2025年11月18日の記事

2025.11.18

長島愛生園を訪問し、正しい知識を持ち、語り継ぐことの重要性を学ぶ ~ 看護医療学科「健康学特論」

2025年11月8日(月)に2年次配当科目である「健康学持論」の授業の一環として、履修者40名が岡山県瀬戸内市にある国立療養所 長島愛生園を訪問しました。   今回のブログでは実際に訪問した学生のレポートを一部ご紹介します。     国立療養所長島愛生園は、岡山県瀬戸内市邑久町虫明に位置する国立ハンセン病療養所です。瀬戸内海に浮かぶ長島には1988年まで本州との橋がかかっておらず、まるでハンセン病療養所を完全に社会から断絶するようでもありました。架橋された邑久長島大橋は人々から「人間回復の橋」と呼ばれています。 長島愛生園を訪問した学生の感想( 抜粋 ) ● 学内の講義や自己学習では想像することが難しかったハンセン病患者の過去および現在の生活を、実際に国立療養所長島愛生園に足を踏み入れ、そこでの歴史館や園内の見学、学芸員や当事者による継承講話を通して、ハンセン病およびハンセン病患者の現在とその背景に対する理解が深まった。 糸谷 美優   ● 今回の見学を通して、病気よりも差別が人を傷つけるということを強く実感した。看護を学ぶ者として、ただ病気を看るのではなく、その人の人生や背景に寄り添う姿勢が必要であると感じた。 池田 葵音   ● ハンセン病が流行し差別を受けるようになったのはもう100年以上も前のことなのにも関わらず、私たちは無関心から来る知識不足により、無意識のうちに過去の過ちを繰り返した。このことから、ハンセン病問題での学びを、決して他人ごとにせず、苦しんだ方々の痛みを家族や友人に伝え、風化させず、今後また同じ過ちを犯して苦しむ人を生み出さないことが重要だと考える。 梅原 麻綺     ● 今回の長島愛生園での学外学習では、長島愛生園内にある、歴史館、収容所(回春寮)、収容桟橋、監房、納骨堂を見学した。その中でも私は歴史館が印象に残っている。歴史館は旧事務所本館の内部を改装しており、国の登録有形文化財となっている。そしてハンセン病の歴史の流れを当時の新聞や写真、物品を展示していたり、入所者の方たちの短歌や詩が展示されていた。短歌や詩から、家族との別離があったことや生きがいを求め、前を向いて文化活動を行っていたことを知った。社会からの隔絶や世間からの差別、収容所での過重労働など、さまざまな困難があったと知った。その中でも、芸術や音楽に光を求め、行動するということには、強い意志と力が必要であったと考えた。 安部 友香   ● 社会では差別に苦しみ、引きこもるように暮らしていたが、愛生園では仲間と支え合いながら穏やかに生きることができたという。この話を聞いて、人それぞれの感じ方や価値観の違いを理解することの大切さを知った。自分にとって耐えられない環境でも、他の人にとっては安心できる場所であることもある。看護においても、患者の価値観を押し付けず、傾聴し、尊重する姿勢が必要であると学んだ。 石田 知花   ● これらの学びを通して私は差別や偏見をうまないためには病気や社会問題に対して関心をもち、正しい情報を知ることが大切であると考えた。しかし、現代社会は様々なSNSが存在し、フェイクニュースなど誤解をうむ情報が多く存在する。だからこそ、その情報の中から正しい情報を見極め、自ら考えて判断していく力を身につける必要があると学んだ。 今井 あす香     ● 差別・偏見をなくすために、ヒトとしても看護職としても、さまざまな疾患や事柄に対して偏った情報だけで判断することなく、誤った理解は少しずつ正していき、もっと関心をもって知ろうとすることで正しい情報から正しい理解につなげていくことが、この先心に深い傷を負って悲しむ人を少しでも減らすために必要なことであると学ぶことができた。 岡本 紗良   ● 私は将来、医療職として3つのことを実践したいと考えた。1つ目は、患者の尊厳を守るために、単に治療やケアを提供するだけではなく、患者一人ひとりの「人間としての価値」を認め、治療方針を決める際に患者本人の希望を丁寧に聞き取って、可能な限りその思いを治療方針に反映させるなど、患者を尊重する姿勢を持つことである。2つ目は、どんな病気や障害を持っていても、患者には「自分らしく生きる力」があるということを信じ、自分らしく生きることができるように支えることである。3つ目は、医療職者として「知ろうとする姿勢」を持ち続けることである。病気のことだけではなく、患者の背景や歴史、社会的な課題についても学び続けることで、偏見のない、尊厳を守る医療を実践することや、より深いケアを提供することに繋がると考えた。 海原 寧音   ● 長島に着いた時、海がとても静かで美しかった。その景色の中に、長い間苦しみながらも懸命に生き抜いた人たちの強さを感じた。そのきれいな海は当時の彼らにとっては、社会との隔離の壁であった。彼らの想いを忘れず、語り継ぐことこそが、今を生きる私たちにできることだと考える。 近藤 おとね   ● 現代においても、コロナ渦で感染した患者やその家族、医療従事者への偏見・差別が起きており、それらはまさにハンセン病の歴史と同じことで、私たちは過去の歴史から何も学べていないと痛感した。二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、正しい知識や理解を得て関心を持ち続けることで、知識や理解を広め、偏見や差別を未然に防ぐことが今の私たちにできることであると感じた。 杉本 唯     ● 社会復帰が叶わない方が多くいるのは、後遺症を伴う高齢化、社会生活の大きな変化、家族との断絶、今もなお残る偏見と差別が原因となっているからであるということを学んだ。その中でも私は、今もなお残る偏見と差別が、入所者の社会復帰を最も妨げている原因であると考える。 瀧本 莉乃   ● 長島愛生園で生きた人々の姿から、「語り継ぐこと」の大切さも学んだ。過去の出来事を風化させず、そこに生きた一人ひとりの想いを次の世代へとつないでいくことが、私たちにできる最も大切なことではないかと思う。苦しみの歴史を知り、学び、伝えることが、再び同じ過ちを繰り返さないための第一歩であると考えた。 村尾 シンティア菜那果   ● 私はこの橋が単に島と本土を結ぶものではなく、差別や偏見で分かれてしまった人と人との心をつなぐ橋だと思った。この橋のおかげで今回この場所を訪れ、たくさんのことを学ぶことができたのだと考えると、これまでの歴史の重大さを感じた。 森下 あんず   ● 2020年頃、COVID-19の流行により感染者や医療従事者に対する差別や攻撃が行われた。学芸員によると、この報道を見た入所者が「日本はあの頃と何も変わっていない」と語ったという。私はそのお話で、このようなハンセン病元患者の事例は、現在であってもなお起こりうるものなのだと実感し、ハンセン病をはじめ、疾病や障害者に対して、世間には偏った情報が多いことを自覚し、関心を持って正しい理解をすること、人権感覚を持って情報を見ることの重要性を学ぶことができた。そして、将来の医療従事者として、1人の人間としてこの学びを忘れず、常に心に留めて行動していきたいと考えた。 吉村 弘貴     最後に、長島愛生園のみなさまには貴重なお時間をいただきありがとうございました。改めてお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。   看護医療学科 准教授 前田 則子 助教 大平 俊介 関連記事 ハンセン病療養所を訪問し「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病療養所を訪問、当事者家族の声を聴き「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病療養所で、当事者家族の声から「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病当事者家族から「疾病と差別」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 国立療養所長島愛生園でハンセン病回復者の現状を体感する~看護医療学科「健康学特論」