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健康科学研究科

2026.08.18

科学研究費助成事業・学術変革領域研究(A)「顔身体のデザイン」第2回領域会議が開催されました! ~ ニューロリハビリテーション研究センター

2026年8月8日(土)から9日(日)にかけて、立教大学池袋キャンパスにおいて、科学研究費助成事業・学術変革領域研究(A)「顔身体のデザイン」の第2回領域会議が開催されました。 学術変革領域研究(A)は、従来の学問分野の枠を超え、多様な分野の研究者が連携しながら新しい学術領域を切り拓くことをめざす大型の研究プロジェクトです。「顔身体のデザイン」領域では、未来の顔身体を設計するとともに、そこに生じうる差別や痛みを解消するための倫理形成と教育のあり方を提案することを目指しています。   2026年度からは、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡 周教授が、公募研究班の研究代表者として参画しています。   言葉を超えたケアのかたちを探る研究が学術変革領域研究(A)に採択されました。 | 畿央大学       公募研究班として初めて参加した今回の領域会議では、森岡 周教授が研究代表者を務める研究課題「逸脱する身体との“対話”のデザイン:〈間〉の科学とアートで紡ぐケアの倫理」について、研究の概要説明や進捗報告を行いました。森岡 周教授は、在外研究のため滞在中のフランス・リヨンからオンラインで参加し、会場の参加者と研究のビジョンを共有するとともに今後の展開に向けて意見交換を行いました。       また、畿央大学からは複数の教員・大学院生が参加し、本研究課題に関するデータや関連テーマについて以下のポスター発表を行いました。   大住 倫弘教授:幻肢痛のリハビリテーション経験から失われた身体の補完について再考する 平川 善之客員教授、森岡 周 教授:『逸脱する身体』との対話をデザインする:CRPS患者に対する影絵を用いた間身体的アプローチ   長森 由依(博士後期課程)、高村 優作特任研究員、堀田 祥司氏、森岡 周教授:重度肢体不自由児と養育者の再会場面における顔身体を介した対話   堀田 祥司氏(修士課程)、長森 由依、森岡 周教授:言葉による意思表出が難しい子どもにおける顔身体のサインの変化―一人場面とかかわり場面に着目した予備的検討―     小仁田 充氏(博士後期課程)、森岡 周教授:意識障害患者における「顔」を介した関係性の再構築   公募研究班の報告や各発表に対して、哲学、文化人類学、心理学をはじめとする多分野の研究者の方々から講評をいただきました。また、他の研究班による発表や意見交換会、分野別勉強会などの2日間のプログラム全体を通して、幅広い視点から意見交換を行うことができました。     「顔身体のデザイン」領域の目的のもと、私たちは「育ち」と「老い」のケアの現場で繰り広げられている“対話”の実証・実践・設計に取り組み始めたところです。今回の領域会議への参加を通じて、リハビリテーション現場のフィールドワーカーとしての私たちのアイデンティティや強みを再認識するとともに、本研究がリハビリテーション分野を超えて発展していく可能性を強く実感しました。   このような貴重な機会をくださった領域代表の山口 真美教授(中央大学、認知科学・実験心理学)、計画班の河野 哲也教授(立教大学、哲学)をはじめとする「顔身体のデザイン」領域のみなさまに、心より感謝申し上げます。また、私たちの取り組みの可能性を大きく広げ、多くのご縁をつなぎながら本研究課題を牽引してくださっている森岡 周教授に、改めて深く感謝いたします。今回の領域会議で得た新たな視点やご縁を大切にして、未来の顔身体のデザインの実現に向けて着実に歩みを進めてまいりたいと思います。   健康科学研究科 博士後期課程3年 長森 由依   関連記事 明治大学・嶋田研究室にてJST CREST領域内研究交流を行いました ~ ニューロリハビリテーション研究センター 第1回日本理学療法学会連合学術総会で森岡 周 教授が臨床研究学術賞を受賞、本学関係者が各専門領域の主要企画で活躍! 記念講演を終えて~森岡周教授が第1回日本理学療法学会連合学術総会「臨床研究学術賞」に 在外研究員レポート~オルレアン大学における特別講義と学術交流 令和8年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。 第1回日本理学療法学会連合学術総会において、森岡 周センター長が「臨床研究学術賞」を受賞します NARRA BODY-NARRATIVE EMBODIMENT PROJECT〜ナラティブ・エンボディメント〜 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。 2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評 国立研究開発法人学術技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター   

2026.08.14

明治大学・嶋田研究室にてJST CREST領域内研究交流を行いました ~ ニューロリハビリテーション研究センター

JST CREST「生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出」領域の研究交流として、明治大学の嶋田 総太郎教授の研究室を訪問しました。 当日は嶋田研究室で開発・活用されている全身VRシステムを体験させていただきました。本学ニューロリハビリテーション研究センターからは、林田 一輝客員研究員(宝塚医療大学助教)、大西 空CREST特任研究員が参加しました。   体験では、全身を用いて勇者となり敵と戦うコンテンツや、月面を歩行するコンテンツなどを体験しました。特に月面歩行では、月面に降り立つ場面だけでなく、宇宙船で地球を離れ月へ向かう過程から体験が始まり、ストーリーの中で身体を動かす構成となっていました。   同じ「歩く」という行為であっても、その背景となる物語(ナラティブ)が加わることで体験の意味づけや没入感が大きく変化することを実感しました。身体運動とナラティブを統合した体験設計は、人の認知や自己のあり方にどのような影響を与えるのかを考える上でも、大変興味深いものでした。   体験後には、VR技術をリハビリテーションへどのように応用できるかについて意見交換を行いました。身体機能の回復だけでなく、患者さんの主体性や自己の再構築を支える体験としてVRを活用する可能性や、身体運動とナラティブを組み合わせた新たな介入のあり方について活発な議論が交わされました。   今後もこのような領域横断的な交流を通じて、新たな研究の視点を深めていきたいと考えています。     畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター   関連記事 第1回日本理学療法学会連合学術総会で森岡 周 教授が臨床研究学術賞を受賞、本学関係者が各専門領域の主要企画で活躍! 記念講演を終えて~森岡周教授が第1回日本理学療法学会連合学術総会「臨床研究学術賞」に 在外研究員レポート~オルレアン大学における特別講義と学術交流 令和8年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。 第1回日本理学療法学会連合学術総会において、森岡 周センター長が「臨床研究学術賞」を受賞します NARRA BODY-NARRATIVE EMBODIMENT PROJECT〜ナラティブ・エンボディメント〜 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。 2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評 国立研究開発法人学術技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター     

2026.08.07

第16回呼吸・循環リハビリテーション研究大会を開催しました!~ 健康科学研究科 田平研究室

2026年8月1日(土)・2日(日)の2日間にわたり、滋賀県米原市のエクシブ琵琶湖にて「第16回呼吸・循環リハビリテーション研究大会」を開催しました。本研究大会は、田平研究室の大学院生や修了生が、それぞれの研究成果や現在取り組んでいる研究課題を持ち寄り、意見交換を行う機会として毎年開催されています。今回は、現地参加11名、Web参加5名の計16名が参加しました。   ▶昨年度実施された第15回呼吸・循環リハビリテーション研究大会の様子はこちら   研究発表会は、対面とZoomを組み合わせたハイブリッド形式で行われ、2日間で計11題の演題が発表されました。各演題には発表15分、質疑応答15分の時間が設けられ、学会発表とは異なり、研究の背景や方法、解析結果の解釈、今後の研究の進め方などについて、一つひとつじっくりと議論することができました。研究に対するそれぞれの思いが交わるなかで議論は尽きることなく、もう少しこのまま語り合っていたいと感じるほど、充実した時間となりました。   ▲研究発表の様子   演題は、自律神経調整や急性心不全、間質性肺疾患、胸部外科術後、小児患者に対する呼吸理学療法などの呼吸・循環リハビリテーションに関するテーマに加え、がん患者の身体機能、栄養評価、体液バランス、新生児・乳児期の心臓血管外科術後リハビリテーションなど、多岐にわたりました。異なる領域や施設で臨床・研究に取り組む参加者から多様な意見が出され、それぞれの研究をブラッシュアップするための貴重な機会となりました。   ▲質疑応答の様子   1日目の研究発表終了後には、夕食を囲みながら、研究の話だけでなく、日々の臨床や近況についても語り合いました。研究発表中とは異なる和やかな雰囲気の中で、大学院生と修了生、また所属施設の異なる参加者同士の交流を深めることができました。   ▲夕食会・交流の様子   2日間を通して、自身の研究を改めて見直すとともに、今後の研究を進めるうえで多くの助言や新たな視点を得ることができました。また、研究室の修了生を含めたつながりの大切さを実感する、充実した研究大会となりました。   田平研究室では、呼吸・循環リハビリテーション領域における日々のClinical Questionを研究につなげ、その成果を臨床へ還元することをめざして活動しています。当研究室の活動や研究内容に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。   研究室スタッフ一同、心よりお待ちしております。     健康科学研究科 修士課程 北村 憲一   関連記事 ▼田平研究室に関連する記事 第15回日本リハビリテーション栄養学会学術集会において大学院生が最優秀YIA賞を受賞 ~ 健康科学研究科 第35回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会で2年連続となる「医療の質特別賞」を受賞! ~ 健康科学研究科 第65回日本呼吸器学会学術講演会で『トラベルアワード』を受賞 ~ 健康科学研究科 ▼健康科学研究科に関連する記事 第1回日本理学療法学会連合学術総会で森岡 周 教授が臨床研究学術賞を受賞、本学関係者が各専門領域の主要企画で活躍! 田原本町との連携を強化 -健康づくりと地域課題の解決を推進~健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 地域リハビリテーション研究室の教員・院生が第35回奈良県理学療法士学会で講演・研究成果を発表し、学会賞を受賞!~健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 合同ゼミ懇親会を開催!~ 健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室

2026.08.03

第1回日本理学療法学会連合学術総会で森岡 周 教授が臨床研究学術賞を受賞、本学関係者が各専門領域の主要企画で活躍!

2026年7月24日(金)から26日(日)まで、札幌コンベンションセンターにおいて「第1回日本理学療法学会連合学術総会」が開催されました。本学術総会は、日本理学療法学会連合を構成する学会・研究会が一堂に会し、理学療法学の現在と未来について領域横断的に議論する、記念すべき第1回の学術総会です。 本学術総会において、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡 周 教授が、理学療法学術賞の「臨床研究学術賞」を受賞しました。 受賞記念講演では、「臨床の問いから拓く理学療法学―病態把握・身体性・自己再構築へ―」というテーマで講演しました。また、特別企画シンポジウム「日本理学療法学会連合の未来を語る」にもシンポジストとして登壇し、今後の理学療法学と学術活動の発展に向けた議論に参加しました。     ▶ 森岡 周 教授の受賞の様子はこちら   本学関係者が多数登壇 本学術総会には、計13名もの畿央大学関係者が、講師、シンポジスト、座長として登壇し活躍しました。 本学教員では、瓜谷 大輔教授が変形性膝関節症に対する徒手理学療法およびウィメンズヘルス理学療法について、岡田洋平教授がパーキンソン病の病期に応じた理学療法について講演しました。土井 剛彦教授は、サルコペニアに対する理学療法戦略に関するシンポジウムに登壇しました。石垣 智也准教授は、高齢者の社会参加と健康をテーマとする講演の座長を務め、地域の健康と理学療法をつなぐ議論を進行しました。 さらに、佐藤 剛介客員教授は脊髄損傷の再生医療と理学療法、生野 公貴客員教授は治療学に貢献する理学療法研究およびサルコペニアに対する理学療法戦略、徳田 光紀客員准教授は異常感覚に対する経皮的電気神経刺激に関する企画に、それぞれシンポジストまたは座長として参画しました。中村 潤二客員准教授は、痙縮と拘縮に対する電気刺激療法および拡散型ショックウェーブ療法について講演しました。また、吉田 陽亮客員准教授は、集中治療医学領域における神経筋電気刺激の活用を扱う企画の座長を務めました。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの客員研究員では、重藤 隼人氏が関節可動域制限と徒手理学療法に関する企画の座長を務めるとともに、徒手理学療法の鎮痛メカニズムについて講演しました。西 祐樹氏は異常感覚に対する経皮的電気神経刺激について講演し、尾川 達也氏は生活期におけるリハビリテーション・栄養・口腔ケアの実装を扱うシンポジウムの座長を務めました。 畿央大学関係者が担当した主なプログラム ● 森岡 周 教授(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター長) 理学療法学術賞受賞記念講演・臨床研究学術賞:講師 「臨床の問いから拓く理学療法学―病態把握・身体性・自己再構築へ―」 学会企画講演:座長 「脳卒中者の歩行再建と神経理学療法学会の進むべき方向性」 特別企画シンポジウム:シンポジスト 「日本理学療法学会連合の未来を語る」 ●瓜谷 大輔 教授(畿央大学健康科学部理学療法学科/大学院健康科学研究科) 学会企画講演:講師 「変形性膝関節症の病態に対する徒手理学療法の再考」 合同シンポジウム:シンポジスト 「ウィメンズヘルス理学療法と運動器理学療法:See the broader picture」 ●岡田 洋平 教授(畿央大学健康科学部理学療法学科/大学院健康科学研究科) 学会企画講演:講師 「パーキンソン病の理学療法~病期に応じた最適な理学療法の実践をめざす~」 ●土井 剛彦 教授(畿央大学健康イノベーション教育研究センター/大学院健康科学研究科) 合同シンポジウム:シンポジスト 「サルコペニアに対する理学療法戦略の最前線―物理療法をどのように活用していくか?―」 ●石垣 智也 准教授(畿央大学健康イノベーション教育研究センター/大学院健康科学研究科) 学会企画講演:座長 「高齢者の社会参加と健康:地域の健康と理学療法をつなぐ視点」 ●佐藤 剛介 客員教授(畿央大学大学院健康科学研究科/奈良県総合医療センター) 学会企画講演1:座長 「脊髄損傷の再生医療と理学療法―機能改善効果と背景メカニズムの検証―」 ●生野 公貴 客員教授(畿央大学大学院健康科学研究科/西大和リハビリテーション病院) 特別企画シンポジウム:シンポジスト 「治療学に貢献しうる理学療法研究とは」 合同シンポジウム:座長 「サルコペニアに対する理学療法戦略の最前線―物理療法をどのように活用していくか?―」   ●徳田 光紀 客員准教授(畿央大学大学院健康科学研究科/平成記念病院) 学会企画講演:座長 「異常感覚に対する経皮的電気神経刺激の最新知見」 ●中村 潤二 客員准教授(畿央大学大学院健康科学研究科 客員教授/西大和リハビリテーション病院) 学会企画講演:講師 「痙縮と拘縮に対する理学療法の最前線―電気刺激療法と拡散型ショックウェーブ療法の臨床応用―」 ●吉田 陽亮 客員准教授(畿央大学大学院健康科学研究科/奈良県西和医療センター) 学会企画講演:座長 「集中治療医学領域における物理療法の新展開―ICU-AWやPICSに対する神経筋電気刺激の活用―」 ●重藤 隼人 客員研究員(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター/京都橘大学) 合同シンポジウム:座長 「関節可動域制限の病態と徒手理学療法における適応の再考」 学会企画講演:講師 「徒手理学療法の鎮痛メカニズム」 ●西 祐樹 客員研究員(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター/長崎大学) 学会企画講演:講師 「異常感覚に対する経皮的電気神経刺激の最新知見」 ●尾川 達也 客員研究員(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター/西大和リハビリテーション病院) 合同シンポジウム:座長 「『生活期におけるリハ・栄養・口腔ケアガイドライン』発刊後の実装と課題」 講演・シンポジウム・座長を務めた本学関係者の様子を一部紹介                         今回の学術総会では、神経理学療法、運動器理学療法、物理療法、老年・地域理学療法など、幅広い専門領域において本学関係者が重要な役割を担いました。森岡教授の受賞はもとより、本学の教員、客員教授、客員准教授、客員研究員が、それぞれの専門分野を牽引する立場から理学療法学の発展に貢献していることを確認する機会となりました。 畿央大学 健康イノベーション教育研究センター 大学院 健康科学研究科 准教授 石垣 智也   関連記事 記念講演を終えて~森岡周教授が第1回日本理学療法学会連合学術総会「臨床研究学術賞」に 令和8年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。 第1回日本理学療法学会連合学術総会において、森岡 周センター長が「臨床研究学術賞」を受賞します NARRA BODY-NARRATIVE EMBODIMENT PROJECT〜ナラティブ・エンボディメント〜 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。 2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評 国立研究開発法人学術技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター  在外研究員レポート~オルレアン大学における特別講義と学術交流 理学療法学科 健康科学研究科

2026.08.03

記念講演を終えて~森岡周教授が第1回日本理学療法学会連合学術総会「臨床研究学術賞」に

2026年7月、札幌で開かれた「第1回日本理学療法学会連合学術総会」で、本学ニューロリハビリテーション研究センター長の森岡 周教授が臨床研究学術賞を受賞し、受賞記念講演を行いました。日本に理学療法士が誕生して60年、その節目に開かれた最初の学術総会での受賞であり、これまでの歴史を振り返れば、大変名誉な受賞です。 受賞の対象となったのは、「患者さんの何気ない一言」を出発点に、脳科学や心理学の手法で答えを探し続けてきた30余年の研究の積み重ねでした。以下、森岡教授にこれまでの振り返っていただきました。 「重い」という一言から、リハビリテーションの科学は始まった 「先生、この手、重いんです」脳卒中で片方の手足が麻痺した患者さんは、しばしばこう訴えます。「重い」。しかし、その腕の重さは発症前と変わっていません。では、その「重さ」はどこから来るのか。 この素朴な問いが、森岡 周教授の研究の原点でした。答えの手がかりは、脳の中にありました。私たちの脳は、身体を動かすたびに「こう動くはずだ」という予測を立て、実際に返ってきた感覚と照らし合わせています。麻痺によって身体が思うように動かないとき、脳は予測とのズレを埋めようとして指令を強めます。その「余分に力を込めた分」が、意識にのぼったものが「重さ」だった。研究はそう説明します。 感覚の問題でも、筋力の問題でもない。患者さんが感じている「重さ」は、脳が身体を推定し直そうとしている、その努力そのものだったのです。 なぜ、歩けるようになっても遅いのか 同じ視点は、臨床の見立てである病態把握を大きく変えていきます。たとえば歩行。麻痺が軽いのに歩くのが遅い患者さんがいます。従来は「麻痺のせい」と見なされてきました。しかし筋活動の同期性を解析すると、その方々は脚の筋肉を同時に緊張させ、関節を固めて歩いていることがわかりました。遅いのは障害の重さではなく、転ばないために脳が選んだ「戦略」だったのです。 見立てが変われば、支援も変わります。固さを取り除く練習が必要なのか、それとも安心して歩ける環境をつくることが先なのか。臨床の観察と神経科学の解析は、どちらか一方では足りず、往還してはじめて患者さんの像を結びます。 動きが戻ることと、暮らしが戻ること そして研究は、さらに大きな問いへと進んでいます。 機能が戻ることと、その人の生活が戻ることは、同じではありません。   リハビリテーションの現場では、手足が動くようになっても、その人が以前のように暮らし、社会に戻っていけるとは限らない、という現実にしばしば直面します。脳卒中で治療を受けている患者さんは国内で188万人を超え(厚生労働省「令和5年患者調査」)、介護が必要になる原因としても上位を占め続けています。医療が救う命が増えるほど、「その後をどう生きるか」という課題は大きくなります。医師の仕事は命を救うことですが、理学療法士の仕事は「その人がどう生きるか」を支援することです。   森岡 周教授の研究は、1) からだの感覚、2) 「自分が動かしている」という実感、そして3)「私はこれからどう生きるのか」という人生の物語、この三つの層が、脳のなかで結び直されていく過程として回復をとらえようとしています。動きの回復を、その人の生き方の再構成として理解しようとする試みです。この視点は現在、科学技術振興機構(JST)CRESTの大規模研究費の支援を受けて、フランス・リヨン神経科学研究センター(CRNL)との国際共同プロジェクト「NARRABODY」へと発展し、日仏の研究者とともに探究が続いています。   臨床家と研究者が、同じ場所にいる こうした研究を可能にしてきたのが、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターという場です。 ここには、教員と大学院生だけでなく、日々患者さんと向き合う臨床の理学療法士・作業療法士も集います。現場で生まれた「なぜ」がそのまま研究テーマになり、研究で得られた知見が翌週の臨床に返っていく。この距離の近さが、本センターの何よりの特徴です。学ぶ人と、支える人と、支えられる人が、同じテーブルで問いを分かち合う。奈良のこの場所から、国際的かつ社会に価値を生み出す研究が育ってきました。 森岡周教授は語ります。「制度や前例に縛られすぎることなく、面白いと思った問いにその都度向かい、人を集め、場をつくることができました。学問は一人では進みません。問いを持ち寄る人がいて、その人たちが安心して試行錯誤できる場があってはじめて、思いがけない発見が生まれます」。         60年目の学問へ 日本に理学療法士が誕生して60年。国家資格として制度が整い、担い手の数は大きく増えました。次の60年に問われるのは、その営みをどれだけ深い学問として育てられるか、そして、その学問がどれだけ人の生活に返っていくかです。 「これからも臨床と研究を往還しながら、理学療法学という学問の発展に少しでも寄与できるよう、歩みを進めてまいります」。受賞後、フランスへの帰路(現在、在外研究員としてリヨン神経科学研究センター・リヨン第1大学で客員教授として仕事)で森岡周教授はそう記しました。患者さんの一言から始まった問いは、いま国境を越えて広がり続けています。       関連記事 令和8年度 在外研究員 研究計画説明会を開催しました。 第1回日本理学療法学会連合学術総会において、森岡 周センター長が「臨床研究学術賞」を受賞します NARRA BODY-NARRATIVE EMBODIMENT PROJECT〜ナラティブ・エンボディメント〜 森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。 2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評 国立研究開発法人学術技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター  在外研究員レポート~オルレアン大学における特別講義と学術交流

2026.07.23

田原本町との連携を強化 -健康づくりと地域課題の解決を推進~健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター

畿央大学は、2016年に田原本町と「田原本町・畿央大学との包括的な連携協力に関する協定書」を締結し、双方の人的・知的資源を生かしながら、まちづくり、健康づくり、子育て支援、教育など、幅広い分野で連携を進めてきました。 ▶2016年の包括連携協定の調印式の様子はこちら このたび、本学ウェルネス共創研究センターと田原本町との連携をさらに強化するにあたり、今後の方向性や展望を確認するため、本学の土井 剛彦教授、石垣 智也准教授が田原本町を訪問し、高江 啓史町長と意見交換を行いました。     今後は、田原本町が実施する介護予防をはじめとした各種事業について、短期的・長期的な効果を検証するとともに、住民の皆さまの健康状態や地域課題を的確に把握するためのデータ基盤の整備を進めます。得られたデータや研究成果を、より効果的な健康づくり・介護予防事業の企画や改善に生かし、田原本町とともに地域課題の解決に取り組んでいきます。     ▶今回の訪問の様子は、田原本町のFacebookにも記事が掲載されています。       地域リハビリテーション研究室 ウェルネス共創研究センター     関連記事 地域リハビリテーション研究室の教員・院生が第35回奈良県理学療法士学会で講演・研究成果を発表し、学会賞を受賞!~健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 第68回日本老年医学会学術集会で教員・研究員が研究成果を発表しました ~ 健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 第11回日本地域理学療法学会学術集会で大学院生と修了生(客員研究員)が発表~健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室の学生・教員が World Physiotherapy Congress 2025 で発表 ~ 健康科学研究科 【健康づくりで地域とつながる】無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」(クラス制)に教員・学生が協力!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 畿央大学関係者が多数関わり、第5回日本前庭理学療法学会学術大会を開催!~理学療法学科・健康科学研究科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第2回を開催しました!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第3回を開催しました! 〜 ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第4回を開催しました! 〜ウェルネス共創研究センター・理学療法学科

2026.07.09

地域リハビリテーション研究室の教員・院生が第35回奈良県理学療法士学会で講演・研究成果を発表し、学会賞を受賞!~健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター

2026年7月5日(日)に、奈良県産業会館で第35回奈良県理学療法士学会が開催されました。地域リハビリテーション研究室からは石垣 智也准教授が特別講演を行い、松本 大輔准教授、修士課程1年の西渕 大悟が一般演題での口述発表を行いました。 第35回奈良県理学療法士学会のテーマは「地域に根ざした理学療法の未来を創る」でした。奈良県内外から多くの理学療法士や学生が参加し、臨床実践や研究成果について活発な議論が行われました。 本学会は特定の研究分野に限定されていないため、運動器・脳血管・内部障害・地域リハビリテーションなど、幅広い分野の研究発表を聴講することができました。普段の業務では触れる機会の少ない領域についても新たな知見を得ることができ、多角的な視点から理学療法について学ぶ大変貴重な機会となりました。 演題名のご紹介 石垣 智也准教授(特別講演):理学療法に根ざした「私の地域」づくり -臨床知から生まれるつながりと深化する専門性-       松本 大輔准教授(一般演題):住民主体の通いの場における高齢者の内在的能力低下の実態とグループ間格差     松本 大輔准教授は、学会長賞を受賞されました。     西渕 大悟(一般演題):大腿骨頸部骨折術後に Orthobot を使用した歩行練習が有効であった一症例     私は、本学大学院への入学以前から臨床現場において歩行支援ロボットを積極的に活用した理学療法に取り組んでいました。今回、歩行支援ロボットを併用した理学療法により良好な改善が得られた症例を経験したため、その取り組みについて発表しました。   学会発表は今回で2度目であったということもあり、発表前は大変緊張していました。しかし、発表後には他施設の先生からご質問やご意見をいただき、有意義な意見交換を行うことができました。   今回は、修士課程で取り組む研究とは異なる内容の発表でありましたが、経験年数の浅い私にとっては、学会で発表し、多くの先生方と交流できたことが大変貴重な経験となりました。 今回の経験を糧に、修士課程での研究を進めながら、今後も積極的に学会発表を行っていきたいと思います。   健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室 修士課程1年 西渕 大悟     地域リハビリテーション研究室 ウェルネス共創研究センター     関連記事 第68回日本老年医学会学術集会で教員・研究員が研究成果を発表しました ~ 健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター 第11回日本地域理学療法学会学術集会で大学院生と修了生(客員研究員)が発表~健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室の学生・教員が World Physiotherapy Congress 2025 で発表 ~ 健康科学研究科 【健康づくりで地域とつながる】無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」(クラス制)に教員・学生が協力!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 畿央大学関係者が多数関わり、第5回日本前庭理学療法学会学術大会を開催!~理学療法学科・健康科学研究科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第2回を開催しました!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第3回を開催しました! 〜 ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第4回を開催しました! 〜ウェルネス共創研究センター・理学療法学科  

2026.06.23

第68回日本老年医学会学術集会で教員・研究員が研究成果を発表しました ~ 健康科学研究科・ウェルネス共創研究センター

2026年6月11日(木)~13日(土)にかけて、第68回日本老年医学会学術集会が兵庫県神戸市(神戸国際会議場・神戸ポートピアホテル)で開催されました。本学大学院健康科学研究科およびウェルネス共創研究センターからは、高取 克彦 教授、松本 大輔 准教授がポスター発表を行い、中北 智士 研究員、置田 翼 研究員が口述発表を行いました。地域在住高齢者の介護予防やフレイル対策、住民主体の通いの場に関する研究成果を発信し、多くの研究者や医療専門職との活発な意見交換を行いました。 学会発表内容のご紹介 高取 克彦 教授:「地域住民運営型介護予防グループにおける男性参加の意義―個人およびグループデータを用いた検討―」 本研究は介護予防施策の柱となる地域住民主体の通いの場において、男性参加率の低さに焦点を当て、男性参加率20%が介護予防施策の到達性を示す指標(Key Performance Indicator: KPI)となる可能性を示した研究です。   松本 大輔 准教授:「住民主体の通いの場における参加者のIntrinsic Capacity低下からみた集団の類型化」 WHOが進めるICOPE(高齢者の統合ケア)の中で用いられるIntrinsic Capacity(内在的能力:個人に備わっているすべての身体的・精神的能力の総和)について調査しました。通いの場ごとにIntrinsic Capacityが低下されている方の割合が異なり、3つのタイプに分けられることを示しました。   中北 智士 研究員:「通いの場参加者のサルコペニアおよび身体機能と要介護発生との関連:7年間の追跡調査」 本研究では、住民主体の通いの場においてリハビリ専門職が要介護リスクの高い高齢者を効率よく抽出するための指標を検討し、Timed Up & Go test(6秒以上)にサルコペニア評価を加えることが有用であることを示しました。   置田 翼 研究員:「地域における住民主体の通いの場参加者の内在的能力と潜在的リスク―男性参加者に着目して―」 介護予防活動として住民主体の通いの場への参加が推奨されています。本研究は男性参加者に着目し、WHOが提唱する内在的能力(Intrinsic Capacity)や運動性認知機能低下(MCR)などの観点から、潜在的リスクについて検討した研究となります。     日本老年医学会学術集会は、高齢者医療、介護予防、フレイル対策、認知症ケアなど幅広い領域の研究者や医療・介護専門職が全国から集い、最新の研究成果や実践について議論する国内最大級の学術集会です。   今回の学会では、介護予防分野におけるアセスメントツールの開発や、フレイル・要介護リスクの早期発見・早期介入に関する研究報告が数多く発表されていました。また、地域住民主体の活動や社会参加の重要性に着目した研究も多く、地域包括ケアシステムのさらなる推進に向けた新たな知見を得ることができました。   ウェルネス共創研究センターでは、地域住民の健康づくりや介護予防に関する研究と実践を推進しています。今回得られた知見を今後の研究活動や地域連携事業へ還元し、健康寿命の延伸と地域ウェルビーイングの向上に貢献できるよう、引き続き取り組んでまいります。   ▲土井 教授、武田 研究員、博士課程の山本・仲村 渠 氏も参加しました。   畿央大学大学院健康科学研究科 ウェルネス共創研究センター客員研究員 医療法人あすか会 介護老人保健施設ハビリス 置田 翼   関連記事 第11回日本地域理学療法学会学術集会で大学院生と修了生(客員研究員)が発表~健康科学研究科 地域リハビリテーション研究室の学生・教員が World Physiotherapy Congress 2025 で発表 ~ 健康科学研究科 【健康づくりで地域とつながる】無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」(クラス制)に教員・学生が協力!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 畿央大学関係者が多数関わり、第5回日本前庭理学療法学会学術大会を開催!~理学療法学科・健康科学研究科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第2回を開催しました!~ ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第3回を開催しました! 〜 ウェルネス共創研究センター・理学療法学科 無印良品イオンモール橿原「あさかつ2nd」第4回を開催しました! 〜ウェルネス共創研究センター・理学療法学科  

2026.05.08

活躍する大学院修了生vol.10~松田 総一郎さん(国立長寿医療研究センター 研究所勤務/健康科学研究科博士後期課程修了)

働きながら学べる畿央大学大学院を経て、現場で活躍する修了生をご紹介!大学院への進学を考えている方、あるいは研究に興味をお持ちの方に向けて、これまでのキャリアや大学院での経験、研究の魅力などを振り返っていただきました!   松田 総一郎さん(健康科学研究科 博士後期課程 2024年3月修了)   現在のお仕事・研究を教えてください! 国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部の特任研究員として、臨床研究に従事しています。 これまでのキャリアを教えてください! 履正社医療スポーツ専門学校を卒業後、摂南総合病院に勤務しながら修士課程へ進学し、博士課程3年目に現職へ就きました。現在は、地域在住高齢者を対象としたコホート研究をはじめ、さまざまな研究プロジェクトに携わっています。 これまで取り組んできた研究、また今関心のある研究テーマ・キーワードは? 主に高齢者の慢性疼痛に関する研究を進めてきました。高齢者にとって痛みは身近な症状の一つですが、痛みのメカニズムや、痛みが健康状態の悪化に及ぼす影響については、まだ不明な点が多く残されています。そのため最近は、痛みが健康状態の悪化に及ぼす影響を明らかにするとともに、痛みを予防する方法や、たとえ痛みがあっても健康状態が悪化しにくくなる要因について研究しています。   研究キーワードは、「老年学」、「神経科学」、「認知科学」、「慢性疼痛」です。     大学院に進学したきっかけや目的は? 摂南総合病院で理学療法士として勤務していた際に、指導教員の大住先生と出会いました。当時、痛みに悩む患者様や、脳卒中後に原因不明の痛みを抱える方を担当する中で、「痛みに困る人を少しでも減らしたい」「自分の知識と経験を生かしたい」という思いが強くなりました。そこで、痛みの研究に取り組まれていた大住先生のもとで学びたいと考え、大学院進学を決めました。 大学院での時間を一言でいうと? 今の自分を形づくる土台を築いた時間だったと思います。大学院での学びは研究だけにとどまらず、仕事を進める上で必要となる、さまざまな力を養う機会にもなりました。   また、大学院では学術的に物事を捉え、問いを立て、根拠をもって考える姿勢を身につける時間になります。こうした学びは決して簡単なものではありませんが、その分、自分の理解が深まっていくことに大きな充実感がありました。新しい知見に触れたり、自分なりに考えたことが少しずつ形になったりする経験は、大学院ならではの魅力だったと感じています。   特に畿央大学大学院は、指導教員との距離が近く、相談や指導を受けやすい環境が整っています。また、意欲の高い方が多く、互いに刺激を受けながら研究に取り組める点も大きな魅力だと感じています。   今の仕事や研究に、大学院での学びはどう活きていますか? 現在の職場では、研究だけでなく企業との連携も多い立場で仕事をしています。   研究を進めるうえでは、最終的な成果報告を見据え、綿密に計画を立てて着実に進めていく必要があります。規模の大きいプロジェクトは個人の力だけでは進めることが難しいため、チームで協力して進めます。他の研究者や企業の方々と議論を重ねながらプロジェクトを円滑に進めるためには、さまざまな力が求められます。   さらに、物事を感覚的に捉えるのではなく、根拠に基づいて整理し、課題を明確にしていく姿勢は、大学院で学術を修めたからこそ身についたものだと感じています。   こうした研究を遂行するための基礎となる力を大学院で身につけることができたのは、大きな財産だと日々感じています。これは研究者に限らず、どのような仕事をするうえでも欠かせない力だと思います。 これから大学院進学を考えている方へのメッセージを! やりたいことを見つけ、それを形にしていくには、大きな努力や苦労も伴います。しかし、畿央大学大学院には、それを乗り越えるための環境と、支えてくださる先生方がそろっています。少しでも皆さんの進路選択の参考になれば幸いです。        

2026.05.08

活躍する大学院修了生vol.9~藤井 廉さん(九州大学大学院 医学研究院勤務/健康科学研究科博士後期課程修了)

働きながら学べる畿央大学大学院を経て、現場で活躍する修了生をご紹介!大学院への進学を考えている方、あるいは研究に興味をお持ちの方に向けて、これまでのキャリアや大学院での経験、研究の魅力などを振り返っていただきました!   藤井 廉さん(健康科学研究科 博士後期課程 2022年9月修了) 現在のお仕事・研究を教えてください! 九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座 の特別研究員、医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院 武蔵ヶ丘臨床研究センター の主席研究員、また畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの客員研究員として、臨床研究に従事しています。 これまでのキャリアを教えてください! 熊本県の専門学校である九州中央リハビリテーション学院を卒業後、急性期病院や回復期リハビリテーション病院で臨床経験を積みました。その後、臨床4年目に畿央大学大学院健康科学研究科の修士課程へ進学し、修了後はそのまま博士後期課程へ進みました。   博士号取得後は、「臨床と研究をつなぐ基盤をつくりたい!」という思いから、当時の勤務先であった武蔵ヶ丘病院において武蔵ヶ丘臨床研究センター(文部科学省科学研究費助成事業指定研究機関)を立ち上げ、センターの運営・管理に携わってきました。   さらにその後、九州大学の公衆衛生専門職大学院に進学し、公衆衛生学やデータベース疫学を学びました。   現在は、所属を九州大学大学院 医学研究院 医療経営・管理学講座に移し、畿央大学で培った【人の行動を科学的に捉える視点】と、九州大学で学んだ【疫学的視点】を統合し、生体情報と医療ビッグデータを組み合わせた研究に取り組んでいます。 これまで取り組んできた研究、また今関心のある研究テーマ・キーワードは? 畿央大学では森岡 周先生のご指導のもと、慢性疼痛患者を対象にした運動学的研究に取り組んできました。三次元動作解析装置という特殊なカメラと解析ソフトを用いて、人が運動している際の生体情報をマーカー座標から取得し、「痛みを有すると身体の動かし方がどのように変化するのか?」を明らかにしてきました。   現在は、こうした生体情報の活用を臨床レベルにとどめず、疫学レベルへ発展させた研究に取り組んでいます。   具体的には、行政と連携しながら住民単位で生体情報(デジタルデバイスを活用したライフログデータなど)を収集し、それらをレセプトデータなどの医療ビックデータと統合することで、健康状態の把握や疾病予防、医療・介護分野への応用可能性を検証しています。最終的には、これらの知見をリハビリテーション医療の発展に役立てたいと考えています。   「個人の身体機能を深く捉える視点」×「集団の健康を広く捉える視点」の両方を大切にしながら、リハビリテーション医療への応用を見据えた研究を進めています。   大学院に進学したきっかけや目的は? 新人理学療法士の頃、指導教員である森岡 周先生の講演を聞き、ニューロリハビリテーションの理論やその背景にある根拠に強く惹かれました。その後、臨床で患者さんと向き合う中で、痛みを抱える患者の病態を理解するには神経科学的な視点が欠かせないのではないかと感じるようになりました。こうした臨床的疑問を明確にし、学術的に探求したいと考え、大学院への進学を決めました。     大学院での時間を一言でいうと? 一言でいうと、「かけがえのない学びの時間」だったと思います。   憧れていた森岡 周先生から直接ご指導をいただけたこと自体が本当に幸せな時間であり、今でも私にとって大切な宝物です。   森岡研究室では研究テーマが多岐にわたり、私は「痛み」をテーマにしていましたが、ほかにも高次脳機能や歩行、姿勢制御など、さまざまなテーマに取り組む方がいました。そのため、自分のテーマについても多様な視点からコメントをもらうことができ、研究をより発展的に深めることができました。   また、私は修士課程の頃から自宅の熊本から通っていましたが、遠方であることを感じさせないほど、きめ細やかな環境・サポート体制が整っており、博士課程を修了するまで安心して、充実した研究ライフを送ることができました。   畿央大学大学院の魅力は、質の高い研究指導と、多様な視点に触れながら研究を深められる温かな学びの環境にあると思います。   今の仕事や研究に、大学院での学びはどう活きていますか? 森岡 周先生からは、「引用される研究をしなさい(論文を書きなさい)」とご指導いただきました。これは、自分の知的好奇心を満たすためだけの研究ではなく、その研究が社会課題の解決にどうつながるのか、どのように社会実装へ結びつくのかまで考えることの大切さを意味していたと受け止めています。   自己満足で終わる研究ではいけない、という姿勢は、今の仕事や研究の根幹となっています。先に述べた研究センターの立ち上げは、まさにその学びを実践に活かせた一例です。もともと研究基盤が十分に整っていない環境の中で、現場のスタッフや上層部と対話を重ねながら、「研究の力で組織に何が貢献できるのか」を模索し、形にしていくことができました。   このように、大学院での学びは、研究手法や知識だけでなく、「社会に役立つ問いを立て、それを周囲と協働しながら形にしていく姿勢」として、今の実務・研究の両方に活きています。   これから大学院進学を考えている方へのメッセージを! 大学院は、単に知識や研究手法を身につける場ではなく、自分の中にある問いを深め、それを社会にどう役立てるかを考える場でもあります。畿央大学大学院での学びは、自分の可能性や将来の選択肢を広げてくれる貴重な経験になると思います!