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2022.05.19
畿央大学付属広陵こども園開園プレイベント「みんなで愉しもう!tupera tuperaの絵本の世界」開催しました。
2022年5月15日(日)、畿央大学付属広陵こども園開園プレイベント「みんなで愉しもう!tupera tupera の絵本の世界」を、畿央大学冬木記念ホールにて開催しました。 『tupera tupera』とは、亀山達矢さんと中川敦子さんによるユニットで、絵本やイラストレーションをはじめ、工作、ワークショップ、アートディレクション等様々な分野で幅広く活動されています。著書には「しろくまのパンツ」「かおノート」「やさいさん」「いろいろバス」「うんこしりとり」など多数あり、海外でも翻訳出版されています。また、NHK Eテレの「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当されておられます。 今回は亀山さんを講師にお招きし、就学前の小さなお子さんをはじめ、保護者の方、幼稚園・保育関係者など約300名の方にお越しいただきました。検温や消毒、座席間隔の確保などの感染症対策のうえ、地域の皆さまを対象とした公開イベントとしてはひさしぶりとなる対面でのイベントとなりました。 臨場感あふれる楽しい絵本ライブと、絵本の製作エピソードなどを盛り込んだお話に、お子さんたちのみならず保護者の皆さんも大満足の様子でした。 亀山さんが絵本のページをめくると、驚きの場面やちょっと(かなり??)こわい場面、思わず大笑いしてしまうような場面などが仕掛けとともに現れ、会場からは笑い声やお子さんの泣き声などが聞こえる感情あふれたステキなライブでした。素敵な絵本と出会い、絵本を通じてコミュニケーションすることの魅力を、思い切り感じられる一日となりました。 ▼亀山さんによる絵本ライブ「やさいさん」 ▼ 教育学部4回生 下岸あすかさんと亀山さんによる「しろくまのパンツ」 ▼こども園副園長予定者 教育学部 吉田教授と亀山さんのコラボによる「パンダ銭湯」 開園前の準備や受付、誘導には、教育学部現代教育学科の学生ボランティア15名が活躍し、陰でイベントの運営を支えてくれました。 今回は、募集早々に満員御礼となりご希望いただいた方全員にご覧いただけなかったのが残念でなりません。亀山さん、ご来学ありがとうございました。ますますのご活躍をお祈りしております! ▼こども園用のtupera tupera さんの絵本すべてにイラスト付きのサインをいただきました! ▼tupera tuperaさんのツイッターでも本イベントをご紹介いただきました! また、イベントの後には、来年4月に新しく開園する畿央大学付属広陵こども園の説明会も行い、保護者の方たちが熱心に耳を傾けてくださいました。 ▼完成予定のパース(今後変更になることがあります) 畿央大学付属広陵こども園の園長予定者である前平教育学部長(畿央大学)より園の理念について、副園長予定者の吉田教授(畿央大学教育学部)よりこども園の概要と園舎について説明を行い、特色ある保育・教育として掲げる「原体験」・「発見」・「表現」の紹介、「異年齢教育」・「身体・アートを通じた表現活動」・「探究的なテーマ活動」などに取り組む方針について紹介いたしました。 新しいこども園では、畿央大学の付属である特性を活かし、教育・健康・栄養・看護・身体・アートなど、いろいろな専門分野を通じた協力体制が築かれています。地域の方々と共に子どもの成長と発達を見守り、また本こども園も地域の子どもたちと共に成長、発展を遂げていきたいと願っています。 説明会の最後に質疑応答を行いましたところ、たくさんのご質問をいただきありがとうございました。時間の関係ですべてのご質問にお答えできませんでしたが、あらためて個別に丁寧に対応させていただきます。 今後は畿央大学付属広陵こども園のホームページで、募集要項等様々な情報をタイムリーに掲載させていただく予定です。 ▼制服代わりとなるこども園Tシャツとトレーナー こども園ホームページへ 【関連記事】 畿央大学付属広陵こども園の「地鎮祭」が執り行われました。 畿央大学付属広陵こども園の園児のためのスツール(椅子)完成!~人間環境デザイン学科「立体表現Ⅱ」 畿央大学付属広陵こども園の園児のためにスツールを製作!~人間環境デザイン学科「立体表現Ⅱ」 奈良県内大学初の「公私連携幼保連携型認定こども園」設置に向けて広陵町と協定締結式を行いました。
2022.05.16
手先の不器用な子供は物体把持における空間的安定性が低下している~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
発達性協調運動障害(DCD)は「運動の不器用さ」を特徴とし、字を書くことやボールを使うスポーツ等、協調的な把持制御が要求される日常生活動作に障害をきたします。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員の西祐樹らは、手先が不器用な子どもは、物体を持ち上げ、保持する際に把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下することを明らかにしました。この研究成果はBrain Sciences誌の特集号(New Insights in Developmental Coordination Disorder (DCD))Spatial Instability during Precision Grip–Lift in Children with Poor Manual Dexterityに掲載されています。 研究概要 発達性協調運動障害(DCD)は「運動の不器用さ」を特徴とし、字を書くことやボールを使うスポーツ等、協調的な把持制御が要求される日常生活動作に障害をきたします。このような把持制御障害は思春期から成人期まで続くため、臨床的問題となっています。一般的に物体を持ち上げ保持する場合、物体の傾きを最小限にするために、物体の中心近くを把持し、物体が滑らないように十分な把持力を発揮する必要があります。また、物体の重さによって把持力を調整する必要があります。このような複雑な把持制御は内部モデルにおける感覚―運動統合が基盤となっています。DCDでは内部モデルが障害されていることが知られており、物体把持における把持力の変動が大きくなることが報告されています。しかしながら、把持制御の重要な構成要素である空間的安定性については明らかになっていませんでした。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 西 祐樹ら の研究チームは、手先が器用あるいは不器用な子どもにおける物体を持ち上げ、保持する際の把持制御を調査しました。その結果、手先が不器用な子どもは、把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下していることが明らかになりました。 加えて、不器用な子どもは物体の重さの違いによって、柔軟に把持力を調整していましたが、空間的安定性は適応できないことも明らかになりました。 本研究のポイント ■ 手先が器用あるいは不器用な子どもを対象に物体把持課題における空間的安定性を評価した。 ■ 手先が不器用な子どもは把持位置のずれや物体の傾き、指の滑りといった空間的安定性が低下していた。 ■ 手先が不器用な子どもは重量の違いによっても空間的安定性は変化した。 研究内容 6-12歳の子どもたちは、M-ABC2のよって手先が器用・不器用な群に分けられ、物体(不透明の箱を取り付けた特注の6分力フォースプレート)を持ち上げ、保持する課題を行いました(図1)。箱の中に重錘を入れることができ、重量条件(計800g)および軽量条件(計300g)をそれぞれ10試行行いました。計測されたデータから、平均把持力、変動性、圧中心(COP)の軌跡(指の滑り、転がりを反映)、把持位置、物体の傾きを算出しました。 図1.本研究における計測データ (A)計測機器.(B)物体把持課題中の把持力、負荷力、物体の傾きの経時的データ。(C)物体把持課題中のCOPデータ その結果、手先が不器用な子どもは把持力の変動性に加え、把持位置のずれや物体の傾き、指の滑り・転がりといった空間的安定性が低下しました。 また、不器用な子どもは物体の重さの違いによって、柔軟に把持力を調整していましたが、軽量条件ではCOPの軌跡が延長しました。また、平均把持力とCOPの軌跡は有意な負の相関関係を、物体の傾きと把持位置は有意な負の相関関係を示しました。内部モデルにおいて運動予測(握力など)と実際の感覚フィードバック(重さ、摩擦、トルクなどの触覚情報、物体の滑りや転がりなどの視覚情報)の不一致により誤差信号が発生し、把持制御をリアルタイムで修正しています。一方、手先が不器用な子どもは内部モデルにおけるフィードバック情報と運動指令の統合が損なわれており、触覚情報を効果的に運動に利用する能力が低下していることが知られています。したがって、本研究の結果において、手先が不器用な子どもは感覚―運動統合の欠損によるオンライン運動制御の障害によって、空間的安定性が低下している可能性があります。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、手先の不器用さに関して、空間的不安定性の観点から明らかにした点で臨床的意義があります。今後は、触覚の感度が向上し感覚―運動統合を改善させる介入研究を行う予定です。 論文情報 Nishi Y, Nobusako S, Tsujimoto T, Sakai A, Nakai A, Morioka S Spatial Instability during Precision Grip–Lift in Children with Poor Manual Dexterity Brain Sciences 2022 関連する先行研究 1. Nobusako, S.; Sakai, A.; Tsujimoto, T.; Shuto, T.; Nishi, Y.; Asano, D.; Furukawa, E.; Zama, T.; Osumi, M.; Shimada, S.; et al. Deficits in visuo-motor temporal integration impacts manual dexterity in probable developmental coordination disorder. Front. Neurol. 2018, 9, 114. 2. Nobusako, S.; Sakai, A.; Tsujimoto, T.; Shuto, T.; Nishi, Y.; Asano, D.; Furukawa, E.; Zama, T.; Osumi, M.; Shimada, S.; et al. Manual Dexterity is a strong predictor of visuo-motor temporal integration in children. Front. Psychol. 2018, 9, 948. 3. Nobusako, S.; Osumi, M.; Matsuo, A.; Furukawa, E.; Maeda, T.; Shimada, S.; Nakai, A.; Morioka, S. Subthreshold vibrotactile noise stimulation immediately improves manual dexterity in a child with developmental coordination disorder: A single-case study. Front. Neurol. 2019, 10, 717. 4. Nobusako, S.; Osumi, M.; Matsuo, A.; Furukawa, E.; Maeda, T.; Shimada, S.; Nakai, A.; Morioka, S. Influence of Stochastic Resonance on Manual Dexterity in Children with Developmental Coordination Disorder: A Double-Blind Interventional Study. Front. Neurol. 2021, 12, 626608. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 客員研究員 西 祐樹 畿央大学大学院健康科学研究科 准教授 信迫 悟志 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.nobusako@kio.ac.jp
2022.05.11
イオン「大和郡山フェア」で学生が考案した「大和丸なすピザ」を販売します。
大和郡山産の野菜使用「大和丸なすピザ」を共同開発 イオン大和郡山店「大和郡山フェア」で4種類販売! 大和郡山市、イオン大和郡山店と奈良県内の管理栄養士養成課程(畿央大学・近畿大学・帝塚山大学・奈良女子大学)の学生で構成された食育ボランティアサークル「ヘルスチーム菜良(なら)」は大和の伝統野菜「大和丸なす」をはじめとした大和郡山産野菜を使用したピザを各大学が共同開発し、「4大学対抗ピザバトル」と銘打ち、イオン大和郡山店「大和郡山フェア」期間中の6月4日(土)・5日(日)に販売いたします。 本学が商品開発しました「柚子香る白味噌風味の彩りピッツァ」は、柚子の香りと白味噌風味のホワイトソースで仕上げ、野菜の彩があざやかです。また、他大学にない本学独自の特徴として、学生のみで商品開発したのではなく、2017年度の本企画開始よりレシピ監修をしていただいている石窯焼きピッツェリアサンプーペー松原朱美シェフの指導のもと、店舗で試作しながら商品開発いたしましたので、試作段階より完成度が高いとイオン担当者様よりお褒めの言葉をいただきました!! 日 時 2022年6月4日(土)・5日(日) イオン「大和郡山フェア」 場 所 イオン大和郡山店 (大和郡山市下三橋町741) 大和郡山市三橋地区で戦後まもなくから栽培されている大和の伝統野菜「大和丸なす」は、東京、大阪、京都の料亭などでも用いられる高級食材として好評を得ていますが、地元奈良では販売機会が少なく、知名度アップが課題となっています。また、大和郡山市では地産地消促進計画に基づき、地産地消の推進を、奈良県では特定農業振興ゾーンとして「大和丸なす」の生産地である大和郡山市三橋地区が設定され「新たなレシピ開発による個人消費(大和丸なすファン)の拡大」をめざして取り組んでいます。これに加え、一昨年度からのコロナ禍で県外料亭等での消費が減り、地元での消費が緊急の課題となっています。 本企画は、2017年度から、イオンモール大和郡山で開催される大和郡山フェアにおいて、「大和丸なす」のPRと大和郡山産野菜の摂取量増加をめざし、大和の伝統野菜「大和丸なす」をはじめとした大和郡山産野菜を使用したピザ開発に取り組んでおり、今回で5回目となります(2020年度はコロナ禍で中止)。 4大学対抗ピザバトルでは、①地元産野菜の使用や素材の良さを生かす地域性、②アイディア、斬新さ、面白さの独創性、③彩り、見た目、美味しさの味覚、④調理のしやすさや幅広い年代への普及度、⑤栄養バランス の5点について、専門の審査団体が試食等を行った上で採点を行い、優勝ピザを決定いたします(2021年度の優勝は近畿大学)。畿央大学からは、以下のピザを商品開発いたしました。 畿央大学ヘルスチーム菜良:「柚子香る白味噌風味の彩りピッツァ」 柚子の香りと白味噌風味のホワイトソースで仕上げ、野菜の彩りがあざやかです。 本ピザのコンセプトは 「和と洋の融合」です。「大和丸なす」を初めて食べる学生も多く、その大きさとしっかりとした食感、美味しさに驚いていました。この食感を最大限に生かすため「和食」の「なす田楽」にこだわりました。なす田楽で使われる味噌は、赤味噌ではなく、お雑煮、生麩など関西で馴染みがあり、塩分控えめな白味噌に変え、「洋」のホワイトソースで馴染ませ、さっぱりと仕上げるため「柚子」を使いました。「大和丸なす」をはじめ、大和郡山市産小松菜、しいたけ、玉ねぎといった地元野菜の魅力が詰まり、れんこん、パプリカなど彩りも楽しめる自信の1品です。本学の他、4大学の個性的な4種類のピザ、ぜひ一度食べ比べてお好みのピザを見つけてください。 【問い合わせ先】 畿央大学 健康科学部 健康栄養学科 野原 潤子 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1603 E-mail: j.nohara@kio.ac.jp
2022.05.06
6/26(日)第1回 エコマミ公開講座で看護医療学科 山崎教授が講演を担当します。
香芝市と広陵町の地域連携の取組として、両行政とエコール・マミを運営する KUL(㈱関西都市居住サービス)の共同企画によりエコマミ公開講座(略称:マミ講座) がスタートします。栄えある第1回の第1話では、本学健康科学部 看護医療学科 山崎尚美教授が「たとえ認知症になったとしても自分らしく『認知症とともに生きる』ために準備しておくことや介護予防」について紹介します。参加は無料ですが、事前申し込みが必要です。ご興味のある方は是非ご参加ください。 日時 2022年6月23日(日)13:10~14:10 開催場所 マミホール (エコール・マミ南館2階) 講師 畿央大学 健康科学部 看護医療学科 老年看護学領域 山崎 尚美 教授 講演テーマ もう怖がらなくていい認知症の話 ~ 自分らしく認知症とともに生きる ~ 申込方法 ▶エコール・マミ営業所(電話受付) 0745-55-7770 ▶エコール・マミ インフォメーション(北館1階での受付) イベント案内 画像をクリックすると、PDFデータが開きます。
2022.05.02
5/3(火)~5/5(木)の事務局業務について
5/3(火)~5/5(木)については事務局業務は休業とさせていただきます。お電話やメール等でのお問い合わせにも対応できませんので、ご了承ください。 (上記期間中に届いたメール等へのご返信は5/6(金)以降となります) ご理解の程よろしくお願いいたします。
2022.04.28
恐怖文脈が身体所有感と疼痛閾値に及ぼす影響~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
身体的あるいは精神的な苦痛を有する人は「自分の身体」を自分のものと感じられなくなることがあり、 これは身体所有感(sense of ownership)が低下した状態と考えられています。身体所有感の低下は、 リハビリテーション効果を阻害するため、 身体所有感に影響する要因を検証することは重要です。 畿央大学大学院 修士課程 修了生 田中 智哉 氏 (市立福知山市民病院)と 森岡 周 教授らは、ラバーハンド錯覚実験を用いて、外傷のある偽物の腕に対して身体所有感を惹起させる際に、その腕に対して恐怖を生じさせる言語情報を与え、その影響を検証しました。その結果、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい人ほど、痛みを感じやすくなることを明らかにしました。この研究成果はFrontiers in Human Neuroscience誌(Verbal suggestion modulates the sense of ownership and heat pain threshold during the “injured” rubber hand illusion)に掲載されています。 研究概要 身体的および精神的な苦痛を有する人は「自分の身体」を自分のものと感じられなくなることがあり、これは身体所有感が低下した状態と考えられています。身体所有感の低下は、リハビリテーション過程において回復を阻害する因子であると考えられていることから、身体所有感に影響を与える要因を検証することは重要です。一般的に、身体所有感は視覚、触覚、固有感覚(位置情報)といった情報など、ボトムアップ情報を統合することによって生まれると考えられています。一方で近年では、文脈などのトップダウン要因も関与することが議論されています。文脈の操作として言語情報が最も簡易に用いられますが、身体所有感に与える影響は十分に検証されていませんでした。畿央大学大学院 修士課程 修了生 田中 智哉 氏(市立福知山市民病院)と 森岡 周 教授ら の研究グループは、ラバーハンド錯覚という錯覚現象を用いて、外傷のある偽物の腕に対して身体所有感を生じさせる際に、トップダウン要因の操作として、その腕に対して恐怖を生じさせる言語情報を与えました。その結果、客観的な身体所有感には影響を与えませんでしたが、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい者ほど疼痛閾値は低下し、その影響度合いには個人差があることを明らかにしました。 本研究のポイント ■ラバーハンド錯覚時に恐怖を生じさせる言語情報を与えると、偽物の手に対する主観的な身体所有感が増加しました。 ■ラバーハンド錯覚時に恐怖を生じさせる言語情報を与えると、主観的な身体所有感と疼痛閾値には有意な負の相関関係を認め、言語情報の影響には個人差があることがわかりました。 研究内容 ラバーハンド錯覚:参加者からは偽物の手のみが見えている状況(図1a)で、実験者は筆を用いて参加者の本物の手と偽物の手に対して同じタイミングで触覚刺激を加えると、参加者は徐々に偽物の手を自分自身の手であると錯覚します(錯覚条件)。一方、異なるタイミングで触覚刺激を与えると、錯覚が生じにくくなります(非錯覚条件)。本研究においても、錯覚条件と非錯覚条件の2条件が、第一実験では各偽物の手に対して、第二実験では各参加者に対して行われました。第一実験:15名の健常人が参加し、ラバーハンド錯覚によって惹起された外傷のある偽物の腕に対する身体所有感と、錯覚後の疼痛閾値の程度を、外傷を有していない健常な偽物の腕のそれらの程度と比べました(図1b)。その結果、錯覚条件における主観的な身体所有感は、外傷のある偽物の腕と健常な腕は同程度惹起されることがわかり、外傷のある偽物の腕を用いるラバーハンド錯覚は実験として成り立つことをまず確認しました。 図1:ラバーハンド錯覚の実験セット(a) と使用したラバーハンド (b) 第二実験:30名の健常人が参加し、外傷のある偽物の手のみを用いたラバーハンド錯覚を行いました。その際、参加者はランダムに「恐怖文脈あり」と「恐怖文脈なし」の2グループ(それぞれ、15名ずつ)に分けられました。「恐怖文脈あり」は、ラバーハンド錯覚を行う際に、その偽物の腕に対して恐怖文脈を生じさせる言語情報を与えました。一方、「恐怖文脈なし」は、その腕に対して恐怖文脈を引き起こさない言語情報を提示しました(図2)。 図2:言語情報の要約 釘が刺さっている腕の背景について各グループ「恐怖文脈あり」と「恐怖文脈なし」で異なる説明を行った。その結果、「恐怖文脈あり」の錯覚条件では、主観的な身体所有感を増加させ、その増加の程度が大きい参加者ほど、痛みを感じやすくなることが明らかになりました(図3b)。 図3:主観的な身体所有感 (質問紙) の結果および疼痛閾値との相関関係 ラバーハンドの所有感と痛みの感じやすさについては、「恐怖文脈あり」×錯覚条件のみ有意な負の相関関係を認めた。*p<0.05 本研究の臨床的意義および今後の展開 身体所有感と痛みに影響する要因の一つとして、言語情報が関与することがわかりました。これは、医療者による対象者への病態説明などの言語情報が、身体所有感や痛みにも影響する可能性が示唆される知見と考えています。しかし、慢性的な痛みを有する者と健常者では、ラバーハンド錯覚に対する反応が異なることが報告されています。そのため、今回明らかになったことが臨床において、そのまま応用できる訳ではありませんので、今後は、健常者と筋骨格系疼痛を有する方の身体所有感の違いに関して検証していこうと考えています。 論文情報 Tomoya Tanaka, Kazuki Hayashida, Shu Morioka Verbal Suggestion Modulates the Sense of Ownership and Heat Pain Threshold during the “Injured” Rubber Hand Illusion Frontiers in Human Neuroscience, 2022 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel:0745-54-1601 Fax:0745-54-1600 E-mail:s.morioka@kio.ac.jp
2022.04.26
6/19(日)看護実践研究センター第7回研修会「地域で・笑顔で 生きるとは」を開催します。
畿央大学「看護実践研究センター」の認知症ケア部門では、奈良県認知症ケア専門士会と協力しながら、認知症ケアの質の向上をめざし最新の知見を習得するための機会を提供すべく活動しています。 その活動の一環である認知症ケア研修会として今回は、たとえ認知症になったとしても「地域で笑顔で生きる」ことをテーマに、日本認知症本人ワーキンググループの竹内裕氏を講師に招いて認知症とともに生きること、認知症に対する偏見の解決に向けた支援についてお話しいただきます。竹内さんからは、自身が認知症と診断されてからの生活や認知症ではないと診断されてからの活動について講演していただきます。 また、後半は意見交換の場として、コロナ禍で認知症の人をケアする専門職ならではの悩みを吐露し、同じ環境で働く者だからこそわかる辛さや苦悩について共有し日頃の自分のストレスマネージメントについて学んで頂き、専門職のメンタルヘルスサポートの一環につなげられるとよいと思っています。 職場のご友人や一般の方にも広く参加者を募集していますのでぜひ、ご参加ください。 日時 2022年6月19日(日)13:30~15:30 開催方法 Zoomによるオンライン研修 対談60分+意見交換60分 対象 認知症ケア専門士 看護職・介護職・教育関係者ほか 講師 竹内 裕 氏 特定非営利活動法人もちもちの木 地域コミュニティ支援員「たぬきクラブ」代表、DAYS BLG!副理事長代理、日本認知症本人ワーキンググループ 参加費 無料 申込方法 下記の申込ページあるいはイベントチラシ内のQRコードからお申込みください。 申込ページ イベント案内 画像をクリックすると、PDFデータが開きます。 問い合わせ先 畿央大学 看護実践研究センター 卒後教育部門 E-mail:nprc@kio.ac.jp TEL:0745-54-1600 【電話の対応時間 平日(月~金)9:00~17:00】
2022.04.22
長期間の理学療法が脊髄損傷後の神経障害性疼痛に及ぼす影響~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
ヒトには、痛みの感受性を低下させる疼痛抑制メカニズムが備わっています。有酸素運動は疼痛抑制メカニズムを賦活することが知られており、慢性疼痛の治療にも用いられています。脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対しても、有酸素運動により痛みが即時的に軽減することが報告されていますが、単回の介入による検討に限られています。畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの 佐藤 剛介 客員准教授ら は、長期間の理学療法(有酸素運動)が脊髄損傷後の神経障害性疼痛に及ぼす影響を頚髄不全損傷の単一症例を通して検証しました。 この研究成果は、Spinal cord series and cases誌(Long-term physical therapy for neuropathic pain after cervical spinal cord injury and resting state electroencephalography: a case report)に掲載されています。 研究概要 脊髄損傷後の神経障害性疼痛は、約半数近くで認められ様々な健康指標の低下を引き起こすことが知られています。脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対する介入として、様々なものが提唱されており、その中の一つに有酸素運動があげられます。車椅子駆動による有酸素運動は、脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対する即時的な鎮痛効果が得られることが明らかにされています(Sato et al. J Rehabil Med, 2017)。しかし、これまでの研究では、単回の介入による即時的な効果に限局されており、長期間の介入による鎮痛効果は検討されておらず、不明瞭なままでした。 本研究では、頚髄不全損傷者一例に対して、有酸素運動を含む長期間の理学療法が脊髄損傷後の神経障害性疼痛におよぼす影響を検証しました。加えて、本研究では、鎮痛効果の機序を明らかにするために、神経障害性疼痛のバイオマーカーである安静時脳波活動から得られるPeak alpha frequency(PAF)を指標として測定しました。 本研究のポイント ■ 長期間の理学療法により頚髄不全損傷者の上肢の神経障害性疼痛が軽減された ■ 有酸素運動として集中的歩行トレーニング(体重免荷式トレッドミル歩行トレーニング)を行い、痛み強度の軽減と運動野周辺で測定したPAFの高周波域へのシフトが確認された ■ 疼痛がある部位(上肢)に直接接触することなく、他の身体部位の運動を介して疼痛強度の軽減が得られた 研究内容 C5レベル残存の頚髄不全損傷者に対して、18週間の介入を行いました。 介入は7日/週の頻度で行い、1回の介入は40分間でした。4週~10週目の間には、有酸素運動を企図して体重免荷装置を用いた集中的歩行トレーニングを実施しました。安静時脳波活動は、1チャンネル脳波計を使用して測定しました。電極は、運動野に相当する領域に配置して閉眼状態で3分間測定し、PAFを算出しました。PAFは、α帯域のピークパワーを示す周波数で、視床-大脳皮質間の神経回路の活動を反映するとされており、高周波域へシフトしている場合に痛みの感受性が低下している状態であることを指しています。アウトカムは、脊髄損傷の評価としてInternational Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury (ISNCSCI)の運動スコアと感覚スコア、主観的疼痛強度と疼痛範囲、安静時脳波活動としてPAF、動作能力の指標として10m歩行テストとWalking Index for Spinal Cord Injury II (WISCIII)を2週間ごとに測定し、PAFについては入院時を基準として変化率(Δ)を求めました。 結果は、痛みの平均強度と最大強度のNRSスコアは6週間後に有意に減少し、ΔPAFは4週以降に有意に増加しました。ΔPAFの変化については、集中的な歩行トレーニングの開始と同時期に生じていました。ΔPAFは集中的歩行トレーニング期間の終了後に低周波域へのシフトを認めましたが、入院時よりも高周波域へシフトした状態が維持されていました(図1)。 図1:各評価の経時的変化 黄色で示した範囲は、集中的歩行トレーニングの期間を表しています。集中的歩行トレーニング開始後にΔPAFの増加と痛み強度の減少が認められています。さらに、集中的歩行トレーニング期間終了時にはPAFが低周波域へシフトしているものの、入院時を比べて高周波域にシフトしている状態が維持されています。 本研究の臨床的意義および今後の展開 本研究は、長期間の理学療法(有酸素運動)を行うことで頚髄不全損傷者の上肢の神経障害性疼痛が軽減できることを初めて報告しました。これは、継続した有酸素運動によって、痛みがある身体部位に直接触れることなく、痛みを軽減できることを示唆しています。さらに、有酸素運動を行っている期間は、PAFが高周波域へシフトしており、痛みの感受性が低下している状態であることを示しています。今後は、複数症例に対して長期的な有酸素運動の効果と安静時脳波活動への影響を調べるとともに、神経障害性疼痛の性質と有酸素運動による鎮痛効果との関係を詳しく検証していく必要があります。 論文情報 Sato G, Osumi M, Mikami R, Morioka S Long-term physical therapy for neuropathic pain after cervical spinal cord injury and resting state electroencephalography: a case report Spinal cord series and cases, 2022 関連論文 Sato G, Osumi M, Morioka S. Effects of wheelchair propulsion on neuropathic pain and resting electroencephalography after spinal cord injury. J Rehabil Med. 2017 Jan 31;49(2):136-143. 問い合わせ先 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 客員准教授 佐藤剛介 E-mail: gpamjl@live.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学大学院健康科学研究科 教授 森岡 周 Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2022.04.11
2022年度前期授業について
在学生の皆さまへ 4月12日(火)より2022年度前期授業が始まります。 かねてお伝えしていたとおり、今学期は一部の科目において遠隔授業を併用しつつ、原則として対面授業を中心とする形で、授業運営を進めていきます。 対面授業の実施に際しては、講義室の定期的な換気や消毒液の設置などの感染予防対策を継続していきます。学生の皆さんもマスク(不織布推奨)の着用や消毒の励行、食事の際の「黙食」など、日々の健康管理に十分に留意し、各自の感染予防対策を行なった上で、授業に参加してください。 学生支援センター
2022.04.06
令和3年度 畿桜会(同窓会)オンライン役員会を開催しました。