2026.07.31 

「薬害の実情」と「患者の人権」-医療倫理や患者安全を学ぶ ~ 看護医療学科「保健医療福祉システム論Ⅰ」

看護医療学科4年次生必修科目である「保健医療福祉システム論Ⅰ」では、医療と公衆衛生、そして社会福祉のシステムとそのあり方を学んでおります。

2026年7月20日(月)の授業では外部講師として全国薬害被害者団体連絡協議会 副代表世話人の勝村 久司氏をお招きし、「『薬害の実情』と『患者の人権』~医療倫理や患者安全について考えながら~」と題した内容について、特に陣痛促進剤による被害についてご講演いただきました。

 

 

薬害問題は、2022年度から高校「公共」の授業でも取り上げられており、医療人としても必ず知っておかなければならない問題です。勝村さんは「子どもたちを将来、薬害の被害者にも加害者にもしたくない」という強い思いから、薬害・医療被害が引き起こされた歴史やその背景を、再発防止の観点から、公教育・高等教育で伝えておられます。

 

勝村さんは、陣痛促進剤(子宮収縮剤)の被害に遭い、9日間しか生きられなかった娘さんのことがきっかけで、医療裁判を起こしました。インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである(日本看護協会)といわれています。陣痛促進剤による事故の背景には、利益優先の価値観、情報の非公開、教育の不健全があったのではないかと話されました。特に、陣痛促進剤は感受性の個人差がかなり大きく、人によって効き目が200倍異なるという特徴がありますが、そのことが十分に教育されておらず、ましてやそれに基づいたインフォームドコンセントも不十分であると話されました。

 

最後に、患者の人権を重視するために、「社会的弱者の視点」「消費者の視点」「市民の視点」「被害者の視点」をもち、真に患者のための医療者でいてほしいことを力強くお話しされ、講演は終わりました。

講義後の学生の感想より

学生たちは今回の講演の内容を重くそしてしっかりと受け止めていました。学生たちの感想から一部紹介したいと思います。

 

  • 今回、実際に経験した当事者の方からの体験談を聞かせていただいたことにより、医療従事者側の意見だけでなく、患者側の意見を知ることができ、医療従事者の一員である看護師として、今後さまざまな患者に対して看護を提供するにあたり、求められる事柄について考えるきっかけとなりました。
  • 私は、患者の人権の尊重や利益を守ることの大切さを改めて学ぶことができました。患者の人権を尊重するためには、インフォームドコンセントを行い、自己決定を支援することが重要であると考えました。陣痛促進剤は適切に使用しないと、児が脳性麻痺になったり、子宮破裂を引き起こしたりするリスクがあり、危険であるにもかかわらず、薬剤の作用を妊婦や家族に説明せずに投与していたという事実から、医療者は、薬剤の投与の目的や投与量、タイミングなどを十分に考え、必要性を見極めたうえで適切に投与する必要があり、投与前には妊婦・家族に説明を行い、同意してもらうことが重要であると考えました。医療者は患者を中心として最善の医療を提供していくことが必要であると考えます。
  • 医療費や医療従事者の都合で、患者に十分な説明がなされないまま悲惨な事故が起こっていた背景を知って驚愕した。これから医療に携わる者として、医療は命を救う側面だけではなく、いつでも生命を脅かす危険性のある側面があるということを絶対に忘れずに、責任をもち続けていきたいと思った。
  • 将来看護師として働く際には、患者や家族の声に耳を傾け、不安や疑問を丁寧に受け止めるとともに、「いつもと違う」と感じたことを見逃さず、多職種と情報共有しながら患者安全の確保に努めたいと考えた。今回の講義は、医療倫理や患者安全について深く考える貴重な機会となった。
  • 講義を聞いて、薬害は副作用と異なり防ぐことができるという言葉が印象に残りました。患者と近い距離で関わることのできる看護師は、患者の苦痛や訴えに寄り添うこと、患者の尊厳を守るために根拠に基づいた治療や処置を十分な説明とともに行うことが重要だと改めて理解することができました。看護師になる前のこの時期にお話を聞くことができたことに意味があると感じました。

 

この講演には、毎日放送(MBS)の取材が来ており、学生たちが勝村さんの講演を聴く様子とインタビューが収録されました。放送日が近づきましたら追ってお知らせします。

 

学生たちは、あと半年で医療の現場に飛び込んでいきます。また、助産学専攻科に進学する学生もいます。学生たちの感想にもありますように、今回の勝村氏の講演は学生たちにとって非常に大きな学びとなりました。

勝村先生にはこの場を借りて改めて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

畿央大学 健康科学部 看護医療学科では質の高い看護師、保健師、助産師を輩出できるよう、これからもたゆまぬ努力をしてまいります。

 

看護医療学科

教授 文 鐘聲

 

関連記事

「海外インターンシップ」発表会を実施しました ~ 看護医療学科

2026年度「へき地医療体験実習」実践報告会 ~ 看護医療学科

「基礎看護技術自己学修会」を実施しました ③ ~ 看護医療学科

『国際看護学Ⅰ』世界を知り、自分を見つめる― 海外インターンシップ報告会で広がる看護の可能性 ~ 看護医療学科

地域の方々を大学へご招待!看護学生との交流会を開催しました~ 看護医療学科「認知症ケア論」

在宅における終末期看護の実際~ 看護医療学科「終末期ケア論」

フィールドワークを実施しました。 ~ 看護医療学科「認知症ケア論」

第13回 危篤・臨終・死亡時の看護の実際 ー エンゼルケア演習 ~ 看護医療学科「終末期ケア論」

 

この記事をシェアする