2024.12.06 

看護実践研究センターシンポジウム 行政・関係機関・大学連携による中小企業の健康づくり推進―広陵町における中小企業健康経営推進の取り組み―開催報告

看護実践研究センター地域包括ケア部門では、乳幼児から高齢者までの保健医療福祉分野における連携および他職種との連携と協働に関する活動を行っています。

 

今年度は、2023年7月に広陵町と広陵町商工会・町内中小企業の保険者である全国健康保険協会奈良支部(以下協会けんぽ奈良支部)の3者において、健康づくりの推進に関する包括連携協定が締結されたことを期に実施した健康経営推進実態調査(インタビュー調査含む)の結果報告と、インタビュー調査にご協力いただいた3事業場をシンポジストに迎え、働く世代の健康づくりについて、行政・職域・関係機関が連携することでの可能性を考えることを目的としたシンポジウムを企画実施しました。

 

 

第一部の調査報告では、研究代表者である松本から、コロナ禍を経た事業場の状況や健康経営に関する知識や意識・健康経営優良法人認定に匹敵する項目の実施状況の質問紙調査結果とインタビュー調査結果について、報告しました。

 

 

この調査で明らかになった産業医の選任義務がない50人未満の小規模事業場の課題として、事業場の支援機関である地域産業保健センター(地域窓口)の存在や活動が知られていないこと・高齢労働者やがん等の慢性疾患を保有する労働者の就労継続(エイジフレンドリーガイドラインや治療と仕事の両立支援)に関する内容が知られていないことから、町内の事業場の健康課題や健康経営推進上の課題を関係機関・研究者・事業場で共有しながら展開していく必要性を挙げ、今後「職域健康づくり推進連絡会(仮称)」を発足して関連企業を巻き込みながら展開していく予定であることを報告しました。

 

 

第二部のシンポジウムでは、広陵町における中小企業健康経営推進の取り組みとして、健康経営をサポートする立場である協会けんぽ奈良支部  井上芳樹企画総務グループ長、2024年度健康経営優良法人認定事業場として、社会福祉法人信和会  おきなの杜 名張裕信施設長、健康経営のステップである「健康宣言」をされた事業場として、 大和化学工業株式会社 東田誠次代表取締役、大栄工業株式会社 岡田良彦代表取締役社長をシンポジストに招きました。

 

 

協会けんぽ奈良支部では、連携協定に基づく広陵町内事業場に対する健康経営支援とともに県内事業場の健康づくりとして、35歳以上の方を対象とした生活習慣病予防健診の受診費用低額化を行い、胃・肺・大腸・乳・子宮頸部のがん検診と定期健康診断・特定健診のセット受診を可能にしていることと健診受診機会が少ない家族への受診拡大活動を展開していることが報告されました。

 

▼ 協会けんぽ奈良支部 井上 芳樹 企画総務グループ長

 

 

 

3つの事業場からは、それぞれの業種や事業形態での特性からの健康課題対応として、健康で働き続けられることを念頭にした雇用確保による事業継続の工夫やその効果について報告されました。

 

▼ 社会福祉法人信和会 おきなの杜 名張 裕信 施設長

 

 

▼ 大和化学工業株式会社 東田 誠次 代表取締役

 

 

▼ 大栄工業株式会社 岡田 良彦 代表取締役社長

 

 

具体例としては、健診は年齢に関係なく血液検査を含めた全項目実施(人間ドック受診もあり)で全員受診をめざし健康状態の把握に努めていることや、残業減のための定時終業のルール化、有給休暇取得率が高いとさらに特別休暇付与をする、15時終業日の設定など、ワークライフバランスを徹底することで仕事と生活上の楽しみを両立できるようにしていること、従業員間や経営者との間でコミュニケーションを活性化し働きやすい職場づくりを行っていることが報告されました。

 

また支援関係機関である葛城地域窓口(葛城地域産業保健センター)矢倉弘一コーディネーター奈良県よろず支援拠点 山内竜也コーディネーターにも活動紹介をして頂きました。

 

▼ 葛城地域窓口(葛城地域産業保健センター)矢倉 弘一 コーディネーター

 

 

奈良県よろず支援拠点  山内 竜也 コーディネーター

 

 

シンポジウム後半には、山村吉由広陵町長も別の公務を終えて参加してくださいました。

 

 

その後の質疑応答では、健康経営に取り組んでいることで自慢できる強みとして、離職が少なく雇用継続が図られ、それが事業展開にも良い効果となっていることが回答され、健康経営の理念につながるものであることが示されました。

 

残念ながら、町内事業場の方の参加がなかったのですが、働く人の支援を行う方々である参加者からは、協会けんぽのがん検診を付与した健診展開や、地域窓口・よろず支援拠点などの支援機関活動について関心が寄せられました。

 

そして、最後に本調査の共同研究者である理学療法学科 福本貴彦教授と健康栄養学科 野原潤子講師の挨拶をもって閉会としました。

 

 

今後、共同研究者とともにこれらの情報を提供する場および町内事業場と行政・支援機関との連携による協働の場としての「職域健康づくり推進連絡会(仮称)」の活動開始に向けた広報を行っていきたいと思います。

 

町内事業場・支援人材である産業医・産業看護職(看護師・保健師)でこの活動に関心がある方は、下記QRコードに入力をして頂きますと情報提供をしますので、よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 看護実践研究センター地域包括ケア部門

看護医療学科 教授 松本 泉美 文 鐘聲

関連記事

畿央大学 看護実践研究センター

 

認知症予防講座を開催しました。~ 看護実践研究センター認知症ケア部門

畿央祭ウェルカムキャンパス「スマイル交流サロン」活動レポート~ 看護実践研究センター

畿央祭にて ”がんカフェ「きらめき」” を開催しました!~ 看護実践研究センター

「アルツハイマーデー」啓発活動報告~看護実践研究センター 認知症ケア部門

「認知症の人と家族の交流会 in KIO」を開催!~看護実践研究センター認知症ケア部門

「障がい児の愛着形成支援」について研修会を開催!~看護実践研究センター

プロジェクト研究成果発表会を開催しました!~看護実践研究センター

認知症予防講座「歌って、笑って若返り」を開催しました~看護実践研究センター認知症ケア部門

看護実践研究センター認知症ケア部門主催「高齢者看護・ケアに活かすホリスティック・ナーシング」講演会を開催しました。

看護実践研究センター第9回研修会「地域共生社会の実現に向けて~様々な在留資格による外国人介護職受け入れの現状と課題~」を開催しました。

 

 

この記事をシェアする