2012.09.03 

教育学部 辰巳先生の海外学会レポート

第30回国際心理学会議(ICP 2012)に参加しました!
2012年7月22日~27日、南アフリカ共和国・ケープタウン市のCape Town International Convention Centre(CTICC)にて開催された第30回国際心理学会(30th International Congress of Psychology)に参加しました。南アフリカ共和国は、首都の機能を3カ所に分散させており、ケープタウンはその一つでして、立法を司る首都です。
この学会は名称の通り、心理学界における最大規模のイベントであり、世界各国の心理学研究者が集うものです。今大会は300カ国・5千人が参加しました。心理学は今日、高度化し、専門分化が著しく、各領域・分野もまた奥行きがあります。従って、ICPを今日的に正しく紹介するなら、分散された多くの心理学領域・分野を集約する大元締めの学会ということになります。歴史的には、1889年にパリで開催された第1回大会に端を発し、途中、空白期間もありましたが、3年おきの開催、そして1972年の東京大会以降は4年に1度開催されています。なお、次回の第31回大会(2016年)は、日本が久しくホスト国を務め、横浜市で開催される予定です。
私がこの学会に参加した目的は、畿央大学開学10周年記念事業の一環である同健康科学研究所プロジェクト研究「心豊かな生活をおくるための健康科学(研究統括:森岡周教授)」部門の一つ「負傷競技者の心理的要因が運動行動及び動作回復に及ぼす影響(研究代表:辰巳智則)」の成果の一部を発表することにありました。この方面の研究は、アメリカ合衆国・スプリングフィールド大他の研究者が世界をリードしてきた経緯があります。今回の発表は、本邦で独自に重ねてきた研究成果が、国際的にみて、どのような反応を得るのかを肌で感じたかったというのがあります。
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▲会議場とそこの3階テラスから見えるテーブルマウンテンです。この山の存在感が抜群でして、圧巻の一言。毎日、シャッターを切るほど、魅せられました。この日は青空が広がる晴天でしたが、この山の台の部分にうっすらと雲がかかることもあり、現地ではそれをテーブルクロスと呼んでいます。ちなみに、この山を反対側から眺める機会があったのですが、このような形状には見えませんでした。
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▲初日の晩に開催されるICP2012オープニングセレモニーでは、来場者を温かく迎えて下さいました。当方は今回の渡航を必要以上に心配し、周囲も心配していたのですが、こうした歓迎の催しにも支えられ、心を和ませてくれました。

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▲そして、いよいよセレモニーが始まります。数千人は参加していたでしょうか。左の写真は、特設会場の様子です。本会場でのセレモニーの様子が二カ所に設置された大型モニターに映し出されました。かつて、アパルトヘイト(人種隔離政策)という残念な史実を持つ国とあり、「ヒューマンライツ」の言葉が連呼される挨拶に心を打たれました。
なお、当方は日本心理学会が主催するツアーに参加させて頂いたことがきっかけで、大会二日目に行われた次回開催に係る調印式ジャパンセレモニーのパーティーをサポートさせて頂くことになりました。
第30回国際心理学会議4.jpg▲近年新たな発表形態として認知されてきたE-Posterと呼ばれるPC画面と発表スペースの様子を捉えたものです。PC画面にある題目リストをクリックすると、その題目の発表内容のPower Pointが映し出されます。なお、この発表は、参観された方の質問に24時間以内に回答することが求められました。今回の学会では事前に、ポスター発表の方法に関し、この形態での発表が奨励される中、従来の衝立に貼付する形態(写真右)のものとの何れかを選択することが事前に求められていました。なお当方は、衝立に貼付する方法を申請しましたが、この方が良いと再認識することになりました。私情を挟むようですが、E-Posterでは発表者の顔が見えず、コミュニケーションの方法が限定されているように思われ、今一つに思われました。実際、利用者が少なくも思いました。しかし今後、適切に機能するならば、広く学会に採用される方法なのかもしれません。少なくとも、発表者数は増えるのではないでしょうか。
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▲当方が担当した研究発表の時間終了間際です。責任在席時間は1時間。2つの演題について発表しました。実際に質問にお越し下さった方は3名で、内2名は国内の研究者、内1名は外国人研究者でした。なお、大会開催直前に、冒頭で述べたアメリカの研究者グループが発表を辞退され、残念に思いました。同発表にて事前に用意した配布資料は、席を離れた間に概ね無くなっており、多少であれ、海外の研究者に興味を持って頂けたことに、心が救われたような気がしました。いや、それよりも、語学への自信のなさと煩わしさから、最後は資料をお取り下さる研究者のお姿を傍観するしかなかった自らを反省し、さらなるスキルアップを決意した次第です。
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▲最終日午後の数時間のみでしたが、ケープタウン市内をバスで観光しました。ケープタウン大学のキャンパスは音楽教育他が盛んなようです。この大学に向かう前には、1967年に世界で初めてヒトからヒトへの心臓移植が行われた病院をも巡りました。なお、眺めの良さから、2階の最後部座席に座りましたが、途中の山のルートにて、固い木の実のようなものが頭部を直撃!愛嬌あるバスガイドのおじさんが「大丈夫か!」と声をかけて下さったものの、頑固に同じ席に座っていると、しばらくして今度は、木の枝が顔を直撃!結局、身の危険を感じ、屋根のある前方の席に落ち着きました。何台かのツアーバスが巡回しており、途中下車・乗車が繰り返し可能なツアーでしたが、日本心理学会から晩のクロージングセレモニーへの参加を半ば促されておりましたので、時間の都合上、殆どバスからの景色の眺めを楽しむことになりました。大西洋がとても美しかったのが印象に残ります。ウォーターフロントでは、オットセイが水面から顔を覗かせていました。
最後に、今回の出張は、本学の海外研究旅費助成を受けて可能となりました。貴重な経験をさせて頂いたことをここに記し、感謝申し上げます。この度はご支援を賜り、誠にありがとうございました。
教育学部 准教授 辰巳智則
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▲ 帰りにケープタウン国際空港からみたテーブルマウンテン

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