2022.02.07
一人称VR体験プロジェクト「高齢者住まい看取り研修」を開催しました~畿央大学看護実践センター
2022年2月1日(火)に畿央大学看護実践センターと奈良県認知症ケア専門士会の共催で、「一人称体験プロジェクト 高齢者住まい看取り研修」が開催されました。
コロナ禍のため集合研修が中止となり、残念ながらVRゴーグルの活用はできませんでしたが、オンライン(Zoom)上でVRの映像を視聴しました。参加者は、介護福祉士、看護師をはじめとする17名の参加となりました。
講師は株式会社シルバーウッドの大野彩子氏で、内容はVRを活用したケースメソッド方式を軸に、90歳の高齢者の視点で救急医療を疑似体験したり、介護職の視点で実際に起きた看取りの事例を疑似体験して、その後にディスカッションするというものでした。
看取りまでのあらゆる事態に適した最善策について、「自分だったらどうするか」「本人視点ならどうか」といった姿勢で体験者自身の考えや気づきを促す内容でした。
▲高齢者住まい看取り研修の参加者(使用許諾の上、掲載しています)
参加者から、
「在宅での看取りのめざすところを体系的に学ぶことができた。」
「初めてのVR体験で感情移入ができた。また客観的にみることで、普段自分が行っている対応と比較できた。」
「自分の考えは間違っていない、ブレないようにしようと再確認できた。」
「ACP*というと難しいなあと感じるが、凄いことをしようと思わなくても、小さなことからチームで取り組んでみたい。」
「対話を重ねる、時間作るなど、本人はもちろん見送る側の心の準備を支援することも重要だということが再確認できた。」
など、多くの声がありました。
看取りを経験したことがない人は、看取りに対して「得体のしれない不安感・恐怖感」を抱えていることが多く、映像で本人や介護職の視点から疑似体験し、ディスカッションすることで、漠然とした不安感や恐怖感が、自分自身やチームの課題化につながるように感じました。
日本人の死亡場所の8割は病院です.医療機関では看取り期においても栄養や水分を補う点滴などの医療処置が必ずと言っていいほど行われています。しかし、病院で行われる医療には苦痛や煩わしさを伴うものも多く、高齢者住まいにおける自然な老衰死という新たな選択肢を求める声も少なくありません。「老いのプロセスを病にすり替えない」ためにも、無益な延命医療を行わない本人主体の看取りは地域社会のニーズとも言えると思います。
高齢者住まいにおける看取りとは、本人の意思や希望を確認し、家族や専門職はその意思を徹底的に支えることが重要であると学ぶことができました。
畿央大学看護実践研究センター長 山崎尚美
奈良県認知症ケア専門士会 理事 南部登志江
*ACP(アドバンスケアプランニング)とは、「将来の意思決定能力の低下に備えて、今後の医療・ケア、療養について、本人と家族など大切な人および医療・ケア提供者が本人の価値観や選好に基づき、どのように生きたいかの人生・生活の目標を共有しながら話し合うプロセス」である。
「高齢者住まい看取り研修」の公式サイト
【参考資料】ACPの手引き ※画像をクリックすると、PDFが開きます
奈良県認知症ケア専門士会 事務局 樋野 幸子
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