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2026.08.14

入院中の慢性がん関連痛を時間軸で捉える-反復評価からみえた1日の痛みの特徴-~ニューロリハビリテーション研究センター

がんに関連する慢性疼痛は、身体機能や生活の質を損なう重要な症状ですが、入院中に痛みが1日の中でどのように変化するかは十分に明らかではありませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程の杉野達也氏と森岡周教授らは、慢性がん関連痛を有する入院患者の痛みを、起床時から就寝時まで1日6回、3日間にわたり評価しました。その結果、集団レベルでは痛みの強さが1日を通して比較的安定していることが示されました。本成果は、入院患者の痛みを単一時点の数値だけで判断せず、身体機能、鎮痛薬、治療状況、心理面、入院環境を含めて解釈する重要性を示すものです。この研究成果はJournal of Palliative Medicine誌(Within-Day Pain Profiles in Hospitalized Patients with Chronic Cancer-Related Pain: Implications for Inpatient Symptom Assessment)に掲載されています。

研究概要

痛みは、病気や組織の状態だけで決まるものではなく、心理状態、活動量、治療、薬剤、生活環境などの影響を受ける主観的な体験です。さらに、慢性疼痛の一部では、朝に強い、夕方から夜に強くなるなど、時間帯による変化が報告されています。しかし、入院中の慢性がん関連痛について、起床から就寝までの痛みの推移を定時に繰り返し測定した研究は限られていました。そこで、畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程の杉野達也氏、森岡周教授らの研究チームは、慢性がん関連痛を有する入院患者を対象に、1日の痛みの推移を繰り返し評価しました。その結果、慢性がん関連痛では、集団レベルの痛みの強さは起床から就寝まで比較的安定していることが示されました。一方、慢性非がん性疼痛では、起床時と就寝時に痛みが高く、午前中に低下する異なる推移がみられました。ただし、両群は患者背景が大きく異なるため、両群間の差を直接検証したものではありません。また、慢性がん関連痛群では、3日間の平均的な痛みが強いことと、罹患期間の長さ、中枢性感作に関連する症状、痛みに対する破局的思考、抑うつ症状の強さとの間に関連が認められました。本研究は、入院中の慢性がん関連痛の1日の痛みの推移を示すとともに、痛みを単一時点の数値だけで捉えるのではなく、患者の身体機能、薬剤、治療状況、心理面、入院環境などを踏まえて解釈する重要性を示しました。

 

本研究のポイント

  • 慢性がん関連痛を有する入院患者38名の痛みを、起床時から就寝時まで1日6回、3日間にわたり繰り返し評価しました。
  • 慢性がん関連痛群では、集団レベルの痛みの強さに有意な時間帯の影響は認められず、通常の入院管理下で比較的安定した日内プロファイルを示しました。
  • 集団レベルで痛みが安定していても、個々の患者に変動がないとは限りません。単一時点の痛みの数値は、身体機能、鎮痛薬、治療状況、心理面、入院環境と併せて解釈する必要があります。

 

研究内容

本研究は、慢性疼痛が3か月以上持続している成人入院患者68名を対象とした観察研究です。対象者は、慢性がん関連痛群38名と慢性非がん性疼痛群30名で構成されました。慢性がん関連痛群については、3日間の痛み評価が終了するまでに手術、化学療法、放射線治療などの積極的ながん治療を受けた患者は除外されました。

痛みの強さは、0を「痛みなし」、100を「想像できる最も強い痛み」とするVisual Analog Scale(VAS)を用いて、起床時、9時、12時、15時、18時、就寝時に評価しました。この評価を3日間連続して行い、各時間帯の平均値から1日の痛みの推移を検討しました。その結果、慢性がん関連痛群では、起床時から就寝時まで、痛みの強さに有意な時間帯の変化は認められませんでした。これに対して慢性非がん性疼痛群では、起床時に高かった痛みが9時から12時に低下し、その後、夕方から就寝時に再び高くなる推移を示しました(図1)。また、慢性がん関連痛群では、3日間の平均的な痛みが強いことと、罹患期間の長さ、中枢性感作に関連する症状、痛みに対する破局的思考、抑うつ症状の強さとの間に関連が認められました。

 

図1.入院患者における慢性がん関連痛と慢性非がん性疼痛の1日の推移

慢性がん関連痛群(a)では、起床時から就寝時まで比較的安定した推移を示しました。一方、慢性非がん性疼痛群(b)では、起床時と就寝時に高く、午前中に低下する推移がみられました。なお、両群は患者背景が異なるため、両群間の差を直接検証した結果ではありません。

慢性がん関連痛群における時間帯の影響は、定時の強オピオイド使用と評価日を考慮した解析でも有意ではなく、集団レベルで比較的安定しているという解釈は変わりませんでした。一方で、集団の平均値による解析は、個々の患者にみられる一時的な痛みの増悪や変動を弱めて示す可能性があります。

したがって、本研究結果は「がん関連痛は1日の中で変化しない」ことを示すものではなく、個々の患者の痛みを、身体機能、薬剤、治療、心理面、入院環境と併せて評価する必要性を示すものです。

 

本研究の臨床的意義および今後の展開

本研究は、入院中の慢性がん関連痛を単一時点の数値だけで判断せず、身体機能、鎮痛薬、治療状況、心理面などを含めて解釈する重要性を示しました。今後は、活動量や睡眠、薬剤投与時刻、入院環境なども併せて評価し、個々の患者に応じた疼痛評価と支援方法の確立につなげる必要があります。

 

論文情報

Tatsuya Sugino, Yoichi Tanaka, Shu Morioka

Within-Day Pain Profiles in Hospitalized Patients with Chronic Cancer-Related Pain: Implications for Inpatient Symptom Assessment

Journal of Palliative Medicine. 2026 August 3

問い合わせ先

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

博士後期課程 杉野 達也

教授 森岡 周

Tel: 0745-54-1601
Fax: 0745-54-1600
E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

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