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看護医療学科

2024.02.26

「NCPR(新生児蘇生法)Aコース」を受講しました!~助産学専攻科

NCPR講習会は「すべての分娩に新生児蘇生法を習得した医療スタッフが新生児の担当者として立ち会うことができる体制」の確立を目的として実施されています。出生時、約15%の新生児は何らかの蘇生処置が必要な状況で生まれてきます。そうした新生児仮死に対する蘇生法を習熟することにより、児の予後を改善させることができます。   助産学専攻科は国家試験と卒業研究発表会を終え、令和6年2月13日(火)に「NCPR(新生児蘇生法)Aコース」を受講しました。このAコースでは、気管挿管や薬物投与も含めた高度な新生児蘇生法の習得を目指します。外部講師として、淀川キリスト教病院の周産期母子医療センター長の豊奈々絵先生と小児科医長の村山歩先生をお招きしました。       講義を受けた後、実習室でベビー人形を用いながら新生児蘇生に用いられる流量膨張式バッグの使い方や人工呼吸の手技、気管挿管の実践を1人ずつ行いました。人工呼吸の練習では、投与する酸素が漏れないようにマスクを密着させることが難しかったです。気管挿管では、挿管時のポイントを教えてもらいながら実施したことで、食道と間違えずにスムーズに挿管できるようになりました。しかし、練習とはいえ実際の現場では一刻を争う状況であることを想像すると、緊張を感じることもありました。       午後からは、事例をもとにした演習を行いました。事例では、NCPRのアルゴリズムに沿って、30秒ごとに新生児がどういう状況なのかを講師の先生から伝えられましたが、今行っている処置をそのまま続けるのか、新たに別の処置が必要なのか瞬時に判断するのが難しかったです。しかし、回数を重ねるごとに、徐々に落ち着いて判断できるようになり、お互いに気づいた点を指摘しあってスムーズに実施できるようになりました。     前期の授業でも新生児蘇生法は学習していましたが、その時点では臨床の現場をイメージすることがあまりできていませんでした。しかし、今回の講習を通して、スピード感や蘇生の優先順位などがより明確に考えられるようになりました。いつどのようなことが起こるかわからない臨床の現場では、落ち着いて対応できるように今回の学びを活かしていきたいです。     助産学専攻科12期生 小西 美幸、竹田 亜未、丸谷 麻友   【関連記事】 第12期生事例研究発表会を開催しました~助産学専攻科 熟練助産師から学ぶ分娩介助の応用「会陰保護技術と肩甲難産の分娩介助技術」~助産学専攻科 産婦人科医に学ぶ!会陰縫合理論と縫合技術~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅱ」 児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科「ヒューマンヘルス」 産婦人科医に学ぶ超音波診断法~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅰ」 2022年度 新生児蘇生法(NCPR)Aコース講習会を受講しました!~助産学専攻科 第11期生事例研究発表会を開催しました~助産学専攻科 外部講師に学ぶマタニティヨガとベビーマッサージ!~助産学専攻科 災害時の行動をロールプレイで学ぶ「地域母子保健論」~助産学専攻科

2024.02.26

第12期生事例研究発表会を開催しました~助産学専攻科

2023年1月17日(水)に「助産学専攻科第12期生事例研究発表会」を開催し、学生9名が発表しました。その様子を紹介します。       私たちは、7月から病院や保健センター、助産院にて助産学実習を行いました。助産学実習では、1人の対象者を妊娠期から産後1か月健診まで継続して受け持たせていただく「継続実習」があります。ほとんどの学生が妊娠期から産褥期まで実習させていただきました。   事例研究発表会では、継続実習でのそれぞれが実施した助産ケアについて論文や文献を用いて振り返りました。 前期から文献検索を行い研究発表に向けて準備してきました。実施した助産ケアについての先行研究をもとに考察することは難しかったですが、教員に助言をいただいたり、学生同士で意見を出し合ったりして当日を迎えることができました。     学生は、それぞれ最後に自身の「目指す助産師像」について発表しました。     当日は学生や本学教員の他、助産学実習で指導していただいた臨床教授の皆様や、助産学専攻科の次年度入学予定者、畿央大学の関係者の方々にも参加していただきました。多くの方に参加していただきありがとうございました。それぞれが一生懸命発表し自身の学びや思いが伝わるよう練習を重ねた結果、無事発表を終えることができました。     発表会を通して、臨床教授や教員から講評をいただくことで、自身の行った助産ケアを振り返り、より深く理解することができました。 「働いてからは、業務で忙しいと思うけれど、寄り添うべき時に寄り添える助産師になってほしい」「今の時代、お産だけでなく女性の人生にかかわることが求められる」などといった今後の私たちへの温かいアドバイスをいただきました。     最後に、実習で学生の受け持ちをご承諾していただきました妊産褥婦の皆様、ご家族の皆様、実習を受け入れてくれてくださった病院施設、保健センター、助産院の皆様、温かく熱心にご指導いただきました臨床教授・講師の皆様、教員の皆様に心より御礼申し上げます。       助産学専攻科12期生 岡田 七彩、欅谷 明、松浦 美夢     【関連記事】 熟練助産師から学ぶ分娩介助の応用「会陰保護技術と肩甲難産の分娩介助技術」~助産学専攻科 産婦人科医に学ぶ!会陰縫合理論と縫合技術~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅱ」 児童養護施設「飛鳥学院」を見学!~助産学専攻科「ヒューマンヘルス」 産婦人科医に学ぶ超音波診断法~助産学専攻科「助産診断技術学Ⅰ」 2022年度 新生児蘇生法(NCPR)Aコース講習会を受講しました!~助産学専攻科 第11期生事例研究発表会を開催しました~助産学専攻科 外部講師に学ぶマタニティヨガとベビーマッサージ!~助産学専攻科 災害時の行動をロールプレイで学ぶ「地域母子保健論」~助産学専攻科

2024.02.01

看護学生と企画した「性教育セミナー」を高校で実施!~看護医療学科「母性看護実習」

看護医療学科3回生が学ぶ「母性看護学実習」では、今年度初めての試みで高校での性教育セミナーを実施する機会をいただきました。看護医療学科の岡が当日の様子をレポートさせていただきます。     高校の控え室で最後の打ち合わせ…一緒に参加した担当教員の方がドキドキしています。   奈良県立桜井高等学校の2年生のみなさんに拍手でお迎えいただいて入場し、セミナーが始まりました。まずは自己紹介を兼ね、大学での看護の講義や演習など学修の様子を動画で紹介しました。     寸劇、パワーポイントを使っての説明など、大学生たちはみんなで真剣に、高校生のみなさんに伝えたいことを考えてくれました。例えば、ネットで知り合った人に初めて出会う場面…いきなり手を握られたら、みなさんはどのように感じるか、大切にしたい友達との関係、相手を傷つけずに断るにはどうすればいいのか…。人と人との距離は、それぞれ感じ方があるので、お互いを大切にするにはどうすればいいのか…などを考えるきっかけにしてもらいました。自分のからだを大切にすると同時に、相手のからだも大切にすること…その上で性的なつながりなどを考えていくきっかけにしていただきたいと願って、みんな一生懸命伝える努力をしてくれたと思います。         最後にグループに分かれての体験。男の子、女の子、性別に関わらず誰もが身を守るために大切なこと。 望まない妊娠、性感染症を防ぐために、人を大切にするための実技体験にしてくれました。 恥ずかしいかもしれないけれど「女の子もちゃんと知っていないとダメンズの餌食になっちゃうよ!」という大学生からのメッセージもありました。     続いて、奈良県立西和清陵高等学校の1年生のみなさんの前でもお話しさせていただきました。残念ながら、日程調整上で学生さんたちの参加はかなわなかったので、パワーポイントなど学生さんの作ったものを一部使わせていただきました。     出会い系サイトで出会って、初めて出会った場面の寸劇は、高校の先生が担当くださり、生徒さんたちからの笑いも…。迫真の演技?でした。相手役の先生の戸惑いがリアルでした(笑) 自分が不快に感じることは不快だと伝えることって大切ですよね。相手を不快にさせない断り方も考えるきっかけにできていればいいのですが。       中絶手術が行われていない、昔の様子などもお話ししました。 最後に体験会…抽選で決まった人たちが前に出て体験してくださいました。ちょっと抵抗はあると思うのですが自分のからだと相手のからだを大切に守るために、必要な守りだと思います。完璧なまでにキレイにつけてくれた生徒さんもいました。大切なことですね。           生徒さんの感想の一部です。感想を聞かせてくださってありがとうございました。   「初めて知ったことがいっぱいありました」 「学校ではこういったものに触れにくいので抵抗はありますが真剣に向き合いたいと思います」 「恥ずかしい内容もオープンに聞くことができてとても役に立ったと思った」 「これからの自分たちに大きく関わっていく問題だと思う」 「自分の身を守るために必要なことやお互い知っておいた方が良いことが沢山あるんだと思った」 「年齢的には近いけれど高校と大学では全然違うんだろうなと思いました」 「恥ずかしさがあったが大切でいい機会だった」 「実際に今学んでいる学生さんから直接話を聞けて身近な感じがありわかりやすかった」 「いのちの重みが伝わりました。もっと責任を持ちたいと思います」 「年齢が近い人たちなので親近感があった」 「年齢の近い人に教えてもらえてうれしかった」 「大学の看護の人たちを見てもっと看護師になりたいと思った」 「間違いを犯さないためのいい勉強になった」 「性病は怖いと思った」 「一般的に行われる性教育より、少しプラスの内容が学べた」 「自分の知らない言葉が色々出てきたけど、大切なことを何度も繰り返して話してくれたので、よくわかった」 「将来の自分と相手のための勉強になった」 「とても恥ずかしかったけど、大事な事だったので我慢して聞くことができました」 「避妊薬の値段など知りたかった」 「怖いと思う人はいると思うけど色々な事例をあげるのもいいと思った。危機感持てる」 「人間というか生物に改めて興味が出た。また、義務教育までの浅はかな知識で性について知るよりもこういう講演をしていただけてとても有意義な時間だと思った」 最後になりますが、母性看護学領域では、大学生が中心になり、高校生に向けて少しでもお伝えできるよう、春からはプロジェクトチーム(Sexology Project)を立ち上げる予定です。私たち年配者には思い浮かばないような若い発想で、少し年下の生徒さんたちをサポートできるのは、大学生さんたちの強みだと思います。 興味のある方は畿央大学健康科学部看護医療学科 岡までどうぞよろしくお願いします。     看護医療学科 教授 岡いくよ 看護医療学科 助教 堀井有紗     【関連記事】 堺市総合防災センターで体験学習をしました~看護医療学科「災害看護II」 ハンセン病療養所を訪問、当事者家族の声を聴き「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 「地域包括ケア実習」が新しく始まりました!~看護医療学科 外部講師による講義「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の看護について」~看護医療学科「慢性期看護学援助論Ⅰ」 2023年度 看護医療学科卒業研究発表会を開催! 令和5年度「チーム医療ふれあい実習」実践発表会を開催!~看護医療学科 奈良県看護協会主催「訪問看護インターンシップ」参加レポート!~看護医療学科 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び②学外演習編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び①外部講師による講義編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」 手術を受けた患者をイメージした「患者モデルの作成」と術後看護演習~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」 4回生から3回生へ学びの伝達「緩和ケア病棟の実際―病院インターンシップ実習を経験した上級生とのディスカッションー」~看護医療学科「終末期ケア論」 「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」 外部講師による講義「国外における国際看護と国際看護活動に必要な能力について」~看護医療学科「国際看護学Ⅰ」 2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科 外部講師による講義「看取りを体験した遺族に対する看護の課題」~看護医療学科「終末期ケア論」 2023年度新入生研修 学科別レポートvol.1~看護医療学科

2023.12.19

堺市総合防災センターで体験学習をしました~看護医療学科「災害看護II」

看護医療学科4年次後期に配当される「災害看護Ⅱ」の授業では、災害の種類と健康被害の特徴、災害サイクルに応じた災害看護活動、他職種との連携体制の構築、災害時に必要な医療と看護技術による災害看護の実践、災害に備えた減災・防災マネジメントなどの体験や演習を通して、災害看護の機能と役割について学びます。12月5日(火)には、学外実習として4回生の2名が担当教員引率のもと、堺市総合防災センターに足を運びました。以下、参加学生からのレポートをお届けします。 日本は、他国に比べ自然災害の数、規模が大きく、過去には阪神淡路大震災・東日本大震災などの大規模自然災害が発生しています。また私たちは被災地を映像で見たことはあるものの、それを経験したことはありません。そのため今回は「災害看護Ⅱ」の授業より、今後自然災害が起こると予測されている南海トラフや上町断層直下型地震の体験と予防策、看護師としてできることについて堺市総合防災センターに行き学修を深めました。   災害体験 地震に遭遇する映像を見ながら震度7の地震の揺れを体験し、また火災の実際の映像を見ました。       次に、火災による煙と停電による暗闇の体験および火事が起こった際の消火体験を行いました。火災時に発生する煙の主成分である一酸化炭素は空気より軽いため上から煙が溜ること、停電による暗闇の中では一切何も見えないことを体験することができました。また消火体験では燃え上がっている炎の中心を狙うのではなく、火元を狙って消火することが良いことを学習することができました。     災害体験を通じて、大規模地震や火災による被害の大きさを体感することができました。地震による被害を最小限にするために保存食の準備や家具の固定など自宅で予防できるものについても理解を深められました。施設や病院等で看護師として働く際には、今回、火災や停電に対する危険性を体験できたことが、避難誘導を円滑に行うことに繋がると思います。 がれき救助体験 次にがれき救助体験をしました。災害発生時に重要となる自助や共助の観点から、被災者を担送する体験をしました。災害時は物品が限られているため、家庭にあるもので安全に運ぶ方法を学習することができました。     瓦礫が乗っている屋根の下に人がおり、安全に屋根を持ち上げるという想定の下ジャッキーを使用しました。災害時、自分の身を守りながら救援者を助けるにはどのような物品が必要で、どのように使えばよいかを体験しました。       がれき救助体験を通じて実際に救助の方法を知ることができました。災害発生時、担送や護送の際の注意点や、クラッシュ症候群予防について考えるきっかけとなりました。また、消防士の観点から災害について考え、病院や避難所で、救助隊との連携がスムーズにするためにはどのような事柄が必要か学ぶことができました。 参加した感想 看護師として自然災害発生時の停電や火災の危険性を理解することができました。 患者を避難誘導する際に独歩・護送・担送の観点から、危険性が高い人から低い人へと順に避難誘導する優先順位を検討できると学びました。今後、看護師として働いていく中で、救援者でもありながら被災者となる可能性が高いため、災害発生時、重要になってくる自助、共助を活用しながら、自身の安全確保を行いつつ、傷病者の手当てや護送、担送を行っていけるようになりたいと思います。     看護医療学科 准教授 酒井 啓子 看護医療学科4回生 荒井 拓真、三島 大空 【関連記事】 ハンセン病療養所を訪問、当事者家族の声を聴き「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 「地域包括ケア実習」が新しく始まりました!~看護医療学科 外部講師による講義「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の看護について」~看護医療学科「慢性期看護学援助論Ⅰ」 2023年度 看護医療学科卒業研究発表会を開催! 令和5年度「チーム医療ふれあい実習」実践発表会を開催!~看護医療学科 奈良県看護協会主催「訪問看護インターンシップ」参加レポート!~看護医療学科 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び②学外演習編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び①外部講師による講義編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」 手術を受けた患者をイメージした「患者モデルの作成」と術後看護演習~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」 4回生から3回生へ学びの伝達「緩和ケア病棟の実際―病院インターンシップ実習を経験した上級生とのディスカッションー」~看護医療学科「終末期ケア論」 「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」 外部講師による講義「国外における国際看護と国際看護活動に必要な能力について」~看護医療学科「国際看護学Ⅰ」 2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科 外部講師による講義「看取りを体験した遺族に対する看護の課題」~看護医療学科「終末期ケア論」 2023年度新入生研修 学科別レポートvol.1~看護医療学科

2023.12.15

「精神看護学実習」施設実習レポート!~看護医療学科

看護医療学科3年次後期は臨地実習に行き、急性期・慢性期・母性・小児・精神・老年・在宅看護学・クリティカルケア実習に計15週間の実習を行います。その一つである精神看護学実習では、病院と施設に分かれて2週間の実習を行います。今回、地域実習施設である一般社団法人イーデンホール(生活介護事業・B型就労継続支援事業・訪問看護ステーション)様での実習について、参加学生の感想をお伝えします。 実習へ行く前は、精神看護は難しい、少し怖いというマイナスのイメージがあり不安を感じていました。実際に実習中もコミュニケーションのとり方にとても悩みました。しかし試行錯誤していく中で、コミュニケーションは言葉のキャッチボールだけでなく、同じ空間にいることや、相手に関心を持つこともコミュニケーションであると学び、上手く関わりを持つことができるようになりました。そのことで、精神看護へのイメージを良い方向へ変化させることができました。また、今回の実習で、精神疾患を抱えながら地域に暮らす人達がたくさんいることを実感しました。今後は、今回の実習での学びを自身の看護に活かしていくとともに、疾患を抱えながら地域に暮らす方たちを支えていくために、看護師としてどのような役割があるのか、考えを深めていきたいと思います。 精神看護学施設実習で学んだことは、精神疾患を患っている方とのコミュニケーションです。信頼関係を形成するためには、接する機会を重ね、楽しむことができる世間話をして、徐々に互いの心の距離を近づけていくことが必要です。精神疾患を患っている方には、なかなか自分の思いを発言することができない方もいらっしゃいましたが、徐々に心の距離が近づいていると日々の関わりを通して感じることができました。精神疾患を患っている方も、自分たちと同じように初対面の人には緊張し、人と人が仲良くなっていくように、心の壁を取り除いてくれるのだと感じました。 私たちは精神看護学実習で、疾患を治療する場である病院ではなく、精神疾患を抱える人達が生活する場である生活支援施設で実習をさせていただきました。特に印象に残ったことは、私たちで企画・実施をしたレクリエーションです。普段自分から動かない人が積極的にレクリエーションに参加している姿が見られ、利用者さんの新たな一面を知ることができました。さらに、利用者さんの新たな一面を見られたことで、他の利用者さんや施設の方、私たちもすごく嬉しい気持ちになりました。このレクリエーションを通して、その人にできることを決めつけてしまうことは、持てる力を奪ってしまうということを学ぶことができました。実習では受け持ちの利用者さんと上手くコミュニケーションがとれず、悩むことも多かったですが、実習メンバーや先生、スタッフさんの助力もあり、学ぶことが多かった以上に、楽しんで実習を終えることができました。         利用者のみなさま、施設のスタッフの方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。   看護医療学科3回生 福原 拓時、梅澤 津柚乃 小笠原 佳子、谷口 晴美、光吉 彩華 関連記事 ハンセン病療養所を訪問、当事者家族の声を聴き「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 「地域包括ケア実習」が新しく始まりました!~看護医療学科 外部講師による講義「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の看護について」~看護医療学科「慢性期看護学援助論Ⅰ」 2023年度 看護医療学科卒業研究発表会を開催! 令和5年度「チーム医療ふれあい実習」実践発表会を開催!~看護医療学科 奈良県看護協会主催「訪問看護インターンシップ」参加レポート!~看護医療学科 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び②学外演習編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び①外部講師による講義編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」 手術を受けた患者をイメージした「患者モデルの作成」と術後看護演習~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」 4回生から3回生へ学びの伝達「緩和ケア病棟の実際―病院インターンシップ実習を経験した上級生とのディスカッションー」~看護医療学科「終末期ケア論」 「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」 外部講師による講義「国外における国際看護と国際看護活動に必要な能力について」~看護医療学科「国際看護学Ⅰ」 2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科 外部講師による講義「看取りを体験した遺族に対する看護の課題」~看護医療学科「終末期ケア論」 2023年度新入生研修 学科別レポートvol.1~看護医療学科

2023.12.01

畿央祭で認知症カフェを開催しました!~認知症ケアサークルOrange Project®畿央大学

Orange Project®とは、熊本県(熊本大学・熊本保健大学・崇城大学)と奈良県(畿央大学)、愛知県(同朋大学)を中心に活動している認知症啓発のための学生ボランティア団体です。 “認知症になっても安心してくらせるまちづくりに貢献する”をコンセプトに、認知症啓発運動を行っている学生を中心とした団体で、2020年にはロゴやマークが商標登録されました。 2019年9月に畿央大学では「認知症にやさしい広陵町、認知症に強い畿央大学」となることを目的に、サークルとして発足しています。   10月21日・22日に、畿央祭が開催されました!今年はコロナの制限も緩和され、地域の方々も来場できるようになりました。 私たちOrange Projectは10月22日(日)に看護実践研究センター認知症部門主催で認知症カフェを開催しました。     認知症カフェに限らず、私たちOrange Projectは発足してしばらくすると、新型コロナウイルスの影響により外部での活動が制限されることとなりました。そのため私たちが企画して何かイベントを開催するということは初めての経験であり、計画や準備の段階で多くの壁に突き当たりました。 しかし、大学や教員の皆さま、Orange Projectと交流のある地域の方々のご協力もあり、無事開催することができました。   当日は老若男女問わず53名の方がこの認知症カフェに来てくださり、認知症について講義や会話などでとても盛り上がりました。   当日は最初に「若年認知症サポートセンターきずなや」や奈良県のピアサポーターとして活動されている平井正明氏にご講演をいただきました。平井さんの病歴や認知症のこと、当たり前にできていることが特別なことなど、平井氏の経験を元に認知症になることで気づくことを私たちに教えてくださいました。体を動かすこと、脳を動かすことなど、当たり前にできることを特別と感じることが今の私達が必要な考え方であると学びました。講演後の質疑応答では様々な意見が飛び交い、参加されている方の関心の高さを伺うことができました。     講演後はそれぞれ5・6人のグループに分かれて、「認知症になっても大丈夫な町ってどんな町?」をテーマに、ディスカッションを行いました。私たちも参加者の間に入りディスカッションを行いましたが、会話を仲介したり、こちらが積極的に発言せずとも様々な意見が出てくるなど、盛り上がりを見せていました。 それぞれの意見は付箋に書いてもらい内容ごとにグルーピングすることで、意見を整理し新たな意見を見出す機会にしました。     ディスカッション後には参加者の皆様に飲み物をお出しし、お菓子をつまみながらお話しするカフェタイムを用意しました。多くの席ではディスカッションの盛り上がりが残っており、それぞれの認知症への考え方・接し方を共有したり、知識の交換や、認知症当事者やその家族の方もいらっしゃったため、身の上話や介護の悩み・不安などをお話しされていました。 私たちOrange Projectのメンバーもそれぞれお席にお邪魔して、お茶を飲みながら話に花を咲かせました。認知症になった人の家族のことや生活の中で困ったことなど多くの経験を私達に話をして頂き、とても学びのある機会になりました。     最後に私たちOrange Projectメンバーが作成したコグニサイズを披露しました。 コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防運動のことで、それらが提唱する運動方法を学生でアレンジし、パンフレットを作成しました。 本来であれば認知症カフェに参加してくださった方と一緒にコグニサイズを実践する予定でしたが、ありがたいことに多くの方がお越しくださり、皆さんが運動するスペースを確保することができなかったため、学生がパンフレットを用いて皆さんの前で実施し、今後実施してもらえるようにしました。       今回多くの方がこの認知症カフェに訪れてくださったことで、改めて地域における認知症の関心の高さを知る機会となり、私たちの活動も多くの方に支えられているのだと実感することができました。 また実際に運営に深く携わることで、認知症カフェに限らずイベントを開催することの難しさ、継続することの大変さを学ぶことになり、現在広く展開されている全国の認知症カフェは、さまざまな方がそれぞれの強い意志を持ち、たゆまぬ努力により開催されているのだということを改めて理解することができました。   看護医療学科 3回生 大久保翼 今回の認知症カフェで認知症についての考えが180度変わりました。認知症という大きいくくりで考えるのではなく、一人ひとり認知症の症状の程度でどの機能が弱っていてどこの身体の部位を使って機能低下を抑えるのかなど、認知症を細かいくくりで考え、その人に合ったケアを行うことが大切だと学びました。   看護医療学科 1回生 田仲司     今回の経験を基にこれからもさまざまな認知症に関するイベントの企画、そして地域での認知症カフェ・イベントへの参加を続け、地域の認知症ケアに貢献していけるよう活動を広げていきます。 これからもOrange Project®をよろしくお願いします!       看護医療学科 3回生 大久保翼                 1回生 田仲 司     【関連記事】 エリシオン真美ケ丘・エリシオン真美ケ丘アネックス「ひまわりカフェ」9月活動報告!~認知症ケアサークルOrange Project®畿央大学 真美ケ丘子ども会の児童に、認知症の啓発活動!~認知症ケアサークルOrange Project®畿央大学 エリシオン真美ケ丘・エリシオン真美ケ丘アネックス「ひまわりカフェ」活動報告!~認知症ケアサークルOrange Project®畿央大学 認知症ケアサークルOrange Project®が活動を再開!~エリシオン真美ケ丘「ひまわりカフェ」活動報告 認知症ケアサークルが「2022年度Orange Project®記念式典」にオンライン参加! 対面とZoomで「七夕交流会」を開催!~Orange Project®畿央大学 第1回エコマミ公開講座に山崎教授と学生が協力!~Orange Project®畿央大学 認知症啓発のための「絵本・紙芝居で子どもから社会へつなげよう」活動報告!~Orange Project®畿央大学

2023.11.29

看護実践研究センター第9回研修会「地域共生社会の実現に向けて~様々な在留資格による外国人介護職受け入れの現状と課題~」を開催しました。

看護実践研究センター地域包括ケア部門では、乳幼児から高齢者までの看護分野における連携および他職種との連携と協働からのケアシステムおよびケアのあり方を探求するとともに、それらに関連する情報を提供し、健康増進に寄与することを目的としています。   令和5年11月25日(土)に「地域共生社会の実現に向けて~様々な在留資格による外国人介護職受け入れの現状と課題~」をテーマとしてパネルディスカッションを開催しました。       世界に類をみない超高齢・超少子社会を迎えた日本では、要介護者の急増によるケアの担い手不足から、外国籍介護士の本格的な参入が進められ、ケアに必要な資格を取得するため技能修習生として現場で学びながらケア実践能力を獲得する方が増えています。 そこで、本研修会では、外国人介護職のケア実践に向けた受け入れ施設の現状と課題を理解し、そういった外国籍の方を理解し受け入れる地域共生社会の実現に向けて必要な要素を考える機会とし、以下の4名のパネリストの方にご登壇いただきパネルディスカッションを開催しました。     【受け入れ施設として】 社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団 あわじ荘 所長 米田知弘様 社会福祉法人六心会 地域密着型特別養護老人ホームきいと 施設長 高口誠様 社会福祉法人六心会 介護老人保健施設ここちの郷 生活課課長 小菅知子様   【生活支援団体として】 NPO法人ガルーダ・ジャパンコミュニティ 代表理事 西口和寿様 実際に技能修習生を受け入れている施設で行われている支援としては、まず受け入れる目的を全スタッフで共有し、ケアマニュアルを見直し、修習生に説明ができる内容に更新することをはじめとして、生活支援としては、日本での生活がスムーズになるように住まいの確保、行政や銀行の手続き、コミュニケーションとして必要な日本語の学習、特に修習生は「ちょっと」「こまやかに」といった日本語特有の曖昧な表現が理解できにくいので、理解ができるような具体的な説明が必要であること、そしてケア技能の学習を技能性の特性に合わせて工夫してできることを増やし、困ったときに「助けてほしい」と言える自立を目指されていました。 受け入れたメリット(実感)としては、アジア諸国から来日した修習生は、真面目で礼儀正しく、視線の合わせ方やケアの丁寧さから、施設入所者や利用者の方々からは、日本人スタッフよりも好評だとのことで、日本人スタッフにも見習ってほしいとのことでした。   課題としては、住まいの確保として外国人だからという理由で入居を断られることが多々あり、地域で外国籍の方を受け入れる意識の土壌創りが必要だとのことです。その対応策として、地域の祭りや行事に積極的に参加し、お互いに理解しあえる機会を増やすように工夫しているとのことでした。また技能修習生が資格を取得した後、継続して就労してくれるかは未知数で、今後の法改正により短期間で転籍が可能になると、便利な都会に移動してしまい、地方では人材確保がさらに困難になることが予想され、せっかくの定着支援が功をなさない可能性があると危機感を持たれていました。   インドネシア人の方々の生活支援をしている西口様からは、宗教や文化・風習の違いを理解することが必要であること、その機会をバザーやお祭り・食事会などのイベントを通して創り、他NPO法人との情報交換や連携を図っているとのことでした。 そういった意味から「つながる」ことについての意見交換が行われました。 これらのことから、技能修習生の来日の目的や目指すことを理解したうえで、人材育成として成長を促す支援と私たちにできることとして、宗教や宗教による食べ物の違い・文化を尊重し理解しようとすること、そして今後の課題として、日本で長く定住できるような行政の関わりや支援も必要であることが明確になりました。   対面とオンラインのハイブリッド開催でしたが、オンラインでは、北海道や鹿児島からの参加やベトナムなど外国籍の方、また院内研修としてスタッフで参加された医療機関がありました。     参加された方々からは以下の感想が寄せられました。 言葉や文化の違いのある外国の方の受け入れには入念な準備が必要だと思いました。些細なことでもいいからコミュニケーションをとることでつながるきっかけにしていきたいと思います。 外国人が地域に根付くこととそれを受け入れることは、日本が苦手としている分野であり、目的の共有、という点、なるほどなぁ、と納得しました。 組織をあげて受け入れされていることが、良い実習につながっていると感じました。その根底に、双方の目標意識の共有があると思います。 地域の行事や日本の文化、日常の生活での声かけから学ぶ点が沢山あるし、積極的に声かける人は沢山の事を学ぶと感じました。 最後は、人と人のつながり、個人の有り様とまわりのつながりが、大切ということですね。   ご参加いただいた皆様ありがとうございました。       看護実践研究センター地域包括ケア部門           看護医療学科 准教授 前田則子   【関連記事】 畿央大学 看護実践研究センター 新たな産育コミュニティをめざして「マタニティクラス」を開催しました!〜看護実践研究センター 2023畿央祭・ウェルカムキャンパスで、がんカフェ「きらめき」開学20周年記念拡大版を開催!~看護医療学科 看護実践研究センター「親子のつどいサロン秋祭り」を開催しました 看護実践研究センター第8回研修会「医療的ケア児と家族が安心して暮らせる地域づくり」を開催しました。 2022畿央祭・ウェルカムキャンパスで、がんカフェ「きらめき」 を3年ぶりに対面実施!~看護医療学科 畿央大学看護実践研究センター第7回研修会 「地域で・笑顔で 生きるとは」を開催しました。

2023.11.21

新たな産育コミュニティをめざして「マタニティクラス」を開催しました!〜看護実践研究センター

看護実践研究センター 母子包括ケア部門は、母子包括ケアに関する実践研究の推進に貢献するとともに、育児支援者のスキルアップ、サポート体制構築を目指します。また、地域住民の方に対してマタニティクラスやベビークラスなど産前から産後のプログラムを提供し、地域の母子保健に寄与できるような取り組みを展開しています。 看護実践研究センターでは、今年度から新たな取り組みとして妊産婦さん、パートナーや上の子どもさんたちご家族向けのマタニティクラスの開催をスタートしました。 健康科学部看護医療学科3回生をはじめ、看護医療学科、助産学専攻科の教員である助産師、卒業生の病院で勤務する助産師たちでマタニティカップルをお迎えしました。     中には、予定される出産施設の助産師(本校卒業生)との出会いにもつながりました。 また、地元広陵町の担当課長さんや保健師さん、助産師さんも気にかけてくださり、一緒にご参加いただきました。みんなで妊産婦さんと誕生するお腹の赤ちゃんを応援したい気持ちでいっぱいの時間となりました。 妊産婦さんの中には、畿央の卒業生の方もいらっしゃいました。また、担当学生のお姉さんとお母さんも…。みんな大切な畿央ベビーちゃんたちですね!!     お腹の赤ちゃんってお腹の中でどう過ごしているのかな…?お兄ちゃんが看護医療学科の学生と一緒に見ています。 また、妊婦体験では、妊婦さんの生活のイメージをパートナーの方が体感してくださいました。どんな姿勢を体験して欲しいですか?という質問にはお風呂掃除のイメージかな?靴下を脱いだり履いたりしてみてねとお答えしました。       沐浴は毎日のことなのでリラックスして楽しく!まずはお湯に赤ちゃんをつけてみることから始めてみましょう!楽しんでイメージできることが大切ですね。 お兄ちゃんも一緒に体験しています。赤ちゃん待ち遠しいですね!     沐浴動画をみながら足湯でリラックス。温かさがお腹の赤ちゃんに伝わりますように。     最後に妊娠生活やお産を乗り越えるためのリラックスとマッサージ練習です。マッサージの手は優しく丁寧に〜。 看護医療学科の学生も一緒にマッサージをさせていただきました。     ご参加いただいた皆様のご感想の一部です。   とても丁寧に対応してくださり、明るさや元気さを感じられて楽しかったです。わからないことも教えてもらい、気持ちが上を向く言葉をかけてくださり、安心につながりました。 丁寧に教えてくださり有難かったです。みなさん明るく、雰囲気も良くリラックスできました。 お腹を見ていただき、色々アドバイスをもらえてホッとしました。とても優しく温かく接していただけて嬉しかったです! 貴重な体験ができたので、こういったことがとても有難いと感じました。また参加できたらと思います。本日はありがとうございました。   次回は12月3日(日)です。クリスマスに向けミニコンサートつきです。また誕生された後は畿央大学付属広陵子ども園子育て支援室でのベビークラスへのご参加もお待ちしております。   無事ご出産され、新たな育児生活をスタートされますことを学生、教員みんなで心からお祈りしております。   看護実践研究センター 母子包括ケア部門 看護医療学科 教授 岡 いくよ 助教 堀井 有紗   【関連記事】 畿央大学 看護実践研究センター 2023畿央祭・ウェルカムキャンパスで、がんカフェ「きらめき」開学20周年記念拡大版を開催!~看護医療学科 看護実践研究センター「親子のつどいサロン秋祭り」を開催しました 看護実践研究センター第8回研修会「医療的ケア児と家族が安心して暮らせる地域づくり」を開催しました。 2022畿央祭・ウェルカムキャンパスで、がんカフェ「きらめき」 を3年ぶりに対面実施!~看護医療学科 畿央大学看護実践研究センター第7回研修会 「地域で・笑顔で 生きるとは」を開催しました。

2023.11.16

ハンセン病療養所を訪問、当事者家族の声を聴き「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」

看護医療学科では、2015年度より保健師対象科目「健康学特論」において、受講者が岡山県瀬戸内市にある国立療養所長島愛生園に直接赴き、納骨堂に献花し、往時に使用されていた収容施設や監房跡等も見学、そして、現在も入所されている回復者の話に耳を傾けて参りました。今年度は11月4日(土)に37名の学生と2名の教員で訪問することができました。 瀬戸内海に浮かぶ島、長島は1988年まで本州との橋がかかっていませんでした。まるでハンセン病療養所を完全に社会から断絶するようでもありました。次の写真は、架橋されて35周年を迎えた邑久長島大橋です。人々はこの橋を「人間回復の橋」と呼んでいます。私たちはこの「人間回復の橋」をわたり長島へ入りました。     ▲邑久長島大橋   想定よりも早く着けたこともあり、長島愛生園到着後すぐに、愛生会館にて開催していた入所者と職員らによる美術作品などを展示する「第17回長島愛生園総合展示会」を見学させていただきました。学生たちは事前にハンセン病に関する学習を行ってきましたが、作品を通じて、今回のテーマである「今」を垣間見ることができました。   総合展示会に関する報道はYouTubeからもご覧になることができます。     ▲愛生会館     ▲第17回長島愛生園総合展示会の様子   次に、長島愛生園歴史館の見学をしました。次の写真は歴史館の外景です。1930年の開園当初からあった建物で事務本館として長く使用されてきました。現在は歴史館として多くの方々が見学に来ています。     ▲長島愛生園歴史館   解説はハンセン病療養所世界遺産登録推進協議会の釜井大資事務局長がしてくださいました。     歴史館の見学の後は、園内の見学に移りました。当時の患者専用の収容桟橋、収容後すぐに入れられた回春寮(収容所)と続き、監房跡を見学しました。監房は現在、外の壁だけを見ることができますが、数年経てば、中も見られるようになる予定とのことです。学生たちは、「事前学習では学んでいたけれど、実際に自分の目で見ると当時のことを想像してしまう」と口々に話していました。     ▲患者専用の収容桟橋     ▲回春寮(収容所)     ▲監房跡   その後、亡くなっても「社会復帰」が叶わなかった方々が眠る納骨堂と、1996年まで続いた旧優生保護法による強制堕胎の胎児を祀る水子地蔵の前でそれぞれ花を捧げ、手を合わせました。     ▲納骨堂   ▲水子地蔵   最後に、今年開館した研修施設である「むつみ交流館」の研修室にて、田村 朋久主任学芸員からの講話を聴き、長島愛生園を後にしました。   注:ハンセン病を理由とする断種・堕胎手術は、旧優生保護法施行以前にも、法的根拠がなく行われていました。 長島愛生園を訪問した学生の感想 ●長島愛生園の歴史館で展示室を見学して、ハンセン病の歴史や長島愛生園での出来事について年表や実際に使われていた物、分かりやすくまとめた掲示物などが展示してあり、よりハンセン病について理解が深まりました。   ●今まで広島の原爆ドームや阪神淡路大震災後の断層など現存されているものを見てきましたが、長島愛生園ではお風呂や橋だけでなく島全体の手入れが行き届いていない所も全て雰囲気が違っていました。ハンセン病患者の生活様式や今でも社会からの差別・偏見を恐れている姿を目の当たりにしました。   ●当時の状態を保っている建物や物が多く、授業で聞いた知識も相まって当時の暮らしを体で感じることができました。私が印象的だったのは、学校、病院、牧場など公共機関がほぼ園の中にあり、お金も園専用なところから、療養所というよりかは小さな国のように思い、外との断絶をより感じたことです。   ●長島愛生園で見学したとき、当時の建物などや収容桟橋などを目の当たりにして当時のことを想像していました。自分がもしあの場にいたらどのような気持ちになるのか、大切な人との別れはどのように苦しいものか、当時の人の苦しさは想像しても分からないほどの苦しさだったと思うと、とても苦しくなりました。絶対この過ちを犯してはならないと思いました。講義で学んだほかに、やはり現地に行くことの方が学べるものが多く、実際の建物や暮らしなどを説明していただいてとても貴重な経験になりました。   ●歴史館の展示室を見学した際に相撲大会や盆踊りの様子の写真、園内通用票などを見て、実際にこの島でコミュニティが存在し、生活を営んでいたとより実感がわきました。また、収容所において現金や懐中電灯など逃走に活用できる物品を取り上げられたと聞き、当時は橋がなかったことも考えると、もう逃げられないという絶望に包まれると感じました。   ●無知は恐ろしいと改めて痛感しました。国の法律が絶対に正しいと思わず、正しいことを知っていくこと、関心を持つことが偏見や差別をなくしていくと思いました。正しい知識を周りの家族や友人に広げていきたいです。   ●長島愛生園を訪問するまでは、知識を学んでいても今では考えられない扱いをされてきた場所であることから、実際の想像があまりできませんでした。しかし、訪問し、建物や風景を見たときにここで暮らしてきた、差別を受けてきた人たちがこの場所にいたことをようやく実感することができました。ここに収容された人たちの怒り、悔しさ、苦しみ、または楽しさ、嬉しさなど多くの感情がここに存在し、またその感情さえも押し殺して生きてきた、強く強く耐え生きてきた人たちが存在していた、そして今もなお存在していることを絶対に忘れてはならず、2度と過ちを繰り返してはいけないと感じました。 訪問後、本学での講演 長島愛生園訪問の翌週11月11日(土)には、元ハンセン病家族訴訟原告団副団長の黄 光男(ファン・グァンナム)さんに大学にお越しいただき、貴重なお話を伺うことができました。黄 光男さんには2021年から畿央大学にて講演をいただいています。 ハンセン病は当事者のみならずご家族にも甚大な差別があり、黄さんは、ご自身の家族の事例を挙げながら、その差別について切々と語られました。また、ギターを手にされ、ご自身が作詞作曲した「閉じ込められた生命」、「思いよ とどけ」などの弾き語りを披露していただきました。学生たちはその歌、その思いに聴き入っていました。       参加学生の感想 ●ハンセン病患者の家族の思いを生の声で聞くことができ、家族を含めたハンセン病の理解につながりました。また、黄 光男さんが作詞作曲された曲を聞き、そこからもハンセン病患者の家族として、家族への思いを感じることができ、印象的でした。   ●ハンセン病問題は、ハンセン病患者とその家族をどれほど苦しめたのか、今回の講演でよくわかりました。決して許される問題ではなく、今後同じようなことがないように、おかしいことはおかしいと声をあげる勇気をもつことと噂を簡単に信じないことが大切だと思いました。国がハンセン病は恐ろしい病気であることを広め、国民がそれを信じ、ハンセン病患者とその家族を差別していた過去が日本にはあったということをもっと多くの人が知るべきだと思いました。   ●黄 光男さんの歌に入所者の思いや黄さん自身の思いがダイレクトに綴られていて、少し泣きそうになりました。らい予防法は、入所者と同じくらい、もしかすると入所者以上に家族が苦しめられるものだったのではないかと感じました。日本特有の文化である世間体を悪用した仕打ちで、家族がバラバラになった様子を話してくださり、繰り返してはいけないことであると改めて感じました。   ●今までハンセン病にかかってしまった元患者の話を聞くことが多かったため、今回初めて家族の立場である人から話を聞けて新たな視点ができました。特に印象に残った話は、らい予防法から公務員の業務としてハンセン病患者を療養所に送り込むということで、黄 光男さんから家族をバラバラにする人権侵害だと聞き、その当時の人々がこのことをおかしいと思っていない、または思っていたとしても声を挙げれなかった状況を考えるだけで胸が苦しくなりました。幼少期に両親の記憶がないことなど、ハンセン病患者の家族にとっても奪われたものは大きいことを実感しました。   ●家族と離れ離れになった歳が早ければ早いほど、親子関係にひどい影響を及ぼすというのが話を聞いて伝わってきました。 差別と偏見は残された家族にも禍根を残すというのが、話を聞いてよくわかりました。   ●差別は、誰も幸せにしないことを改めて認識することができました。また、差別を行った人は忘れるかもしれないが、受けた人はずっと苦しみ続けてしまうこと、差別を行うのは私たちであり、おかしいと思ったことはおかしいと声を上げる勇気を持つことが必要であるという発言が講義の中で印象的でした。   ●黄 光男さんの話を聞いて、隔離政策によって、失ったものを取り戻すことはできないという悔しい気持ちを感じました。また、家族で過ごす時間を奪われたことで、両親に甘えることもできなかったという話を聞いて、ハンセン病の隔離政策が奪ったものの大きさを感じました。当時の職員は、自分の行動が誤ったものだとは思っておらず、国のハンセン病は感染力が強いから隔離が必要であるという考えに流されていたのだとわかりました。そのように流されないように、おかしいと思ったことは、自分の気持ちを信じて声をあげる勇気をもつことが大切だと学びました。これから、医療者になる者として、おかしいと思ったことは声をあげていきたいし、正しい知識をもてるように学びを深めていきたいと思います。家族がハンセン病だと知られたくないからと遺骨を取りに行かず、今でも納骨堂には多くの遺骨があることを知り、今の私たちにできることは、現在においてもハンセン病に対して誤った考えをもっている人の考えを変えるために、ハンセン病についての正しい知識を広めることであると思いました。       この授業の締めくくりでは、学生たちが9つの班に分かれ、それぞれ真剣にディスカッションを行い、その成果を発表しました。 受講生たちの感想から読み取れるように、本科目の主たる内容である「医療問題と人権」の一端を深く学び、胸に刻むことができました。新型コロナウイルス感染症のパンデミック時においても、疾病を理由とする差別が横行していましたが、私たちはこのようにいまだ社会に残る差別の解消に向けた取り組みにかかわり、人道・人権尊重を主体とした医療従事者養成に寄与していきたいと考えております。   最後に、黄 光男さん、釜井 大資さん、田村 朋久さん、玉田 美紗さん、長島愛生園のみなさまには貴重なお時間をいただきありがとうございました。改めてお礼申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。   看護医療学科 准教授 文鐘聲   【関連記事】 ハンセン病療養所で、当事者家族の声から「医療と人権」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病当事者家族から「疾病と差別」を学ぶ~看護医療学科「健康学特論」 国立療養所長島愛生園でハンセン病回復者の現状を体感する~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病療養所長島愛生園を見学~看護医療学科

2023.11.13

「地域包括ケア実習」が新しく始まりました!~看護医療学科

地域包括ケア実習は看護医療学科の新しいカリキュラムのひとつで今年度の2回生から実施しており8月28日(月)から9月1日(金)までの期間行いました。2回生は地域包括支援センター、特別養護老人ホーム、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)などの施設にいくつかのグループに分かれて実習を受けました。実習の様子を学生の感想も含めてレポートいただきました。   地域包括ケア実習は地域で生活される高齢者の方々が、医療や介護が必要な状態になっても、医療・介護・予防・住まいなどその方の住み慣れた地域で、その方の望む、その方らしい生活を多くの専門職が関わり包括的に生活を支えていくという「地域包括ケアシステム」の実際を学ぶ実習になり、地域で高齢者を支える事業所が主な学びの場所になります。今回その代表的なものとして、地域包括支援センターについて紹介します。   地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」になります。 医療・福祉などの専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように日常生活支援などの相談に応じています。介護保険の申請窓口も担っていて、お一人おひとりの状況を判断して、ご本人や家族の考えを尊重しながら各種の介護サービス、保健福祉サービスを活用できるよう各種医療機関や事業所、地域のコミュニティなどと連携を図る拠点となり、地域包括ケアシステムを効果的に機能させる事業所になります。地域包括ケアシステムにおいては、様々な生活課題を「自助・互助・共助・公助」の連携によって解決していく取り組みが必要となります。   ▼広陵町地域包括支援センターの職員の方から講義を受けている様子   このような地域包括ケアシステムにおける高齢者支援の実際を、包括支援センターのほか、介護老人福祉施設で高齢者の方々と高齢者の特性を踏まえコミュニケーションを取らせていただき、生活の実際や思いについて情報を伺う貴重な体験をさせていただき、医療機関における看護とは異なる生活を重視した点から看護の特性や看護師の役割を学んでいきます。   実習の場所は学生の配置された地域によって異なることから、学生個々に実習で体験する内容も異なりました。学生らは初めての日は高齢者の特性を学びながらも会話に戸惑いうまくコミュニケーションが進まない沈黙の時間もありました。しかし、それもつかの間でコミュニケーションスキルを目いっぱい活用しながらコミュニケーションを進めていました。比較的自立された高齢者の方々からはお話しを伺いやすく、生き生きと会話を進める姿が見られました。そして、ともに日課のレクリエーションに参加し交流を深めました。   ▼施設でのレクリエーション風景   実習の最終日に成果発表を行いました。実習施設の特徴、学びをまとめてグループで発表を行い、他の施設で実習を行った学生らと情報や学びの共有を行いました。   ▼地域包括ケア実習発表会   実習の目標の一つに、「地域で生活する人々の生活の現状と健康課題を捉える」があります。 医療や介護・福祉の専門職が専門職の視点からその方の健康問題や生活問題を捉えていく内容と、ご本人が問題だと感じていることが異なることを学生は気づき、専門職の視点から生活支援を捉え支援を過度にしてしまうことでその方の自立を阻害してしまう場合もあるということも捉えていました。レポートには多くの学びが述べられており、特に「高齢者の望む、その人らしい」生活を多職種や地域で支援していく重要性について学びを深めていました。   今後、入院療養を行う高齢者の看護を考える上で、地域における高齢者の生活を見据えた療養支援に繋がることを期待します。 以下、実習に参加した2回生の感想を紹介いたします。 看護医療学科では、今年から地域包括ケア実習が始まりました。 実習期間は8月28日(月)から9月1(金)の1週間で、学内実習、学外実習を実施しました。 地域包括ケア実習では、いくつかのグループに分かれ、地域包括支援センター、特別養護老人ホーム、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)など、さまざまな施設で実習をさせていただきました。   私は、3日間地域包括支援センターで実習をさせていただき、さまざまな高齢者の自宅に訪問に連れて行ってもらいました。 あまり家に人を入れたくないため玄関でお話を聞かせていただいた方や、逆に家の奥に入らせてもらい食べ物まで進めてくださった方、家の中が物でいっぱいで入れないような方、本当に様々なお宅に訪問させていただきました。 また、実際に地域包括支援センターに相談に来られている方もいました。   事前学修で学んだ地域包括支援センターでは、こういう役割があるということは知っていましたが、実際にどのようなことをしている組織なのかあまりわかっていませんでした。しかし、お話を聴かせていただく中で、訪問看護師やヘルパー、医師など多職種と連携をとり、支援していることが分かりました。 また、高齢者の自立度の高いうちから、電話で連絡をとる、実際に訪問するという方法で高齢者と信頼関係を築き、最期まで住み慣れた地域で過ごせるような支援をしているということも学びました。 これから高齢者が増えていき、在宅の必要性が増すなかで、要となる地域包括支援センターの役割をたくさん勉強させていただきました。この実習で学んだことを、今後の授業や実習、そして将来看護師として働いたときにもつなげていけるように頑張っていきます。   ▼地域包括支援センター前にて指導者の方との様子   看護医療学科 2回生 平田 美翔   看護医療学科 教授 原田 俊子   関連記事 外部講師による講義「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の看護について」~看護医療学科「慢性期看護学援助論Ⅰ」 2023年度 看護医療学科卒業研究発表会を開催! 令和5年度「チーム医療ふれあい実習」実践発表会を開催!~看護医療学科 奈良県看護協会主催「訪問看護インターンシップ」参加レポート!~看護医療学科 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び②学外演習編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 JICAでの保健・医療活動の実際を通しての学び①外部講師による講義編〜看護医療学科「国際看護学Ⅱ」 「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」 手術を受けた患者をイメージした「患者モデルの作成」と術後看護演習~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」 4回生から3回生へ学びの伝達「緩和ケア病棟の実際―病院インターンシップ実習を経験した上級生とのディスカッションー」~看護医療学科「終末期ケア論」 「臨死期の看護を学ぶ」エンゼルメイクの演習を実施! ~看護医療学科「終末期ケア論」 外部講師による講義「国外における国際看護と国際看護活動に必要な能力について」~看護医療学科「国際看護学Ⅰ」 2023年度 離島・へき地医療体験実習(川上村)レポート~看護医療学科 外部講師による講義「看取りを体験した遺族に対する看護の課題」~看護医療学科「終末期ケア論」 2023年度新入生研修 学科別レポートvol.1~看護医療学科