2024.02.06 

JST CREST「マルチセンシング」領域2023年度 領域会議が京都・知恩院で開催されました~ニューロリハビリテーション研究センター

1月17日から19日にかけて、JST CREST「マルチセンシング」領域2023年度 領域会議京都・知恩院で開催されました。

 

 

本年度からすべてのグループが一同にかえし、それぞれの研究の進捗状況や成果が報告され、学際的な議論がされました。今回、本学関係としては、私、信迫悟志 准教授大住倫弘 准教授林田一輝 客員研究員(宝塚医療大学・助教)が参加しました。私たちは、Narrative embodiment: neurocognitive mechanisms and its application to VR intervention techniques (ナラティブ・エンボディメントの機序解明とVR介入技術への応用)のチームの一員として議論に加わりました。

 

終日、研究内容に関する議論が続く中、今回は本プログラム総括である入來篤史先生(理化学研究所 未来戦略室・上級研究員)の配慮により、私たちは御影堂阿弥陀堂集会堂を訪れる機会を得ました。そこで、私たちは自らの体を使ってセンシングを行い、念仏を唱え、約100名の研究者がシンクロさせつつ、木魚を叩くなどの行為を通じて、意識経験を直接体感しました。加えて、加藤執事の説教を聞きながら、木魚の構造、南無阿弥陀仏の意味、さらには知恩院と徳川家康や於大の方との関係について、いま現在の自己の体験とこれまでの自伝的自己に基づく知識を統合して学ぶことができました。

 

 

今回の経験を通じて、入來先生が常に強調される「本物に触れる」ことの重要性を改めて実感できたようにも思えます。私にとっての「本物」とは、患者さんの身体とその物語でしょう。私たちは、それらの現象の中に生きており、単に死んだデータだけから議論をすることで満足するならば、その研究の価値は半減してしまうと考えています。今回の私たちの研究テーマはまさにナラティブエンボディメントであり、患者さんの自己の意識経験を記述しながら、新しい科学の概念を形成していこうと考えています。はしごを登る研究も大事ですが、はしごをかける研究を目的に、本テーマの解明のため5年間遂行していきます。

 

私自身、週末は日本全国の病院で臨床を経験させていただいていますが、同年代あるいはそれより年下の脳卒中患者と接する機会が増えてきました。彼らのナラティブが私の意識に深く影響を与え、まるで自分のことのように感じることがあります。脳損傷は個人のアイデンティティの喪失をもたらすことは明白です。そのため、旧来の理学療法モデルでもある関節運動だけで問題を解決することはできません。一般化された情報だけを語るのではなく、より不安定な要素を受け入れて、それを含めた人間の理解をこのCREST研究を通じて深めたいと思います。成果を焦らず、新しい概念の形成に向けて。

 

▲プロジェクトを進めるメンバーと

左・嶋田総太郎 氏(明治大学教授・認知科学)、中・田中彰吾 氏(東海大学教授・現象学)

 

 

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター

センター長・教授 森岡 周

 

【関連サイト】

森岡周教授らの共同研究が2023年度 CRESTに採択されました。

2023年度 戦略的創造研究推進事業(CREST)新規採択課題・総括総評
国立研究開発法人学術技術振興機構(JST)
戦略的創造研究推進事業(CREST)

畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 

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