2020.10.26
加藤プロジェクトゼミ展示 茶室「禍庵」~人間環境デザイン学科
人間環境デザイン学科の加藤ゼミです。2・3回生合同の加藤プロジェクトゼミでは2011年から茶室を作っており、毎年畿央祭(学園祭)において展示しています。
早いもので茶室づくりも10年目となりましたが、今年はまさか新型コロナウィルスによって社会がこんなにも混乱するとは夢にも思っていませんでした。畿央祭も中止となりました。年度初めは茶室制作も難しいのではと思っていましたが、幸いにも後期から対面授業も一部再開してなんとか制作することができました。
毎年、茶室のテーマを設定しており、2020年は「禍庵(かあん)」と決まっていました。鴨長明の方丈記からデザインのヒントを得て茶室づくりを始めていきました。
▶2020年コンセプト~茶室「禍庵(かあん)」《転生愚離茶・テンセグリティ》
ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。
↑これは有名な鴨長明が書いた「方丈記」の冒頭です。
「方丈記」が書かれた背景には災厄に悩まされた乱世があります。晩年、長明は一丈四方(方丈)の小さな庵で余生を送ります。今年の茶室はテンセグリティ構造で成立しています。テンセグリティとはTension(張力)とIntegrity(統合)の造語であり、バックミンスター・フラーによって提唱されました。「転生愚離茶」というのはテンセグリティの当て字です。まるで重力を無視して浮いているように見える二畳茶室になっています。
設置するにあたり、現場は全然うまくいかず、翌日の遅くまでかかってしまいました。
完成時は浮いたような構造(テンセグリティ)が一瞬は成立していたのですが、次第に崩れて、天井部が下がってしまいました。2日目には床にまで天井部が落ちてしまい、テンセグリティが成立していませんでした。
コロナ禍のためすぐに学生は集まれませんので、急遽、リーダーの勝屋君が応急処置で直してくれました。面皮柱を立て、なんとかテンセグリティ構造が成立しました(写真一番上)。
▶禍庵 1/10模型
1/10模型と原寸(1/1)の違いを思い知らされましたが、試行錯誤しながら完成させることができました。
【禍庵制作メンバーのコメント】
今回、テンセグリティという変わった構造を軸に作ってみましたが、やはり絶妙なバランス、サイズで作らないといけなく、難しかったです。
思っていた形にはならなかったですが、構造体への理解がより一層深まりました。次回何かを制作する時にこの失敗と学びを活かし、取り組みたいと思います。
(禍庵リーダー)人間環境デザイン学科3回生 勝屋翔太
失敗はつきものですが、その失敗がかえって作品の質を上げることもあるのです。禍庵は片流れ茶室の美しさをたたえ、面皮柱はインテリアのポイントになっています。
コロナ禍でも全員の力を結集して作ることができたのは本当に良かったと思っています。
完成した茶室は10月30日(金)までエントランスホールに展示していますので、登学された方はぜひ実物をご覧ください。
人間環境デザイン学科 教授 加藤信喜
▼テンセグリティを実感できる動画(クリックで開始)
【加藤プロジェクトゼミメンバー】
勝屋翔太 米田雄人 麻田彩花 梅林沙采 川西梨々花 佐々木優帆 中林ゆき 前田瑠唯 西田瞬 井戸上希星 島本侑奈 殿村梨花 中井竜大 東田遥香 山口瑞生
【過去の茶室記事】
2011年 浮游庵 fu-you-an(浮く茶室)
2012年 PET庵(ペットボトル茶室)
2013年 「段庵」(ダンボール茶室)
2014年 「蹴鞠庵」(サッカーボール型茶室)
2015年 「ゲル庵」(モンゴル移住民の移動式住居)
2016年 「紙庵」(トイレットペーパーと古新聞の茶室)
2017年 「紐庵」(紅白の毛糸と木材を組み合わせたの茶室)
2018年 「角々庵(かくかくあん)」(三角と四角の幾何学デザインの茶室)
2019年 「吊庵(つりあん)」(吊る茶室)