2025.07.23 

小さなことからコツコツとーできることから始めるまちおこし~現代教育学科

現代教育学科の岡田 良平先生(専門:生活科・社会科)による農村研究の一環として開催された、岡山県美作市勝田地域のイベント「再発見!たんけん ぼくのまち-小学校の社会科教科書から見た勝田町編-」をご紹介!ご本人によるレポートです。

みなさん、こんにちは。皆さんの住む地域はどのような地域ですか?ある人は都会に住んでいるでしょうし、またある人は伝統的な街並みのある地域に住んでいる人もいるでしょう。

 

今回は私の専門である農村研究の一端をご紹介します。私が紹介するのは岡山県美作市の勝田(かつた)という地域です。今から約20年前、「平成の大合併」が行われました。特に地方ではいくつもの町村が合併し、たくさんの新しい市が誕生しました。美作市も5町1村(美作町、勝田町、英田町、大原町、作東町、東粟倉村)が合併してできた新しい市です。こうした地方のまちは、地元産業の衰退、雇用機会の減少、若者の都市部への流出、人口減少、少子高齢社会などが顕著で大きな社会問題となっています。

「再発見!たんけん ぼくのまち -小学校の社会科教科書から見た勝田町編-」

そうした中で、私は美作市の職員の方々と協力して、「再発見!たんけん ぼくのまち -小学校の社会科教科書から見た勝田町編-」というイベントを企画しました。「たんけん ぼくのまち」はNHKのEテレが今から約40年前に制作した小学3年生向けの社会科番組をオマージュしています。

 

さて、この企画の一番のポイントは「まずは広域な美作市ではなくて、合併前の小さな勝田町からコツコツ始めてみよう」というところです。美作市は今年で合併して20年が経ちました。そこで地元の方に、昔の勝田町を懐かしんでもらおうというコンセプトです。勝田町って何?目玉になる観光資源?はっきり言いましょう!ありません!極々平凡な田舎町です。とにかくローカル!!!でもね、だからこそ地域の魅力を探す価値があるんですよ!

 

▼ 勝田公民館のロビー展示(展示物すべてまちの中にあったもの! MADE IN 勝田)

 

 

▼ 合併前の小学校社会科の教科書

 

 

1986年と2002年版の勝田町の社会科の教科書から当時のまちの様子がわかるページを拡大印刷しました。また、廃校になった小学校にずっと残されていた勝田町の手作り立体模型、昔の写真や学校の記念誌を展示しました。誰が見てもわかるものではなく、地元の人だからこそ愛せるものにこだわりました。地元の公民館だよりに掲載し、地元のケーブルテレビ局に協力してもらいました。とことんローカル!!!

 

▼ 美作市のケーブルテレビ「みまちゃんネル」の取材に答える新免公民館長さん

 

 

▼ カメラマンもレポーターも1人! 台本なし! このざっくり感がすごい!

 

 

正直にいいます。見に来る方もなかなかいません!ただ、公民館の市民講座に来た際に、ふと立ち寄って、「ああ、〇〇じゃがな。」、「これは△△じゃろうか」、「昔はようけ店があったけんなあ。」と地域の方が昔を思い出して話してもらうきっかけづくりの場をまずは作ること。それが第一歩です。

 

▼ 見に来て下さった方に丁寧に説明してくれています

 

勝田中学校の皆さんも見学に来てくれました!

勝田中学校の1年生と2年生の皆さんも見学に来てくれました。社会科の教科書に書かれた地図の謎の「ひょうぐ屋」、「あらもの屋」という店。皆さんわかりますか。「あらもの屋」をわかりやすく「今のホームセンター」というと、「ああ、、、」という驚きの反応。昔の写真を見て、「ああ、わかった。あそこじゃ」と教えてくれます。自分たちの身近な地域だからこそ感覚的にわかることってありますよね。最後に寂しかったタイトルポスターをきれいに仕上げてくれて、学習の感想も貼ってくれました。その一部を紹介します。

  • 「私たちの知る勝田はすごく歴史があると知って興味が出てきた。」
  • 「勝田のいろんなことを知れたので親に自慢できます。」
  • 「勝田に住んでいても知らないことばかりだった。」
  • 「美作市になる前の勝田町の歴史が50年もあって、それまでの写真や教科書があったり、店があったりでおもしろいし、ぜひ、勝田の人が知ってほしいことがあったので来てみて下さい。田舎でもいいところもあるのです。」
  • 「中でも一番印象的だったのは、大阪にはなくて田舎にあるものです。それが一番誇らしく思いました。

とてもうれしい感想です。自分たちの身近なまちの再発見、そしてまちを見直すことでよりふるさとを好きになる気持ちや誇りに気づいてくれました。子どもたちと先生方には感謝しかありません。

 

▼ 中学生の感想コーナー

 

 

地域の公民館を地域の材料をメインにして創意工夫して展示することで、世代ごとに違った再発見があったように感じます。もとからあるものに再び光を当て、見せ方を変えるだけで新しい発見ができるんですよ。

 

▼ 長年、地域の資料を整理・保存してこられた美作市役所の景山主査

 

 

▼ 真剣に感想を書いてくれている勝田中学校の生徒のみなさん

 

 

▼ 公民館のためにタイトルを装飾してくれました

 

 

小さなことからコツコツと!みんなができる範囲で、とことんローカルにこだわっていくことで、私の地域もやってみたい、このレベルならできそう!と思ってもらえることが大切です。実践してみてわかったことは、とにかく早い!さすが地元!あっという間に話がまとまることもしばしば。このフットワークの良さは人のつながりが大切にしているローカルレベルでの活動の良さだと実感しました。地域の活性化の重要なポイントは打ち上げ花火ではなく、既存の地域の資源と人材を活用して持続的な内発的な取り組みにつなげていくことです。誰もが無理なくできる範囲で取り組むことが重要です。

 

私たちには大きな目標があります。この小さな取り組みが少しずつ別の地域に拡大していくことです。だからこそとことんローカルにこだわってみる。第2弾は、「地元の方言」を企画中です。

 

うまいこといきゃあ、ええんじゃけどなあ。

現代教育学科

准教授 岡田 良平

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