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健康科学専攻(博士後期課程)

2017.10.11

大学院生が第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会で優秀賞をW受賞!~健康科学研究科

平成29年9月30日から10月1日に神戸商工会議所にて第22回日本ペインリハビリテーション学会学術大会が開催され、「Clinical Pain Rehabilitation 〜概念から臨床実践へ〜」というテーマで、過去最多65題の一般演題と300名を超える参加者が集いました。 今大会でのシンポジウムでは本大学院からも今井亮太さん(健康科学研究科 博士後期課程)が「骨・関節痛に対する理学療法」、大住倫弘特任助教(畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)が「中枢機能障害性痛に対する先駆的ペインリハビリテーション」というテーマで講演されました。 痛みを有する方の運動恐怖をはじめとした心理的側面を行動学的に評価・介入し、慢性痛の発生を予防する試みは、まさに本大会のテーマであります「概念から臨床実践へ」応用する一つの手段であると思います。   また、本大学院の片山脩さん(健康科学研究科 博士後期課程)が「延髄梗塞後にしびれが出現した症例に対する脳波を用いた新たな運動イメージ介入の効果」で、私(西 祐樹)は「痛み関連回避戦略の心理学的特性-恐怖条件付けに基づく行動選択パラダイムを用いて-」という演題で優秀賞を受賞致しました。 この場をお借りして森岡周教授をはじめ、大住倫弘特任助教、信迫悟志特任助教、本学本大学院の神経リハビリテーション学研究室の皆様に心より感謝申し上げます。今後も日々邁進し、痛みで苦しむ方に少しでも貢献できるよう取り組んでまいります。     畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程1年 西 祐樹 【関連リンク】 大学院生が第10回欧州疼痛学会でポスター発表!~健康科学研究科 第52回日本理学療法学術大会で約30演題を発表!~畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 健康科学研究科博士後期の大学院生が、第51回日本理学療法学術大会で「最優秀論文賞」を受賞! 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト

2017.09.14

大学院生が第10回欧州疼痛学会でポスター発表!~健康科学研究科

平成29年9月6日(水)から9日(土)にかけてデンマークのコペンハーゲンで開催された第10回欧州疼痛学会(The 10th Congress of the European Pain Federation EFIC®)に、健康科学研究科の森岡周教授と、同研究室に所属する博士後期課程の今井亮太さん、私(片山脩)で発表をしてきました。   ▼長崎大学および日本福祉大学の研究室メンバー(写真中央は森岡教授)     この学会は、2年に1度ヨーロッパで開催される疼痛に関する国際学会です。世界中から疼痛の研究者が一同に会す学会となっており、内容は講演、シンポジウム、口述発表、ポスター発表に分かれています。我々はポスター発表にて大学院での研究成果を発表してきました。ポスター発表では60分間の討論時間が設けられており、我々の発表に対しても多くの方々が興味を示して頂き、質問や建設的なご意見を多く頂くことができました。   ▼ポスター前でディスカッションする今井さん(左)と私(右)     私の発表内容は、運動と感覚情報の不一致による主観の変化(痛み、しびれ、奇妙さ、嫌悪感などの異常知覚)、身体運動の変化(電子角度計による運動の協調性測定)、脳活動の変化(脳波測定による周波数解析)を同時に検討したものでした。 質問内容としては、実験の細かな条件設定や、主観-身体運動-脳活動の結果の関係性についてなどでした。今回発表させて頂いた内容は現在論文としてまとめている段階にあり、今回頂いたご意見をもとにさらに精度の高い結果を報告できるように進めていきたいと思います。 現地では、疼痛研究を日本で行われている長崎大学および日本福祉大学の研究室の先生方とも意見交換をする機会がありました。今後も他の研究室との交流を通して切磋琢磨できる関係性を築いていければと思います。 最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった森岡教授、畿央大学に感謝申し上げます.   健康科学研究科 博士後期課程2年 片山脩 【関連リンク】 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターWebサイト 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターfacebook

2017.09.13

ソーシャルスキルと痛みの関係に関する大学院生の論文がJournal of Pain Research誌に掲載!~健康科学研究科

社会の中で“上手くやっていく”能力は「ソーシャルスキル」と呼ばれており、このスキルは自身の心理状態を良好に保つためにも必要だと考えられています。畿央大学大学院健康科学研究科修了生の田中陽一らは「ソーシャルスキルと痛みとの間には密接な関係が存在するのではないか?」という仮説を立てて、共分散構造モデリングによって検証しました。この研究成果は、Journal of Pain Research誌(Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling)に掲載されています。   研究概要 痛みには多面性があり、同一環境・刺激でも痛みの感じ方は個人によって異なります。痛みに対する複合的な治療概念として生物心理社会モデルが提唱されており、生物学的な要因に加えて、心理的側面、社会的側面を統合した臨床対応が求められています。今回の研究では社会的要因の1つであるソーシャルスキルに焦点を当てています。先行研究では、ソーシャルスキルが低い者はネガティブな心理状態に陥りやすく、ソーシャルスキルに優れている者は社会的支援(ソーシャルサポート)を受けやすくなるとともに生活の質が高くなり、抑うつに陥りにくいとされています。このように、ソーシャルスキルは個人の心理社会的要因の形成・構築に重要な影響を与えていることが明らかとなっていますが、痛みの感じ方との関係を検討した研究は報告されていませんでした。 そこで研究グループは、ソーシャルスキルが痛み感受性および心理社会的要因へ与える影響について共分散構造分析(structural equation modeling:以下SEM)を用いて検討しました。SEMの結果、ソーシャルスキルの下位項目である「関係開始」スキル(集団のなかでうまくやっていく第一歩として重要なソーシャルスキル)と痛みの感受性との間に正の関係性があることが認められました。   本研究のポイント SEMでは「関係開始」スキルが心理要因やソーシャルサポートと有意な関係性を有しているだけでなく、痛み感受性とも有意な関係性にあることが認められた。   研究内容 社会的要因として、ソーシャルスキル、ソーシャルサポート、心理要因として抑うつ、孤独感をそれぞれ質問紙にて評価しました。痛みの感受性は、痛みを惹起する画像を使用し内的な痛み体験を通して評価しました(図1)。 図1:使用した痛み画像 ソーシャルスキルと痛みの感受性の相関分析では、ソーシャルスキルの合計値と下位項目の「関係開始」スキルが痛み感受性と正の相関関係を有していました。SEMでは、ソーシャルスキル下位項目である「関係開始」を扱ったモデルで「関係開始」スキルが心理要因と負の関係性、ソーシャルサポートと正の関係性を有し、痛み感受性と正の関係性にあることが認められました(図2)。これらのことから、ソーシャルスキルの1つである「関係開始」スキルが「痛みの感受性」と密接な関係を持つことだけでなく,痛みの慢性化を助長させるような「抑うつ」「孤独感」とも関係していることが明らかになりました.   図2:共分散構造分析の結果 *p < 0.05. **p < 0.01. ***p < 0.001.   本研究の意義および今後の展開 研究成果は、痛みの臨床対応においても、良好な心理状態や社会関係性の構築に必要な個人のソーシャルスキルを意識・評価して介入することの重要性を示唆すると考えられます。今後は、身体的な痛み刺激を用いた検討や、臨床場面でのデータを蓄積していく必要があります.   論文情報 Yoichi Tanaka, Yuki Nishi, Yuki Nishi, Michihiro Osumi, Shu Morioka. Uncovering the influence of social skills and psychosociological factors on pain sensitivity using structural equation modeling. Journal of Pain Research. 2017. 10 2223–2231.   問い合わせ先 畿央大学大学院健康科学研究科 修了生 田中 陽一(タナカ ヨウイチ) E-mail: kempt_24am@yahoo.co.jp 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター センター長 森岡 周(モリオカ シュウ) Tel: 0745-54-1601 Fax: 0745-54-1600 E-mail: s.morioka@kio.ac.jp

2017.08.09

平成29年度 運動器リハビリテーションセミナー「臨床編」を開講しました。

7月30日(日)、平成29年度「畿央大学運動器リハビリテーションセミナー(臨床編)」が開催されました。運動器リハビリテーションセミナーは、卒後のリカレント教育(再教育)の機会や最新知見を提供することで、運動器リハビリテーションに必要な知識を基礎から実践まで系統的に学べるプログラムとなっています。     前年度までのプログラムを改変し、今年度は、明日の運動器リハに使える『エビデンス編』、部位ごとに基礎から臨床応用まで学べる『臨床編』、臨床現場での日々の疑問を客観的に解決する手法を学ぶことで、未来の運動器リハビリテーションを創造する『臨床研究編(導入)』『臨床研究編(実践)』の4つで構成されています。   そして、今回は『臨床編』として、臨床で多く経験する運動器疾患を中心に、各関節の関節構造・運動学・疾患に対する治療戦略を多くの研究論文から考察した内容になっていました。   まず、1講座目は「肩関節のリハビリテーションと最新の知見」というテーマで、運動器リハビリテーションセミナーの代表である福本准教授による講義を開始しました。解剖学・運動学の振り返りから、ガイドラインや最新のエビデンスを用いて、どのように臨床現場で診ていくかについてご紹介いただきました。     2講座目、「肘・手関節および体幹の最新知見とリハビリテーション」については、健康科学研究科修了生で他機関にて活躍されている梅山和也先生、粕渕賢志先生からお話いただきました。梅山先生からは近年、高齢者だけでなく、勤労者でも問題となっている腰痛を中心に、粕渕先生からは肘・手関節についてアプリケーションを用い、実際の関節の動きを確認しながらご説明いただきました。また、粕渕先生の研究テーマである「ダーツスローモーション」については整形外科の教科書でも取り上げられるようになっており、まさにホットトピックになりつつあるとのことでした。   【写真上;梅山先生】 【写真下;粕渕先生】   3講座目は、「変形性膝関節症とその人工関節の最新知見とリハビリテーション」として、健康科学研究科修了生の平川善之先生から、運動器疾患で最も多く経験する変形性膝関節症および人工関節置換術後の治療戦略について、実際に身体を動かしたデモンストレーションを入れながら、経験の浅い受講者の方にもわかりやすくご説明いただきました。     4講座目は、「フレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームの予防」について、松本から、老年学のトピックであるフレイル・サルコペニア・ロコモーティブシンドロームについて現場で落とし込めるように整理し、説明させていただきました。     全体を通して、4講座ともかなりの情報量でしたが、参加者の方々は熱心に聴講され、個別で質問もされていました。なかなか自分だけでは、それぞれの分野の最新の知見を調べて理解するのは難しいと思いますが、それぞれの講座でまとめていただき、臨床に戻ってから、しっかり考えるための素材がつまっていたのではないかと思います。   最後に、今回の運動器セミナーを受講して頂いた皆様、ありがとうございました。次回は今年新たに臨床研究編を二つに分けたプログラムを開始しますので、楽しみしておいてください。 臨床研究編(導入) 平成29年10月8日(日) 詳細 臨床研究編(実践) 平成30年1月28日(日) 詳細 お申し込みはコチラから!   理学療法学科 助教 松本 大輔 【関連記事】 平成28年度「臨床研究編」レポート 平成28年度「下肢編」レポート 平成28年度「上肢・体幹編」レポート 平成28年度「エビデンス編」レポート

2017.07.21

書評~庄本康治教授執筆「エビデンスから身につける物理療法」

理学療法学科の庄本康治学科長が羊土社より「エビデンスから身につける物理療法」を発行されました。庄本先生をはじめとする執筆者15名のうち11名(教員3名、大学院修了生7名、卒業生1名)が大学院・学部関係者で構成されています。 執筆者の一人であり客員研究員でもある小嶌康介先生から書評が届きました。   ▼理学療法学科長の庄本教授(研究室にて)     庄本教授が編集された物理療法書籍「エビデンスから身につける物理療法」をご紹介させていただきます。庄本先生をはじめ急性期や回復期のリハビリテーション現場で物理療法を実践し、研究成果を発表している若手の先生が多数共同執筆されています。   主な読者対象は理学療法士の学生ということで私自身、学生に戻った気持ちで読ませていただきました。まず感じたことは最新のエビデンスが多く含まれており、知識的な学びという点だけでも内容が非常に充実している点です。また具体的な実践方法について写真と動画が多く掲載され、細かい解説がなされているので分かりやすく臨場感があります。この点では臨床のセラピストの技術力向上にも大いに活用出来る書籍だと思います。   疼痛や関節可動域制限などの機能障害、また様々な物理刺激について生理学、病理学、物理学など関連学際領域の解説がしっかりと書かれています。これにより、病態と治療効果を十分理解した上で物理療法を正しく選択し、効果的に用いる能力が身につく、まさに書名通りの内容となっています。   国家試験に関連した領域にはマーキングがなされており、試験対策にも当然活用できるでしょう。ただし、ここまでも述べた通り本書の最大の魅力はエビデンスの理解とともに臨床での実践能力を養うことができる点であると思います。臨床実習に臨む学生にも是非本書を熟読した上で物理療法の実践体験をしてほしいと願います。   庄本先生が序論で書かれていますが、本邦では物理療法はまだまだ積極的に実践されていません。本書にはこの問題を根底から解決するための答え、すなわち学生時代における物理療法への興味と理解を深め、使用経験を促していくための魅力が詰まっています。本書の読者が患者を治療する上で物理療法を「当たり前に存在するオプションの一つ」と考えて実践していくことで、物理療法は更なる発展が期待できます。職種や分野を問わず、臨床現場での実践を通して物理療法が研究課題となり、学術成果として発展し、「クライエントに良い影響」をもたらすという庄本先生の祈念に強く共感を感じています。   西大和リハビリテーション病院 畿央大学大学院健康科学研究科 客員研究員 理学療法士 小嶌 康介

2017.03.22

神経リハビリテーション学研究室の研究交流会が開催されました。

3月11日(土)、畿央大学にて神経リハビリテーション学研究室(大学院 森岡研究室)の研究交流会が開催されました。今回は、吉備国際大学の竹林崇先生,伊丹恒生脳神経外科病院の竹内健太先生(いずれも作業療法士)に御来学頂き、研究紹介を行って頂きました。また、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの大住助教、大学院生の藤井、高村、石垣からも研究紹介を行い、双方の研究に関して意見交換を行いました。また、本会では在学中の大学院生以外にも、修士課程や博士課程の多くの修了生が参加し、懐かしい顏ぶれが揃う機会にもなりました。 研究会の前半は、竹林先生と竹内先生からそれぞれの研究紹介がありました。 竹林先生の研究紹介では、CI療法(脳卒中後片麻痺上肢の集中訓練:Constraint induced movement therapy)とTransfer package(改善した上肢機能を生活場面の使用に汎化させる行動療法)との併用効果や、その改善に関する神経メカニズム、運動療法にロボットを用いることの有用性、そして、経頭蓋直流電気刺激と末梢電気刺激の併用がCI療法の効果に与える影響など、脳卒中患者を対象とした様々な臨床研究の成果を示して頂きました。脳卒中患者の上肢機能という事項に対して、様々な側面から評価・介入しつつも回復機序までも検証しておられる一連の取り組みに感銘を受けると共に、強い臨床志向的な研究動機に触れさせて頂きました。また、竹内先生からは、半側空間無視患者の臨床的評価に対する素朴な疑問を検証するために取り組んでおられる臨床研究を紹介して頂きました。普段の臨床で生じる疑問を取りこぼさず、それに対する仮説を立てて検証していく手続きの重要性を改めて学ばせて頂きました。 続いて後半は、畿央大学から半側空間無視の病態特性について藤井、高村が、慢性疼痛患者の運動特性について大住助教、姿勢制御の社会的特性に関して石垣が紹介させて頂きました。 それぞれの研究紹介に対して、竹林先生、竹内先生との意見交換だけでなく、修了生からの意見も活発に発せられ、予定時間を超過してしまうほどの充実した会となりました。また、普段から博士課程の先輩方の研究発表を聞く機会がある修士課程の私達にとっても、発表を聞く度に研究が発展している先輩方の姿を目の当たりにし、刺激を受けるとともに、自身の研究に取り組む姿勢についても学ばせて頂きました。 交流会の途中で撮影した集合写真ですが、実は他の共同研究で来学されていた東京大学医学部附属病院リハビリテーション科の四津先生が交流会へと足を運んでくださり、集合写真まで撮らせて頂きました。東京へ戻られるお忙しい時間にも関わらず、わざわざ足を運んで頂きました。ありがとうございました。 半日という短い時間で開催された会ではありましたが、建設的な意見交換が活発に行われ、未来志向的な場を共有することができたと思います。そして、このような機会をきっかけに、様々な領域の研究者との協力関係を形成し、真にリハビリテーションの対象者に還元される研究成果の発信に繋げていきたいと思います。 最後になりましたが、ご多忙のなか御来学して頂いた竹林先生ならびに竹内先生、企画及び運営を実施してくださった博士後期課程の方々、そして、このような機会を与えてくださった森岡教授に深く感謝を申し上げます。 畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程1年 山道菜未

2017.02.13

大学院生の研究成果がInternational Journal of Developmental Disabilitiesに掲載!~健康科学研究科

発達障害児の運動機能に身体知覚の歪みが関係していることを明らかに 脳性麻痺に限らず発達障害児は、全身や手先の不器用さを伴うことが報告されています。この原因として、身体イメージや身体図式とよばれる自己身体の知覚、認識の問題が指摘されていますが、この関係を客観的に調査した研究はこれまでありませんでした。畿央大学大学院健康科学研究科修士課程修了生(日本バプテスト病院)の浅野大喜らは、運動障害をもつ発達障害児の運動機能と、身体イメージの指標とされている他者に触れられた場所を同定するtactile localization能力が関係していることを明らかにしました。この研究成果は、International Journal of Developmental Disabilities誌(Associations between tactile localization and motor function in children with motor deficits)に掲載されています。   【研究概要】 出生後早期の脳損傷により運動障害を呈する脳性麻痺児は、運動障害だけでなく身体運動の知覚にも問題があることが示されています。また、自閉症スペクトラム障害などの発達障害児にも運動の不器用さ、身体知覚の問題が指摘されています。これらの運動の困難さの原因として、自己の身体イメージや身体図式といった自己身体の知覚、認識の発達不全が関与していると考えられていますが、下肢については客観的に調査された研究はありませんでした。そこで、研究グループは、運動障害をもつ脳性麻痺や発達障害児を対象に、触れられた手指、足趾、下肢の場所を同定する触覚位置同定(tactile localization)能力と運動機能との関係について調査し、手指の認識と手の巧緻動作、さらに下肢全体のtactile localization能力と下肢の運動機能との間に相関関係があることを見出しました。     研究の詳細は畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターホームページでご覧になれます。

2017.02.07

平成28年度神経リハビリテーション研究大会が開催されました!

1月28日(土)~29日(日)、信貴山観光ホテルにて、神経リハビリテーション研究大会が開催されました。この研究大会は、毎年恒例の合宿形式となっており、今年で11年目を迎えました。   本年度は、ニューロリハビリテーション研究センターの教員と大学院博士後期課程・修士課程のメンバー総勢31名が参加しました。また初めての試みとして、大学院修了生の中野英樹さん(1期生)と河村章史さん(2期生)をお招きし、それぞれ現在進めている研究について紹介して頂きました。     初日は信貴山観光ホテルにて、森岡教授の開会の挨拶から始まり、修士課程2年の最終審査に向けた予演会と上記修了生の研究紹介が行われ、様々な視点から質問応答や意見交換が繰り広げられていました。 どの発表にも明確な研究目的や臨床意義がある中、特に修了生の研究紹介では、研究の質や精度を上げるために、厳密な研究方法を検討されており、研究手続きの一つ一つに根拠を持って取り組んでおられました。また自身の研究を紹介することに対して、楽しみながら話されている点も印象的な光景でした。     夕方には3グループに分かれて、修士課程1年の研究計画に対するディスカッションが行われました。各グループのメンバー全員から、意見やアドバイスを頂くことで研究計画が洗練されていくのを感じる中、議論が白熱し過ぎて時間が超過する場面もありました。 1日目終了後の懇親会でも、白熱したディスカッションは続き、日が変わるまで議論が続きました。 2日目の合宿終了後、畿央大学に戻ってからも、ディスカッションが引き続き行われ、最後に森岡教授による閉会の挨拶で無事に全日程を終えました。     森岡教授からは、これまでの大学院修了生が残してきた研究成果を振り返り、社会の役に立つ研究成果を世の中に出していくためにも、研究を絶えず継続していくことが必要であるとのお言葉を頂きました。 社会人として臨床で働く我々の対象者を通じ、最終的には社会に貢献できるような研究成果が出せるように、今後も研究室一同精進していきたいと考えております。     最後になりましたが、このような機会を与えてくださった森岡教授をはじめとする研究センターの皆様、神経リハビリテーション研究大会の開催にご尽力頂きました関係者の方々に深く感謝を申し上げます。   畿央大学大学院 健康科学研究科 修士課程1年 平田康介 【関連サイト】 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター   【関連記事】 ●「平成27年度   畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成26年度   畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成25年度   畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成24年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成23年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成21年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」 ●「平成20年度 畿央大学神経リハビリテーション研究大会」

2017.02.07

大学院生の研究成果がJournal of Rehabilitation Medicine誌に掲載!~健康科学研究科

運動が脊髄損傷後の神経障害性疼痛を軽減させることを明らかに -安静時脳波解析による検証-   脊髄を損傷すると神経障害性疼痛が生じることがあります。脊髄損傷後の神経障害性疼痛は高い確率で出現し、心理的な苦痛や生活の質の低下を引き起こします。畿央大学大学院健康科学研究科博士後期課程の佐藤剛介らは、有酸素運動(車椅子駆動)により脊髄損傷後の神経障害性疼痛の緩和や負の気分状態が改善し、運動野周囲のα帯域の活性を変化させることを明らかにしました。この研究成果は、Journal of Rehabilitation Medicine誌(Effects of wheelchair propulsion on neuropathic pain and resting electroencephalography after spinal cord injury)に掲載されています。 【研究概要】 脊髄損傷後には運動麻痺・知覚麻痺・自律神経障害が生じ、神経障害性疼痛を始めとした様々な二次的障害を引き起こします。脊髄損傷後の神経障害性疼痛は様々な健康指標を低下させ、治療が難しいことが知られています。この脊髄損傷後の神経障害疼痛は、脊髄が損傷することにより脳と手足の神経を中継する視床と呼ばれる部位の機能異常を引き起こすことが原因の一つと考えられています。この視床の機能異常は脳波を測定した際にα波の変化で表され、具体的にはα波のピークを示す周波数であるPeak alpha frequency(PAF)が低下します。こうした脊髄損傷後の神経障害性疼痛に対して、有酸素運動を行うことで痛みを緩和させることが報告されており、有酸素運動による鎮痛効果は新たな視点として注目されています。さらに、健常者の実験では有酸素運動により負の気分状態が改善することやPAFが増加することが明らかにされています。しかし,これまで脊髄損傷の患者において運動による鎮痛効果と安静時脳波活動(PAFの変化)との関係は明らかにされていませんでした。 今回、研究グループでは脊髄損傷の患者さんが日常生活で使用する車椅子を駆動する運動を行うことでPAFを増加させ、神経障害性疼痛と負の気分状態への効果を検証しました。主観的運動強度で「ややきつい」~「きつい」程度の15分間の車椅子駆動の結果、足や背中の神経障害性疼痛の主観的疼痛強度の減少と負の気分状態が改善し、中心領域(運動野に相当する領域周囲)におけるPAFの増加が認められました。 この研究成果は、有酸素運動が脊髄損傷後の神経障害性疼痛や負の気分状態に対して有効であるとともに、脳波測定のような神経生理学的指標を用いて運動により視床の機能異常が一時的に軽減することを明らかにしたことになります。   研究内容の詳細については畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターホームページでご覧になれます。

2017.02.07

大学院生の研究成果がClinical Rehablitation誌に掲載!~健康科学研究科

畿央大学大学院健康科学研究科博士後期過程の今井亮太らは、橈骨遠位端骨折術後患者に腱振動刺激による運動錯覚を惹起する(引き起こす)ことで痛みの軽減のみならず、手関節の運動機能の改善が認められたことを示しました。また、この効果は術後2ヵ月経っても持続していました。その研究成果はClinical Rehabilitation誌(Effect of illusory kinesthesia on hand function in patients with distal radius fractures: a quasi-randomized controlled study)に1月12日に掲載されました.   【研究概要】 2015年に今井らは、橈骨遠位端骨折術後患者に腱振動刺激による運動錯覚を惹起させることで、痛みの感覚的側面だけではなく情動的側面(不安や恐怖)の改善が認められたことを報告しました。またこの時、2ヵ月後まで効果が持続したことも示さました。しかしながら、理学療法において痛みを改善軽減させることは重要ですが、1番の目的は手関節の運動機能(ADL)の獲得であるにも関わらず、調査ができていませんでした。そこで本研究では、2ヵ月後まで手関節の運動機能を評価して検討しました。その結果、運動錯覚を惹起しなかった群と比較して、運動錯覚を惹起した群では有意に手関節の運動機能の改善が認められました。 詳細はニューロリハビリテーション研究センターホームページでご覧になれます。