2025.02.28
第3回「認知症の人と家族の思いに耳を傾ける」 松本一生先生講演会「認知症の人と家族とともに」を開催しました。 ~ 畿央大学看護実践研究センター認知症ケア部門
当日は、大変冷たい朝で雪の心配もありましたが、幸い日中は晴れ間がのぞき、お出かけには大きな支障がなく、総勢172名(一般市民約48%、大学生約25%、関係機関専門職等約23%、その他約3.6%)が参加し大盛況でした。
今回参加された方(畿央大学学生を除く)の事後アンケートから把握した参加動機は、『家族が認知症や物忘れがある、家族のために(23%)、講師やテーマに関心(23%)、職場での対応、仕事に役立てたい(21.5%)、認知症に関心がある、知りたい(17.5%)、自分のために(9.5%)、その他(5.5%)』でした。
同じく年代は、『20代(6.8%)、30代(2.7%)、40代(16.2%)、50代(25.7%)、60代(32.4%)、70代(10.8%)、80代(5.4%)』でした。
講師の松本先生は、認知症という病気や本人の症状、薬の使い方、家族の健康の概要、社会的孤立予防について、ご自身の診療で把握された9,000名を超す患者様のデータ分析から根拠あるお話しを展開してくださいました。ご自身も、義母や妻を10数年介護した経験があり、時折例示された仕事と介護の両立の大変さや介護家族が抱える様々な苦悩のお話しには説得力があり、同じ立場の方々への共感とユーモアを交えながら、独特の優しい語り口調で参加者へエールをお届けくださいました。
シンポジウムでは、奈良県若年性認知症サポートセンターでピアサポート活動をされている当事者の平井さん、同相談員の菅さんにご登壇頂きました。
平井さんは認知症の診断を受け約7年、自ら56才で退職したものの、「何か自分にできることはないか」、と奈良県若年性認知症サポートセンター(きずなや)に自ら赴き、活動を始められ、現在は奈良県内をはじめ、全国的な支援活動・啓発活動に参加されています。自分なりの生活スタイルを大切に、運動や社会参加を心がけ、色々な人と出会い、人の話を聞く大切さを語られました。会場参加者から「家族(男性)が認知症で外出しない」という相談があり、平井さんから「特に、男性は目的のない、自分が納得しない外出や交流は苦手だから、何か役割があること、本人が行きたいと思うタイミングを大切に」という助言がありました。また、「認知症と言っても、人それぞれ、症状の進行も人それぞれ、その人に合わせて、タイミングをみながら、色々な状況から類推することが大切」というお話しがありました。
菅さんは、奈良県若年性認知症サポートセンターと支援コーディネーターの役割を説明されました。65才未満の発症の認知症もあり、高齢者とは異なる本人の受け止め、就労や社会参加、経済的な課題、家族の様々な課題にワンストップで対応されているとのことでした。多様で困難な課題に、菅さん自身が人として向き合い、制度に当てはめる支援ではなく、本人に向き合い、自身が出来ることを心を込めて支援されているお話しがとても印象的でした。
この度の企画は、松本先生、平井さん、菅さんのおかげで大変意義深い講演会・シンポジウムとなりました。参加者の皆さまからも、多くのご質問やご意見をいただき、皆さまと考える時間をもつことができて充実した時間となりました。認知症があってもなくても、本人の尊厳を保持し、誰もが同じように望む生活を地域の中で過ごすことができたら、そのような共生社会をみんなで構築することができたらと心から願っています。当日は多くの学生にも参加して頂き、学生ボランティアの姿にもエールを頂けました。若い世代とともにこれからも1人1人が出来ることに取り組み、より良い社会となるよう頑張って行きたい、頑張れる、そのように感じることができました。
ご参加頂きました皆さま、ご協力頂きました皆様には心から感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。
参加者のアンケートより感想の一部を紹介
【講演会について】
- 精神科の先生が実体験されての話を笑いも交えて講演いただき、疾患に対しての特徴なども質疑応答時に話されとても勉強になりました(50代 ケアマネジャー)
- 体験談、話し方、穏やかで心癒やされる思い、心に届くものがおおかった。認知症の予防として、人との関わりを大切に日常生活を過ごしていきたい(60代 市民)
- とてもわかりやすい話で帰宅して家族にも聞かせたい(80代 家族に認知症)
- これから起こることに予想を持ち、その対応について慌てないよう参考にしたい。数年で変化が起こる症状の起き方など参考になった。粗食、運動、地域の活動に参加するなど、自分の支援になりました(70代 介護職)
【シンポジウムについて】
- 認知症と診断されても、こんなにしっかりされていることを知ってびっくりしました(20代 大学生)
- 当事者の人やサポートセンターの方の話や会場の話も力強かったです(60代 認知症サポーター)
- 型にはめず、その人に合わせる、待つ姿勢も大事。なるほど納得です。きっと私たちが、焦ってなんとかしなきゃいけないと思い込んでしまっていたのかな。登壇された皆さんの笑顔が素敵でした(40代 医療職)
- 本人のことばと支援者の苦悩が伝わりました。支援者が人として関わりたいの気持ちよくわかります。支援者も自分らしく関わりたいです(60代 役所職員)
【その他】
- また、このような機会をお願いします。参加者同士ももっと話せる機会があれば良いのかも知れないです。学生さんの考えも聞きたいです(50代 介護関係)
- 認知症のテーマはみんな知りたいと思います。運営の先生が笑顔で気配りされ、学生さんに優しく話していて素敵な大学に思いました。ありがとうございます(60代 市民)
- アットホームな雰囲気でとても良かったです(40代 大学職員)
- 学生による創意工夫、スケジューリングが大変よく、飽きることなく聴講できました(40代 地域包括支援センター)
看護実践研究センター認知症ケア部門
看護医療学科 准教授 室谷 牧子
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