畿央大学の教育・研究・キャンパスライフをリアルタイム配信!

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人間環境デザイン学科

第5回国際記憶会議に参加と発表をしてきました!

2011年9月2日(金)

2011(H23)年7月31日から8月5日まで,イギリスのヨーク大学で開催された,第5回国際記憶会議(5th International Conference On Memory)に参加と発表をしてきました。5年に1度開催される,心理学における記憶の研究者が集う会です。イギリスの研究者が中心となって運営をしています。今回は5回目ということで,世界中から研究者が集まり,1000件近くの発表があり盛大な大会でした。
なお,今回の会議への参加は,本学の海外研究旅費の助成を受けて行きました。貴重な経験をさせていただいたことをここに感謝します。

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発表の写真です。わたくしは英語を流暢に話せませんが,筆談なども交えて,なんとか意思疎通をこなしてきました。現在はグローバル化の影響で,世界各国で人材交流が盛んです。そのため,わたくしを含めて,英語のネイティブ・スピーカーでない研究者が大部分です。言葉がスムーズに出てこなくても,お互いに興味があるテーマどうしの話ですから,話を聞く態度ができているので,お互い補いあいながら話したりできました。(情報通信が発達した現在では,込み入った話になったら“ここでは上手く言えないから,メールするわ!(してくれ!)”というやり方もできます……!)
こういう会は研究成果を競うという目的よりは,実際に身体が集まって顔を向けあうことで人どうしのつながりを作る目的が重要だったりします。わたくしもこの研究発表がもとで,ドイツの研究者とメールのやりとりをするようになりました。“どうせネイティブ・スピーカーにはなれないんだから,気楽にいこう”です。チャンスがあるならば,気軽に行くことをおすすめしますよ。

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ヨーク大学はヨーク市の郊外にあり,ごらんのようにキャンパス内に池をたたえる広大な敷地でありました。雰囲気的には,日本の郊外型の総合大学のキャンパスに似ています。大学生も……夏休みだったので人は少なかったですが,たいして日本と変わりない感じがしました。

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学内には鳥がたくさんいます。(そして日本と同じように,“エサをやるな!”と警告が出ていました。)

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日本と同じようなゲリラ豪雨が何度か降りました。雨上がりに虹を目撃。気候は,日本の5月ぐらいです。昼間は多少汗ばむほどなのですが,朝晩が冷えます。高緯度の夏のため,昼間が長いです(虹の写真は19:30ごろです!)

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わたくしはデザイン学科の所属ですので,それにかこつけて市街地を散策してみました。ヨーク市の町並みです。ヨークはイングランドの北部にある市で,人口は20万弱。歴史が非常に古く,奈良市に相当する古都といえます。

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町並みに統一感があって,景観に配慮している感じがしますね。建物の外観がくすんだ色彩だと,見た目は地味なんですが,でも,その中を歩いている人や人の表情が目立ちます。(これは日本の伝統的な町並みの黒塀なんかでも同じです。)……でも,わたくしは観光客で行っているので新鮮な感じがしていただけかもしれません。何年か住んだらきっと何とも思わなくなるのでしょう。景観はさておき,日本といちばん違うのは,建物間のすきまがないか,非常に狭いことです。

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奈良市に相当すると書いたので,ヨークの大聖堂の写真も載せておきます。(うまく写せませんでした!)

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有名な喫茶店なんだそうです。とてもステレオタイプですが,イギリスらしく,午後の紅茶にも行ってみました。渋みが出ないおいしいお茶でございました。紅茶の入れ方うんぬんではなくて,そもそも水が日本と違うので味が違うようです。

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観光中に不思議な橋に出会いました。ごらんのようにアーチがかかっていて,橋を吊っているのですが,写真で見る限り,ワイヤーの吊り方が均等じゃないので,どういう風に荷重がかかっているのか,これでよく支えられているなぁと思えます。

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近くまできて構造がわかりました。なんと,アーチ自体が傾いていて,斜めにかかっているんですね。この橋は,川下りの観光船に乗って発見しました。ヨーク市は内陸部にありますが,川があるので水運も盛んのようで,古くはヴァイキングたちの上陸の地であったということです。

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イギリスは鉄道発祥の国。そしてヨークは鉄道発祥の街なんだそうです。街中には大きな鉄道博物館があり,列車の現物が大量に置いてあります。写真は実際に乗れるロケット号です。スチーブンスンが開発した世界初の旅客用の蒸気機関車ですね。子どもの頃図鑑で見てわくわくした現物が目の前にあり,動いています。写真には写っていませんが,蒸気機関から両輪を駆動させるための力を伝える部品がむき出しになっていて,デザインのシャープさを感じさせます。

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写真を撮るのが下手なので,撮るのを失敗してしまったのですが,日本の東海道新幹線の0系もありました。こんな異国の地の鉄道博物館で,あのダンゴ鼻の新幹線の現物が飾ってあって,しかも他の国の人々が“おお!”と感嘆の声をあげているのを見て,日本人としてこれほど誇らしく思ったことはないです。なにしろ,“鉄道の歴史に刻まれる名機”とか書かれているんですから!
異文化交流はえてしてそういうものですが,本国人にとってはきわめて日常的すぎて何とも思わないことが,外国人にとっては驚きの対象になります。わたしたちにとって普通の新幹線が,イギリスにおいては驚きなわけです。

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鉄道博物館の中に,旧駅舎(?)を改装したプラットフォームがあり,その中で記憶会議のディナーパーティがありました。偶然ながら,同じテーブルに,わたくしの研究でよく引用した有名な研究者が座っており,会話して知り合いになれたという幸運にも恵まれました。

昼が長くて,会議の日程が終わった後でも十分に明るいので(9時ごろまで明るいです!),観光できたというわけです。もちろん,6日間,みっちり勉強してきましたよ。

脳の研究(ニューロサイエンス)は現在非常に盛んであります。今回の会議においても,日程のすべてにわたってセッションが設けられるほどの盛況でありました。10年前の大学院生のときにこの会議に参加したときにはそれほどでもありませんでしたから,時代の流れを感じさせます。
でも,心理学ですからニューロサイエンスだけでは済みません。わたくしの印象として,盛んに議論されていたのは以下の5つでした。

(1) 作動記憶(ワーキングメモリー)の実行制御機能について:……いくら脳が心理的なメカニズムの中心であるといっても,制御(コントロール)のありかを人(心)に置く必要が社会的にはあるわけです。制御のありかが人(心)にないということならば,個々人に社会的な責任を問うことができなくなってしまいます。この点で,人(心)がどの側面で,いかにして情報を制御しているかということが議論になっていました。

(2) 自伝的記憶について:個々人の思い出に関わる記憶を特に自伝的記憶と呼びますが,そのような自伝的記憶には社会や文化ごとにある種のシナリオが共有されているのではないかという点が議論されていました。

(3) 展望的記憶について:買い物をするなど,これからしなければならない未来の予定を覚えておく機能が記憶にはあり,これを展望的記憶といいます。高齢化社会の進展に伴って,いかにしてし忘れを防ぐかという点が記憶メカニズムだけでなく,社会的・物理的なデザインとの関係からも議論されていました。現在では,携帯電話などの電子機器が記憶を肩代わりしている面があり,この点で予定をし忘れないよう連絡してもらえるようなネットワーク・サービス(ビジネス)も展開されているようです。

(4) 記憶と感情,特に抑うつとの関係:日本だけでなく,うつ状態の発症は先進国共通の悩みのようです。特に青年期においてはうつ状態の発症のリスクが,人口比でいうと20%近くあるとのことです。5人に1人がうつ状態であるというのは高い確率ですね。うつ状態に陥ると,ある特定の情報(たいていは過去のいやな思い出や後悔)が繰り返し思い出されてきてしまい,それ以外の記憶活動が困難になる点が問題視されています。繰り返し思い出されてきてしまう記憶のメカニズムや,思い出したくない記憶を思い出さないようにするテクニックなどが議論されていました。

(5) 高齢者の記憶:長寿による高齢化社会も先進国共通の問題としてあります。高齢者においては,若年者と比べて記憶成績が下がるだけでなく,みずからの記憶能力に関する自己認識も不正確になりがちです。極端にみずからを過大評価しているか,あるいは違和感や不全感を持ち続けるかのいずれかになりがちなようです。(対照的に,記憶能力について,同居する家族や介護者は極端に低い評価を下す傾向があるようです。)しかしながら,医療やリハビリにおいては,たとえ不正確といえども,高齢者自身の自己認識に基づいて診断をしていく必要があるわけです。もの忘れがあるからといって,当人に自覚症状がない場合には,医療やリハビリを受けに通院する可能性が減りますし,さらにそもそも自覚症状がない場合には,医療やリハビリの介入を心理的に受け入れられないわけです。認知症の早期発見,早期介入にもつながるために,会議では,高齢者の自己認識(主観)をどう扱っていくかという点で活発な議論が行われていました。

以上のように,勉強も観光も含めて,非常に充実した経験をしてきました。

人間環境デザイン学科 金敷 大之

【所属カテゴリ】人間環境デザイン学科

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