2022.02.09
イベントプログラム「これからも『ひと』と『ロボット』は共存できるのか」を開催!~畿央大学次世代教育センター
畿央大学次世代教育センターでは、毎年度さまざまなテーマを取り上げて講座を計画しています。
21世紀に入って20年以上が経ち、携帯電話やお掃除ロボット、無人自動車など人工知能(AI)を搭載したロボットが活躍する流れは加速しています。そこで、これからの社会を担う皆さんに次世代の教養を身に付けてもらうことを目的として、今年度は「これからも『ひと』と『ロボット』は共存できるのか」をテーマとし全3回の講座制のプログラムを実施し、学科、学年をこえて28名の学生さんが参加しました。
本プログラムでは、ひともロボットも「かんちがい」することを説明した上で、お互いのかんちがいをカバーし、活用することで豊かな未来を築く可能性を探りました。また、新型コロナ感染対策のため、担当教員が各回の講義動画を配信し、一人一人の学生からの質問や感想にメールで返事をする形式で行いました。
第1回では「ひとはなぜ『かんちがい』するのか」という題名で、ひとのかんちがいのメカニズムを紹介しました。
野球のイチロー選手がアメリカで活躍したとたんに多くのスカウトが「日本には良い打者がたくさんいる」とかんちがいして日本に訪れた例などを挙げて、色々なかんちがいのパターンを説明しました。そして、かんちがいの源である先入観のメカニズムを説明しました。さらに、かんちがいを活かす新しい医療についても説明しました。
学生の皆さんからは、先入観が多く含まれている上で日常生活を営んでいることに驚いた等の意見をもらいました。また、「先入観をもつことは悪いことなのか?」という質問を受けました。このような意見は非常に興味深く、先入観は日常生活を効率化してくれるものであることも追加で説明し、そのメリット・デメリットを認識した上で考えていく必要があると議論できました。
▲第1回:被害者のかんちがいによって犯人以外の人が逮捕された例を説明したスライド
第2回では「かんちがいするロボットたちとの付き合い方」という題名で、感情を持たないロボットも人間と同様に好奇心によって学習し、経験を基に判断すること、そして、経験と目の前の出来事の「重要な違い」を見落として、かんちがいすることを説明しました。
さらに、ガンかどうかを診断するロボットや天気予報、カーナビ、お掃除ロボットなどを例に挙げて、ロボットのかんちがいを見抜く方法を説明しました。学生の皆さんからはロボットの好奇心やかんちがいに驚き、「ロボットに頼り過ぎることの危険性を意識していきたい」等の意見をもらいました。
また、「ロボットのかんちがいは開発者のかんちがいでは?」や「ロボットに感情を持たせることは出来るのでしょうか?」そして「電気が使えなくなってロボットが動かなくなったらどうすれば?」等の質問をもらいました。
そこで、「成熟した(商品化した)ロボットのかんちがいはロボットのかんちがいであるという考え方もある」ことや「本物の感情をもつロボットはまだ実現不可能である」ことや「家族の約1か月分の生活用電気を蓄電できる電気自動車もある」こと等を追加で説明し、議論しました。
▲第2回:ロボットが学習したデータに注目して、かんちがいしやすいロボットかどうかを見分けるためのコツを説明したスライド
そして、第3回では「ひととロボットがいかしあう未来」という題名で、現在開発されているロボットを紹介しました。
例えば、食品の2度買い防止用の携帯アプリや、ひとのかんちがいを活用したリハビリテーションシステムです。さらに、感情をもつロボットの現れる近未来における、ひととロボットの共存のルールについても言及しました。
▲第3回:食品の2度買いを防止する携帯アプリを説明したスライド
▲第3回:かんちがいを利用したリハビリテーションを説明したスライド
学生の皆さんからは食品ロス防止など社会問題の解決にもつながるロボット開発への期待や、ひとのかんちがいを活用する発想と技術への驚き、そしてロボットとの共存に向けてAIを学び続けたい等の意見をもらいました。
また、「バーチャルリアリティなどのデジタルツールを教育分野にも取り入れることはできるのでは?」や「ロボットのかんちがいは活用できないのでしょうか?」等の質問をもらいました。そこで、「昨今ではオープンソース(一般公開されている無料プログラム)が充実しているため、教育分野の大学生でも勉強すればシステムを構築することは可能である」ことや「ひとの想定内のかんちがいをロボットに起こさせて活用しているアプリは娯楽・文化の分野で発達してきたので、今後医療や教育分野の対話型ロボット等に生かされるだろう」こと等を回答し、議論しました。
プログラム全般を通じて、学生の皆さんからの質問や感想、アイデアは本質的、発展的であったため、我々教員も触発され、色々なことを考えながら回答し、充実したプログラムになったと考えています。
次回のイベントプログラムは2022年度に行うことを予定しています。
畿央大学大学院 健康科学研究科
冬木正紀・大住倫弘
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