2023年8月の記事
2023.08.04
熟練助産師から学ぶ分娩介助の応用「会陰保護技術と肩甲難産の分娩介助技術」~助産学専攻科
令和5年7月28日(木)3・4限、熟練助産師でいらっしゃる江口 美智子先生、木内 美菜子先生、松田 伊都子先生らによる「分娩介助の応用」の講義・演習を通して、会陰保護技術やさまざまなパターンの産婦さんへの対応方法、肩甲難産の場合の分娩介助方法について学びを深めました。 まず、会陰保護技術について教えていただきました。会陰保護技術とは、分娩時に赤ちゃんの頭や体が会陰(外陰部から肛門の間)を通過する際に会陰の損傷(会陰裂傷)を防ぐ目的で行われます。 この演習では、学生が普段練習している会陰保護の方法を見ていただいた後に、会陰保護技術で気をつけるポイントやコツを教えていただきました。分娩台の高さはこれまでより低くするとともに、助産師が腰を下げてしっかり足を開き支持基底面を広く取ることで、母児の安全を守り、助産師の腰痛予防にもつながると学びました。また、赤ちゃんが娩出される際の姿勢やスピードをコントロールし、会陰裂傷の予防や赤ちゃんの安全を守るためには両手の調和をとることも大切だと学びました。 また、さまざまなパターンの産婦さんへの対応についても教えていただきました。これまでは、スムーズに分娩が進行する産婦さんを想定して練習していましたが、上手く努責をかける(力を入れていきむ)ことができない、陣痛の痛みでパニックになる、分娩について理解がないなどの産婦さんへの対応は初めての体験であったため、うまく声かけができず戸惑ってしまうこともありました。しかし、それぞれの産婦さんに合わせた声かけを行うことで、会陰裂傷を防ぐとともに、産婦さんの不安を軽減させることができるように関わっていくことが大切であることがわかりました。また、直接介助者だけでなく、間接介助者など周囲からの働きかけの重要性についても学ぶことができました。 最後に、肩甲難産における対処法について教えていただきました。肩甲難産とは、赤ちゃんの頭が娩出された後、肩が恥骨に引っかかることで娩出が困難な状態であることを指し、母子の命に関わる危険性もあります。今回は、この肩甲難産への対処法について教えていただきました。赤ちゃんやお母さんの危機が迫る中で、適切な判断、対処、そして評価することの難しさを実感しました。 今回の講義・演習を通して、分娩における手技のみならず、その場に応じた声かけなど産婦さんに合わせた関わりや寄り添うことの重要性について学びました。また、限られた時間ではありましたが、各演習で何度か練習する機会があり、先生方が毎回アドバイスを下さったおかげで、1回目よりも2回目のほうが上手くできたと実感することができました。この経験を生かして、実習や臨床の場でも産婦さんが安全・安楽に分娩できるような声掛けを意識することを大切にしていきたいです。 ご指導いただきました、江口先生、木内先生、松田先生、本当にありがとうございました。 助産学専攻科 足立 百合菜 市本 有砂 森口 茉倫 【関連記事】 産婦人科医に学ぶ!会陰縫合理論と縫合技術~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅱ」 児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科「ヒューマンヘルス」 産婦人科医に学ぶ超音波診断法~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅰ」 2022年度 新生児蘇生法(NCPR)Aコース講習会を受講しました!~助産学専攻科 第11期生事例研究発表会を開催しました~助産学専攻科 外部講師に学ぶマタニティヨガとベビーマッサージ!~助産学専攻科 災害時の行動をロールプレイで学ぶ「地域母子保健論」~助産学専攻科
2023.08.02
「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」
看護医療学科4年次生必修科目である「保健医療福祉システム論Ⅰ」では、公衆衛生と社会福祉のシステムとそのあり方を学んでいます。 中でも7月17日(月)の授業では、外部講師として全国薬害被害者団体連絡協議会 副代表世話人の勝村 久司氏をお招きし、「『薬害の実情』と『患者の人権』~医療倫理や患者安全について考えながら~」と題した内容について講演いただきました。 薬害問題は、医療人として必ず知っておかなくてはならない問題であるとともに、2022年度の高校「公共」の授業でも取り上げられることとなり、その注目度が増しています。 勝村氏は、「陣痛促進剤(子宮収縮剤)」の被害によりわずか9日間の命しかなかった、娘さんの星子さんのことがきっかけで、医療裁判、薬害被害に関する活動を展開されることになりました。 講演の中では、薬害の原因は、単なる副作用被害ではなく、故意や無作為等の人災により、防げたはずの被害が拡大したものであること、陣痛促進剤は感受性の個人差がかなり大きい(人によって効き目が200倍異なります)が、その理解が医療従事者の中でも十分ではないことを強く訴えられました(高裁で逆転勝訴したことや、勝村氏らの働きかけで全ての人に診療報酬明細書の開示につながったことなどは、NHKの番組をはじめ、各種新聞記事でも大きく取り上げられました。書籍『ぼくの「星の王子さま」へ 医療裁判10年の記録 』(幻冬舎文庫)にも収められています)。 最後に、薬害等の不誠実な医療を防止するためにはリスクマネジメントがとても重要であると述べられました。本学でも「チーム医療」を重視した教育を1年次から行っていますが、勝村氏はチーム医療の中に「患者・家族を中心とした情報共有の仕組みが必要」であり、同時に、患者の人権を重視するために、「社会的弱者の視点」「消費者の視点」「市民の視点」「被害者の視点」の4つの視点が大事であると述べられました。 学生たちは今回の講演の内容を重く、そしてしっかりと受け止めていました。学生たちの感想から一部紹介したいと思います。 【学生A】 実際に家族を亡くした遺族の話を聞く機会は今まであまりなかったため、医療事故と聞いてもどこか他人事のように感じてしまっていることがあったが、今後看護師として勤務していく中で医療事故は常に起こりうる可能性があるため、特に薬剤の投与は慎重に行っていく必要があると考え直すきっかけになった。 【学生B】 1つの薬害事故でも、医療者の薬の用法に関する知識の欠如や、患者の訴えを軽視する風潮、事実を隠蔽しようとする風潮、添付文書の改訂の遅れなど、あらゆる要因が重なった結果、事故が発生しているということがわかりました。今まで、薬害に関する事故は、「昔に起きたこと」という漠然としたイメージで、医療が進歩し患者の権利が重視されるようになった今の時代には、もう起こらないことだと思っていました。しかし、星子さんの事件が起きたのは約30年前で、遠い昔の話ではないことから、医療者の患者の権利を守るという意識が少しでも薄れてしまえば、いつでも薬害事故は起こり得ると感じました。医療者は、これから薬害を起こさないために、過去の薬害の原因について学び、再発予防策を考え実践することや、患者の権利を大切にできる倫理観を養うこと、医療品に対する正しい知識をつけることなどを組織全体で続けていく必要があると学びました。 【学生C】 半年後に医療従事者になる私たち学生に、薬害について知ってもらい自身のような経験を学生にもしてほしくない、加害者になってほしくないという気持ちがすごく伝わってきた講義でした。医療従事者が引き起こした薬害がなければ一緒に過ごすことができていたかもしれない娘さんを失ったこと、大切な奥さんが入院中過剰に陣痛促進剤を使用され辛い思いをしたことを学生に伝えることはすごく辛いことだったと思います。それでも自身が経験したことを他者には経験してほしくない、こんなことが二度と起きないように将来医療従事者になる学生たちに伝え、薬害について深く考えてほしいという思いが伝わってきました。将来、看護師として働く身でありますが、正直薬害についてこんなに深く考えたことはなく、自身が知らないだけでこんなにも薬害による被害があることを知ることができました。このことから、患者に正しい情報を伝えることの意義や患者が知る権利について改めて考えさせられ、患者に寄り添う大切さを学ぶことができました。この学びから、看護師として患者に正しい情報を伝え、正しく理解した状態で医療を受けることができるよう患者に寄り添った看護を提供していきたいです。 【学生D】 来年から助産学生になります。今回の講義を聞いて助産師という職業の責任の重さに再度気づきました。気を引き締めて立派な助産師になります。 学生たちは、あと半年で医療の現場に飛び込んでいきます。学生たちの感想にもありますように、今回の勝村氏の講演は学生たちにとって非常に大きな学びとなりました。 勝村先生にはこの場を借りて改めて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。 看護医療学科 准教授 文 鐘聲 【関連記事】 手術を受けた患者をイメージした「患者モデルの作成」と術後看護演習~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」 4回生から3回生へ学びの伝達「緩和ケア病棟の実際―病院インターンシップ実習を経験した上級生とのディスカッションー」~看護医療学科「終末期ケア論」 「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」 外部講師による講義「国外における国際看護と国際看護活動に必要な能力について」~看護医療学科「国際看護学Ⅰ」 2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科 外部講師による講義「看取りを体験した遺族に対する看護の課題」~看護医療学科「終末期ケア論」
2023.08.01
令和5年度 エコパトロールを実施しました!~エコキャンパス推進委員会
エコキャンパス推進委員会では、コロナ禍でお休みしていたエコパトロールを再開し、7月 25 日(火)、29 日(金)の両日、お昼休みと放課後に実施しました。 これは、教室や実習室の温湿度、エアコンの設定温度は適切か、エアコンや照明の消し忘れはないかなどを確認して巡回する恒例の活動です。 〇過去の取り組みはコチラ! 学生有志がパトロールに参加してくれました! 今年は猛暑が続いています。今回、部屋の環境を確認できるようソーラー式の温湿度計をすべての講義室・実習室に設置しましたので、温度設定の目安にしてください。そして、部屋を出るときには忘れず、エアコン・照明をOFFに!必要な時に適切に使用し、無駄使いはしないこと。ひとりひとりの心がけと行動が省エネと環境負荷低減につながります。 以下、参加学生さんからのコメントです。 「私たちがよく利用する棟で、エコパトロールに参加しました。エアコンを使用する際、設置した温度計をチェックして、熱中症に気をつけながらエコにも気を使ってほしいです。 学内の所々に私たちがデザインしたエコキャンパス推進のポスターが掲示されていますので、探してみてください!」 人間環境デザイン学科3回生 澤田百果・田中璃音・辻愛夏 エコキャンパス推進委員会では、学生教職員による環境負荷低減に向けた取組みを支援しています。食堂・エントランスホールのエネルギー使用量の見える化や傘 R(傘のリサイクル活用)も取り組みの一環です。省エネルギー、廃棄物削減・リサイクルなど、引き続き環境貢献活動へのエコアクションを推進していきましょう! 畿央大学エコキャンパス推進委員会 関連記事 令和元年度 冬季エコパトロールを行いました~エコキャンパス推進委員会 平成30年度 冬季エコパトロールを行いました~エコキャンパス推進委員会 平成30年度 夏季エコパトロールを行いました~エコキャンパス推進委員会 平成29年度 夏季エコパトロールを行いました~エコキャンパス推進委員会 平成28年度 冬季エコパトロールを行いました~エコキャンパス推進委員会
2023.08.01
本学教員、大学院生の論文が学術優秀賞に選ばれました~理学療法学科・健康科学研究科
この度、物理療法科学掲載原著論文「慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験」が物理療法科学30巻(2023年度発刊分)における学術優秀賞に選ばれました。 研究内容につきましては、下記の記事でも紹介しております。 慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科 本論文は、畿央大学健康科学部理学療法学科の瀧口 述弘助教、庄本 康治教授と高松 昇三氏(健康科学研究科博士後期課程3年/オムロンヘルスケア株式会社)らにより執筆されました。 本論文の詳細は「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)に掲載されております。 ▲:写真左より(高松氏、瀧口助教、庄本教授) このような賞を頂き、大変光栄に思います。今後もリハビリテーション従事者の方や患者様に役立つ報告ができるような研究活動を努めて参ります。 最後になりますが、この論文の報告に際しては多くの方々に支援いただきました。この場を借りて深く感謝申し上げます。 理学療法学科 助教 瀧口 述弘 関連記事 【論文情報】慢性腰痛患者の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果:ランダム化比較試験 (jst.go.jp) 【プレスリリース】慢性腰痛の運動時痛に対する経皮的電気刺激の効果~理学療法学科・健康科学研究科 客員研究員の渕上 健さんの総説論文が「Journal of CLINICAL REHABILITATION」に掲載されました〜ニューロリハビリテーション研究センター 大学院生が国際学会「ESOC2023」でポスター発表!〜健康科学研究科 大学院修了生のColumbia University留学に向けた壮行会を開催!~森岡研究室 森岡 周教授のコメント論文が「Physics of Life Reviews誌」に掲載されました~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 多くの理学療法士が購読する「理学療法ジャーナル」の特集を本学教員が企画!~理学療法学科・健康科学研究科 日本物理療法合同学術大会2023で大学院生が優秀賞を受賞!~健康科学研究科 第27回日本神経理学療法学会サテライトカンファレンス@畿央大学、開催レポート!
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