2025.10.23
【本学2度目の快挙】築330年 興善寺本堂の屋根葺き替え修理で「グッドデザイン賞」を受賞!
人間環境デザイン学科の吉永規夫講師が、大阪府岬町にある『興善寺本堂』にて、屋根の葺き替え修理※1を手掛け、見事『2025年度のグッドデザイン賞』を受賞しました。本学としては、今回2度目のグッドデザイン賞受賞となります。(過去の受賞作品はこちら)
※1 葺き替え(ふきかえ)修理とは…古い屋根材を取り除き、新しい屋根材を張る工事のこと。
▼興善寺本堂の外観

興善寺本堂
興善寺本堂は、仁寿二年(852年)第五十五代文徳天皇(在位850~858年)の勅願により、慈覚大師円仁によって創建されました。元亀天正(1570年頃)に兵火(へいか)により建物は焼失しましたが、元禄3年(1690年)に再建され、現在に至ります。本堂内陣には、本尊 大日如来(胎蔵界)、脇佛 薬師如来、脇佛 釈迦如来が奉安されおり、3如来とも平安末期作で、現在は国の重要文化財(旧国宝)に指定されています。
受賞のコメント(吉永講師)
大阪府岬町に建つ興善寺の重要文化財の仏像の修理に合わせて、本堂の屋根の葺き替え工事の設計・監理を2021年から継続して、2025年に修理が完了し、2025年度グッドデザイン賞をいただくことができました。興善寺さま檀家の皆さま、文化庁、各行政の皆さま、工事関係の皆さま、関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。暑い日も寒い日も1枚1枚瓦を手作業で作業頂きました職人さんの皆さまの技術には特に感謝いたします。
江戸時代中期の元禄3年(1690年)に再建された本堂を大切な仏像を風雨から守り続ける必要がありました。また、地元・谷川は古くから瓦の一大産地で、本堂の屋根はこの地元瓦が使われ、330年間大規模な葺き替えが行われることなく、今回の修理が初めての葺き替えになります。
▼本堂屋根部分

工事では、職人さんたちが1枚1枚手作業で瓦を屋根から取り外し、手洗いし、打音検査を行なって、再度屋根に葺き直しました。
今回の修理では、
- ①地元の谷川瓦を可能な限り再用する
- ②竣工当時から残る屋根下地も保存する
- ③限られたコストの中、素屋根をかけずに屋根を葺き替える施工方法を開発
をテーマに掲げています。
▼葺き替え修理の様子

瓦の再用に関しては、結果的に総数約22,822枚の瓦を全数打音検査を行い、約73%もの谷川瓦を保存することができました。また、屋根瓦だけでなく、当時の屋根下地である野地に関しても江戸時代中期に施工された技術が残るものとして、今回合板下地※2と最新技術のルーフィング※3を用いることで温存することに成功しています。大屋根の葺き替えでコストもかかる素屋根を施工することが一般的ですが、野地合板の施工やルーフィングの活用、施工職人さんたちの技術も相まって、素屋根をかけないローコストの仮設計画で文化的価値のある建築物の修理を実践しました。今回の施工報告は、昨年の学内での研究授業でも学生向けにレクチャーを行なっています。古い建築物を次世代に大切に受け継いでいくことが求められている時代に、屋根瓦の修理プロジェクトで今後100年以上建物を守っていく修理を行いました。330年以上前に建てられた建築物が、現在のグッドデザイン賞として受賞したことを大変嬉しく思います。
※2 合板下地…屋根の下地材。強度と耐久性を高め、屋根材の荷重を均等に分散させる。
※3 ルーフィング…防水シートを合板の上に敷設し、雨水の侵入を防ぐ。
グッドデザイン賞 審査委員の方のコメント
それにしても、本葺替保存修理まで330年間屋根の葺替が行われてこなかったとは、瓦葺き屋根は斯くも耐久性のあるものなのか、と感嘆した。とはいえ、この屋根を将来に引き継いでいくためには葺替保存修理は不可欠であり、新たな技術を取り入れつつ330年前の屋根下地を温存した本構法によって、7割以上の瓦を再利用できたことは高く評価できる。瓦は地域ごとに色や風合いが異なるため、瓦葺き屋根のまちなみは地域らしい景観を形成する重要な要素である。勇気と創造性のある保存修理によって、オリジナルの瓦葺きの景観を地域で維持し続ける取り組みに拍手を送りたい。

グッドデザイン賞
1957年に創設された日本で唯一の総合的なデザイン評価・推奨の仕組みです。デザインを通じて産業や生活文化を高める運動として、国内外の多くの企業やデザイナーが参加しています。受賞のシンボルである「Gマーク」は、良いデザインを示すシンボルマークとして広く親しまれています。
問い合わせ先
人間環境デザイン学科
講師 吉永 規夫
Email:n.yoshinaga@kio.ac.jp
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