2025.04.18
2025年度看護医療学科「へき地医療体験実習」がスタートしました!
看護医療学科の4回生は、5月に奈良県内の4つの地域において、へき地における保健・医療・福祉を体験し、対象者を地域の生活者として全人的にとらえ看護のあり方を探求する「へき地医療体験実習」に参加します。このほど学内実習がスタートし、学生は地域診断や実習計画作成、実習準備に主体的に取り組んでいます。
4月8日は、公益社団法人地域医療振興協会 明日香村国民健康保険診療所医師 武田以知郎先生をお招きし、「地域医療はナースを素敵にする~明日香から愛をこめて~」のテーマで特別講義を受講しました。
武田先生のご紹介
武田先生は自治医科大学をご卒業後、長く、へき地医療に貢献され、2024年に第12回赤ひげ大賞(日本医師会)を受賞された他、数々の受賞歴をお持ちです。
日ごろから村民のかかりつけ医として地域に密着した幅広い診療を提供されるとともに、在宅医療の充実をめざし日々の診療活動を続ける傍ら、地域医療を担う次代の医師の育成のため、医学生や研修医の教育に注力を注いでおれらます。その活動は溝渕雅幸監督の「明日香に生きる」でドキュメンタリーとして映画化され多くの方々の感銘を受ける作品となりました。
特別講義
今回の特別講義では、へき地で展開されている「総合専門診療医」の活動紹介、へき地診療所の看護師の役割(ルーラルナーシング)を学ぶことができました。
武田先生は、「総合専門診療医」は、患者の年齢、訴えや症状による特定分野に着目するのではなく、地域に住むあらゆる年齢、性別の患者の健康問題とそれぞれの患者の家族や生活様式、地域全体をとらえ、解決に向けて治療を行う役割があり、明日香村では、何か困ったら「そうだ、診療所へ行こう」をコンセプトに、町のコンビニエンスストアのような役割を担う場所でありたい、と語られていました。
また、へき地における看護師の役割では、生命維持や疾病の治癒を目的とする「cure(キュア)」と患者に寄り添い、何らかの疾病や傷害を抱えてもQOLを維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的にも健康を保ち支援することをめざす「care(ケア)」を取り上げ、へき地ナースは、人・家族・地域の生活を包括的に見る力が必要で、実際の事例の紹介から、住民の思い、生活背景などの個別性に合わせ、その人の尊厳を大切に関わる「ナースのプロフェッショナリズム」が発揮できる場であることを語られました。
へき地診療所の看護師は、病院の看護師とは比較できないほど多くの業務を担っていて、診療の補助、患者のケアだけではなく、時には医師の指示の元、調剤補助や服薬指導、物理療法、レントゲン撮影の準備や現像の補助、内視鏡の介助など、薬剤師、理学療法士、診療放射線技師、臨床検査技師等多職種の役割を日常的に担っておられるそうです。また、ケアマネジメント、介護予防、予防接種、健診、健康教育、村内事業の救護班など、行政との連携も日常的にこなして活動されているとのことでした。
このように、対象を全人的に捉えるアセスメント力と多岐にわたる業務をこなす看護師には高いスキルが求められます。
明日香村の診療所は、へき地医療の経験を有する看護師など複数の看護師を確保し、武田先生と思いを共有し、チームワークで業務に当たられています。武田先生は、これからのへき地医療には特定行為研修終了看護師等、高いスキルをもった看護師の活躍が期待されること、実際に日本国内のへき地の中には無医地区もあり、看護師が遠隔医療等ICTを活用した医療提供体制により、地域の健康を支えている、と語られました。
また、専門機関や社会資源へのアクセスが容易ではないへき地では、住民の健康を支えるためには、日常生活の中で健康に関することは気軽に相談できる場が必要で、「暮らしの保健室」や「コミュニティナース」(武田先生もコミュニティナースの研修を受講されたようです)が地域内に存在し、診療所や病院に行くほどではないけれど、ちょっと気になることを生活の中でタイムリーに相談できることの重要性も述べられました。
診療所で待つのではなく、生活の場においてアウトリーチする活動により住民の課題を早期に把握し、タイムリーに医療・介護へつなぐことで、住民の望む暮らしを守ることが地域医療の役割だと語られました。
武田先生の貴重なご講演から、へき地では、生まれてから死ぬまでの医療と看護を、その人の思いと生活に主軸を置き、人と人の関わりの中で丁寧にサポートしていることが学べました。看護師として患者や住民をどう捉えるか、看護の本質はおそらく都市部でも大きな医療機関であっても、在宅看護や介護の現場でも変わらないと考えます。
医療の進化によって専門分野が確立され、多くの専門職が誕生し、人々の健康と生命を守るため日々尽力されています。また、住民や患者の健康状態や病状により受療の場や生活の場も多種多様になりました。そのような時代の中、本日の講演を踏まえ、「へき地医療体験実習」に参加することで、学生が人々の生活と健康をどうとらえ、自身の看護観を培うのか、大変楽しみです。
武田先生には、ご多用の中、本当に貴重なご講演を頂き心から感謝申し上げます。
看護医療学科 准教授 室谷 牧子
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