2024.04.08 

タイ ドンデーン村での教育調査レポートvol.1~現代教育学科教員が22年ぶりの再訪!

現代教育学科 講師の岡田 良平先生が、2月16日から3月8日にかけて、タイ東北部に位置するコンケン県ムアン郡ドンハン区にあるドンデーン(Don Daeng)村にて農村部における教育についての調査や、コンケン大学でのインターナショナルワークショップなどに参加しました。今回は22年ぶりにドンデーン村を再訪し、村の変化した様子をレポートします!

教育学部現代教育学科で生活科と社会科を担当している岡田良平です。私は2月16日から3月8日までタイの農村調査を行ってきました。4回にわたって調査の様子等について報告します。

 

 

今回、私が訪れたタイ東北部のコンケン県にあるドンデーン村についてご紹介したいと思います。実はこのドンデーン村は東南アジアやタイの研究をする人たちにとっては、わりと有名な村なんです。なぜなら、ドンデーン村は1964年、1981年と1983年、2002年の計3回にわたって3度の悉皆(全世帯)調査がされてきました。その調査は農学や社会学の異なる分野の研究者がおり、様々な観点から一つの村の全体像を明らかにしようというもので、世界でも類を見ない調査でした。1983年にはNHKが特集番組を作成したという村でもあるのです。ドンデーン村に関する研究論文は非常にたくさんあり、現在ではタイの農村社会の変化を知るための参照軸として各国の研究者から注目されています。

 

▼日本の調査団を迎え入れるドンデーン村の村人たち(1981年撮影)

 

 

▼当時の村の様子(1981年撮影)

 

 

▼当時のコンケン市内市場の様子(1980年代撮影)

 

 

当時、学生だった私は2002年から始まった第3次調査に運よく参加させてもらいました。私が初めて村を訪れて約20年が経ち、今回は第4次調査の準備に出かけたのでした。当然のことですが、20年間のうちにほぼ全てが変わってしまいました。コンケン市内には巨大なデパートが建設され、誰もが知る高級ブランドが入店しています。誰もがスマホを持ち、デパートのレストラン街には私たちがよく知るお店が「和食店」としてたくさん入店していました。その眩さはまるで梅田のデパートや商業施設にいるような感覚です。大きく変貌した市内からホテルから村に着くためにGoogle mapに道案内をしてもらいます。衛生写真でも確認した通りの道順です。しかし、道案内に従っているのに、私は全く違う街に行こうとしているように感じます。大通りにはスターバックス、マクドナルド、ケンタッキーが立ち並び、郊外型の大型ショッピングセンターがいくつも建設され、大規模な立体交差や鉄道の高架工事も完了していました。そして、村に入る曲がり道にはセブンイレブンができています。私が20年前、何度も曲がったその曲がり道にはどこにも面影はありませんでした。

 

▼コンケン市内のデパートの外観

 

 

▼高級ブランド店も入るデパート店内

 

 

▼店内には複数の日本食のテナントが入居している

 

 

▼世界的に有名な店舗が立ち並ぶコンケン市郊外

 

 

▼幹線道からドンデーン村に入る道の手前にあるコンビニ

 

 

村の様子も随分と変わっていました。伝統的な木造の高床式住宅は村中を探さないと見つかりません。高床式の住宅は雨季の水害や小動物や害虫等の侵入を防ぎ、1階には家畜が飼われていて、人間と同じ敷地内にいたのです。しかし、多くの家が平屋や二階建てのコンクリート造りに変わりました。20年前の村では夕方になると、村の通りに露店ができていて、近くの村から買い物に来る人たちが買い物に来ていました。私たち学生はタイ人の学生と一軒家で共同生活をしていたので、料理当番になると買い出しにも来ていました。そんな露店はグレードアップし、「市場」になっていました。村内には、エアコンの効いた店舗もできています。

 

▼数少ない伝統的な高床式住居

 

 

▼高床式住居の室内の様子

 

 

▼高床式住居の1階部分を住居用に改装した家

 

 

▼おそらく村で一番豪華な家

 

 

▼村にできた大きな市場

 

 

▼市場の前にあるエアコンの効いた店

 

 

私が村人たちに、「村はどんなことが一番変わりましたか」と聞くと、「何もかも全てが変わってしまったよ」と聞いて一抹の寂しさを感じました。確かに、新しい家に住み、新車を買い、スマホのLINEで連絡をしている様子からは、そう感じてしまうでしょう。しかし、よく目を凝らして、村を歩いて観察すると、東北タイ特有の大きな水瓶(天水田のため雨季に雨水を溜めて生活用水に利用する)はありましたし、少ないながらもゴザを織ったり、田んぼに牛が放牧されている景色も残っていました。学生時代に通訳たちと共同生活をしていた家を20年ぶりに訪れると、当時、お世話になった懐かしい村人たちや学校の先生たちに再開し、とても心が温まりました。よく帰ってきたと言われ、昔の写真や私の家族の写真を見せると大喜びをしてくれました。

 

▼各家庭には雨水を貯める水瓶が多く残っている

 

 

▼伝統的なござづくり

 

 

▼当時、日本人とアシスタントのタイ人の学生が共同生活をしていた家

 

 

▼村入りの儀式をしてもらう筆者

 

 

私の担当する生活科と社会科は、まず地域に「出向き」自分で「感じる」ことから始まります。難しいことは何もありません。ほんの少しの勇気だけです。まずは、自分の足でフィールドワークに行ってみませんか?

 

 

現代教育学科 講師 岡田良平

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