2019.11.22
日本の養護教諭の役割は?~ソロモン諸島の小学校での健康支援を例に考える
現代教育学科の髙田です。2018年度より科研費の支援を受け、ソロモン諸島国ウエスタン州ムンダにある児童数約300人の小学校で、健康診断(身長計測、体重測定、体温測定)の実施と健康教育に取り組んでいます。
ソロモン諸島国は南大西洋のオセアニアに属し、オーストラリアの北東に位置する約1,000を超える島々からなる島嶼国です。日本からムンダまでは、ブリスベン、ホニアラ経由で約20時間、乗り換えがうまくいかないとさらに1泊しなければなりません。マラリアやデング熱、結核の罹患率が高く、近年は食生活形態の変化による糖尿病や肥満の増加が問題となっています。
なぜソロモン諸島なのか?実は、本学教育学部の橋本節子教授は25年前にJICA青年海外協力隊員として、ソロモン諸島国の全寮制セカンダリースクールで活動した経験があります。当時の様子を聞き、開発途上国の支援に、感染症や生活習慣病等の健康課題の解決に大きな成果を挙げてきた日本独自の養護教諭の専門性を活かすことができるのではないかと考えました。
2018年度は、児童が自分の成長発達や健康状態を知る方法がわかることを目的に、身長計測と体重測定と体温測定を実施しました。現地の学校には身体測定の器具も体温計もないため、児童は身体測定の経験がほとんどありません。日本より、測定器具と測定の仕方についての教材、測定結果を記録する健康カード等を準備して現地に持参しました。また、測定だけでなく、現地では写真も珍しいことから児童一人一人の写真を撮り、健康カードに貼り、感想を書いてもらうなど少しでも自らの身体の成長が実感できるような工夫をしました。教員にも測定の方法を指導し、測定に積極的に関わってもらいました。測定後の児童の感想は、「happy」「excited」など肯定的なものが95.9%で、高学年では友だちと記録を比べあったり、クラスでランキングを作ったりするなど、身体測定を通した新たな活動がありました。
▼2018年8月はじめて訪問した時の職員室の黒板。生徒の健康増進のために日本から畿央大学のチームが来るので、先生方に理解と協力を求めるメッセージが書かれています。
2019年度は、身体の成長発達や栄養状態の確認、病気の早期発見等のために身体測定や体温測定を行うという身体測定等の意義についての理解を図りました。また、児童全員に歯ブラシを提供し、3年生には紙芝居を使った歯の磨き方についての指導を行いました。他にも手洗い指導やマラリアの予防などのサンプル教材を提供したり、JICA隊員による日本のラジオ体操をアレンジしたソロモンエクササイズの紹介などを行ったりしました。2019年度の児童の感想や成長の変化については現在分析中です。2020年度はもう1校増やして、実施するよう進めています。
▼歯磨き指導の試み 歯ブラシに少し戸惑っているのかな?
ソロモン諸島国のみなさんはとてもフレンドリーで、心温かです。また、第二次世界大戦の最後の激戦地になった場所ですが、日本人に対し好意を持ってくれています。活動の最後には、サプライズで、児童が一同、集会場に集まり、私たちにラバラバ(現地の身にまとう布)をプレゼントしてくれました。日本の価値を一方的に押し付けるのではなく、現地の文化を大切にし、現地の方と共に子どもたちの未来と健康を考え、現地に根付く支援をめざしていきたいと思っています。
●なおこの取り組みは、中日新聞でも取り上げられています。
日本の養護教諭の役割は?途上国の支援を例に考える」
現代教育学科教授 髙田恵美子
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