2013.04.16 

11th International Meeting of Physical Therapy Science in Shanghai 出張報告

表記の学術大会(会期:3月22-24日)が中国・上海市東亜体育賓館で開催され、研究発表を行いました。
 
題目は、“Reliability and Validity of the Athletic Injury Psychological Acceptance Scale (AIPAS)”であり、当方が代表担当させて頂いている本学健康科学研究所プロジェクト研究部門(森岡教授統括)の課題研究では、コアな部分を扱っています。今回の研究発表の内容は、既に受理され、近刊予定にある学会誌の論文に基づきます。本研究のサンプルは、十数年前に提出した修士論文のものでほぼ全体を占めています。私的な感情を付与するなら、十数年前の負傷データがようやく陽のあたる場所に近づいたという点に安堵感を覚えています。
 
初日は、上海への移動。日本からの参加者は、国際医療福祉大学の教員・学生やOBのメンバーで占めており、関西国際空港から出国したのは、私だけでした。上海浦東国際空港で全員が合流し、龍陽路駅までの約30kmをリニアモーターカーで移動。
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そこから送迎バスにて、会議場近くのホテルへと再び移動。このリニアモーターカーは、最高速度430km/hを計測するとのこと。この時は、300km/hで走行していました。
 
二日目の午前には、上海市内の新天地の街を散策し、中国共産党の第1回会議が催された記念館を参観しました。
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午後には、上海中医薬大学の附属病院を訪問し、リハビリテーション施設を見学しました。
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私がかつて勤務していた医療機関は、患者さんのリハビリテーションに係る運動処方・指導もありましたが、主として体性疼痛の緩和を目的とした施術に力を入れていました。そこでは、急性期反応や慢性・固定期、回復期における患者さんの反応の特異さと反応に応じた心理的支援の重要性を強く認識しました。また、研究課題の性格から、アスレチック・リハビリテーション現場のスタッフが集う症例報告会に参加していた時期もありました。しかし、今回のようにリハビリテーションの器具や装具を意識して拝見したのは、恥ずかしながら初めてのこと。理学療法の専門家であられる先生方は口々に、「懐かしい!」と仰せられていましたので、その晩にホテルへ帰ってから、ここで撮影した写真の一部を研究協力者である本学理学療法学科の先生にメール添付で送ることにしました。この視察を通し、日本の理学療法の中国進出への気運を感じ、中国の理学療法界もまた、日本の動向にいかに追随してきたのかを肌で感じることができました。
 
 三日目は、学術会議でした。企画当初は太倉市第一人民病院での開催が予定されていましたが、渡航直前になり、冒頭に述べた会場に変更されました。午前中に基調講演が催され、午後にポスター発表及び口頭発表が企画されました。なお、私はポスター発表に参加しました。研究発表は計17演題あり、さすがに心理学領域の研究発表は6演題と少なかったです。臨床・応用系の発表は私以外にはなく、知覚-運動や生理心理系を扱う実験心理学的な研究が3件、理学療法士養成に係る教育心理学的な研究が2件認められました。個人的に関心が持てたのは、Charcot-Marie-Tooth病患者さんを対象とした介入研究でした。この病は下腿部が筋萎縮し、歩行障害他を伴うというもの。この研究では、療法評価を扱う変数に自覚的疲労感とEMG(筋電図)を用い、双方の指標から介入効果を検討されていました。指標の選択・開発、実験・調査の環境条件やサンプル確保に苦心されている点に共有できる感覚を覚えました。他方、患者さんにとっての出来事のもつ意味への無条件的関心という心の臨床の視点に立った時、このレベルの心の層を扱う研究を成立させていくことへの大きな壁を再認した次第です。
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最後になりますが、所属や専門を異にする私に対し、ご配慮下さいました丸山仁司学会長や霍明先生をはじめとする国際医療福祉大学関係各位のご厚誼に厚く感謝し、御礼申し上げます。
 
なお、この度の海外出張は、畿央大学開学10周年記念事業の一つである健康科学研究所プロジェクト研究助成を受けて行われました。記して御礼申し上げ、今後の本学での教育・研究活動に反映させたく存じます。
 

教育学部准教授 辰巳智則

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