2012年10月6日の記事

2012.10.06

院生による「日本ペインリハビリテーション学会学術大会」レポート!

2012年9月8日(日)、9日(日)に名古屋市中小企業振興会館において、『第17回日本ペインリハビリテーション学会学術大会』が開催されました。   この学会は2001年に「痛みを基礎から臨床まで考える会」として発足し、昨年より学会認証され「日本ペインリハビリテーション学会」へと生まれ変わりました。会長が松原貴子教授(日本福祉大学健康科学部)、副会長が沖田学教授(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)と本学の森岡周教授であり、私も理事の一員を務めさせていただいています。今回は150名ほどの参加者を迎え、テーマを「ペインリハビリテーションの今後」とし、特別講演と一般演題発表に加えシンポジウム、リカレントセッション、ケースディスカッション、セミナーが行われました。大会は今回で17回目でしたが、学会発足後としては初開催であり、新たな船出として大きな意義を持つものでした。   特別講演では、大阪大学疼痛医学寄付講座教授の柴田政彦先生から「厚生労働省研究班による痛み教育の取り組み」と題して、昨年から本格始動した「痛みの教育」のコンテンツが紹介されました。 リカレントセッションには、本学大学院健康科学研究科博士後期課程の大住倫弘さんが「健常人における痛みのhabituationの脳内機構」と題してその研究結果と、今後の展開としてヒトのストレス順応に重要な安静時の脳活動に関する知見を発表され、その後の質疑応答では非常に活発な意見交換がなされました。 またケースディスカッションでは私が「術後痛の慢性化にNeglect-like symptomsが与える影響」と題し、慢性疼痛患者が有すると報告されている Neglect-like symptomsという症状の紹介と、この症状が整形外科的手術後の術後痛に与える影響に関し報告させて頂きました。発表後は様々な貴重なご意見を頂き、非常に有意義な時間になりました。 一般演題には本大学健康科学研究所の信迫悟志さんが「視線方向認知課題による経時的介入が慢性頚部痛に与える効果」と題し、頚部痛を有する患者に対する視線方向を推測する課題(視線方向認知課題)の有効性に関し発表されました。この演題は特に優秀な演題発表として表彰されました。 最後のプログラムであるシンポジウムは「ペインリハビリテーションを検証する」というテーマで、沖田副会長より「末梢に対するペインリハビリテーション」、森岡副会長より「中枢に対するペインリハビリテーション」、松原会長より「ペインリハビリテーションの現状と展望」として講演がありました(司会:平川)。各先生方の専門領域から「ペインリハビリテーション」の現状とともに、先生方の私見を踏まえた今後の展望が講演内で展開され、司会を務めさせていた私も非常に楽しい時間でした。シンポジウムならではの質問やシンポジスト間の議論も活発に行われ、予定時間を30分程オーバーさせてしまいました。 私はこの会に参加させて頂いて5年程になります。この学会は会長・副会長の先生方の人柄が反映されて(?)、非常に議論が活発で、若い参加者でも自分の意見を出しやすい学会だと思います。また痛みに関するリハビリテーションの専門的な学会は他にはみられません。痛みは、それを有する患者の個体要因、社会背景、成育歴など多くの因子が複雑に絡み生じることも今学会で報告されました。今後より社会的・学際的なニーズが高まるペインリハビリテーションを、この学会が包括的に発展させていく位置付けにあることを感じると共に、本学健康科学研究科の果たすべき役割も肌身で感じられました。 来年は福岡が開催予定地にしています。私は準備委員長(大会長:沖田教授)に任命され、学会後帰福して早々にその準備に取り掛かっています。九州での初開催となりますので、今回に劣らぬ充実した内容の学会にしたいと考えています。多くの方々のご参加をお待ちしております。 畿央大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 平川 善之