2024.07.31 

外部講師から学ぶ「薬害の実情」と「患者の人権」~看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」

看護医療学科4年次必修科目である「保健医療福祉システム論Ⅰ」では、日本の保健医療福祉行政と社会保障制度や公衆衛生の理念、公衆衛生の主な法律・制度・統計、保健医療の動向およびシステムに関する最新の事項を学修します。

2024年7月15日(月)の授業では外部講師として全国薬害被害者団体連絡協議会 副代表世話人の勝村 久司氏をお招きし、「『薬害の実情』と『患者の人権』~医療倫理や患者安全について考えながら~」と題した講演をしていただきました。薬害問題は、医療人として必ず知っておかなくてはならない問題であるとともに、2022年度の高校「公共」の授業でも取り上げられることとなり、その注目度が増しています。

 

 

高校の教員をされている勝村先生は、「陣痛促進剤(子宮収縮剤)」の被害によりわずか9日間の命しかなかった娘の星子さんのことがきっかけで、医療裁判、薬害被害に関する活動を展開されることになりました。被害者(患者)側には難しいと言われる医療裁判ですが、勝村先生は地裁では敗訴するものの、高裁で逆転勝訴することができました。このもようはNHKの番組をはじめ、各種新聞記事でも大きく取り上げられました。

 

陣痛促進剤は個人差が大きく、製薬会社側が適正な使用を求めているのにもかかわらず、医療の現場では適正に使用になっていないこと、薬害の原因は、単なる副作用被害ではなく故意や無作為等の人災により、防げたはずの被害が拡大したものであると話されました。また、患者のための医療者でいるために、

 

  1. 学問的良心とは真実を求める気持ちを持つこと(決めつけないで、情報共有の努力を続けること)
  2. 職業的良心とは精一杯の努力を繰り返すこと(市民感覚にあった健全な価値観を忘れないこと)
  3. 医師の言いなりにならず、チーム医療の一員に(物言えぬ(言わぬ)専門家は、やがて不要とされる)
  4. 医療業界のための患者ではなく、患者のための医療(人間を相手にする仕事の倫理と人権感覚を) 

の4点を最後に強調されました。

学生たちは今回の講演の内容を重くそしてしっかりと受け止めていました。学生たちの感想から一部紹介したいと思います。

講義後の学生の感想より

  • 薬害は人によって起こり得ることもあるということも知りました。看護師は一度得た知識でずっと看護を行うのではなく、常に最新の知識を基に看護を提供できるように、継続学習が大切であることを学びました。貴重なご講義ありがとうございました。
  • 今回の講義から、当時の様子や状況だけでなく、これまでの日本の医療の変遷についての新たな発見や理解をすることができた。このようなアクシデントが今後起こらないようにするために、今回のお話を心に留めて現場に出ていく必要性を感じたとともに、これまで受講してきた医療安全や現在履修中の看護管理をしっかり知識として身につけておく必要があると感じた。
  • 陣痛促進剤の背景のスライドでもあったように、薬害のある薬剤投与は医療従事者に十分な知識や情報が備わっていれば防ぐことができたものであるため、医療従事者が薬害について十分な認識を持ち、対応することが重要であると考えました。また、少しでも自身が他の医療従事者の対応に疑問を持った時、それを発言できる環境をつくることや発言するためにそれに対する根拠も身につけておくことも必要であると考えました。
  • 今回講演をしてくださった勝村さんなどといった実際に被害に遭われた方などが声をあげてくださり、協議会ができたり、添付文書の改訂が行われたりなど、社会の状況が変わってきている。しかし、まだそのような背景もあることから、医療従事者になる立場として、患者第一に考えた医療の提供を行う必要があることや、そのような傾向が見受けられた時には意見を言える立場にならなければならないと改めて感じることができた。医療機関に関しては、1日に多くの人が利用するため、常に行われていることが正しいか医療従事者一人ひとりが確認をして、責任感を持ち行動することが重要になってくる。それに加え、命に関わる問題が多くあることから、関係者として声をあげるなどいかに早く行動し、患者やご家族にとってより良い医療を提供できるかが重要となってくると考えた。
  • 医療従事者として働いていく上で、周りに流されるのではなく、常に疑問に思いながら患者にとって本当に必要な処置なのか、どんなリスクが伴うのかなどを理解し、正しい情報を適切に理解した状態で患者さんが治療を受けられるように寄り添った看護を提供したいです。 来年から助産学生になるのですが、生命の誕生に携わる助産師の責任の重さに改めて気づくことができました。これからは、より気を引き締めて精進していきたいです。

 

学生たちはあと半年で医療の現場に飛び込んでいきます。学生たちの感想にもありますように、今回の勝村先生の講演は学生たちにとって非常に大きな学びとなりました。勝村先生にはこの場を借りて改めて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

         看護医療学科

         教授 文 鐘聲

 

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