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健康科学研究科
2017.11.06
神経リハビリテーション学研究室の研究交流会が開催されました~健康科学研究科
平成29年11月1日(水)、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターにて畿央大学大学院神経リハビリテーション学研究室(大学院 森岡研究室)研究交流会が開催されました。今回は、首都大学東京大学院の樋口貴広先生、井村祥子先生、そして樋口研究室に所属する大学院生に来学頂き、現在取り組まれている研究の紹介を行って頂きました。 また、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの植田客員研究員、同大学院生の石垣、藤井、水田(私)からも研究紹介を行い、双方の研究に関して意見交換を行いました。本会では在学中の大学院生以外に、大学院修了生も参加し、久しぶりの再会を懐かしみつつ和やかな雰囲気で進行することができました。 樋口先生からは「研究室紹介」という題で先生方が基盤としている考え方や着目されている視点についてレクチャーして頂き、実際の実験状況の動画を提示して頂くなど、具体的な情報をもとに話題提供を行って頂きました。 また、首都大学東京大学院の院生がどのような研究に取り組み、意義や成果を見出そうとされているのか、分かりやすく説明して頂きました。院生の多くの方は隙間通過行動を詳細に分析され、物体に接触してしまう患者の特徴や有効な回避方法等について検討されていました。 私自身も、脳卒中患者が社会復帰され公共機関などで大勢の人をかき分けて歩く必要がある場面では、うまく障壁を回避することが難しく転倒の危険性が高いことを強く感じており、今後の研究成果が楽しみです。樋口先生は、ヒトの隙間通過行動に関する研究を15年以上も継続して取り組まれており、現在の地位に就いてもなお現象を探求し続けておられる姿勢に私も襟を正しました。 その後、畿央大学大学院ならびにニューロリハビリテーション研究センターで取り組んでいる実験で使用している機器の紹介、およびデモンストレーションが行われ、NIRS(近赤外線分光法)や脳波計、アイトラッカー(視線計測装置)、映像遅延装置、SPV(身体的垂直認知)等を体験して頂きました。 続いて、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターから「Lateropulsionに対する直流前庭電気刺激の効果」について植田が、畿央大学大学院から「二者間の姿勢協調と社会心理学的要因の関係性」について石垣が、「パーキンソン病患者の姿勢障害の特徴抽出」について藤井が、「脳卒中後症例における運動麻痺と歩行速度および下肢伸展角度の関連性」について水田(私)が紹介させて頂きました。それぞれの研究紹介に対して、樋口先生との意見交換だけでなく、樋口研究室の大学院生からの意見も活発に発せられ、発表者が交代している間にも意見交換が活発に行われる程の充実した会となりました。 また、私は普段の発表から博士課程の先輩方から数多くのアドバイスを頂戴しておりましたが、異なる研究室の方からのご指摘やご意見は非常に新鮮であり、改めて自身の研究をさらに進めていく必要があると感じました。 最後に樋口研究室の大学院生から、「脳卒中片麻痺者の隙間通過行動」について室井氏が、「身体刺激を用いたメンタルローテーションの熟練化に関する検討」について日吉氏が、「異なる身体部位によるダイナミックタッチと歩行の調整」について渡邊氏より紹介して頂きました。それぞれ、非常に臨床的示唆に富む内容であり、かつ現在進行形で取り組まれている研究内容も多く、研究動機や実験の手続きなど、大変興味深く聴講することができました。 森岡教授からもそれぞれの発表に対して意見やアドバイスをされ、10年後のリハビリテーションをリードしていくことを期待されていました。 半日という短い時間の中で開催された会でしたので、もっとディスカッションしたい気持ちを残しつつも、建設的な意見交換が活発に行われたことに喜びを感じ、それぞれがリハビリテーションという文脈に置き換えて研究成果を発信していければと思います。 最後になりましたが、ご多忙のなか御来学して頂いた樋口先生、井村先生ならびに樋口研究室の皆様、企画及び運営を実施してくださった博士後期課程の方々、そして、このような機会を与えてくださった森岡教授に深く感謝を申し上げます。 畿央大学大学院 健康科学研究科 神経リハビリテーション学研究室 修士課程2年 水田 直道 【関連記事】 軽く身体に触れることでもたらされる無意識的な二者間姿勢協調と社会的関係性の関係を解明 腱振動刺激による運動錯覚の鎮痛メカニズムに新たな発見 運動‐知覚の不協和が主観的知覚と筋活動に及ぼす影響 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト、facebook
2017.11.02
畿央祭で「腰痛チェックをしてみよう!」「運動の器用さにチャレンジしてみよう!!」を開催!~ニューロリハビリテーション研究センター
2017年10月21日(土)22日(日)の2日間にわたり、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターでは地域住民の皆様向けウェルカムキャンパス企画として2つのイベントを開催しました。担当教員からのレポートです! 1.腰痛チェックをしてみよう! 同研究センター大住倫弘特任助教と大学院生は、腰痛が気になる方へ「腰痛チェックをしてみよう!」を開催いたしました。 ① 自分の腰の柔軟性・運動のスムーズさを無線センサで記録 ② 腰痛ストレスを脳波で計測 ③ 痛みに対しての認識をアンケートで記録して,それらの結果を口頭でフィードバックする 2日間で70名以上の方々に参加して頂き、一緒に腰痛について話し合うことができて非常に勉強になりました。「へぇ~ 今はこんなことも簡単に測れるんやなぁ!」と言って頂くことも多く、この日のために計測システムの簡略化に時間を割いた甲斐がありました^^ また、理学療法士である大学院生の方々の丁寧な対応は素晴らしく、参加された方々の腰痛を多面的にチェックして頂き、大変頼もしく思いました!予想をはるかに超えるニーズがありましたので、今後はさらにバージョンアップしたシステムで臨もうと考えております! 2.運動の器用さにチャレンジしてみよう!! 同研究センター信迫悟志特任助教と教育学部准教授の古川恵美先生のゼミ生17名が、昨年に引き続き、子どもたちへ「運動の器用さにチャレンジしてみよう!!」を開催いたしました。 この企画は、3歳から16歳までの子どもたちに、運動の器用さと運動学習力を測定する機会を提供するものです。2日間で72枚の整理券を準備しておりましたが、約100名の子ども達(保護者を合わせると約200名)が足を運んでくれました!!台風で足場が悪く、また開催時間が短縮されたにも関わらず、多くの子ども達や保護者の方に参加して下さいまして、誠にありがとうございました。 子どもたちが熱心に取り組んでいる姿が印象的でした!!将来、教職に就くことを目標としている教育学部の学生たちにとっても、子どもたちに接する良い経験になったと思われます。 来年度も引き続き畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターでは、痛みや運動発達をテーマにしたイベントを開催する予定です!!今回参加して喜んで頂いた方はもちろん,この記事でご興味を持たれた方は,是非とも来年度の畿央祭ウエルカムキャンパスにご参加ください!! 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 特任助教 大住倫弘、信迫悟志 【関連リンク】 第15回畿央祭・ウェルカムキャンパスレポート 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト facebook
2017.10.25
「足趾握力」に関する論文が国際誌に掲載!~理学療法学科教員
平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間、オーストラリアのThe University of Melbourne(メルボルン大学)で在外研究中の理学療法学科瓜谷准教授から、国際誌への論文掲載の連絡が入りました! 瓜谷先生は、足趾や足部の機能と膝関節あるいは変形性膝関節症(筋力低下、加齢、肥満などのきっかけにより膝関節の機能が低下して、膝軟骨や半月板のかみ合わせが緩んだり変形や断裂を起こし、多くが炎症による関節液の過剰滞留があり、痛みを伴う病気)との関係を主なテーマとして研究をされています。 足趾握力は、変形性膝関節症と関係している? The association between toe grip strength and osteoarthritis of the knee in Japanese women: A multicenter cross-sectional study. PLoS ONE12(10): e0186454. この研究では120名の変形性膝関節症患者の方と108名の健康な方との比較で、変形性膝関節症の方は健康な方と比較して、足趾握力が弱くなっていることを明らかにしました。 この研究ではあくまで関係があるということだけで、その因果については明らかにできません。現在、足趾の機能が膝関節の動きや変形性膝関節症の病態にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすべく研究を進めています。 足趾握力と未就学児の運動能力は関係している? Association between Toe Grip Strength and Physical Performance Among Japanese Preschool Children. Clin Res Foot Ankle 5:243. doi: 10.4172/2329-910X.1000243 この研究では奈良県内の幼稚園・保育園に通う幼児338名を対象に、未就学児の足趾握力の平均値を調査するとともに、足趾握力と園で行われる体力テストの結果との関係を調査しました。その結果、足趾握力は年齢と共に強くなるものの同じ年齢では男女差がないことが分かりました。また足趾握力が強いほど25m走、5mシャトルラン、立ち幅跳びの結果がよいことが分かりました。 未就学児の体力、特に足趾握力に関する研究はまだまだ非常に少なく、今後の研究や運動指導の参考になれば幸いです。 理学療法学科准教授 メルボルン大学客員研究員 瓜谷 大輔 【関連記事】 ・平成29年度 在外研究説明会を開催しました。 ・卒業生がWCPT-AWP&PTAT CONGRESS 2017で研究成果を発表!~理学療法学科 ・卒業研究で広陵町住民の方のデータを測定!~理学療法学科瓜谷ゼミ
2017.10.16
大学院生が第41回日本神経心理学会学術集会で発表!~健康科学研究科
平成29年10月12日(木)、13日(金)に東京で開催された第41回日本神経心理学会学術集会に参加・発表してきましたので、私(健康科学研究科 修士課程 林田一輝)から報告させていただきます。本大会は医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理学者など多岐にわたる分野の臨床家・研究者が参加しており、非常に活発な議論がなされていました。 症例報告では、どの先生方も臨床症状について深く考察されており、臨床に対する熱心な態度が伺え、私自身襟を正されました。シンポジウムでは「高次脳機能障害の治療戦略」や「認知モデルと方法論」といったテーマが取り上げられ、神経心理学の方向性が治療、リハビリテーションの実践にあることが示されていました。 また、河村満先生(昭和大学病院附属東病院)から「神経心理学を学ぶ人のために」という題で特別講演が行われました。ブロードマンの脳地図が死後100年経っても残っているように、臨床・研究をわかりやすく表現していく努力が必要であるというメッセージを頂きました。 私は「他者との目的共有が運動主体感と運動学習に及ぼす影響」という演題で発表致しました。本研究は運動主体感を増幅させる手立てを他者関係の視点から探るとともに、運動主体感が運動学習効果に与える影響を調査したものです。フロアから運動主体感・運動学習に関する的確な質問、意見をいただき自身の研究を見直す良いきっかけとなりました。また、自己意識に関する発表に質問・ディスカッションすることで考えや問題点を共有することができ、私にとって今回の学会参加は成功体験となりました。今回頂戴した意見を参考にさらに精度を上げた研究に取り組んでいきたいと思います。 このような貴重な経験ができたのは森岡教授をはじめとする多くの方のご指導と畿央大学の支援があってのものです。この場をお借りして深く感謝申し上げます。今後は研究成果を国際雑誌に投稿し、少しでも還元できるよう努力致します。 健康科学研究科 神経リハビリテーション学研究室 修士課程 2年 林田一輝 ●畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターHP ●畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターFacebook 【関連記事】 ・大学院生が第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会で優秀賞をW受賞!~健康科学研究科 ・大学院生が第10回欧州疼痛学会でポスター発表!~健康科学研究科
2017.10.11
大学院生が第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会で優秀賞をW受賞!~健康科学研究科
平成29年9月30日から10月1日に神戸商工会議所にて第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会が開催され、「Clinical Pain Rehabilitation 〜概念から臨床実践へ〜」というテーマで、過去最多65題の一般演題と300名を超える参加者が集いました。 今大会でのシンポジウムでは本大学院からも今井亮太さん(健康科学研究科 博士後期課程)が「骨・関節痛に対する理学療法」、大住倫弘特任助教(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)が「中枢機能障害性痛に対する先駆的ペインリハビリテーション」というテーマで講演されました。 痛みを有する方の運動恐怖をはじめとした心理的側面を行動学的に評価・介入し、慢性痛の発生を予防する試みは、まさに本大会のテーマであります「概念から臨床実践へ」応用する一つの手段であると思います。 また、本大学院の片山脩さん(健康科学研究科 博士後期課程)が「延髄梗塞後にしびれが出現した症例に対する脳波を用いた新たな運動イメージ介入の効果」で、私(西 祐樹)は「痛み関連回避戦略の心理学的特性-恐怖条件付けに基づく行動選択パラダイムを用いて-」という演題で優秀賞を受賞致しました。 この場をお借りして森岡周教授をはじめ、大住倫弘特任助教、信迫悟志特任助教、本学本大学院の神経リハビリテーション学研究室の皆様に心より感謝申し上げます。今後も日々邁進し、痛みで苦しむ方に少しでも貢献できるよう取り組んでまいります。 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程1年 西 祐樹 【関連リンク】 大学院生が第10回欧州疼痛学会でポスター発表!~健康科学研究科 第52回日本理学療法学術大会で約30演題を発表!~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 健康科学研究科博士後期の大学院生が、第51回日本理学療法学術大会で「最優秀論文賞」を受賞! 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト
2017.09.14
大学院生が第10回欧州疼痛学会でポスター発表!~健康科学研究科
平成29年9月6日(水)から9日(土)にかけてデンマークのコペンハーゲンで開催された第10回欧州疼痛学会(The 10th Congress of the European Pain Federation EFIC®)に、健康科学研究科の森岡周教授と、同研究室に所属する博士後期課程の今井亮太さん、私(片山脩)で発表をしてきました。 ▼長崎大学および日本福祉大学の研究室メンバー(写真中央は森岡教授) この学会は、2年に1度ヨーロッパで開催される疼痛に関する国際学会です。世界中から疼痛の研究者が一同に会す学会となっており、内容は講演、シンポジウム、口述発表、ポスター発表に分かれています。我々はポスター発表にて大学院での研究成果を発表してきました。ポスター発表では60分間の討論時間が設けられており、我々の発表に対しても多くの方々が興味を示して頂き、質問や建設的なご意見を多く頂くことができました。 ▼ポスター前でディスカッションする今井さん(左)と私(右) 私の発表内容は、運動と感覚情報の不一致による主観の変化(痛み、しびれ、奇妙さ、嫌悪感などの異常知覚)、身体運動の変化(電子角度計による運動の協調性測定)、脳活動の変化(脳波測定による周波数解析)を同時に検討したものでした。 質問内容としては、実験の細かな条件設定や、主観-身体運動-脳活動の結果の関係性についてなどでした。今回発表させて頂いた内容は現在論文としてまとめている段階にあり、今回頂いたご意見をもとにさらに精度の高い結果を報告できるように進めていきたいと思います。 現地では、疼痛研究を日本で行われている長崎大学および日本福祉大学の研究室の先生方とも意見交換をする機会がありました。今後も他の研究室との交流を通して切磋琢磨できる関係性を築いていければと思います。 最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった森岡教授、畿央大学に感謝申し上げます. 健康科学研究科 博士後期課程2年 片山脩 【関連リンク】 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターfacebook
2017.09.13
ソーシャルスキルと痛みの関係に関する大学院生の論文がJournal of Pain Research誌に掲載!~健康科学研究科
社会の中で“上手くやっていく”能力は「ソーシャルスキル」と呼ばれており、このスキルは自身の心理状態を良好に保つためにも必要だと考えられています。畿央大学大学院健康科学研究科修了生の田中陽一らは「ソーシャルスキルと痛みとの間には密接な関係が存在するのではないか?」という仮説を立てて、共分散構造モデリングによって検証しました。この研究成果は、Journal of Pain Research誌(Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling)に掲載されています。 研究概要 痛みには多面性があり、同一環境・刺激でも痛みの感じ方は個人によって異なります。痛みに対する複合的な治療概念として生物心理社会モデルが提唱されており、生物学的な要因に加えて、心理的側面、社会的側面を統合した臨床対応が求められています。今回の研究では社会的要因の1つであるソーシャルスキルに焦点を当てています。先行研究では、ソーシャルスキルが低い者はネガティブな心理状態に陥りやすく、ソーシャルスキルに優れている者は社会的支援(ソーシャルサポート)を受けやすくなるとともに生活の質が高くなり、抑うつに陥りにくいとされています。このように、ソーシャルスキルは個人の心理社会的要因の形成・構築に重要な影響を与えていることが明らかとなっていますが、痛みの感じ方との関係を検討した研究は報告されていませんでした。 そこで研究グループは、ソーシャルスキルが痛み感受性および心理社会的要因へ与える影響について共分散構造分析(structural equation modeling:以下SEM)を用いて検討しました。SEMの結果、ソーシャルスキルの下位項目である「関係開始」スキル(集団のなかでうまくやっていく第一歩として重要なソーシャルスキル)と痛みの感受性との間に正の関係性があることが認められました。 本研究のポイント SEMでは「関係開始」スキルが心理要因やソーシャルサポートと有意な関係性を有しているだけでなく、痛み感受性とも有意な関係性にあることが認められた。 研究内容 社会的要因として、ソーシャルスキル、ソーシャルサポート、心理要因として抑うつ、孤独感をそれぞれ質問紙にて評価しました。痛みの感受性は、痛みを惹起する画像を使用し内的な痛み体験を通して評価しました(図1)。 図1:使用した痛み画像 ソーシャルスキルと痛みの感受性の相関分析では、ソーシャルスキルの合計値と下位項目の「関係開始」スキルが痛み感受性と正の相関関係を有していました。SEMでは、ソーシャルスキル下位項目である「関係開始」を扱ったモデルで「関係開始」スキルが心理要因と負の関係性、ソーシャルサポートと正の関係性を有し、痛み感受性と正の関係性にあることが認められました(図2)。これらのことから、ソーシャルスキルの1つである「関係開始」スキルが「痛みの感受性」と密接な関係を持つことだけでなく,痛みの慢性化を助長させるような「抑うつ」「孤独感」とも関係していることが明らかになりました. 図2:共分散構造分析の結果 *p < 0.05. **p < 0.01. ***p < 0.001. 本研究の意義および今後の展開 研究成果は、痛みの臨床対応においても、良好な心理状態や社会関係性の構築に必要な個人のソーシャルスキルを意識・評価して介入することの重要性を示唆すると考えられます。今後は、身体的な痛み刺激を用いた検討や、臨床場面でのデータを蓄積していく必要があります. 論文情報 Yoichi Tanaka, Yuki Nishi, Yuki Nishi, Michihiro Osumi, Shu Morioka. Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling. Journal of Pain Research. 2017. 10 2223–2231. 問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修了生 田中 陽一(タナカ ヨウイチ) E-mail: kempt_24am@yahoo.co.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp
2017.08.09
平成29年度 運動器リハビリテーションセミナー「臨床編」を開講しました。
7月30日(日)、平成29年度「畿央大学運動器リハビリテーションセミナー(臨床編)」が開催されました。運動器リハビリテーションセミナーは、卒後のリカレント教育(再教育)の機会や最新知見を提供することで、運動器リハビリテーションに必要な知識を基礎から実践まで系統的に学べるプログラムとなっています。 前年度までのプログラムを改変し、今年度は、明日の運動器リハに使える『エビデンス編』、部位ごとに基礎から臨床応用まで学べる『臨床編』、臨床現場での日々の疑問を客観的に解決する手法を学ぶことで、未来の運動器リハビリテーションを創造する『臨床研究編(導入)』『臨床研究編(実践)』の4つで構成されています。 そして、今回は『臨床編』として、臨床で多く経験する運動器疾患を中心に、各関節の関節構造・運動学・疾患に対する治療戦略を多くの研究論文から考察した内容になっていました。 まず、1講座目は「肩関節のリハビリテーションと最新の知見」というテーマで、運動器リハビリテーションセミナーの代表である福本准教授による講義を開始しました。解剖学・運動学の振り返りから、ガイドラインや最新のエビデンスを用いて、どのように臨床現場で診ていくかについてご紹介いただきました。 2講座目、「肘・手関節および体幹の最新知見とリハビリテーション」については、健康科学研究科修了生で他機関にて活躍されている梅山和也先生、粕渕賢志先生からお話いただきました。梅山先生からは近年、高齢者だけでなく、勤労者でも問題となっている腰痛を中心に、粕渕先生からは肘・手関節についてアプリケーションを用い、実際の関節の動きを確認しながらご説明いただきました。また、粕渕先生の研究テーマである「ダーツスローモーション」については整形外科の教科書でも取り上げられるようになっており、まさにホットトピックになりつつあるとのことでした。 【写真上;梅山先生】 【写真下;粕渕先生】 3講座目は、「変形性膝関節症とその人工関節の最新知見とリハビリテーション」として、健康科学研究科修了生の平川善之先生から、運動器疾患で最も多く経験する変形性膝関節症および人工関節置換術後の治療戦略について、実際に身体を動かしたデモンストレーションを入れながら、経験の浅い受講者の方にもわかりやすくご説明いただきました。 4講座目は、「フレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームの予防」について、松本から、老年学のトピックであるフレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームについて現場で落とし込めるように整理し、説明させていただきました。 全体を通して、4講座ともかなりの情報量でしたが、参加者の方々は熱心に聴講され、個別で質問もされていました。なかなか自分だけでは、それぞれの分野の最新の知見を調べて理解するのは難しいと思いますが、それぞれの講座でまとめていただき、臨床に戻ってから、しっかり考えるための素材がつまっていたのではないかと思います。 最後に、今回の運動器セミナーを受講して頂いた皆様、ありがとうございました。次回は今年新たに臨床研究編を二つに分けたプログラムを開始しますので、楽しみしておいてください。 臨床研究編(導入) 平成29年10月8日(日) 詳細 臨床研究編(実践) 平成30年1月28日(日) 詳細 お申し込みはコチラから! 理学療法学科 助教 松本 大輔 【関連記事】 平成28年度「臨床研究編」レポート 平成28年度「下肢編」レポート 平成28年度「上肢・体幹編」レポート 平成28年度「エビデンス編」レポート
2017.07.21
書評~庄本康治教授執筆「エビデンスから身につける物理療法」
理学療法学科の庄本康治学科長が羊土社より「エビデンスから身につける物理療法」を発行されました。庄本先生をはじめとする執筆者15名のうち11名(教員3名、大学院修了生7名、卒業生1名)が大学院・学部関係者で構成されています。 執筆者の一人であり客員研究員でもある小嶌康介先生から書評が届きました。 ▼理学療法学科長の庄本教授(研究室にて) 庄本教授が編集された物理療法書籍「エビデンスから身につける物理療法」をご紹介させていただきます。庄本先生をはじめ急性期や回復期のリハビリテーション現場で物理療法を実践し、研究成果を発表している若手の先生が多数共同執筆されています。 主な読者対象は理学療法士の学生ということで私自身、学生に戻った気持ちで読ませていただきました。まず感じたことは最新のエビデンスが多く含まれており、知識的な学びという点だけでも内容が非常に充実している点です。また具体的な実践方法について写真と動画が多く掲載され、細かい解説がなされているので分かりやすく臨場感があります。この点では臨床のセラピストの技術力向上にも大いに活用出来る書籍だと思います。 疼痛や関節可動域制限などの機能障害、また様々な物理刺激について生理学、病理学、物理学など関連学際領域の解説がしっかりと書かれています。これにより、病態と治療効果を十分理解した上で物理療法を正しく選択し、効果的に用いる能力が身につく、まさに書名通りの内容となっています。 国家試験に関連した領域にはマーキングがなされており、試験対策にも当然活用できるでしょう。ただし、ここまでも述べた通り本書の最大の魅力はエビデンスの理解とともに臨床での実践能力を養うことができる点であると思います。臨床実習に臨む学生にも是非本書を熟読した上で物理療法の実践体験をしてほしいと願います。 庄本先生が序論で書かれていますが、本邦では物理療法はまだまだ積極的に実践されていません。本書にはこの問題を根底から解決するための答え、すなわち学生時代における物理療法への興味と理解を深め、使用経験を促していくための魅力が詰まっています。本書の読者が患者を治療する上で物理療法を「当たり前に存在するオプションの一つ」と考えて実践していくことで、物理療法は更なる発展が期待できます。職種や分野を問わず、臨床現場での実践を通して物理療法が研究課題となり、学術成果として発展し、「クライエントに良い影響」をもたらすという庄本先生の祈念に強く共感を感じています。 西大和リハビリテーション病院 畿央大学大学院健康科学研究科 客員研究員 理学療法士 小嶌 康介
2017.07.10
地域の防災イベントに教員・学生がボランティア参加!~看護医療学科
7月8日(土)、晴天でとても暑い日でしたが、看護医療学科4回生2名・3回生3名と一緒に、防災関係のイベント2件をお手伝いしてきました。会場は、広陵町と奈良市にあり、車移動で1時間かかる2会場をハシゴすることになりましたが、つなぎの役割で看護医療学科の卒業生1名、大学院生1名も駆けつけてくれました。 まず、朝8時45分に大学の正門前集合に集合して、広陵北体育館に向いました。『広陵北小学校区 合同防災訓練&防災フェスタ』イベント会場です。私たちの役割は、一般市民の方にムラージュ(外傷メイク)を施こすこと。ムラージュを施された住民の方を女性消防団の救護手当にお連れします。 集まる!集まる!子どもから年配の方々、消防団の方々まで、大盛況でした。「大学で習うの?」「畿央大学なのね,この間も○○に来てくれていたわ!」住民の方々からもお声掛けいただきました。子どもさんの中には「こわい・・」と一度立ち去り戻って来たり、ムラージュは楽しく受けていたのに「いや」と救護所行きを拒んだり・・・、かわいい模擬患者さんがおられました。 他のブースを見に行く時間もなく炊き出しカレー(訓練試食)をいただいて、卒業生と大学院生に続きをお願いして、11時35分に北体育館を後にしました。 13時少し前に、次のお手伝い会場、平常小学校へ到着。『地域メディカルラリー2017 in平城』イベント会場です。このイベントは、全国初、一般住民の方々が競技者として参加するメディカルラリーです。 気温は軽く30℃を超えていたと思います。気温以上に会場は熱気でムンムン!私たちは競技運営スタッフ控室の音楽室へ。待っていました!とさっそく紹介され、ブースの演技者のムラージュに取り掛かりました。トリアージ黒タグの患者さん(亡くなっている方)や骨折で足がハデに腫れている方、今後が心配なクラッシュシンドロームの方など、重症ケースのシナリオもありました。 午前中で慣れてきていたこともあり、ムラージュの出来栄えは上々でお褒めのお言葉をいただき、ご専門の方ですか?の問いには「いえいえ、看護の教員と学生たちです!(笑)」と答えました。 重傷から擦り傷など軽傷まで20名程度の方にムラージュをして、ほっとしたのも束の間、私たちには競技としての模擬患者役やジャッジの仕事がありました。 ▼ムラージュを終え、ビブスを着用。役割確認中。 ▼競技スタート!競技者の皆さんの真剣な表情をご覧ください。この日に向けて毎日勉強会をされていたそうです。 ▼3回生徳尾野さんは、避難所からどうしても家に帰りたいと支援者に詰め寄る避難者役。谷田さんは、東京から夫婦で旅行に来て被災した役。4回生吉井さんは妊婦さん。徳尾野さんへの声かけを評価する3回生高田さん。4回生竹田さんと私(堀内)もこのブースのジャッジを担当しました。 4回生後期科目に「災害看護論」がありますが、シナリオなど運営スタッフ用の資料やムラージュを施す過程で地震災害における被災者の特徴などを学べたと思います。また、競技者(災害時支援者)と模擬被災者とのやり取りを聞きながら、このようなケースにはどのような対応が必要なのだろうか、と考える機会になったようでした。 南海トラフが懸念される中、災害に強い地域づくりにおける看護師の役割は、自身の勤務する医療機関の備えはもちろんですが、地域住民の防災力強化にも関心を持つことが重要です。災害時には医療においても需要と供給のバランスが崩れます。地域住民が冷静に行動し自助共助がうまくいくことで、医療現場の混乱が軽減され、真に医療が必要な負傷者に必要な医療が迅速に提供されることにつながります。 このような良い機会を与えてくださった広陵町および奈良市の関係の皆様に深く感謝申し上げます。 看護医療学科 教授 堀内美由紀 【4回生 竹田実緒さんの感想】 幸いにも、私自身、被災したことはありませんが、一般市民の方を交えて日頃から訓練しておくことで、現場をイメージすることができ、振り返りを活かして実際の災害時の迅速な対応に繋がると感じました。 【関連記事】 学生広報スタッフblog vol.196~災害看護論校外学習レポート第2弾! 学生広報スタッフblog vol.195~「災害看護論」校外学習レポート! 災害に強い地域づくりへの大学の貢献を考える-DMAT訓練を通して- SCU(広域搬送拠点臨時医療施設)の設営を体験!~看護医療学科「災害看護論」 災害に強い大和の町づくりネットワーク活動 研修会を開催!
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