町並みが残る御所まちの古民家をリノベーションして自宅兼事務所を構え、大学教員の傍ら近畿圏を中心に建築設計なども行っています。

今回の講座は、「地産地消の町と建築」という興味深いテーマでの講演でした。地産地消と聞くと地元の食材を地元で消費することをイメージしますが、町や建築の地産地消とは、地元の素材を使って、地元の職人の手でつくられる町や建築のことです。それは地域の人々の暮らしを豊かにし、地域の魅力を高め、地域にとって大きな財産になる素晴らしいことです。
地域の資源である「まち」(民家・町並み)、「やま」(里山・木材)、「ひと」(住民・職人)の3要素をどう育て、どう料理して暮らしを豊かにしていくかということに主眼を置いて、自身が推進しておられるプロジェクト等を紹介しながらわかりやすく説明してくださいました。
𠮷村教授は12年前に、御所町内にある築180年の反物を扱う商家であった古民家「花内屋」をリノベーションし、自宅兼事務所にしています。自宅の一部は町の人々にも開放しており、どんな用途にも対応できる柔軟性を持ったコミュニケーションを生む空間が町の人々の憩いの場所となっています。
▼クリックで吉村教授のサイトに遷移します
建物をつくることを町の景観保全や里山再生につなげることを考えながら、戸建て住宅、宿泊施設、レストラン、店舗、酒蔵、蒸溜所、古民家のリノベーション・地域計画など、数多くのプロジェクトに取り組んでおられます。
また建築材料は、主に地元の産材を使用します。奈良県は樹齢100年を超える大径木スギ人工林の蓄積量が極めて豊富です。このスギ丸太を有効活用し断熱、調湿、耐震に優れた板壁を作り出し、様々な建築物に利用しておられるということです。
吉野など県内の山では、桧や杉の大径木を伐採する際に、条件に合わない大径木を山に残したまま捨てている現状があります。輸送コスト等で採算が合わずにそのまま山に捨てられた残材を見て、先生は非常に「もったいない」と感じられ、それらの捨てられている木材を生かして、地元の優れた大工さんや左官屋さんに施工を依頼し建築材として役立てているということです。まさに材や人についてあらゆる面で地産地消をめざしています。
吉村教授は10年以上にわたって事務所周辺の町家を改修し、酒蔵、蒸溜所、宿泊施設、レストラン、カフェ、事務所、住宅などにコンバージョンしてきました。今後も地域と協力しながら、多くの町家群のリノベーションを通して町に賑わいを生む町並みを生み出していただけることでしょう。
皆さんの身の回りにもきっと沢山の素晴らしい地域資源があります。それを見つけてひとや町が元気になるコミュニティーを生み出すことができたら、とても素晴らしいことではないでしょうか?

参加者の声
- とても丁寧に分かりやすく教えて頂きました。時間があっという間に過ぎてもっと講義を聞きたいと思いました。ありがとうございました。
- 身近なところのマレバージョンの実例を紹介していただき、大変興味深く聴かせていただきました。機会を見つけて現地を訪れたいと思いました。
- 聞きたかったような話が聞けて満足できております。先生の人柄もよく楽しくお話が聞けました。
- とてもキレイな家で一度訪れてみたいと思いました。レストランは良いですね。
- 土間のある空間はとても好きです。これからも地域に根差した設計を続けてください。
- 日常生活以外のことが知れてよかったです。特に吉野山の道づくり、今朝のテレビで報道していました。よくわかりました。
- 題名からは予想できない貴重なお話ありがとうございます。
- 建築における地産地消の意味がとてもよく分かりました。
- 地域が抱える課題と先生のご研究そして学生の活動等がリンクして着実に成果を上げておられることに感銘を受けました。多くの人を巻き込むことは大変難しく、見通しを立てることと、見通しを現実的なものにしていくこと、そして正解に導いていくことなど、日々頭も身体もフル回転させておられるのでしょう!素敵なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
- 奈良の地域の文化から実務における既存材や土間の室内環境の利用に活かしている話が聞けて本当に良かったと思います。
- この講義を受講出来るのを楽しみにしています。平々凡々な刺激の無い毎日を送っているので色々なジャンルの講座は脳に活を入れる意味でも、又、昔の大学の講座を聴いて知識を深めていた頃に戻った気分になれる意味でも私には貴重です。講座の開設に感謝します。
- 本日は貴重な講演、ありがとうございました。私自身、県内工業高校建築科教員として民家のもつ魅力を現代に活かす取り組みに感銘を受けました。今後も広く県民にPRをお願いします。

講座②「多文化社会スウェーデンの現状 ~その光と影~」講師:現代教育学科 大城 愛子 准教授
大城准教授の専門は「教育制度学」「幼児教育学」「保育学」で、研究テーマは「スウェーデンの幼児教育制度・子育て支援に関する研究」、そして「幼児教育・保育と義務教育の接続に関する研究」です。
高校時代をスウェーデンで過ごされ、畿央大学教育学部開設当初から教鞭を取っています。その間もたびたびスウェーデンを訪れ、研究を進めています。

福祉国家として有名なスウェーデンは、積極的に移民や難民を受け入れてきたことでも知られています。異なる文化的背景をもつ人々を社会に統合することで労働力を確保して発展してきた「移民に寛容な社会」というイメージが強い国です。しかし最近では、銃犯罪の増加や犯罪の低年齢化といった深刻な治安上の懸念を抱えており、平和で安全な福祉国家というイメージが変わりつつあります。
今回の講座は、スウェーデンで暮らした経験をもとに多文化化の現状について、私たち日本人が同様の課題にどう向き合うべきかについて考える機会となりました。スウェーデンでは、1990年代以降、戦争紛争地域から移民・難民の受け入れを積極的に行ってきました。しかし近年の状況をみると、そうしたバックグラウンドをもつ人たちの中で、スウェーデン社会に馴染めず疎外されたと感じて生きづらさや不満を抱えた少年たちをギャングが取り込み、銃撃の実行犯やドラッグの運び屋として使っているという現状があります。
日本でも、外国人労働者に頼る面は多々あり、そのおかげで成り立っている現状があります。ただ、「手軽で安価な労働力」ではなく、異なる文化的背景を持つ一人の人として受け入れる際に、どのような支援と受け入れる側の「覚悟」が必要なのかを考える必要があるのではないでしょうか?
また、日本ではどのような価値観を大切にしていて、将来どのような国を子どもたちに残したいかという国家観から政策を検討する必要性も示唆されました。多文化化や移民政策という難しい課題についても、大城准教授の実体験を交えてわかりやすく解説しました。

参加者の声
- スウェーデンは、平和な国だというイメージだったのですが、先生の講座を受講し、移民・難民の受け入れは大変な現状に陥って解決するには難しいということが良くわかりました。
- スウェーデンの現状を理解できた。福祉国家で老後は安心と思っていた。
- ご経験からお話をいただいたので、大変分かりやすかった。今、日本でも問題となっている事だったので、テーマも良かった。
- スウェーデンは福祉社会で光の多い国かと思っていましたが、影の部分が深刻であることを知れた。日本が今後、移民・難民を受け入れるための指標となる。
- これからの日本が進む方向を考える一つの大きなヒントであると思います(とりわけ外国人政策について)
- 福祉国家としてのスウェーデンのイメージしかありませんでしたが、本日の講座にて実情を知ることとなりました。また、移民の問題は日本にとっても重大な問題であり、大きな課題であると感じました。
- 日本でも今後考えなくてはいけない問題。先生の経験談なども交えてのわかりやすい講座でした。話の流れが良く聞きやすかったです。
- 今、日本でも多くの外国人の方がいらっしゃるので、共に生きることの難しさ、これからの日本の在り方も考えさせられました。とても素晴らしい講義でした。もっと先生のお話をお聞きしたかったです。ありがとうございました。
- 今日のような講座を社会人講座として定期的に開催いただけたらありがたいです。
- 実体験に基づく、現地での空気感が伝わる講演で、とても良かったです。豊かな福祉国家というイメージとは異なる側面を知る機会となりました。

講演会終了後も参加された皆様が熱心に質問され、先生方がお一人お一人の質問に丁寧に回答している姿が印象的でした。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
畿央大学では、今後も受講者の皆様に満足いただける公開講座を開催してまいります。
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