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看護医療学科

2019.07.26

Orange Project「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」in熊本大学~看護医療学科

私たち老年看護学分野の教員1名とゼミ生6名(山崎ゼミ・上仲ゼミ)は、認知症サポーターとして、認知症に優しいまちづくりを行なっていく「Orange  Project」を畿央大学でも立ち上げるため、先行してOrange Projectの活動を行なっている熊本大学と認知症カフェ"あやの里(as a Café)"へヒアリングに行ってきました。   午前:あやの里(as a Café)でのヒアリング あやの里(as a Café)への訪問では、とてもおしゃれな空間!というのが第一印象でした。海外のデザイナーの方と協力して作り上げたというこのカフェは、とても落ち着く空間で、足を運びたい!と思えるような場所でした。   ▲あやの里(as a Café)のおしゃれな内装   ここでは熊本大学や熊本保健科学大学などの学生が主催・協力してお祭りなどのイベントを行なったり、認知症高齢者の家族が主催する家族の会などが行われたりしているそうですが、いつでも誰でも来ることができて、相談したり楽しくお話をしたりする場にもなっています。 今回あやの里(as a Café)で説明をしてくださった施設長の岡元ナオさんからは、カフェの活動内容や地域の方々に来てもらうための工夫、地域の団体との協力の必要性について教えていただきました。   ▲カフェの活動内容について説明を受けている様子   ▲あやの里(as a Café)の岡元さんとともに   午後:熊本大学でのOrange Projectヒアリング 熊本大学では、Orange Projectでの活動について、実際に所属している熊本大学の安武先生と看護学生の方2人からお話を聞くことができました。    ▲熊本大学の安武先生と看護学生2人からOrange Projectについてのお話を聞いている様子   Orange Projectとは、熊本大学や熊本保健科学大学、崇城大学の学生が主体となって行っているボランティア団体で現在120人の学生が登録しているそうです。 Orange Projectでは、あやの里(as a Café)と協力してお祭りなどのイベントを通して認知症の方と交流するだけでなく、小学生から大人まで、様々な世代を対象に認知症サポーター養成講座を行なったり、認知症徘徊模擬訓練を行なったりするなど、若い世代にも認知症を知ってもらう活動が行われていました。 Orange Projectの活動は、あやの里(as a Café)を含め、たくさんの地域団体との協力があることから、熊本県では、全域でOrange Projectの目的「認知症になっても暮らしやすい街づくり」が行われているのだと思いました。   ▲熊本大学Orange Projectの学生の方とともに   認知症をたくさんの方に知ってもらうため、また、認知症の方やその家族が暮らしやすい街をつくるために、私たちと同じ大学生が地域の方々とともに取り組んでいることを聞き、とても刺激になりました。あやの里(as a Café)と熊本大学でのヒアリングを通して、学生にもできることはたくさんあること、学生だからこそ力になれることがあることを知り、とても勉強になりました。また、医療の多職種連携だけでなく建築デザインの専門家や放送作家などの異業種との連携も事業を展開していくために、これから(Society 5.0)の時代には重要なことだと学びました。これらを卒研の文献レビューの根拠として、卒業論文を作成する際の参考にしたいと思いました。 私たちは今回熊本で学んだことを踏まえ、奈良県が認知症になっても暮らしやすいまち、認知症の方に優しいまちになるように社会に貢献していきたいです。   看護医療学科4回生 山崎ゼミ 辻林もも   ■Orange Projectの関連サイト WEBマガジン「KUMADAI NOW」「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」を目指して[Orange Project]  「百聞は一見にしかず-VRで学ぶ認知症のこと」を開催しました 熊本大学特別シンポジウム「豊かな未来を私たちの手で」を開催しました   【関連記事】 2019年度 第2回「Kio オレンヂ喫茶(カフェ)in 御所」を開催!~看護医療学科 2019年度第1回「Kio オレンヂ喫茶(カフェ)in 津越」を開催!~看護医療学科 広陵町と連携して認知症サポーター養成講座を開催!~看護医療学科「老年看護学援助論Ⅰ」

2019.07.23

ハンセン病療養所長島愛生園を見学~看護医療学科

元ハンセン病患者(現在はハンセン病回復者といいます)の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決(2019年6月28日)について、政府は7月9日、控訴を見送る方針を示しました。国の責任が明らかになり、ニュースでもハンセン病についてよく目にするようになりました。今一度、ハンセン病について、人権について正しい知識を身につける必要があると思います。   私たち看護医療学科4回生は「健康学特論」(担当者:看護医療学科 文鐘聲准教授)の授業において、ハンセン病について学びました。2019年7月17日(水)に、岡山県瀬戸内市にある国立療養所長島愛生園を実際に訪問しました。現在、長島愛生園には入所者の方がおられますが、ハンセン病は既に治癒しており、現在ハンセン病を治療されている方はいません。しかし病気が治った後にも長く続いた隔離政策と高齢化により、社会復帰ができないままの人々もおられます。   1)長島愛生園歴史館 長島愛生園歴史館は1930年の開園当初からある旧事務本館を利用したものです。ここでは職員の方から長島愛生園の歴史について説明をしていただきました。館内には、ハンセン病回復者の方が作成した当時の長島愛生園の模型や園内のみで使用できるお金、当時の写真などが展示されており、愛生園と社会での出来事を時代の流れに沿って学ぶことができました。     2)  園内見学 次に園内を歩いて見学させていただきました。収容桟橋についてお話を聞き患者用と職員用が分けられていたことを教えていただきました。次に回春寮を見学しました。そこでは身体検査や入所者は「汚いもの」として扱われており、クレゾール消毒風呂に入っていたことを知りました。     その後私たちは納骨堂で亡くなられた方に手を合わせました。療養所には本来あるべきではない納骨堂ですが、亡くなってもなおふるさとに帰ることができない(ふるさとが許してくれない)「終生絶対隔離」を意味していることを知り、ハンセン病の患者や回復者が偏見や差別を受け続けていた事実に悲しくなりました。     水子地蔵でも手を合わせました。ハンセン病療養所では子どもを作ることを禁止されていたため、生まれてくるはずだった多くの命が人工妊娠中絶により失われました(1948年から1996年までは旧優生保護法がその法的根拠となっていました)。その子どもたちを供養するために作られたと知り、私たちはこの事実を忘れてはいけないと思いました。     3)  語り部(ハンセン病回復者)のお話 次に、70年近く長島愛生園で生活されている、自治会長の中尾伸治さんにお話を聞かせて頂きました。事前にハンセン病の歴史や療養所内での生活など学習していましたが、実際に入所されている方からお話を聞くことで新たに知る内容もありました。回復者のお話の中で、「(ハンセン病患者であった)自分から見ても、結節や火傷などのある重症なハンセン病患者は怖かった。顔中包帯が巻かれていたりして。」と語られていました。当時はハンセン病にかかると顔が崩れていくというイメージが一般的に浸透していたため、自身もそのような経過をたどっていくのではないかという不安も入り混じった恐怖だったのではないかとその時感じました。また、「療養所の生活をしていると外に出たときに何を言われるか分からなくて怖い。」とも語られていました。ハンセン病の学習をしていくうちに、入所者の方は早く療養所から出たいと思われていたのだろうという固定概念が私の中で生まれてしまっていました。もちろん、療養所内での患者に対する待遇は劣悪であり、職員による人権を無視した言動がそこにはあったためそう思われていた方も中にはいたことでしょう。しかし、療養所を出ても差別はあり、むしろ外に出た方が何を言われるか分からないため外に出る方が嫌だと考える方もいたのだということを回復者の方のお話から知ることができました。劣悪な環境であった療養所ですら出たくないと思ってしまうほどの差別が当時の日本にはあったということを忘れてほしくないという思いがその回復者の方にはあり、もちろん忘れさせるべきではないと思います。今なおハンセン病に対する偏見を抱いている人がいるかもしれない。若い世代だけでなく、そういった人たちに向けてもハンセン病に関する正しい知識、歴史を伝えていかなければならないと、今回元患者の方のお話を受けて思いました。     4)  センターと病棟の見学 次にセンター内の見学をさせていただきました。センターには4つの棟があり、視力障害、独身、結婚している方がそれぞれの棟に入所され、生活支援が行われていました。センター内は、下駄箱と玄関がつながっており、自宅のような雰囲気でした。 現在療養所内の高齢化は進んでいます(入所者の平均年齢は86歳だそうです)。よって人生の最終段階にある入所者さんが“今この瞬間をどう生きたいのか”を会話の中から意識的に拾いあげ、希望をかなえられるような看護を多職種と連携しながら行っているとお話を聞かせていただきました。     病棟等の見学をさせていただきました。上の写真はセンター棟の浴室です。木でできた手すりが特徴的であり、浴槽内で身体を固定する役割があります。   病棟では、後遺症があってもナースコールが押せるように円盤のナースコールがありました。     病棟内にはやすらぎホールという葬儀場がありました。家族と絶縁した方や身寄りがない方でも葬儀ができるようにあり、ハンセン病の差別・偏見を目の当たりにしました。     5)  看護部長・師長の話 看護部長からは主に人権のお話、看護師長からはハンセン病元患者さんへのケアのお話をお聞きしました。人権とはその人らしく生きるための権利であること、差別に向き合うために当たり前のことをするなど、医療者としての大切な視点について学ぶことができました。   6)映画「あん」の感想 療養所から大学に戻ってきた後の講義では、2015年に公開された映画「あん」(主演:樹木希林さん)を鑑賞しました。ハンセン病であると知った瞬間世間がその人に冷たくなることや、ハンセン病に対して知ろうとしない無関心さ、不確定な情報に左右されている状況を見て、このような人々のマイノリティーへの見方は、昔も今も変わっていないのかもしれないと考えました。この映画から差別や偏見はいまだなお根強く残っていることを学び、私たちはそのことを理解したうえで差別・偏見に向き合っていく必要があると思いました。   7)まとめ 実際に現地に赴き、ハンセン病回復者さんの思いを聞き、影だけでなく光の部分を知り、生きた証を目の当たりにすることで、座学の授業だけでは学ぶことができなかったことをたくさん学び、人権とは何か・私たちに何ができるのか改めて考えることができました。ハンセン病を通して、人権について理解を深めることができたと思います。 今回の学習を通して、さまざまなハンセン病に関する知識を得る中で、無知・無関心であることで誤解が生じ、差別が生まれるのだと思いました。私たちはハンセン病について学習し、さまざまな思い・痛みがあったことを理解することができました。今度は私たちが伝える番です。ハンセン病についての正しい知識・差別を受けていた人がいるという事実をたくさんの人に知ってもらうことが大切であると思いました。 今後は、2回生を対象に毎年11月にこの科目が開講されるのだそうです。後輩たちもぜひ受講して大事なことを学んでもらえたらと思います。    看護医療学科4回生 文ゼミ学生一同 (足立将希、岡田彩、塩田里菜、田中晴菜、東條愛実)    【関連記事】 国立ハンセン病療養所を訪問~看護医療学科「健康学特論」 ハンセン病療養所を訪問~看護医療学科 日本における感染症対策ーハンセン病の歴史ーを学ぶ~看護医療学科 ハンセン病療養所長島愛生園を見学~看護医療学科 「ハンセン病療養所訪問学習を通しての学び」報告会を開催しました。~看護医療学科

2019.07.22

第34回奈良県母性衛生学会に参加しました。~看護医療学科4回生 鷲尾ゼミ

令和元年7月20日(土)12:45より、奈良県橿原市の奈良県医師会館で、奈良県下の医師、助産師、看護師、看護師・助産師養成所の教員及び学生が集合して、第34回奈良県母性衛生学会が開催されました。                                                                            看護医療学科鷲尾ゼミでは、ゼミ生がこの学会発表をするようになり、今年で5年目になります。鷲尾ゼミ9期生5名が卒業研究で行っている母性に関する研究をなんと5題も発表しました。 発表テーマと学生の感想は以下の通りです。   1,「胎児異常の診断を受けた母親の心理」     ー終了後の感想 「演題の2番目、鷲尾ゼミ発表として最初だったのでかなり緊張しましたが、多くの医療関係者や他大学生の中で発表する機会は中々ないため、とても良い経験になったと思います。講演会では、生命倫理について改めて考えさせられ、命のあり方や大切さを見つめ直すきっかけとなりました。」 看護医療学科4回生(9期生) 河野美佳   2,「10代の妊婦・母親の現状と課題」   ー終了後の感想 「学会での研究発表を通して、今後の課題として、思春期にあたる10代の妊婦・母親に対して看護師として具体的にどのように関わっていく必要があるか、検討していきたいと思います。また、ノンフィクション作家の河合香織先生の特別講演の「命を選ぶことの倫理 『選べなかった命‐出生前診断の誤診で生まれた子‐』を通して」を聴いて、生命の誕生について様々な考え方があることを学びました。自分とは異なる価値観を持つ人もいるということを意識して、人と関わって行きたいと感じました。」 看護医療学科4回生(9期生) 神田菜々子     3,「若年初産婦の現状と必要な看護」     ー終了後の感想  「沢山の助産師や看護師、医師がおられる学会での発表は緊張しましたが、自分の研究したことを発表するという機会はなかなか無いので良い経験になりました。看護師になっても、仕事だけでなくより深く自分で研究し、学会で発表したいなと感じました。発表だけでなく、学会が始まるまでの時間の間に他の演者の方と会話し、どのような研究をされているのかなどを通して普段は関わることのない方たちと出会う機会でもあったので、とても勉強になりました。」 看護医療学科4回生(9期生) 粉川峰香   4,「人工妊娠中絶および望まない妊娠の予防に関する文献検討」   ー終了後の感想 「実際に現場で働く助産師や看護師の前で発表するのはとても緊張しました。他の演者の発表を聞いて現代の産科の様々な問題点についても知ることができ、良い機会でした。」                     看護医療学科4回生(9期生) 西田いづみ   5,「産後うつ病の要因と予防のための効果的な介入方法」 ー終了後の感想  「学会への参加や発表に参加するのは初めてで、どのような雰囲気なのか、などイメージがつかず、緊張しました。しかし、参加者の皆さんが真剣に発表を聴いてくださり、とてもやりがいを感じました。学内での学習で、今回質問されたことを生かし、よりよい発表ができるよう頑張りたいと思います。」 看護医療学科4回生(9期生) 岩本汐加   学会の座長であった奈良県立医科大学大学院看護学研究科女性健康・助産学の五十嵐稔子教授と一緒にゼミ生全員がパチリ!五十嵐先生には学生の発表をとてもほめていただき学生たちもうれしそうでした!!!   ▲【左から3番目】五十嵐稔子教授   同じく座長の一般社団法人奈良県助産師会の宮田英子会長と助産専攻科実習でお世話になっている心友助産院の西川院長と一緒にパチリ。   ▲【前列右】宮田会長【全列中央】西川院長【前列左】鷲尾(畿央大学看護医療学科講師)   学内発表は10月ですが、先行した発表に向けてみんなよく頑張ったね。 この経験は、今後の国家試験合格に向けての頑張る力に、そして、看護師・助産師としての活躍に役立つと思います。頑張れ!   看護医療学科講師 鷲尾弘枝 【関連記事】 第57回大阪母性衛生学会学術集会 参加レポート~助産学専攻科 第33回奈良県母性衛生学会学術講演会参加レポート~看護医療学科 

2019.07.17

2019年度 第2回「Kio オレンヂ喫茶(カフェ)in 御所」を開催!~看護医療学科

畿央大学と御所市高齢者対策課地域包括支援センター、住民が共同で運営している「金曜カフェ〜つどい〜」で2019年度第2回「Kioオレンヂ喫茶(カフェ)分かち合いin御所」(認知症カフェ)が7月12日(金)に開催されました。「Kioオレンヂ喫茶(カフェ)分かち合いin御所」は、御所市認知症啓発事業として、畿央大学健康科学部看護医療学科老年看護学教員と御所市高齢者対策課地域包括支援センター、住民が共同して行っているものです。当日の様子を参加した学生と教員がレポートします。   こんにちは!今回の認知症カフェ(通称:オレンヂカフェ)には、老年看護学分野の教員2名と私たち学生8名が参加してきました!   また地域の方たちの参加は、住民の方々や、御所市の地域包括支援センターの方、地域ボランティアの方も含めて15名の参加がありました。   ▲学生ボランティア   <午前の部> ~認知症についての講話~ 午前の部は認知症サポーター養成講座として、畿央大学の島岡先生による認知症についての講話が実施されました。   ▲認知症についての講話   講話では、認知症高齢者の介護経験がある方が書かれた絵本「ばあばはだいじょうぶ」の紹介や認知症の統計、分類、症状、改善・予防・対応方法についての話が行われました。絵本では小学生の主人公の祖母が認知症になっていくことに対する戸惑いや作者の思いなどを感じとることができ、私たちも聞いていて胸が熱くなりました。また、最新の情報として、高齢者の難聴が認知症に影響を及ぼす可能性があるという話もあり、認知症への理解が深まりました。   ~学生によるアクティビティ~ 講話の後は、脳を刺激する活動として学生によるアクティビティ『後出しじゃんけん』と『もしもしかめよの手遊び』を実施しました。   『後出しじゃんけん』は、学生に勝つ、もしくは負けるように、後出しでじゃんけんをするゲームで、初めは手だけを使用していましたが、後半では足も使用し、手と足同時にじゃんけんを実施しました。皆さん、勝つ方はわりと簡単にできるようですが、自分が負けるように後出しじゃんけんをするのは難しく、苦戦されていました。後になるにつれてどんどんと難易度が上がっていき、「手は学生に勝つ、足は学生に負けるように出してください」という説明に、「えー!難しい!!」という声も上がっていましたが、笑顔で楽しみながら参加してくださいました。   ▲皆さん一緒に後出しジャンケン♪   『もしもしかめよの手遊び』は、童謡「うさぎとかめ」のリズムに合わせながら、片手をグー、もう片方の手をパーにして、グーにした方の手を隣の人のパーにした手の上に乗せ、手を一回叩くごとに交互に変えていくゲームです。はじめは隣の人と手を合わせるのをためらう様子も見られましたが、学生が間に入り一緒に行うことで、皆さんが一体化してゲームを楽しむことができました。手を一回叩くごとにパー・グーを交互に変えるのは難しそうにされていましたが、何度か実施していくうちに慣れてこられ、リズムのスピードを上げながら実施していきました。こちらも皆さん笑顔で、歌も歌いながら楽しそうに参加してくださいました。   ▲もしもしかめよの手遊び   アクティビティ後は学生も一緒にコーヒーをいただきながら、参加してくださった皆さんとお話をすることができました。「楽しかった」と言って下さる方も多く、学生自身も楽しみながらカフェに参加することができました。認知症について、基本的な知識だけでなく、認知症の方を介護している人の思いや最新の情報なども学ぶことができ、認知症について改めて考え直す良い機会になったと感じました。   ▲参加者さんとの語らい(ご本人様の許可を得て写真を掲載しております。)   看護医療学科4回生 田中香名子   <午後の部> ~認知症の人の介護について語る会~ 午後は「認知症の人の介護について語る会」として、認知症の人やその家族・介護者、介護経験者やケアマネジャー、地域包括支援センター職員、大学教員などが集い、認知症の人の介護について語り合う場を設けています。今回も11名の参加がありました。 今回は、認知症の人や介護者に対する地域の支援の在り方や、ご近所との付き合い方等について話し合いました。 認知症高齢者が一人暮らしをしていると、何かとお世話をしてくださる近隣の方がいてくださりありがたい反面、距離が近すぎて、離れて暮らす家族がプレッシャーに感じることがあるという話や、新興住宅地ではあまり近所のことを干渉しないため、何かあった時に不安と感じているという話もありました。しかし、地域によっては、住民同士の話し合いで、75歳以上の人はゴミ当番の立哨を免除しようと決めたり、自分がゴミ出しする際はついでに隣人の高齢者にも声を掛けて一緒にゴミを持っていくなどの工夫をしていらっしゃる方もおられました。また、御所市では、大型ゴミや不燃物の回収を電話で依頼すると家の前まで取りに来てくれるサービスが始まったそうです。 このように、地域の住民や行政が協力し合って認知症の方やその介護者が暮らしやすくなる地域をつくっていくことが大切だと再認識しました。   ▲認知症の人の介護について語る会   認知症の人の介護の話を他人事として捉えず、みんなで分かち合えばもっといろんな解決策が出てきて、たとえ自分が認知症になったとしても安心して過ごすことができる地域づくりにつながると考えます。認知症にご興味のある方は、ぜひ一度お越しください。   次回は10月11日(金)10時から、若年性認知症の丹野さんをゲストにお招きして行います。皆さんのご参加をお待ちしています。   看護医療学科 助手 島岡昌代   【関連記事】 ・過去の「御所コミュニティカフェの取り組み」記事を読む

2019.07.16

TASK(健康支援学生チーム)活動レポートvol.71~広陵町「いのちを守るイベント」に参加!

令和元(2019)年6月30日(日)、広陵町さわやかホールで行われた「いのちを守るイベント」にTASK※がボランティアとして参加させていたただきました! 内容は、親子体力測定です。   ※TASKはThink,Action,Support for Health by Kio Universityの略称です。学科の枠を越えて協力し合いながら、地域住民の方々や畿央生の健康支援を目的として活動しています。   測定内容は、握力、足趾握力、反復横跳び、立ち幅跳びです。   今回は対象年齢を6歳以上とし、小さなお子さんから高齢者の方々まで約300人にお越しいただきました。さまざまな年齢の方々とコミュニケーションをとることができてとても楽しかったです!(^^) 年齢に合わせた言葉遣い、目線の高さ、理解しやすい説明の仕方、対象者の表情や身体の観察などたくさんの学びがありました!   ▲握力測定の様子   私たちが「もっと、もっと!まだいけます!」と声掛けをすることで、記録が伸びる方がたくさんいました。声掛けを行ったことで「前より記録が伸びたわ。」とおっしゃってくれる方がいたので嬉しかったです。子どもたちも頑張って握力測定をしてくれていました。   ▲足趾握力測定の様子   ▲反復横跳びの様子   ▲立ち幅跳びの様子   ▲皆でTASKの“T”で記念撮影をしました♪   看護医療学科2回生 冨松里帆   ●TASK関連の情報はTASK(健康支援学生チーム)活動レポートで、詳しくご覧になれます。

2019.07.16

患者モデルを通して学ぶ手術後の看護~看護医療学科「急性期看護学援助論Ⅱ」

看護医療学科の3回生前期に開講している「急性期看護学援助論Ⅱ」では、102名の受講生を対象に、救急看護や周手術期看護の実践場面を想定した演習を取り入れた授業を行っています。 これまで、実習先の病院で受け持つ機会が多い疾患を対象に、8つの事例を用いた看護過程の展開を続けてきました。個人で患者情報を抽出し看護過程の展開を進めるだけでなく、7~8名のグループで一つの事例を掘り下げていくのがこの授業の特徴です。6月末には、それぞれの学習成果の発表会が行われ、活発な質疑応答や議論を交わしています。 今回は、自分たちが取り組んだ事例の患者を想定したモデルを作り、術後の状態を全員で共有できるように説明するという総仕上げの演習の様子をレポートします。   ▲事例の患者を想定したモデルづくりに真剣な学生   この授業の学習目標は、「術後看護の基本技術が修得できること」と「手術を受けた患者の個別性を考慮した計画立案と実施ができること」で、この日の演習では、学生が術後の患者の状態をつくり、その状態に応じた全身清拭を計画するという内容でした。   授業では、後期から始まる臨地実習を見据えて、受け持ち患者さんをイメージしたうえで、手術を受けた患者さんが順調な回復過程を辿るために必要なケアの手段を考えることをめざしています。4月からグループワークを続けてきたメンバーが力を合わせて、自分たちの患者さんについて紹介していきます。   ▲胸部の骨を外して狭心症の手術を受けた患者さんを想定したモデルについて解説する様子   学生は、患者役と看護師役を演じてシミュレーションをしますが、即席で設けた「ランウェイ」に登場しモデルのように振舞います。全身麻酔で手術を受けた直後の患者さんには、複数の血管から点滴がされ、手術部位にドレーンとよばれる「排液用の管」が挿入されています。また、膀胱内にカテーテルが留置された状態で排尿の管理がなされます。 このように、患者役の学生も実際にドレーンや点滴を入れているかのように、患者モデルをつくりあげました。   ▲人工股関節置換術後の患者に留置されているドレーンのメカニズムについて解説する   演習の中では、ドレーンから出てくる排液の色も、実際の手術後に近い色合いになっています。これは、学生がドレーン挿入部位と挿入目的を正しく理解するためにも大切ですが、実習が始まったときに、手術後の患者さんが挿入しているドレーン排液の異常を早期発見するためでもあります。写真の事例では、股関節の手術後、自分で歩けない患者さんへの看護を考えましたが、片足が使えず、普段通りの生活ができない患者さんのつらさや手術後の痛みを適切に軽減して、手術後におこる肺炎などの合併症予防における看護師の役割を学ぶことができました。   膝関節に人工関節を置換した事例では、一般にも広く知られているエコノミークラス症候群(下肢に形成された静脈血栓が肺に移動して肺梗塞を引き起こす症状)を予防する目的で、下腿に包帯を巻きます。学生は、包帯法についてすでに学んでいますが、膝に大きな手術創があり痛みを伴っている状態の患者さんへの包帯巻きは、簡単ではないようでした。   ▲人工膝関節術後には、深部静脈血栓予防のため、弾力のある包帯をしっかりと巻きます   9月になると「急性期看護学実習」が始まり、手術を受ける患者さんを実際にケアすることになります。手術を受けるということは、身体的な侵襲だけにとどまらず精神的な不安や仕事に支障をきたす、家事ができないなど社会的な問題も発生します。そのような対象を全人的に捉え少しでもお役に立てること、また、手術後の回復過程を促進するための看護について実践の場で学びを深めてくれることを教員一同願っています。     3回生の皆さん、学習の成果を実習で十分に発揮できるようにしっかり準備を整えていきましょう。    看護医療学科教員(急性期看護学) 林田麗・大友絵利香・大島恵子・菊谷美代子   【関連記事】 卒業生に学ぶ心肺蘇生法!~看護医療学科「急性期看護援助論Ⅱ」 「急性期看護学援助論Ⅱ」患者モデルを想定した援助法~看護医療学科

2019.07.05

看護医療学科 海外インターンシップ in オーストラリア 事前校内プログラムレポ―トVol.1

看護医療学科 海外インターンシップ研修 ~事前校内プログラム オーストラリアの文化・医療の発表会~   看護医療学科では海外インターンシップが、2019年8月24日(土)から8月31日(土)、オーストラリアで行われます。海外インターンシップの目的はオーストラリアの文化・風習に触れ、その中で築かれた保健・医療・福祉制度に関する事情や課題を知ることで日本の制度や保障との比較をすることです。また、グローバル化に対応できる看護職者として、世界共通語である英語力の向上やコミュニケーションスキルを身に付けることも目的の一つです。 研修訪問先は、オーストラリア ヴィクトリア州 メルボルンで、今年は2回生8名がこの研修に参加します。   事前校内プログラムとして、参加する学生が研修先の「歴史や文化・風習」・「保健・医療福祉制度」・「高齢者や家族支援」・「幼少期からの世代間交流」「日本の医療制度・保障の比較」についてそれぞれ調べ、語学力UPの為、英語でプレゼンに挑戦しました。   ▼英語でプレゼンに挑戦!   ▼遅い時間の授業ですが、みんな頑張っています。   ▼いくつかの小グループに分かれてプレゼンしました。   たくさんの質問が出たので、次回の事前プログラムまでにはブラッシュアップし、再度プレゼンテーションを行います。次回はもっと上手に英語で話せる学生が増えるはずです。頑張りましょう! 最後に、この研修に参加している学生の意気込みを以下に紹介します。   「私たち2回生8人は、本日3週間ぶりに海外インターンシップ研修で集まりました。各々でオーストラリアの医療や歴史についてのパワーポイントを制作し、発表を行いました。初めての発表でとても緊張しましたが、アットホームな雰囲気でみんな質問や、意見が出ていました!実際にオーストラリアに行くまで、あと2ヶ月を切りました。テストや課題など大変な中、忙しくて実感があまりありませんが、みんなで楽しく準備をしています!」                    看護医療学科2回生 中田萌・森屋奈菜実                        看護医療学科講師 對中百合   ●過去の看護医療学科の海外インターンシップの記事はコチラから

2019.07.02

「病院インターンシップ実習発表会」学生レポート!~看護医療学科

こんにちは!2019年6月28日(金)に病院インターンシップ実習発表会があり、これですべての実習が終わりました~!みんなお疲れさま!!   1回生夏の「チーム医療ふれあい実習」から始まり、1回生後期の「基礎看護学実習」、3回生後期に半年にわたる各領域実習、そして4回生になって「離島・へき地医療体験実習」と「病院インターンシップ」…やっとここまでたどり着くことができました。実習中はしんどいこと、つらいこともあったり朝起きる時間がものすごく早いなど大変でしたが、実習メンバーや仲のいい友達、実習担当の先生、家族などたくさんの人に支えていただきながら、乗り越えることができたと思います。長かった実習が、今思い返せばいい思い出もあり、あっという間だったと思います。   さて、今回の病院インターンシップでは、統合分野ということもあり、   実際の現場で看護師はどのように優先順位を決め、時間管理を行っているのだろう? 病棟内での連携はどのように取っているのだろう? チーム医療での看護師の役割は?   というような目標を個々やメンバー間で決めて実習に臨んできました。2週間の実習が終わり、それぞれの病院での学びを共有するために、発表会が開かれました。発表会にはお忙しいところ、多くの先生方が授業の合間を縫って来てくださいました。ありがとうございました!     発表したいことが多く、限られた時間の中で、各病院で学んだことをすべて伝えることは難しいと思うほど、多くのことを学ぶことができた実習でした。   今までの実習では考える機会の少なかった「複数の患者さんを受け持った際の看護師がどのように優先順位を立て、時間管理をおこなっているのか」について、実際のメンバー看護師のシャドーイングや実際に2人や3人の患者を受け持たせていただくことで、考え学ぶことができました。 また、チームで働く看護師のシャドーイングを通して、チームにおける看護師の立場や役割について学ぶことができたと思います。     学びもたくさんありましたが、課題を見出すことができた実習でもありました。 次に白衣を着るのは、それぞれが看護師として就職する病院の白衣。正直、まだそんな実感もありません…(笑)     実習を受けてくださった病院、指導してくださった先生方、支えてくれた家族や友人に感謝の気持ちを忘れず、今までの実習での学びを大切にして、期待に応えられるように頑張りましょう!     国家試験の全員合格をめざして、頑張っていきます! みなさん、本当にお疲れさまでした!!   看護医療学科4回生 湊本みのり   【関連記事】 市立東大阪医療センターの合同災害訓練に、学生が患者役として参加!~看護医療学科 ホスピス見学実習での学びを共有!~看護医療学科「終末期ケア論」

2019.06.27

日本老年看護学会第24回学術集会で教員が研究成果を発表!~看護医療学科

2019年6月6日(木)~8日(土)まで日本老年看護学会第24回学術集会(開催:仙台国際センター)に参加しました。 今年度は、日本老年医学会や日本ケアマネジメント学会、日本歯科学会などとの同時開催であり、相互乗り入れ可能で視野を広げた討論ができるように企画運営されていました。日本老年看護学会への参加は1,964名、合同開催された8学会の中で最も多い参加者となり、高齢社会の進行とともに看護の役割への関心が益々高まっていることがうかがえました。会場は仙台国際センターをメインに、市内5か所にわかれ、多くの講演やシンポジウムが、繰り広げられました。看護以外の学会に参加する機会があり、たいへん有意義な時間になりました。その一部をご紹介いたします。     会長講演では「対話・協働・調和の視点で考える老年看護学の未来」日本老年看護学会の大塚眞理子理事長が講演されました。大塚先生は以前に、老々介護のご夫妻への訪問看護に行き詰まり、悩んだ際に「聞く」「聴く」「訊く」ことによってご夫婦への理解が深まり、看護の方向性が見えてきたというご経験があって、いかに「対話」が大切であるかということを実感されたそうです。そして、「対話」によって老年者と応答し、目標を共有して一緒に行う「協働」と、多様な状況のバランスをとりながらチャレンジし、振り返り、またチャレンジして不確かなことを確実にしていくという「調和」を大切にされてきたとのことでした。 老年者・家族と看護者との対話・協働、また、他の専門職や多職種、地域の人々と看護者の対話・協働からそれぞれに調和がうまれること、老年看護の目標である「老年者の豊かな生の創出」のためには「支えあいのある調和的な環境づくり」が必要であるということを再認識しました。   6月7日(金) には老年精神医学会、 “希望と尊厳をもって生きる”のシンポジウムに参加しました。このシンポジウムでは、認知症の当事者の方々がシンポジストとして、自身の体験を含めて援助と被援助の枠組みをこえて、新しい関係性を発信する企画となっていました。とりわけ、認知症の当事者による“ぴあサポート”、つまり同じ経験を持つ仲間同士のサポートの報告が印象的でした。認知症と診断され落ち込んでいる方を勇気づけることは、思いのほか簡単なものではありません。自身の体験をもとに共感的に関われる当事者の強みを生かしての先進的な取り組みが紹介されました。進行を務められた丹野智文さんは、38歳で若年性認知症と診断されましたが、現在はネッツトヨタの広報部として全国各地から海外においても認知症の啓発活動に携わっています。丹野さんは当事者の気持ちを置き去りにして物事を決めないでほしいことやできることまで奪わないでほしいことを強調されていて、自分たちのケアのあり方を振り返る機会になりました。 丹野さんには、今年度10月に畿央大学においてもご講演いただく予定です。     6月7日(金)、本学看護医療学科の山崎教授は、教育講演で座長を務めました。2011年3月11日に発生した東日本大震災における、宮城大学老年看護学領域の「仮設住宅で暮らす高齢者の健康と生活を支えてきた地域支援の取り組み」について、新潟県立看護大学の小野幸子教授から学生とともに復興支援に取り組んだ具体的で示唆に富んだご講演を聴くことができました。自らも被災しながら支援されていた皆々様のご努力に心を打たれました。また、小野先生らとともに当時、宮城県女川仮設住宅や仮設グループホームでの復興支援に携わってこられた山崎教授は、復興は物理的な問題ではなく、被災者の心には今もまだ孤独や寂しさとの葛藤のなかで生活していることを忘れてはならないと講演をまとめられていました。この学術集会の大会長である大塚眞理子先生が、ご挨拶でようやく学会を担当できるようになったとおっしゃった深い意味を改めて実感しました。   また、島岡助手も、これまで継続して取り組んできた“へき地での認知症カフェ”の実践について示説発表をしました。認知症カフェの参加者が認知症を受け止め前向きな言動や日常生活の中に行動を取り入れるなど、変容が見られている事、またへき地での活動を継続することが今後の課題であるなどの発表をされていました。会場からは、認知症カフェの広報活動についてどのように行ったのかの質問があり、地域特有のご近所付き合いによる誘い合わせや回覧板などが有効だったとの話をし、座長からは、地域を活性化させる貴重な実践だとのコメントがありました。     6月8日(土)、山崎教授が「グループホームの終末期ケアにおける看護職のための教育内容の検討」について成果報告を致しました。この研究は、約12年において取り組んできた認知症高齢者グループホームの終末期ケアにおける教育介入の内容を検討することを目的とした研究です。介護職と看護職の連携促進のための①教育プログラムおよび②教育効果の測定するために終末期ケアの質指標を作成し、Action Researchとして介入した実践研究の報告でした。研修プログラムの内容や介入方法についての質疑応答がありました。                          看護医療学科助手 杉本多加子   【関連記事】 第1回国際交流企画 韓国・大邱市からの訪問団を迎えました~看護実践研究センター 2019年度 奈良県認知症ケア専門士会総会&第13回研修会を開催しました!~看護医療学科 2019年度第1回「Kio オレンヂ喫茶(カフェ)in 津越」を開催!~看護医療学科 2019年度第1回「Kio オレンヂ喫茶(カフェ)in 御所」を開催!~看護医療学科

2019.06.05

国保中央病院「緩和ケアホーム飛鳥」での見学実習!~看護医療学科「終末期ケア論」

看護医療学科3回生の履修科目である「終末期ケア論」では、毎年磯城郡田原本町宮古にある国保中央病院に併設される「緩和ケアホーム飛鳥」をたずねて見学実習を行っています。国保中央病院緩和ケアホーム飛鳥は平成17年5月に奈良県で初めての緩和ケア病棟として開設されました。田園風景に囲まれ、豊かな自然と澄んだ空気が心地よいこの施設は、昨年公開された映画「かぞくわり」のロケ地にもなった場所です。 今年は見学希望者7名と担当教員が飛鳥をたずねて施設内の見学や、看護師長からホスピスケアの実際についてお話をうかがいました。今回は多くの学びがあった見学実習の様子をレポートします。   ▲見学に参加した7名の学生はホスピスケアに強い関心を持っています   緩和ケアホーム飛鳥を訪れた2019年6月1日(土)は真夏を思わせるような気候でしたが、飛鳥の庭には、目にもまぶしい緑の木々がそよ風に揺られる景色がひろがり爽やかさを感じました。この庭園の木や花はボランティアさんが、心を込めて手入れをされています。   ▲バリアフリーでベッドや車いすでも出入りができるガーデン   この日は、4月から緩和ケアホーム飛鳥の病棟師長に着任された牧野真弓師長が、ホスピスでのケアについて事例を用いて詳しく講義してくださいました。牧野師長は、緩和ケア認定看護師として多くの患者さんや家族そして遺族ケアに携わって来られています。   ▲牧野師長より講義をいただく様子   緩和ケアホーム飛鳥は、医師や看護師を中心としたチーム医療のもと、積極的な治療に対して反応しなくなった末期がんの患者さんへの身体的・精神的ケアや家族も含めたQOL向上を目指した全人的ケアを展開されています。それらは、次のような基本理念に基づいて実践されています。   ・あなたの人格のすべてを受け入れます ・あなたの思いや考えを大切にします ・あなたの生活を尊重します ・あなたの苦痛、その他の不快な症状を緩和します ・ご家族に対して心の安らぎが得られるよう支援いたします   学生は、基本理念を頭にいれて、牧野師長が紹介してくれた事例に聞き入っていました。   事例の中では、昭和20年8月6日に広島での被爆経験をもつ患者さんが、歩くことができなくなり徐々に弱っていく中で、「もう一度広島に行きたい」と言う希望をかなえられた経過が紹介されました。その希望を聞いたとき、飛鳥の医師や看護師はまず「家族の協力を得て広島に行くことが可能かどうか」について慎重に話し合ったそうです。ご家族の賛同が得られて、いよいよ出発というときに備えて、疼痛や呼吸困難などの終末期に出現する身体症状をコントロールするための方法を考え、万が一訪問中に体調不良になった場合に、訪問先で診療や入院ができるような態勢を整えられたそうです。移動に欠かせない車いすも院内から貸し出しができるように手配して、患者さんは無事に広島を訪問されたそうです。満足そうな笑顔で戻ってこられた患者さんは、「被爆者は亡くなったら、ネームプレートが慰霊碑に刻まれることになっている。自分の名がどこに刻まれるのかを見ておきたかった」と訪問の目的を語られたそうです。それからほどなく患者さんは逝去されましたが、遺族から、慰霊碑に刻まれたネームプレートの写真を見せてもらったときに、医師や看護師は、この訪問が患者さんや家族のQOL向上につながったことを感じられたそうです。   このほかにも多くの、末期がん患者さんと家族が繰り広げた物語を聞かせていただき、学生は大きく心を動かされたようです。   しかし、緩和ケア病棟に入院したからといって、事例の患者さんのように自分が希望したことができるわけではないのが現状です。それについて牧野師長よりテレビドラマで放映された一つの場面を用いて説明がありました。   ▲講義では、テレビドラマでの場面から考える機会も!   緩和ケア病棟に入院したからと言って、必ずしも何かしたいことを見つけて実現するのがすべてではなく、患者さんが「今を生きる」その時間が苦痛から解放されて、日常生活に必要な援助が過不足なく提供されることが大切なことです。そのために、緩和ケアホーム飛鳥では「残り少ない時間を大切に過ごされている皆さんが、よく生きることにできる限りの援助をしています」とむすばれました。   また、講義の最後には牧野師長が大好きな言葉「医師が治せる患者は少ない。しかし、看護できない患者はいない。息を引き取るまで、看護だけはできるのだ」という引用文を紹介していただきました。 この言葉を聞いた学生たちはあらためて、看護の奥深さを感じたようです。     講義のあとは、施設内を見学しました。 一般病棟では、見慣れないファミリーキッチンや瞑想室などホスピスに特徴的な空間を見せていただきました。瞑想室は、患者さんの傍にずっといることで気持ちに閉塞感を感じたり、多くの課題や考えが頭をもたげてストレスフルな状況にある家族が、ひと時何もない空間で緊張を解くための空間です。学生も瞑想室に体験入室させていただきました。   ▲瞑想室に体験入室し「無になれました」と話す学生   ▲ファミリーキッチンで、自分で作った小豆を家族に調理してもらっていた患者さんのエピソードを聞く   施設内を見学した後は、年に一度開催されている遺族会で上映される映像を見せていただきました。ホスピス・緩和ケアにおいて「遺族ケア」は大切なプログラムであり、患者さんが旅立たれたあとの喪失感や悲しみを理解し、家族がまた自分の新しい生活にむけて進んでいくことを支援するための取り組みとなっています。見学実習を終えた学生は終末期にある対象や家族と自身の向き合い方について新たな学びを得たようでした。   ▲遺族会の映像を見て、遺族から故人にあてたメッセージを見せていただく   ▲牧野師長さんと記念撮影「ありがとうございました」   わが国の、緩和ケア病棟入院料届け出受理施設(認可されたホスピス・緩和ケア病棟)数は415施設、病床数は8423床となっています(2018年)。一方がんで死亡する人の総数は年間370,000人を超えていることから、私たち看護師は、一般病床や在宅でも終末期がん患者のケアを担っていかなければなりません。学生のみなさんが社会に出たとき、今回の見学実習での学びや自身の心に響いたことを忘れずに対象と向き合ってくれることを願っています。   最後になりましたが、お忙しい中、貴重な学びの機会を下さった牧野看護師長様はじめ国保中央病院皆様に感謝いたします。   看護医療学科 終末期ケア論担当 對中百合・大友絵利香   【関連記事】 「エンゼルメイク」を学ぶ!~看護医療学科「終末期ケア論」 「グループホームの看護職のための終末期ケア研修会」を開催!~看護医療学科 ホスピス見学実習での学びを共有!~看護医療学科「終末期ケア論」