2025.08.20
音楽教育 × 総合芸術 ― 劇団四季ミュージカルで学ぶゼミフィールドワーク ~ 現代教育学科 渡邊ゼミ
みなさん、こんにちは。現代教育学科の渡邊です。私は音楽教育を専門にしており、特にオペラやミュージカルといった「総合芸術」を教材にした授業づくりの研究を行っています。
去る8月7日(木)、第1回目のゼミフィールドワークとして、劇団四季ファミリーミュージカル『王子と少年』(原作:マーク・トウェイン)を、なら100年会館にて観劇してきました。
ミュージカルって、どんな芸術?
みなさんはミュージカルを観たことがありますか?ミュージカルは、ヨーロッパの「オペレッタ」をもとに、さまざまな文化的要素を取り入れながらアメリカで発展してきた総合的な舞台芸術です。物語に芝居、歌、ダンスが加わり、それぞれが融合しながら一つの作品をつくりあげています。
もし音楽の授業でミュージカルを扱うとしたら、ただ劇中歌を聴いて感想を書くだけでよいのでしょうか?きっと、それだけでは足りませんよね。
そこで今回はこの観劇を「教材研究ワークショップ」と位置づけ、「ミュージカルという総合芸術を、どう教材化すればよいか?」という問いを持って、ゼミ生一人ひとりが主体的に観劇に取り組みました。
▼ 上演中の撮影・録音は禁止されているため、開演前の舞台写真を…。
『王子と少年』のあらすじ(劇団四季公式サイトより)
たくさんの家来に囲まれてお城で暮らす王子エドワード。
ロンドンのオンボロ横丁に住む、貧しい家の子トム。
全くちがう境遇に生まれながらも、顔がそっくりな二人は、ある日偶然出会って意気投合。
着ている服を取りかえっこして入れかわってみたら――。
貧しい身なりになったエドワード王子は、お城を追い出されてしまいオンボロ横丁へ。
王子の服を着たトムは、家来たちに「本物の王子じゃない」と言っても信じてもらえません。
さらに、エドワードの父である国王が亡くなってしまい、さぁ大変!
王子はすぐにお城にもどって国王を継がなければならないのに、貧しい身なりのエドワードが本物の王子だなんて、誰も信じてくれません。
このままじゃ、王子の格好をしたトムが国王になっちゃう!
入れかわった二人は、もとの自分にもどれるのでしょうか!?
観劇の学びと気づき
本作品の舞台は16世紀のイギリス。絶対王政下の時代で、貴族と庶民の貧富の差が非常に大きく、多くの人が貧困に苦しんでいました。ゼミ生には、事前課題として当時のイギリスの社会や文化について調べてもらいました。その歴史的・文化的背景を踏まえて舞台を見ることで、作品の世界がより深く理解できたようです。
音楽が映し出す階層社会
●「庶民たちの登場シーンでは、わんぱくで活気のある比較的テンポの速い音楽が流れ、庶民の貧しいながらもたくましく生きている感じが表現されていた。一方、貴族たちが登場すると、音楽は優雅でゆったりとした調子に変化し、気品や落ち着きが際立っていた。音楽という表現媒体を場面や登場人物の身分に合わせて使い分けることで社会的階層の違いを観客に直感的に伝えていたところに感銘を受けた。」
4回生・Aさん
それぞれの登場人物の生き様や当時の社会構造を、テンポの異なる音楽で表現しているという気づきがありますね。音楽科の授業では、このように「音楽から感じ取れることの根拠は音楽のどこにあるのか」ということを考えることが非常に重要になるのです。
表現の構成要素に注目する
● 「(この舞台を授業で扱うとしたら)入れ替わった王子が門番に門を開けるよう命じても信じてもらえず、暴力を受ける場面と、最後に本物の王子とわかったときに従者たちの態度が急変する場面。この2つのシーンの音楽やダンスを『強弱』の観点から比較してみたいと思った。」
4回生・Iさん
同じ登場人物でも、立場が変わることで、表現がどう変わるか。音楽や身体の動きの「強さ」の変化に注目することで、場面の意味や感情の変化をより深く読み取ることができ、「強弱」という概念について学べるのではないかというアイディアでした。
単なる「感想」で終わらせないために
ただ「すごかった!」「楽しかった!」という感想にとどまらず、作品の歴史的・文化的背景を知った上で、音楽の「どんなところからどんな感じがするのか」、「それらがどう関わり合っているのか」ということをそれぞれが考え、言葉にすること。これこそが、音楽科の授業ではとても大切な学びとなります。
さらに、ミュージカルのような総合芸術では、音楽だけでなく、ダンスや演技との関係性に注目することで、作品をより深く理解することができます。今回のワークショップは、そのような「鑑賞の視点」を育てる良い機会になったのではないでしょうか。
ゼミ生の感想より
● 劇団四季は二回目だったけれど、終始圧巻でした。少しバレエチックなところもあり、バレエを習っていた身としてはすごくのめりこんで見てしまいました。普段は予告を見たりあらすじを調べたりせずドラマや映画を見るタイプなのですが、今回はあらすじや歴史的背景を調べていたからこそ、どういうことだろうと考えることが少なく、すっと内容が理解できてすごく楽しめました。
同じ人でも衣装や役が違えば、本当に同じ人なのか疑うぐらい変わって、本当にすごいなと思いました。舞台も端から端まで使っていて、どこを見たらいいのか、右も見たいし左も見たいということが多く、目が足りない!!と何度も思いました。またほかの舞台も見てみたいと改めて強く思いました!!
3回生・Iさん
最後に
実は私、渡邊は劇団四季の大ファンで、プライベートでも年に数十回観劇するほど。今回、ゼミ生たちと大好きな劇団四季の舞台を観ることができ、本当に嬉しかったです。あまりに嬉しそうだったせいか、ゼミ生が私の写真を撮ってくれました。
今回が初めての学外フィールドワークでしたが、今後もミュージカル鑑賞や総合芸術に関する学びの場を企画していく予定です。ミュージカルが好きな方、芸術と教育のつながりに興味がある方、ぜひ渡邊ゼミで一緒に学んでみませんか?
現代教育学科 准教授 渡邊 真一郎
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