2021.07.02
逝去時の看護を学ぶ-エンゼルケア演習 ~看護医療学科「終末期ケア論」
「終末期ケア論」は、看護医療学科3回生前期に必修科目として開講しています。
授業では、「がん患者を看取った遺族の体験を聴く」「ホスピス実習を終えた4年生からホスピス緩和ケアについて学ぶ」など終末期ケアの現場で求められている看護師の役割について考える力を養うための内容を盛り込んでいます。
今年度は、5月以降オンデマンド型の授業を行っていましたが、大阪府に発出されていた緊急事態宣言の解除後は、対面型授業を再開しました。
今回は、令和3年6月25日(金)の授業で行った「エンゼルケア演習」の様子を報告します。
この演習は、臨死期に出現する症状や逝去時のケアを理解する授業のなかで行われています。
▲学生は、ユニフォームを着用し身だしなみを整えて演習に臨みました
エンゼルケア(逝去時に身体や頭髪をきれいに整え、故人の生前の表情や血色に近いメイクを施し、「旅立ちにむけた整え」を行うこと)は、逝去時の看護技術であり残されたご遺族への心のケアにつながるといわれています。
授業では、闘病による苦しみから解放された方の表情を柔らかくするためのマッサージや汚れを除去し血色の良いお顔になっていただくためのエンゼルメイクを実施しました。
▲フェイスマネキンを使って、表情を柔らかくするマッサージをする様子
学生のなかには、毎日化粧をする習慣のある人と習慣のない人、また男子学生もおり、化粧への関心や思いは様々です。しかし、共通していたのはご遺体を想定したメイクには微妙な色合わせや表情のなかに生前の面影を残すなど、これまでに触れたことが無い対象を思い浮かべながら、メイクすることの難しさでした。
実際に、死の直後から経時的にご遺体に起こる変化を具体的にイメージしながら、「顎関節が硬直しないうちに義歯を装着して、口が閉じられるように頭部を挙上する」「死後硬直がすすまないうちに旅立ちの衣装に着替える」「エンゼルケアを行って葬儀を終えて出棺するときまでには2日程度の時間があるので、そのときに最高の表情で旅立てるようにメイクをする」などの学びがあったようです。
▲逝去後の経時的な変化を予測して表情を作っていきます
▲日ごろはメイクをしない男子学生も慣れない手つきで丁寧なメイクを施します
授業の中では、実際ご遺体をきれいに清拭し旅立ちの準備をする動画も視聴しましたが、学生は「いのちが終わってからも生前と同じように声をかけたり、プライバシーに配慮しながら、旅立ちの準備をすることが大切と感じました」と逝去後も対象を大切にケアすることの重要性を学んでいたようです。
また、エンゼルケアの目的の一つとしてご遺体の感染予防があります。感染を予防するために体液や排せつ物が漏れ出さないような処置を行うときに用いる物品なども手にとってみました。
感染予防という視点から「COVID-19 」によって逝去された対象のご遺体の扱いについてとりあげ、ご遺体と対面することができない遺族の苦悩について考えました。
▲エンゼルケアの実際を動画で学ぶ様子
先輩たちは、この演習の経験を活かして、病院実習の場で逝去された患者さんへのエンゼルケアをさせていただいたことがあります。卒業後どのような領域で看護師として働いた場合にも必ず看取りの場に直面する機会があります。そのようなときに、「ご遺体に尊厳を持った態度でケアする」姿勢を忘れないでほしいと思います。
▲同じ顔をしたマネキンへのメイクですがグループによって少しずつ表情が違っています
「最期の数時間に起こったことは、残された者の記憶に留まりつづける」といわれているように、お別れの時に穏やかな表情で送ることは、遺族ケアの第一段階であることを学生と共有できた貴重な演習となりました。
看護医療学科 講師 大友絵利香
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