2021.07.28
「薬害の実情」と「患者の人権」を学ぶ~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」
看護医療学科4年次生必修科目である「保健医療福祉システム論Ⅰ」では、公衆衛生と社会福祉のシステムとそのあり方を学んでおります。まだまだ収まることのない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、様々な資料を解説し、理解を深めてきました。その中には、感染者や医療従事者が差別を受けている現状を法務省のリーフレット等も用い、差別と偏見の解消に向けた方策も考えていきました。
2021年7月22日(水)の授業では全国薬害被害者団体連絡協議会 副代表世話人の勝村久司氏をお招きし、「『薬害の実情』と『患者の人権』~医療倫理や患者安全について考えながら~」と題した内容について講演いただきました。昨年度は遠隔講義でしたが、今年度は感染対策をとった上で、対面での特別講演という形をとることができました。
勝村氏は、「陣痛促進剤(子宮収縮剤)」の被害によりわずか9日間の命しかなかった、娘さんの星子さんのことがきっかけで、薬害被害に関する活動を展開されることになりました。講演の中では、薬害は人災であること、陣痛促進剤は感受性の個人差がかなり大きいがその理解が医療従事者の中でも十分ではないことを非常に懸念されておられました。
中でも、薬害等の不誠実な医療を防止するためにはリスクマネジメントがとても重要であると指摘され、情報公開や人権の尊重、副作用被害等の医療事故防止のためには健全なチーム医療によって専門性を発揮し、患者・家族を中心とした情報共有が大事であることを説かれました。その実践例として、診療報酬明細書の開示につながったことも紹介されました。
最後に、最終学年にあたる受講生に対して、市民・患者・医療被害者の立場から看護師にのぞむことは、「学問的良心」と「職業的良心」を常に持ち続けることであると話されました。
学生も今回の講演の内容を重くそしてしっかりと受け止めていました。学生たちの感想から一部紹介したいと思います。
【学生A】
夫として、父親として、そして家族としてこれまで多くの場所で講演をされてきたと思いますが、それでも悲しみと悔しさの体験を話すことはとても苦しかったのではないかと感じました。その中で、薬害がどのような事故があるのかを知っておくことにより、私たちが加害者や被害者にならないための学びの機会をいただけてとてもありがたいと感じました。臨床で働く前に、こういったことがあったと知っておくことで、患者や家族に寄り添う心の大切さ、誠意ある対応や行動がいかに重要かを改めて学ぶ機会になりました。こういう実際の声を聞く機会はほとんどないため、こういう機会が医療従事者になる前の心構えを学ぶ機会になりえるのだと感じました。医療従事者になる者として、薬害の被害が起こらないように、丁寧なインフォームドコンセントや、患者の声を聞き、その人が安心・安全な医療を受けることができるように行動していきたいと思います。
【学生B】
陣痛促進剤について、このような大きな被害が広がっていること、被害にあっていても気づかずに被害者となっていない方が多くいることを初めて知りました。講演を拝聴し、すごく胸が締め付けられるほど苦しかったというのが正直な思いです。ですが、被害を受けた当事者の方、そのご家族にとっては計り知れないほどの苦しさ辛さがあるのだということを想像すると、医療従事者を目指すものとして、なぜ防げたはずの事態を防ぐことができなかったのかと悔しさを感じました。被害が広がっているにもかかわらず、必要ではない場合にも陣痛促進剤を使用することが当たり前になってしまうことが非常に恐ろしいと思いました。患者中心に物事を考えることが大切であると改めて強く思う機会となりました。これ以上被害が増えることがないことを祈ると同時に、私自身も被害者に、加害者にならないように適切な知識を持ち、意思表明をすることの重要性を感じました。今回の講演では実際のお話を拝聴することができ、非常に貴重な機会となりました。ありがとうございました。
学生たちは、あと半年で医療の現場に飛び込んでいきます。今回の勝村氏の講演は学生たちにとって非常に大きな学びとなりました。
勝村先生にはこの場を借りて改めて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。
看護医療学科 准教授 文鐘聲
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