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理学療法学科
2014.10.24
理学療法学科教員がThe Social Brain Conferenceに参加しました!
The Social Brain Conferenceに参加しました! 今回,私は10月5日から8日までCopenhagen(Denmark)で開催されたFederation of European Neuroscience Societies主催のBrain Conferenceに参加し,演題発表(「Imitation of a facial expression accelerates an emotional understanding of the others in men」)をしてきました. 今回のテーマは,いま話題のSocial Brain(社会脳)であり,社会神経科学研究に関連する約150名の研究者が世界中から集いました.150名という人数制限のある小さな会議の場では,ほぼ全員が発表者としての役割があり,朝から晩までずっと一緒に過ごす合宿のような会議でした.会場となったMoltkes Palæは,1702年に建築された由緒ある歴史的な建物であり,建物内の静寂と歴史を感じさせる情緒溢れる香りに包まれた会議でした. さて,会議は朝9時半から夜10時半まで続き,夜のポスター発表ではワインを片手に熱い議論が繰り広げられました.今回の会議では,女性研究者の参加が多く,彼女たちのパワーは凄まじく,まさに「肉食女子,草食男子(笑)」のような構図もありました.また,今回の議長はBlakemore,Waal,Rizzolattiの3名であり,彼らのスピーチを直接聞けたことも非常に参考になりました. 帰国後,翌日には畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター主催の「第1回社会神経科学とニューロリハビリテーション研究会」が開催されました. 「社会」は「脳」の産物であります.その「社会」はヒトの「脳」が作った「人工物」なのだと思いました.その「人工物」と「脳」の関係を突き詰めて研究した先には,いったい何があるのでしょうか?「何か足りない?」ことに気づくかもしれません.社会脳,社会神経科学研究は,世界的にもスタートしたばかりで,まだまだ未踏の地が満載な研究領域です. 今後,ますます発展する可能性があると同時に,この学際的研究を通じて「わからないこと」が「わかる」という発見に,興味津々な毎日をこれからも過ごしていきたいと思うのです. 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 畿央大学理学療法学科 教授 松尾篤
2014.10.21
第1回社会神経科学とニューロリハビリテーション研究会が開催されました!
平成26年10月11日(土)に第1回社会神経科学とニューロリハビリテーション研究会が開催されました.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターが発足後,初の研究会であり,約60名の方々にお越し頂きました. 本研究会は,ヒトの社会的行動に関連する既存の学問分野を超えた新しい視点での研究成果を取り入れながら,これまでのニューロリハビリテーション研究と融合・発展させるために,セラピストと研究者が集まりディスカッションすることを通じて,日本におけるこの分野の発展と推進に貢献することを目的として開催されました. まず,森岡周教授によるOpening remarkからスタートしました. 「意欲」・「信頼関係」という臨床において非常に重要なキーワードについて,お話していただき,その中でも,「意欲」の「意」は外部に表出することで,「欲」は自己に内在するものであるため,意欲が出るということは外部の他者との関わりが重要であるという言葉がとても心に響きました.そして,リハビリテーションにおける患者さんとの信頼関係とは何かを問いただしていく必要があると再認識しました. 午前の部では,社会神経科学分野における研究を実践されている2名の先生に招待講演をして頂きました. 福島宏器先生(関西大学)には「共感と向社会的行動の神経基盤」と題して,先生が行われてきた研究成果も含めてご講演頂きました.自分に近しい人に対してより強く共感するという知見を脳科学的視点から再確認でき,他者理解のためには,まずは自己を知ろうとする手続きが必要であると再認識できるということをお話し頂きました. また,川崎真弘先生(筑波大学)には,「社会的コミュニケーションにおける脳の同期現象」と題して,先生が行われてきた研究成果も含めてご講演頂きました.環境と相互作用して複雑に変化する人間の社会性を脳科学の視点から解明することの有効性を再認識し,医療者と患者様とのコミュニケーションの壁を軽減させる手法を創造することができることが分かりました. 指定演題として,本センターの冷水誠准教授が「他者を意識した目標設定が運動学習およびモチベーションに与える影響」を,私(大門恭平)が「2者の対話における身体動作の同調傾向と共感」,保屋野健吾が「視点取得と談話機能の関係」を発表させていただきました. ポスターセッションでは,20演題の発表が行われ,70分間自由なディスカッションをする場が設けられました.リハビリテーション成立の基盤である社会的関係性に示唆を与える研究がたくさんあり,表情や対話の相互作用がたくさんみられたポスターセッションでした. 最後は松尾篤教授によるClosing remarkでした.EvidenceはEvidenceを活用する側と活用される側との人間関係があってはじめてEvidenceとなる.そして,日本人だからこそ生みだせるリハビリテーションの形があるというお言葉がとても心に響きました.この分野でリハビリテーションに関わる者だからこそすべき研究を創造したいと思いました. 最後になりましたが,この研究会に大学院生という立場で,自身の研究を発表できたことは,今後の私にとって大きな糧となりました.招待講演をして下さいました福島宏器先生,川崎真弘先生,参加していただいた皆様,本研究会の準備・運営にご協力いただいた関係諸氏,発表の場を与えて下さいました本学の先生方に深謝いたします.ありがとうございました. 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程2年 大門恭平
2014.10.15
東アフリカでの青年海外協力隊活動レポート!~理学療法学科2期生
こんにちは。畿央大学健康科学部理学療法学科2期生(2008年卒業)の上野友也と申します。 私は青年海外協力隊(Japan Overseas Cooperation Volunteers:以下JOCV)として2012年9月から2014年9月の2年間、東アフリカのマラウイ共和国で理学療法士として活動しました。今回、その経験について語らせて頂く機会を得ましたので、活動内容や現地での生活、JICAについてなどについて、少しずつですが触れていきたいと思います。 まずJICAボランティア事業は、日本政府のODA(政府開発援助:Official Development Assitance)予算により、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する事業です。(JICAホームページより抜粋) 途上国におけるJOCVの活動とは、技術・知識やアイデアを直接人との関わりの中で共有・伝達していく、お金のやり取りではない国際協力の方法の一つと言えると思います。職種や派遣国によって活動の形態は様々ですが、「お金によらない」「技術移転」「現場主義」という意識は、全JOCV共通のものと思います。 私がJOCVへの参加を決めたのは、大学一年生の時でした。夏休みにボランティアとホームステイを目的にトルコへ行ったのですが、そこで経験した異文化コミュニケーションや国際協力の魅力に魅せられたのがきっかけです。最初は単純に「英語が喋れたら格好いい」という理由が海外へのモチベーションとなっていましたが、将来理学療法士として海外で働く場を実際に探していくことでJOCVに応募することを決意し、「30歳までには行って帰ってくる」という目標設定を行っていました。理学療法士としてJOCVに応募するには、ある程度の実務経験が必要であったからです(最低2年)。実際に私がJOCVに参加することになったときには理学療法士として働き始めて4年経ってからであり、その間に急性期から慢性期までの臨床経験、整形系から脳神経系、呼吸器系の勉強ができたのは幸運でした。また、「理学療法」と「国際協力」の2つのキーワードに該当する現場を求めれば、JOCVに辿り着くのは難しくありませんでした。 さて、2ヶ月間の国内研修を経て、派遣国のマラウイに向かいました。ちなみに国内研修では語学研修が主に行われますが、私の英語能力はそれ程高いものではなく、正直自信はありませんでした。しかし、その時は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と開き直り、現地での上達を目論んでいたのを覚えています(笑)。そして、やはり現地での生活や仕事は、私の英会話の上達に大きな影響を与えたものと確信しています。限定や制限をかけられた環境は人間を強制的に成長させるものだと分かったのは、JOCVを経験して気づいたことの一つです。現地で人々とコミュニケーションをとるには、もちろん現地語のスキルも必要でした。 私の任地は首都リロングウェにあるカムズセントラル病院という、マラウイでも有数の国立病院でした。職場では基本的に英語が話せれば良かったのですが、患者さんの多くは英語が話せなかったため、リハビリを行う上で必要最低限の指示や体の部位の名称などは覚えるようにしました。現地語で意味が若干でも通じると向こうの人はかなり喜びます。日本でも、外国の人にカタコトでも日本語を話してもらえると嬉しいですよね。ろくな会話はできませんでしたが、Ice breakとしての挨拶は、欠かさず現地語で行っていました。 私の要請内容は、 ①日常診療業務(患者・家族へのリハビリサービスの提供) ②現地スタッフへのリハビリ技術・知識の伝達と共有 の二本柱でした。マラウイには理学療法士を育成する養成校が1校しかなく、それも2011年に開始されたものなので、マラウイ産の理学療法士が現場にいないというのが現状でした。私が派遣されたのが2012年の終わり頃で、2013年になると養成校からの臨床実習生が病院に来るようになり、スーパーバイザーの役割も担うことになりました。 日本とマラウイの臨床実習の形式はかなり違っていました。実習が始まってすぐに実習生は患者さんを直接触り、会話し、評価・治療することが求められていました。もちろん、スーパーバイザーの指示を仰ぎながら行わせていましたが、彼らの積極的な姿勢には感じるものがありました。ただ残念ながら、そこは始まったばかりの養成校の学生たち。学校での教育環境がまだ十分に整っていないためか、基礎的な知識がかなり疎かなまま臨床実習に来ていました。理論を知らないままの治療技術、客観性が全くない評価法、患者さんの触り方や介助方法など、学生たちが見せてくれたパフォーマンスには何度も驚かされました。当初はそれらを一つ一つ説明し正しい方向へ導けるほどの英会話能力もなかったため、プレゼンの場を設けたり、実際に効果を見たり感じたりしてもらうことに重点を置きました。また、臨床実習に合格するかどうかを決める試験は、実際に患者さんを評価・治療することで行われていました。スーパーバイザーはその場で質問し、評価表に基いて学生の点数が付けられていました。驚いたことに、その場に患者さんを呼び、協力してもらうのです。わざわざ外来の日をずらして来てくれる患者さんもいました。しかし、そこはアフリカの国。全て時間通り、計画通りに行くわけがなく、当日患者さんが来なかったり、実習生が時間になっても現れなかったりしました。でも、周りのスタッフは動じることなく、サクサクっとスケジュールを変えていきました。日本では有り得ないことが、向こうでは有り得るのです。こちらの常識は、向こうにとっては非常識に当たることもあるのです。これを面白いとも取れるし、不快だと取ることもできます。そういう違いに気づいた時に人は、何らかの成長をするのでしょう。日本に帰ってからも、気づきに敏感になっていると思います。 ある程度英会話でのコミュニケーションが可能になってくると、学生たちの要望に答える形でのフィードバックや勉強会ができるようになりました。2014年7月、私が派遣されて間もない頃に実習生としてやっていた学生たちが大学を卒業しました。メイド・イン・マラウイの理学療法士が誕生したのです。この1期生たちは今年9月より、カムズセントラル病院ともう一つの国立病院の2箇所で一年間のインターンに入りました。インターンが終了して晴れて理学療法士として働けるのですが、この新人たちには雇用の問題が待ち受けていると言われています。国の予算の半分以上を寄付にて賄っているマラウイですから、国立病院にすらスタッフを雇う余裕がないのです。国が関わる雇用問題に対してJOCVにできることは限られますが、インターン・実習生の教育問題と雇用問題、この2つの大きな問題は今後も支援の対象となるものと思われます。 現地での普段の生活については、首都隊員であった私にとっては苦にならない程度のものでした。それでも、週に2〜3回は夕方から夜にかけて停電したり、たまに断水も起こっていました。一方で、地方や村で活動する隊員の場合、電気も水道もないところで生活することもあります。火が無ければ炭で火をおこし、携帯を充電したければソーラーパネルで充電、水が必要なら井戸から汲んできて煮沸して使う、といったことを2年間行うのです。ご飯を作るにしても、市場で食料がトマトと玉ねぎしか売ってない!なんてこともあるそうです。 こうして見ると、一見村での生活は過酷を極めるものにしか見えませんが、私はむしろ村での生活に憧れていました。村での生活にはご近所付き合いがあるからです。首都で生活していると、各家は防犯のためのレンガフェンスで囲まれているため、お隣さんとの交流がほとんどありません。一方で、村にいる隊員の多くは、立派なものでも藁のフェンスに囲まれている程度で、比較的ご近所との付き合いができるようでした。また、村レベルでの活動を行うため、村の人達とは仲良くなれるのです。また、家畜(犬、猫、やぎ、ニワトリなどなど)が飼えるのも村の生活ならではだと思います。私の同期の中には、飼っていた犬を日本に連れて帰った隊員もいました。自分で育てたニワトリが産んだ卵を食べる、ニワトリを捌いて調理するといったことも、隊員である間くらいしかできないでしょう。 マラウイで経験したことのほとんどは日本では経験のできないことでした。また「ボランティア」という立場でないと見えないもの、感じられないものも多かったです。そして、今の自分の理学療法士としての実力と理学療法士という仕事の可能性も感じられました。途上国で活動する場合、目標や課題を定めることが難しい場合があります。なぜなら、ある問題が見えていたとしてもそのアプローチ方法は多岐多色であり、理学療法士の垣根を超えて他職種に助けてもらわなければならないことがほとんどのケースで見られるからです。これはリハビリ分野のみならず、どの職種どの分野でも言えると思います。JOCVに参加する前の私は、リハビリ専門分野に重点を置いて活動していたように思いますが、この考えはマラウイに来てからあまり役に立ちませんでした。むしろ、いかに他の職種を巻き込むか、いかに限られた環境や資源の中でベストの選択をするかが重要であったように思います。 例えば「栄養」「教育」「母子保健」といったキーワードは、理学療法士ならば一応は心得ているものだと思います。しかし、実際にこれらにアプローチするにはどうしたら良いかは、一理学療法士にできることは限られます。しかし、理学療法士にしかできないこと、伝えられないこともあります。途上国では、私達理学療法士以外には小児麻痺の子供を持つお母さん達へ、子供の抱き方や子育ての仕方を教えられる人材はいません。脳卒中後後遺症を呈した高齢者のトランスファーの仕方を家族に教えられる人材もいません。運動(mobilization)に関する知識は理学療法士がNo1です。こういった十人十色の臨床症例は、「私達は理学療法士として何ができるのか」を常に考えさせてくれるのです。この疑問を肌で感じ、自分の答えを出すことが、私の2年間の目標でした。そして2年たった今、改めて、今後も理学療法士として頑張っていきたいと思っています。このことは、今後の10年後、20年後の自分にとっての大きな財産になるだろうと思います。自分の中で理学療法士としての基盤ができたように思うからです。協力隊に行けば全員が全員、こういった感覚を得られるとは思えませんが、自分の考えと行動を変えたいのであれば、外的環境を変化させてみるのも一つの手段かもしれません。内的環境(思考や常識、自前の理論など)を変えることは、変えたいと思っていても難しいものです。海外でなくても良いですが、自分を「限定・制限された環境(時間的、物的、言語的)」に置くことは、ある種自分の殻を破る一つの方法だと思います。私にとってはそれが海外&途上国での生活であったというだけのことで。今の日本にこういった制限はあまり見られません。敢えて言うなら、締め切りといった時間的制限は日本特有の厳しさがありますが。 これから理学療法士になろうとしている方々、理学療法士として働き始めた方々へ私がアドバイスさせて頂けるのであれば、「いかに自分の思うように行動し、変化の中に飛び込んでいけるかを考えて学んでほしい」ということです。そのことが自分に多くの気づきを与えてくれるはずです。周りと差別化し、自分の理学療法士像をしっかりと持っていなければ、今後理学療法士の数が爆発的に増加するに伴って自分の居場所を見失ってしまう恐れがあります。そのために協力隊に参加しろというのではありません。協力隊は一つのツールであり、ゴールではないからです。ですが、選択肢は多いほうが良いでしょう。ぜひ、「国際協力」というキーワードを自分の頭の中の検索機能にインプットしてあげてください。私で良ければ、ご質問などには出来る限りお答えさせて頂きます。 最後に、私の今後の目標についてですが、単刀直入に言うと、今後もこういった国際協力の現場で働きたいと思っています。ただし、今までの理学療法士としての経験も活かしたいと思っていますし、今後も自分なりの理学療法士像を追い求めていくために、「理学療法士」と「国際協力」の2つのキーワードを基に、JICAに限らずUNVやNGO,医療コンサル、国際病院も含めた幅広い視野でもって自分の活躍できる現場を探していきたいと思っています。最終的な終着点はまだ明瞭となってはいませんが、上記にあげた2つのキーワードに加え、「3つ目のキーワード」が見つかった時、自分の最終目標が決まるのだと思います。この最後のキーワードを探すために、次の5〜10年、自分の好きなことに邁進していきたいと思います。 理学療法学科2期生 上野 友也
2014.10.08
運動器リハビリテーションセミナー(臨床編:下肢)を開催しました!
こんにちは!畿央大学大学院修士課程2回生の田中和宏です。 10月5日(日)に運動器リハビリテーションセミナー(臨床編)が開催されました。 台風の影響で開催されるか危ぶまれましたが、何とか天候も持ちこたえ、全国各地から運動器に興味がある方々が参加してくださいました。 この運動器リハビリテーションセミナーは、卒後のリカレント教育(再教育)の機会や最新知見の提供することで、運動器リハビリテーションに必要な知識を基礎から実践まで系統的に学べるプログラムとなっています。 運動器リハに必要な基礎知識を学べる『基礎編』、基礎知識をもとに基本的な運動療法に活かせる『応用編』、今年は下肢にフォーカスを絞った『臨床編:下肢編』、データの解析手法を学びながら、実際に計測機器を使用する『実践編』の4つで構成されています。 その中でも今回は臨床編ということで、これまでの基礎編、応用編で学んできたことを、実際の疾患と結びつけるための講義となりました。 台風の影響もあり、プログラムを変更して講義が行われました。 1限目の平川善之先生は、「最新知見に基づく人工関節のリハビリテーション」という題で、THAやTKAの手術手法や最新の知見を含めたリハビリテーションの内容を、とてもわかりやすくお伝えして下さいました。 講義の中では、平川先生が行っている治療のお話しなども随所にちりばめられていて、臨床と結びつけやすく、「そうだったのか!」、「なるほど!」と思うことばかりでした。 2限目は、大学院生の山野宏章先生と私が、「変形性関節症に対する保存療法」という題でお話しをさせて頂きました。 今回は、近年注目されているメカニカルストレスにフォーカスを当てて、変形性股関節症、変形性膝関節症に対するリハビリテーションの考え方を、今持っている情報と合わせて、最大限にお伝えさせて頂きました。 3限目は、瓜谷大輔先生が、「足趾機能と運動器リハビリテーション」という題でお話しをして下さいました。 足趾機能について、90分みっちりお話しして下さり、少しマニアックな部分と思われがちですが、足趾も歩行能力、バランス、転倒に強く関与していることを学びました。 そして、4限目は、京都大学で行われたThrust Contestで優勝した福本貴彦先生が、「Thrustを科学する」という題でお話しして下さいました。「Thrustって何だろう?」というところから「臨床応用」まで、いつもは敬遠しがちなバイオメカニクスを、身近に感じられるように、わかりやすくお伝えして下さいました。 今回の講義も内容が盛り沢山で、とても充実していました。 自分の臨床にエッセンスを加えられるような内容ばかりでしたので、明日からの臨床がとても楽しみになりました。 次回は、実際に計測機器を使用する『実践編』です。 研究をしている方も、これから研究していこうと思っている方にも、実際の計測機器に触れることで、研究に対する具体的なイメージが湧き、とても勉強になる内容ですので、是非ご参加下さい! 畿央大学大学院修士課程2回生 田中和宏
2014.10.01
学生広報スタッフBlog vol.146~「SAPS OB・OG会」を開催!
こんにちは!理学療法学科2回生の白井大祐です。 今回は10月13日に理学療法研究会「SAPS(サップス)」のOB・OG会を開催しましたので、レポートします! SAPSのOB・OG会は、年に2回、夏休みと春休みに開催しています。 午前中に学生のみで、『リーダーに求められる要素』についてディスカッションをしました。 午後からはOB・OGの方も含めて『理学療法士に求められる要素』について、OB・OGの方からの実際の臨床現場での体験を聞きながらディスカッションをしました。 その上で、リーダーと理学療法士それぞれに求められる要素の相違点や類似点を確認し、今後の学生生活で何ができるかを考えました。 ディスカッションを通して気づいたことは、リーダーに必要な要素(例えば決断力や信頼を築くといった)は理学療法士に必要とされる要素、すなわち将来の患者さんのために何ができるか、そのために『これからの学生生活でできることとは』につながっているなと思いました。 他の参加者からは、「話しやすさや引きつける力、その人にとっての『魅力』がリーダーと理学療法士に求められる要素だ」という感想をいただきました。 SAPSは他のクラブよりも、OB・OGの方との関わりや学生間での『つながり』を体感できる場だと感じています。 SAPS副代表として、SAPSの良きものを残しつつ先輩・同期・後輩たちがそのつながりを大切に思いながら、普段の勉強だけでは得られない『学び』を提供できる場にしていきたいと思っています。 理学療法学科2回生 白井大祐
2014.10.01
国際学会「ISEK2014」参加レポート~理学療法学科
2014年7月15日~18日の日程でイタリア ローマにおいて開催されたISEK2014(XX congress of the International Society of Electrophysiology and Kinesiology)に参加し、ポスター発表を行ってきました。 この学会は電気生理学や運動学を中心とした手法によるバイオメカニクス(生体力学)関連の国際学会で、今回は世界中から500名あまりの参加者が集まり開催されました。 今回「EFFECT OF TOE CONTACT WITH THE GROUND ON KNEE AND TRUNK MOVEMENT DURING WALKING: A PRELIMINARY STUDY」という演題で、本学卒業生で瓜谷ゼミ卒業生の阪本千夏PTと本学福本准教授との共同研究の報告をしてきました。 研究内容は足趾が歩行時にしっかりと接地できているかどうかが、膝関節や腰部の動きにどのような影響を与えているのかを加速度計を用いて、健常大学生を対象として行った研究結果の報告でした。 1時間のポスターセッションでは国内外の多くの研究者と意見交換を行いました。データ解析の視点や具体的方法についてのアドバイスをいただいたり、今後の研究の方向性についてのアドバイスをいただいたりすることができ、有意義な議論を行うことが出来ました。 皆さんご存知のように、イタリアといえば街の至る所に見どころがたくさんです。 またワインやパスタなど美味しいものもいっぱいです。「路地裏のええ感じの店を発掘する嗅覚」に長ける私(自称)は、地元の人たちが集う食堂やバーで美味しいワインと食事も堪能してきました。 次回のISEKは2016年にアメリカのシカゴで開催される予定です。 次回は一緒に研究しているゼミ生、卒業生達と参加したいと思っています。 理学療法学科 助教 瓜谷 大輔
2014.09.30
ニューロリハビリテーションセミナー応用編を開催しました。
2014年9月27日(土)、28日(日)にニューロリハビリテーションセミナー応用編が開催されました。 素晴らしい秋空での開催となりました。 今回も北海道から沖縄まで300名以上の方々にお越しいただきました。せっかくなので,私(大住倫弘)の方から報告させて頂きます。 今回の応用編は「情動」ではじまり「社会性」で締めくくりました。 松尾教授からは「情動と共感の神経機構」「社会性の神経機構」の講座でした。「社会性」に関する講義は特に面白くて,シンプルに「人間っておもしろいなぁ」って感じることができたと思います.また、言語・表情・身体(ボディー)の一致性が、コミュニケーションには重要というところが印象深かったです。 私は「身体性の神経機構」を担当させていただきました。身体所有感・運動主体感についての研究を中心に説明させていただきました。分かりにくいところが多々ありましたが、臨床現場でよく聴取される身体に関する愁訴を捉えるための材料は提供できたかなと思っております. 前岡助教の「記憶・ワーキングメモリーの神経機構」の講座では、海馬・前頭前野が中心に取り上げられました。ワーキングメモリーは短期記憶という単純なものだけではないということがよく理解できたかと思います。 森岡センター長の「注意の神経機構」の講座では、スライドのアニメーションを駆使してcue(手がかり)刺激を提示したりして,ボトムアップ処理とトップダウンの処理を皆さんに体験してもらいながら説明していただけました。あのような親切な説明を聴くことができるのもニューロリハセミナーだからこそかなと思います。 岡田助教の「姿勢制御・歩行の神経機構」の講座では、前庭、小脳、大脳小脳連関、CPGなどを中心にまとめられました.特に、近年非常に注目されている前庭機能についての最新の知見も取り入られており、大変勉強になったと思います。 信迫客員講師の「上肢の運動制御」の講座では、背側-背側経路、背側‐腹側経路、腹側経路の機能が中心に取り上げられました。この神経機構は,失行症状の発現機序を捉える上で非常に重要なものにもなります。信迫客員講師は,今年度は非常にやさしく分かりやすくまとめていただいたと感じました。 冷水准教授の「運動学習の神経機構」の講座では、いつもに増して笑いが多かったように感じます。運動学習における報酬の重要性を中心に取り上げながらの講義でした。順モデル・逆モデルについても話題になりました。 次回は12月6日(土)・7日(日)の「臨床編」です! 様々な疾患に対するニューロリハビリテーションについての情報が提供されます。これからの臨床が少しでも良いものになっていくために頑張りますので,宜しくお願い致します。 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 特任助教 大住倫弘
2014.09.24
大学院生が「第2回日本赤ちゃん学会研究合宿」で講演を行いました。
大学院生の浅野さんが第2回日本赤ちゃん学会研究合宿(http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/hiroki/baby-science-young-researcher/)で講演を行いました! 以下は、浅野さんがレポートしてくれた内容です! 今回、講演者としてよばれたのは、兵庫県立リハビリテーション中央病院の中井昭夫先生、そしてカリフォルニア工科大学の下條信輔先生、そして私でした。 日本の発達性協調運動障害(DCD)研究の第一人者でもある中井先生の講演では、発達障害児の知覚世界や診断や分類についての基本的な知識についてわかりやすく解説してくださいました。 知覚や意識の研究で世界的にも著名な下條先生の講演では、先生ご自身が学生時代からどのような研究を進められてきたのかについて研究成果を紹介しながら解説していただき、赤ちゃん学研究の限界点や今後の期待について述べられていました。 私はというと、身体表象の発達からリハビリテーションへの応用について症例を中心に話させていただきました。実際の臨床の場で障害をもつ子どもたちが変化していく様を映像で見せることで少しでもさまざまな障害をもつ子どもの世界をわかっていただこうと思い、そのような構成にしました。最後には多くの質問や大きな拍手をいただいて非常に嬉しかったです。 質問のなかには、やはりその効果について、数名の症例発表での限界点について指摘も受けましたが、それに対して講演後に下條先生に以下のような心強いお言葉をいただきました。 「私が以前にアメリカの学会でラマチャンドランがあの幻肢痛に対するミラーセラピーの効果について一症例の発表をしたときにその場にいた参加者のなかから一事例のうまくいった症例についての報告に対して批判的な意見が出た。そのときにラマチャンドランはこう返した。『ここに突然、言葉を話すブタが一頭現れたとしよう。そのとき皆はその脳内メカニズムについて一生懸命調べようとするだろ?』それは半分冗談交じりだったかもしれないが、すごく説得力のある反論だった」と。そして、一症例の圧倒的な成果を見せることはすごく重要だ、と言っていただきました。 下條先生は、現象学を知ってから知覚の研究に進まれたということでしたので、その辺の理解があるのだと感じました。 夜のポスター発表では、深夜の遅い時間まで皆さんとディスカッションでき、非常に有意義な時間を過ごすことができました。 今回、さまざまな分野で活躍されている研究者と交わりながら貴重な経験をすることができ、企画された日本赤ちゃん学会若手部会の先生方には本当に感謝しています。 最近はリハビリテーションとは異なる分野からの講演依頼が多いですが、今後も異分野の研究者との意見交換や交流を積極的に広げていき、視野を幅広く持てるように講演や発表など続けていきたいと思います。また、臨床現場において障害をもった子どもたちと今後も根気よく向き合っていきたいと思いました。 畿央大学大学院健康科学研究科神経リハビリテーション学研究室 修士課程 浅野大喜
2014.09.22
理学療法学科「全学年症例報告会」を開催しました。
9月17日(水)に理学療法学科4回生が「総合臨床実習」で学んだことを下級生たちに伝える「全学年症例検討会」を行いました。 4回生は、4月~7月までの期間、8週間の総合臨床実習を、2か所の病院で計16週間行います。 実習を引き受けてくださっている病院にて理学療法士(実習指導者)の指導のもと、様々な疾患の患者さんを対象として基本的な評価を行い、その結果に基づいて治療プログラムを立案します。 また実際に治療をさせて頂くことで、基本的な理学療法を修得していきます。 学内での学習とは異なり、患者さんと直接向き合う経験を通して、4回生たちは見違えるほど大きく成長します。 症例検討会は、各学年2~3名、合計12名程のグループに分かれて行います。 4回生は担当した症例から学んだことをまとめ、基本的な知識を再確認し、下級生たちに説明できる能力を高めることが目標です。1~3回生は現在学んでいる基礎医学と臨床との関係を理解することで、学習へのモチベーションを高めることが目標となります。 司会進行は4回生が担当し、教員はファシリテーターとして見守ります。 どのグループも活発な質疑応答が行われ、また実習に関する情報も得ることができ、学年を超えた縦のつながりがより一層強くなった症例検討会であったと思います。 各学年の学生たちの感想を紹介します。 ▼4回生 それぞれの学年に合わせて必要な話をするように努めました。 学年毎にそれぞれ感じることは違うようで…1,2回生には、いま学校で勉強していることが実習に活かせるということを想像をするのが難しく、3回生は実習に対する不安や、楽しみだけど自信がないといった声が多かったように感じます。 その気持ちは私たち4回生も感じてきたことですが、それでも皆さんの前で説明しながら、お話をすることができたと思います。 皆さんならきっと大丈夫!そう信じてます! 実習での私たちの経験や今回できた縦のつながりが、後輩たちにとって少しでも良い支えになれば幸いです。 理学療法学科4回生 諸橋 直紀 ▼3回生 症例発表で先輩方から症例についてや実習がどんなものか聞くことができました。 1、2回生のときは専門用語や疾患について理解出来ず、症例についてほとんど理解できませんでしたが、3回生になって聞いてみて、少しはイメージ出来るようになりました。逆に分からない用語や勉強不足だと感じることも多くあり、勉強しなければと強く感じました。 今回の発表された症例は、どちらも患者さんの心理状況が痛みに関連している症例で、理学療法は運動系だけでなく患者の心理面まで見ていかなければならないことを改めて学びました。そのためには知識や技術だけでなく、コミュニケーションが大切だと思い、そういう面でも自分を磨いていかなければならないと感じました。 来年は自分達が実習なので先輩方のお話はとても参考になり、自分が頑張らなければならない部分を知る良い機会になりました。後期からは実習や臨床に出た時のことを意識し、一層勉強や実習などを頑張って行きたいと思います。 理学療法学科3回生 杉本 由貴 ▼2回生 昨年1回生として参加した症例発表の時とは異なり、4回生からの説明や配布資料の中に聞き覚えのある言葉や理解できる箇所があり、一年間の学びを感じ取れました。 4回生が私たちのことを思い、わかりにくい箇所をかみ砕いて説明してくださったり、図示してくださったので、なお理解しやすかったです。しかし、その反面で知識の定着不足や、臨床へのより多くの知識、技術の必要性を感じました。 今回の症例発表では症例だけでなく実習の話も聞くことができ、全ての科目の大切さを改めて痛感し、後期に向けての『学び』のモチベーションに繋がりました。 理学療法学科2回生 塩谷 純郎 ▼1回生 今回、4回生の先輩方に実習のお話をしていただきました。実習とはどういうものなのかを教えていただいたり、用語や病気を解説していただいたり、まだ何も分からない私たちにも分かりやすく説明していただきました。実習を通して感じたことを尋ねたところ、「基礎をもっとしっかりやっておけば良かったと感じた」とおっしゃっていました。「基礎となる土台がなければ、その上に学んでも積み重ならない。1回生で学ぶ、解剖学と生理学がとても大切であり、しっかりと理解していることが大事である」と言われました。またお話を聞いて、人と接してコミュニケーション能力を磨くことも大切であると感じました。これからの授業や活動からも積極的に学び、自分のものにしていきたいと思います。 理学療法学科1回生 原田 梨紗子
2014.09.16
第19回日本ペインリハビリテーション学会学術大会を開催しました。
平成26年9月6日(土)・7日(日)、大阪産業創造館にて第19回日本ペインリハビリテーション学会学術大会を開催いたしました。 今大会は大会長を森岡周先生(畿央大学大学院健康科学研究科主任・教授)が務められました。また事務局長を前岡浩先生(畿央大学健康科学部理学療法学科助教)が、学術局長を大住倫弘先生(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター特任助教)が、総務局長を今井亮太先生(畿央大学大学院健康科学研究科)が務められ、準備委員長を私、信迫悟志(畿央大学大学院健康科学研究科客員講師)が務めました。 そして本学大学院神経リハビリテーション学研究室の多くの院生と本学健康科学部理学療法学科の学部生にご協力頂きました。 結果的には、参加者数280名となり、19回の本学会学術大会の歴史上、最多の動員数となりました。 これもひとえに、本学に関わる皆様の優れた社会的業績とそのご協力の賜物と、深く感謝しております。この場をお借りして、ご協力下さった皆様、そしてご参集頂いた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。 また内容としましても、今大会はテーマに「痛みに対するニューロリハビリテーションの確立」を掲げ、本学が推し進めているニューロリハビリテーションと本学会が綿々と積み上げてきたペインリハビリテーションとの癒合が図られた斬新かつ画期的なものとなりました。 森岡周教授による大会長基調講演では、痛みの慢性化における脳神経の構造的・機能的・化学的変化について、痛みの情動的側面と認知的側面に整理してご解説頂き、タイトル通り「疼痛に対するニューロリハビリテーションの確立に向けて」必要な情報提供をおこなって頂きました。 また今大会では、我が国において先駆けとなって痛みに対する集学的アプローチを導入された愛知医科大学より2名の先生に特別講演をお願いしました。 池本竜則先生(愛知医科大学運動療育センター)には特別講演Ⅰ「疼痛に対するリハビリテーションにおける脳機能の重要性」と題し、先生が行われてきた研究成果をご講演頂きました。fMRIを用いた痛みの可視化研究において、主観的な痛みを客観的な神経活動として捉えきれない一方で、疼痛患者さんが抱える認知変容の仕組みと、その認知を改善する取り組みの効果について、情熱的な語り口でご講演頂きました。先生は私のひとつ年上ですが、NPO法人いたみ医学研究情報センターの設立という積極的な社会的貢献も行っておられ、大変感銘を受けました。 特別講演Ⅱでは「脳と心からみた痛みの慢性化」と題して、西原真理先生(愛知医科大学学際的痛みセンター)にご講演頂きました。西原先生は精神科医という立場から、目に見える脳機能と目に見えない精神機能との関係性という観点から、痛みの慢性化に関わる様々な因子について、実際の症例報告も交えながら、ご講演頂きました。何か一つの側面に痛みの原因を求めるのは間違いであり、そのため多面的な評価が必要であるということ、そして痛みの治療は、医療従事者と患者との関係性から始まる(丸田俊彦先生のお言葉からの引用)という部分が非常に印象的でした。如何なる治療手段を選択したとしても、医療従事者側の表情・言葉がけ・態度が重要であることを改めて気付かされました。 昨年に引き続き、2つの教育講演も企画し、今大会では本学の前岡浩先生に教育講演Ⅰ「痛みの中枢機構(脊髄-脳)」と題して、痛みに関わる上行路および下行路、脳領域について基本的知見を概説頂きました。また城由起子先生(名古屋学院大学)には教育講演Ⅱ「痛みの多面的評価」と題して、痛みの感覚的・身体的因子のみならず、情動的・認知的・社会的因子についての評価手法と、それぞれの問題に対応したリハビリテーションアプローチを選択する実際についてご講義頂きました。 一般演題は、ケースディスカッション、リカレントセッションを含めて過去最多の39演題の発表が行われました。 内容は基礎から臨床まで多岐にわたるものでしたが、その中で最優秀演題として平賀勇貴先生(福岡リハビリテーション病院)の「人工膝関節置換術患者の術前、術後教育による破局的思考への効果」が選ばれました。本研究はビデオ視聴による術前・術後教育が破局的思考を低下させ、精神的健康を向上させることを明らかにしており、新規性に富み、なおかつ一般化可能な優れた研究でありました。 また優秀演題には井上雅之先生(愛知医科大学運動療育センター)の「難治性の慢性痛患者に対する認知行動療法に基づく学際的グループプログラムの有効性について」と石井瞬先生(長崎大学病院)の「保存的治療が適応となるがん患者に対する低強度の運動は身体活動量を向上させ、身体症状の改善やQOLの向上をもたらす」の2演題が選ばれました。 いずれも臨床研究であり、科学的信頼性の高い優れた研究でした。日本ペインリハビリテーション学会は今後、法人化、国会への提言、診療報酬へと進めていく予定となっていますが、その上でこの学術大会の一般演題はその学術力を担うことになります。今後の益々の発展が祈念されると同時に、自らも貢献すると心に誓いました。 今大会のフィナーレとして、「慢性疼痛に対するニューロリハビリテーション」と題したシンポジウムを開催し、本学の大住倫弘先生に加え、佐藤健治先生(岡山大学病院麻酔科蘇生科・ペインセンター)と河島則天先生(国立障害者リハビリテーションセンター研究所・本学ニューロリハビリテーション研究センター客員教授)にご登壇頂き、話題提供をして頂きました。 大住先生からは、CRPS症例を通じて、身体イメージという主観的現象を二点識別知覚、身体部位のポインティング、言語記述、描画、body perception scale、動作分析など様々な評価を屈指して理解し、その評価に基づいて適切なニューロリハビリテーション介入を選択していく手続きについてご報告頂きました。 佐藤先生からは、岡山大学病院で実践されている幻肢痛やCRPSに対するヴァーチャルリアリティ鏡治療についてご紹介頂きました。現在は簡便かつ継続意欲を高め、慢性疼痛を持つ患者さんであれば、誰でも、どこでも治療できるようにとの意図で、家庭版システムの開発にも着手されていることもご報告頂きました。 そして河島先生からは痛みという主観的体験を客観的に捉えるための新たな2つの方法と義肢やミラーセラピーによる具体的アプローチについてご報告頂きました。 とりわけ、研究の2つの指針、普遍的特性の探究とケーススタディの重要性についてのお話は、臨床しながら研究活動も行っている本学の多くの院生にとっても、私にとっても大きな方向性を与えられたと思います。しかしながら、いずれのご講演においても共通していたのは、運動・視覚・体性感覚の時間的・空間的一致性が「私の身体が私の身体である所以」であり、その身体性を取り戻すことが、痛みに対するニューロリハビリテーションの治療戦略であるということでした。 こうして考えると、身体性に関する研究は、慢性疼痛のみならず、脳卒中後の運動障害、そして病態失認・身体失認・半側空間無視などの高次脳機能障害の病態解明や治療開発にも繋がる深遠なテーマということができます。このシンポジウムでは、その重要性が明確になったものと思われます。 いずれにしましても、本学術大会は、ニューロリハビリテーションとペインリハビリテーションの癒合が行われた記念的大会となりました。 その大会に準備委員長として関われたことは、今後の私にとっての大きな糧になったと思います。 そしてこの学術大会の動員的成功は、関係諸氏から畿央大学大学院神経リハビリテーション学研究室と畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターが非常に注目されている証となりました。この期待に応えるべく、畿央大学大学院神経リハビリテーション学研究室と畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターは、その歩みを加速していきます。研究室および研究センターの皆さん、痛みに関わらずニューロリハビリテーションの発展・進歩に益々貢献していきましょう。 そして、痛みに携わる多くのセラピストの皆様、セラピストが直接的に貢献できること、セラピストに求められる内容も増え、基礎的にも臨床的にもペインリハビリテーションは確実に進歩しています。 次回、第20回日本ペインリハビリテーション学会学術大会は我が国における痛みに対する集学的アプローチ発祥の地・名古屋(大会長:名古屋学院大学 肥田朋子教授)にて開催される予定です。これから1年間のそれぞれの成果を持ち寄り、議論し、次の時代のペインリハビリテーションを共に創っていく機会にしましょう。 再三になりますが、本学術大会の準備・運営にご協力いただいた関係諸氏、参加していただいた皆様、協賛していただいた企業の皆様に深謝いたします。ありがとうございました。 畿央大学大学院健康科学研究科 客員講師 信迫悟志
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