2023.05.16
2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科
看護医療学科では、4回生の統合発達科目として、その人の顔が見える看護や保健医療を体験することで、看護の本質を考えることを目的とした「離島・へき地医療体験実習」のため2023年5月9日(火)~5月11日(木)の3日間、23名の学生と3名の教員で奈良県川上村に行ってきました。昨年は3年ぶりに臨地で日帰り実習を行いましたが、宿泊を交えた数日間の実習は2018年以来です。
5月9日(火)1日目:雨の天気予報が見事にはずれ、太陽と青空と緑がとても綺麗な晴天になりました。
まず、初日は川上村を理解する上で、下流領域の住民の水害を防止するために、村の中心部をダムに沈めたという歴史とそのダムの実際を理解するために村の入り口にある大滝ダムに行きました。想像以上にとても大きなダムで、雨の後で水が増水していたため、緑色の豊かなダム湖になっていました。このダム湖の底に村が沈んでいることは想像できませんでしたが、ダムの掲示物を観て、村を犠牲にしてでも治水の重要性があったことが理解できました。
次に、川上村が大事にしている森林と水の資料館である「森と水の源流館」へ行き、学芸員の方から紀ノ川へと続く吉野川の水脈や林業を生活の生業としてきた村の歴史とその中でものづくりを行ってきた村の人々の暮らしの移り変わりを丁寧に説明していただきました。「昔からの手作りの器具が後世に引き継がれるためには、今の高齢者の方から話を聴き、器具作りを教えてもらう必要があるが、その話をしているときの高齢の方々の表情がとても生き生きと活気づくので、話を聴くことの必要性を感じている」との学芸員の方のお話から、異世代間でのコミュニケーションの重要性が理解できました。また館内の展示物がリニューアルされているとのことで、とてもわかりやすい状況で視覚や音響効果も含めて自然を守ることは村を守ることでもあるということを感じることができました。
次に村民への健康支援を行っている機関(役場保健師・社会福祉協議会・森林組合・診療所)の担当者に対して、事前に把握した事項から、看護者として可能な支援を検討するために考えた質問を学内期間中にまとめ、先方に送付した質問を各機関を訪問し、あるいは、学生の居場所であるやまぶきホールの研修室に来て頂き、インタビューをしました。
学生の質問は、村人の健康や安全な暮らしを守る支援を念頭において、コロナ禍で出来なくなっていたことの課題や、感染症分類が変更となることで今後を見据えた現状と活動の実際を理解しようとするもので、母子保健・成人保健・高齢者保健の活動だけでなく、先輩がこれまで提供してきた林業での救急措置対応媒体の活用の現状など先輩の活動を踏まえた質問を行っていました。また地域特性として、大雨による土砂災害が多いことと高齢化率が高く独居高齢者が多いことで、災害時の避難行動要支援者に対する支援の実際等、今までの実習成果を理解しさらに発展した支援を検討するものになっていました。インタビューを受けた担当者の方からは、「話の聞き方が上手で、通り一遍の質問ではなく、さらに関連することを掘り下げて聴く姿勢に感心した」との声がありました。
それぞれの機関や担当者とのインタビューは、時間を超過してご対応いただき、学びも沢山ありました。
また森林組合や診療所・保育園は、施設を訪問したことで村民の方々の生活の場・医療の場の理解につながったのではと感じました。
5月10日(水)2日目:今日も最高の天候に恵まれました。
2日目は、住民の方を対象にした健康測定を実施しました。学生たちは、スムーズに行えるように、学内での準備やシミュレーションを重ねてきました。会場や測定機器の設営も間隔を考えながら自分たちで全て行いました。会場となった川上村ふれあいセンターに偶然カフェを利用しに来られた方や、かわかみらいふのスタッフの方が呼びかけて下さった方23名の方が参加してくださいました。中には、以前にこのふれあいセンターで実施した骨密度測定に参加したことがあると平成28年の測定時の事をよく覚えてくださっていた80歳代の方もいらっしゃいました。
最初は緊張した様子の学生たちも、住民の方の温かいお言葉を頂き、和やかな雰囲気で健康測定を実施展開することができました。参加者の方から聞かせて頂く生活上でのお話は、大変興味深く、学生たちの目が輝いているように見えました。日頃の生活の様子をお伺いしながら問診をとり、血圧測定、握力測定、足趾把示力測定、結果に応じた保健指導を実施しました。学生が作成した各結果説明用パンフレットや保健指導用パンフレットを使い、転倒防止手帳を渡しながら一人ひとりに応じた結果説明や保健指導を一生懸命に行う学生の姿がとても頼もしく思えました。
また、かわかみらいふの活動の特徴である移動スーパーとコミュニティーナースの後を追って、山の中腹にある地区を訪れました。4世帯の独居高齢者のみで構成された集落で、足が不自由で移動スーパーまで歩いて行けない住民をコミュニティーナースと今年配属になった理学療法士と共に訪問して、健康状態の確認や、購入してほしい食品の聞き取りをしての買い物代行の状況を理解することができました。
学生の話によると、コミュニティーナースは医療者というよりは、知人のようにフレンドリーに話をしていて住民の事が良く理解できているようで、住民の方も「1週間ぶりに人と話したわ あれとこれが欲しい」ととても嬉しそうな表情が印象的だったとのことでした。
5月11日(木)3日目:日頃の行いが良い(?)見事な晴天でした。
3日目は、インタビューで把握できたことや健康測定の問診やデータの集計・まとめを行いました。それぞれのグループでディスカッションを行い、一人ひとりが学んだことや考えたことを共有し、問題ばかりを見つけずにお話を聴いたことや観察できたことで村の強みを再確認しながら、自分たち看護者として可能な支援のあり方を検討しました。
帰りは、匠の聚でインタビューを行ったあと、全員素晴らしい風景に見惚れました。バスの中からは、道を横断する猿に遭遇し、自然との共存も感じることができました。この実習を通して、実際に学生は自分たちの目で川上村の住民の方々の「生活」「暮らし」を観て感じ、またその中での健康と保健・医療・福祉・教育の関係性をインタビューを通して理解した上で、看護の役割を考える貴重な時間となりました。
お世話になった各機関の皆様、健康測定に参加して頂いた住民の皆様、本当にありがとうございました。
看護医療学科 助教 伊藤 千春
【関連記事】
「離島・へき地医療体験実習」発表会を開催しました!~看護医療学科
離島・へき地医療体験実習(川上村)で応急手当ポケットカードを作成!~看護医療学科
離島・へき地医療体験実習(山添村)レポート~看護医療学科
離島・へき地医療体験実習(宇陀市大宇陀地区)レポート~看護医療学科
離島・へき地医療体験実習(川上村)レポートvol.2~看護医療学科
離島・へき地医療体験実習(川上村)レポートvol.1~看護医療学科