2023.07.10
令和5年度 在外研究員レポートvol.1~なぜフランストゥールーズへ?
本学には教育研究水準の向上および国際交流の進展に資するため、学術の研究・調査等のため外国に在外研究員を派遣する制度があります。2023(令和5)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの期間、フランス南西部トゥールーズにあるトゥールーズ大学病院、老年科、加齢研究所(Institute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospital)で理学療法学科 松本 大輔准教授が、研究活動を行っています。フランスから現地レポートが届きましたので、ご紹介します。
私は4月から在外研究員として、フランス南西部のトゥールーズにあるトゥールーズ大学病院、老年科、加齢研究所(Institute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospital)で、高齢者の健康増進、フレイル予防につながる研究活動を行なっています。
今回は、フランスの研究所を選んだ理由や研究所について紹介します。
なぜ、フランス?
高齢化率(全人口に対する65歳以上の人口割合)が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。日本が初めて7%を超えたのは1970年で、フランスは1864年と日本より約100年早く高齢化を迎え、長期にわたって高齢者対策に取り組んできています。
参照:高齢化の国際的動向|令和2年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府 (cao.go.jp)
なぜ、トゥールーズ?
トゥールーズ大学病院(Institute of Aging, Gérontôpole, Toulouse University Hospital)はフランスで初めて老年専門科として立ち上げられました。また、フランスが国として進めるFrance Santé 2030(フランス健康2030)の老年科部門の代表の病院・研究所として今年選ばれました。代表であるBruno Vellas教授は、国際老年医学会(IAGG)の会長を経験されておられます。また、IAGG会長時にフレイルについてまとめたWHITE BOOK ON FRAILTY(フレイル白書)の編集責任を務められました。
日本でもサルコペニアや低栄養のスクリーニングで用いられるMini Nutritional Assessment (MNA)も業績の一つであり、フレイル・サルコペニア研究で世界的に有名な研究者の一人です。
▲Bruno Vellas教授
また、実践にも力を入れています。WHOの共同研究機関であるWHO Collaborating Centre for Frailty, Clinical & Geroscience Research, and Geriatric Trainingとして、WHOの掲げる地域レベルでの介入ガイドラインである高齢者のための統合ケア(Integrated Care for Older People:ICOPE)の実装研究に従事しています。地域在住・外来高齢者に対し、専用アプリや専門家を用いて健康チェックを行ない、早期発見・早期介入の仕組みが出来上がっています。
私はGérontôpole, Toulouse University Hospitalの6つの病院・研究所の中のInstitute of Agingに所属し、研究所の代表のPhilipe de Souto Barreto教授の指導を受けています。 Philipe教授はNEJM、Lancet、BMJ、JAMA Intern Medなど権威のある雑誌に掲載された経験を持ち、施設入所高齢者に対する運動推奨に関する国際WGを主導され、ガイドラインも執筆されています。
▲Philipe de Souto Barreto教授
私は、Geroscience(老化と加齢関連疾患への生物学的研究)に焦点を当てたINSPIRE(INStitute for Prevention healthy agIng and medicine Rejuvenative)という研究プロジェクトのデータ分析に関わらせていただくことになりました。基本的にはオフィスで、研究計画書の作成、データ分析、論文執筆の準備をしています。
在籍研究者は老年科医(ブラジル)、神経内科医(イタリア)、疫学(メキシコ)、薬学(台湾、フランス)、スポーツサイエンス(フランス)とさまざまで、それぞれ自分のテーマで分析・論文執筆を行なっており、皆さん、日中は非常に静かで集中しています。また、月に数回、外部の研究者の来訪やミーティングがあります。ランチタイムになると、ミーティングルームに集まり、世間話から歴史、文化、政治など1時間ほど会話を楽しみます。学校で習ったような歴史的事実がそれぞれの国の立場によって見え方が異なることを気付かせてくれます。日本のことをよく聞かれるので、お互いのことや自国のことを深く知るきっかけにもなっています。また、研究者としてキャリアについても、いろんな意見や考え方を聞かせていただき、日々刺激を受けています。
さらに、両教授を含め、今まで読んでいた論文を執筆された研究者もいるので、直接意見交換・指導を受けられることは、在外研究員ならではの貴重な機会であると感じています。
まだ2ヶ月が経過したところですが、送り出してくださった皆さんの感謝を忘れず、少しでも多くのことを吸収できるように過ごしていきたいと思います。
理学療法学科 准教授 松本大輔
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