2023.07.04 

「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」

「終末期ケア論」は、看護医療学科3年前期に必修科目として開講しています。この授業では、多死社会を迎える社会で「死にゆく対象の理解」を深め、適切な援助技術を理解することをめざしています。また、自らの死生観について問いながら、一生の終わりに、その人らしさを支える看護師の役割について考える授業を展開しています。今回は、臨死期の看護技術の一つであるエンゼルメイクの演習についてレポートします。

エンゼルケアは、逝去時にご遺体を整える・感染を予防する・旅立ちの支度をする・故人に敬意を払うことを目的として行います。

日本人は、一般的に死後もその人らしい顔貌を残すことを重んじるという死生観を持っていると言われています。生前の面影を可能な限り取り戻すために行う死化粧を、エンゼルメイクとよびます。

演習では、闘病による苦しみから解放された方の表情を柔らかくするためのマッサージや汚れを除去し血色の良い顔になっていただくことをめざして、モデル人形を用いたメイクを実施しました。

 

その際には、実際に医療現場で使用されているエンゼルメイクキットを使用しました。これらは、死後時間の経過とともに「皮革化」といって皮膚が乾燥して古い皮革製品のような亀裂が起こる現象を防ぐ効果があるという特徴があります。履修している学生の中には、10名の男子学生が含まれています。男子のグループは、「普段化粧をすることがないから、難しい。眉を整えるにはどうしたら綺麗になるのだろう」と試行錯誤しながらグループメンバーで智恵を出し合って、人形の顔にマッサージや、化粧をしていました。しかし、メイクの出来栄えは上々で、柔らかな表情と血色の良さを上手に創り出していました。

 

▼男子学生たちも慣れないメイクに挑みました。

 

 

学生たちは、「エンゼルケアは遺族へのグリーフケアの大切な第一歩」であることを意識しながら、モデル人形にも「これからお体を綺麗にして、お顔を整えますね」と声をかけ、合掌するなど「生物学的な死」を迎えた対象にも敬意を払う姿勢で臨んでいました。女子のグループでは、「自分のメイクとは違って、まったく表情を持たないモデル人形に生き生きとした活気を与え、柔らかく穏やかな表情を作り出す自然なメイクが難しかった」という声がありました。しかし、色味のあるチークを顎や鼻先、耳たぶに入れるなど、工夫を凝らした結果、どの人形もそれぞれ違った印象に仕上がりました。

 

▼ナチュラルで穏やかな表情に仕上がっています。

 

   

授業の中では、臨死期に出現する身体症状やそれに対して看護師が行えるケア、「最期の数時間に起こったことは、遺族の心にとどまり続ける」と言われていることを踏まえ、どのような態度で臨死期の患者とその家族に向き合うかについて学生たちは、真摯に考察していたようです。

 

▼看取りに立ち会う職業人となることを自覚しながら丁寧にケアしました。

 

 

この演習を通じて学生たちは、

  • 医療は多職種チームで展開するけれど、死亡されてからも患者さんや家族にケアができるのは、看護師特有の役割。それを誇らしく思う。
  • 可能であれば、遺族の方にもエンゼルメイクに参加してもらって、元気な時のお話などができると、病的な悲嘆に陥ることを防げると考える。
  • 終末期後期に出現する症状について理解し、症状緩和のために何ができるのかしっかりと知識と技術を身に着けたい。

など、4月以降の授業での学びを振り返っていました。

 

 

▼メイク後のモデル人形を披露しあう様子

 

 

2022年度の死亡者数は、すでに150万人を超えています。そのような社会背景を考えると、私たち看護師は、地域や施設・医療機関で人々の「死」に触れ、死が迫った対象にケアをする機会に日常的に遭遇します。学生たちには、対象の人間理解に努め、最期まで関心を寄せ続けるケア態度を磨いてほしいと願っています。

 

看護医療学科 准教授 大友 絵利香
准教授 對中  百合

 

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