2016.06.02 

書評「リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改定第2版」

今回ご紹介する書籍は、本学の森岡教授が改定執筆された「リハビリテーションのための脳・神経科学入門 改定第2版」です。本書は、2005年に出版された「リハビリテーションのための脳・神経科学入門」の改訂版であり、神経可塑性、脳卒中後の運動機能回復、運動制御、身体性、運動イメージ、運動学習、疼痛などの最新の神経科学的知見が網羅されており、文字通り「リハビリテーションのための」テキストになっています。
 
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改定版を読むと同時に、2005年に出版された「リハビリテーションのための脳・神経科学入門」(通称:緑本)を改めて読み返してみました。すると、運動制御に関する箇所が私自身による鉛筆のメモ書きで真っ黒になっていました。このメモ書きの内容から回想してみると…出版当時の私は畿央大学理学療法学科の学生であったこともあり、神経系理学療法の授業の参考図書として「緑本」を読んでいたことを思い出しました。おそらく当時は、「テストに出そうだから」という愚かな理由でこの部分を鉛筆で真っ黒にしたのだと思いますが、奇しくも私の最近の研究テーマは疼痛疾患の運動制御となっております。この研究テーマは間違いなく臨床現場での経験によって導かれたテーマであり、「テストに出そうだから」という理由ではないことから、当時の授業で使用された「緑本」の中には臨床現場に出てから重要となる科学的エビデンスが詰まっていた事を再々認識しました。そして、改定2版の運動制御に対応する章を再度読むと、そこには「身体所有感」「運動主体感」「身体イメージ」などのアップデートされた内容が新たに加えられていました。おそらく、初版からの11年間で身体性研究が進んだことが影響しているのだと思いますが、他の章でもこのような科学の進歩を感じられる箇所は沢山ありました。そのような科学の進歩をリアルタイムで感じ、それをリハビリテーションに役立つ情報に翻訳されていることが本書の最も優れた点ではなかろうかと思います。
 
本書は改定前の「緑本」よりも非常に多くの情報あるいは引用文献の分量となっており、「リハビリテーションのための」という目的は十二分に果たされていると思います。さらに「あとがき」から察するに、このような膨大な神経科学的知見をどのようにリハビリテーションの「現場」に応用していくのかが、我々の世代には求められているように思います。
 
最後にはなりましたが、リハビリテーションに役立つ最先端の神経科学的知見を網羅するだけではなく、リハビリテーション専門家が最低限共有すべき情報を示して頂いている本書に改めて敬意を表します。
 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

特任助教 大住倫弘

 
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